会社設立前後から開業までにビジネスモデルでのマーケティング手段を点検してはどうでしょうか。既存のビジネスモデルでも同様ですが、特に新しいモデルで事業化する場合マーケティング手段の内容をチェックし改善することが事業の成功に欠かせません。
今回は会社設立前後から見直しておきたいマーケティング手段を取り上げます。マーケティングの意味や構築の意義のほか、昨今注目されているインフルエンサーマーケティング、多様性への対応、サスティナビリティ重視、体験重視などの新しいマーケティング手段、会社設立時に利用できる補助金・助成金などもご紹介していきます。会社設立時などで事業のマーケティングについて悩んでいる方は是非参考にしてください。

1 新たなマーケティング手段の活用が必要な背景

会社経営で必要となる知識は様々ですが、とりわけマーケティングの知識は重要です。ここではマーケティングの概要を確認するとともに現代の会社経営においてマーケティングが欠かせない背景・理由を説明しましょう。

 

1-1 マーケティングとは

ここではマーケティングについて、会社を設立した際に特に経営上理解しておきたい点を説明します。

マーケティングについては様々な学者・組織等がその内容について定義していますが、マーケティングの概念を簡単にまとめると「ビジネスでの儲かる仕組み」、或は「売れるための、利用されるための仕組み」と言ってよいでしょう。また、ビジネスモデルを作るためのフレームワークや方法がマーケティングとも言えます。

ビジネスは結局のところ事業者等が顧客の望むモノ・サービスについて対価を得て交換する行為です。そして、マーケティングは、その交換行為を成功できるように、より効率的に行えるようにする手段・フレームワークとして使用されます。

より具体的には、自社の経営資源や外部の環境を分析し買手を定め、買手のニーズを捉えられる商品・サービスを用意し、買ってもらえるような状況を整えていく、ことがマーケティングの概念になるのです。

会社設立時では経営資源が脆弱であり、その限られた資源を前提として売れる仕組みを構築しなければなりません。自社の経営資源と環境を考えた時に売るべき相手が誰なのか、そのニーズが何であるかを特定し、どのように売っていくべきかを考える必要があります。

たとえば、自社が提供する商品やサービスが対象相手に買ってもらえる内容に整える、彼らに認知してもらえるようにする、目に触れ手にしてもらえる機会を増やすようにする、お得と思ってもらえるようにする、といった手段を整備していくわけです。

こうした一連の売るための仕組みは会社ごとに異なります。たとえ同じ業種であっても異なってくることも少なくないため、同業他社がやっているマーケティング手段を採用しても自社が成功するとは限りません。

会社の経営資源の質・量や取り巻く経営環境が異なってくれば、ターゲットとするべき対象も異なってきます。売る相手が異なれば売るモノや売り方が異なってくるのは当然です。その点を認識しないでマーケティング手段を確立しても売れる仕組みにはなりません。

また、いかに革新的な商品・サービスを開発してもマーケティング手段が適切に確立されなければ事業として失敗することもあります。非常に便利だが高価過ぎる、多機能だが操作が複雑過ぎる、卓越した性能だが品質が良くない、購入者の評価が高いが認知度が低い、といった点で失敗に終わるケースは少なくないのです。

このように売るための仕組みがマーケティング手段であり、それが不適切だと売れずにビジネスが失敗に終わる可能性が高まり、逆に適切に設定され遂行されれば成功確率は高まります。

 

1-2 会社設立で考えるべきマーケティング手段とその理由

最適なマーケティング手段をとることが事業の成功に繋がるわけですが、その方法は時代の流れとともに変化するため経営者としては最も有効な手段を採用していかねばなりません。

なお、ここでのマーケティング手段は主にマーケティングミックスの内容を指し、その点について説明して行きます。

①マーケティングミックスの内容と重要性

マーケティングミックスとは売る対象者に対してライバルとの違いを認識させ購入や利用を促すための具体的な手段を組み合すことであり、その構成要素のことです。

簡単に言うと商品・サービスを売るための手段とする要素で、代表的な要素には製品(product)、価格(price)、流通(place)、プロモーション(promotion)の4Pが挙げられます。これらの要素は自社の経営資源や外部環境という制約を前提にライバルに勝ちつつターゲットのニーズを捉えられる内容で考案されるべきものです。

たとえば、設備の能力・生産量で大手に後れを取る小規模会社の場合、価格面での競争力がないなら価格戦略としては高価格で勝負することになります。高価格でも興味を持ってくれる対象者を特定し彼らのニーズに応えられる製品作りが必要になるでしょう。

そして、彼らにアプローチしてより良い関係を構築できるチャネルを作ることも不可欠であり、そのためのさまざまなプロモーション活動も展開しなければなりません。

こうした4Pの内容は売るための仕組みの基本要素でありいつの時代になっても重要ですが、売上を伸ばしたり維持したりする要素は時代の流れの中で変わってきます。

特に情報通信技術が日々進化している今日ではマーケティング手段として活用できるモノが多く登場しており、実際に活用されています。たとえば、プロモーションにおける宣伝広告でテレビなどのマスメディアの利用が有効でしたが、現在ではSNSを利用した宣伝広告等も重要です。

また、消費者など買手側の購入する上での価値観も多様化し、単に必要だからという理由だけではなく社会的に利用価値が高いから購入するといった意識の変化にも対応しなくてはなりません。

つまり、買手側のニーズが従来と異なる価値観に基づくであることも少なくないため、その変化を捉えるマーケティング手段の考案が必要であり、それが事業の成否を分けることもあるのです。

②新たなマーケティング手段を活用すべき理由

会社設立から間がなく経営資源の少ない会社にとっては、自社及びその事業内容を低コストかつ迅速に社会全般やターゲットに認知させることは容易ではありません。しかし、新たなマーケティング手段を活用することでその問題が解消できるのです。

現代はインターネットを通じたSNSなどによる宣伝広告等が行えるため、多額のコストのかかるメディアを利用しなくても一定のマーケティング目標が達成できます。また、SNS等の利用では、ニーズの収集・分析、ターゲット層とのコミュニケーションや関係構築などに活用することも可能です。

このようにICT(情報通信技術)などが進化して、それが消費者などに普及される媒体は有効なマーケティング手段として活用できるため、事業に取り入れることが求められます。

また、買手のニーズに影響を及ぼす彼らの価値観の変化にも注意が必要です。買手の価値観の変化がニーズの変化に繋がれば、売り方、すなわちマーケティング手段も変えなくてはなりません。

たとえば、頻繁に購入する商品などはその都度購入するよりまとめ買いしたいと思う消費者が少なからずいます。しかし、まとめ買いすると、モノを置くスペースに困る、新製品が直ぐに買えなくなる、などのデメリットがありまとめ買いを躊躇することに繋がっているのです。

こうした問題を解決するマーケティング手段として、定期購買(サブスクリプション)が注目されています。サブスクリプションはまとめ買いではないですが、一定期間の利用権を購入する形式であるため、割安に設定されており商品等も一定期間ごとに自動的に提供されます。

また、モノを購入するよりもシェアするという価値観が重視されつつあり、シェアリングサービスというマーケティング手段も増加しています。このように消費に対する価値観に変化が生じているため、それに対応した手段を考案しターゲットに提案していくことが現代のビジネスでは求められているのです。

③新マーケティング手段が必要となる背景

新マーケティング手段が今後求められる背景を確認してみましょう。

A SNSの活用状況

総務省の平成29年度版「情報通信白書」の中で、スマホが社会生活を支える重要なインフラとなって普及しその流れの中でSNSの利用が増加している点が注目されています。

その内容では2012年に41.4%だった全体のSNSの利用割合が2016年には71.2%にまで上昇し、スマートフォンの普及と伴にSNSが人々の社会生活の一部なってきたことが窺えます。つまり、スマホからのSNSの利用が社会での情報の収集・発信の手段として定着してきたと言えるのです。

従って、多くの人が利用するコミュニケーション手段のSNSはマーケティング手段として十分利用価値があります。

なお、利用者を年代別にみると、10代や20代は2012年時点から利用割合が高いですが、2016年では20代では97.7%がいずれかのサービスを利用しています。

つまり、若い世代ではスマホやSNSが日常で不可欠な存在となっており、マーケティング手段を仕掛ける対象として最も効果の高い相手になるのです。

一方、40代や50代も2012年時点での利用率は、37.1%と20.6%でしたが、2 016年には各々80%程度、60%程度と上昇しており、仕掛ける対象に十分になってきたと言えます。

平成29年度版「情報通信白書」 図表1-1-1-11 代表的SNSの利用率の推移(全体)

図表1-1-1-12 代表的SNSの利用率の推移(年代別)

なお、SNSをマーケティング手段として活用する場合、各サービスがどのように利用されているかを把握しておくことが重要です。下表では20代(ミレニアム世代)のSNSサービスの利用傾向が示されています。

この資料をみるとLINE、Facebook、Twitterやinstagramなど各サービスが利用目的に応じて上手く使い分けされているのです。そのためこの特徴に合わせて各サービスを有効なマーケティング手段として活用するが求められます。

図表1-1-3-5 ヒアリングから得られたミレニアル世代(20代)のネット利用傾向

B 価値観の変化・多様化

・シェアリング・エコノミー

シェアリング・エコノミーとは、モノ、サービスや場所などを、他の人と共有したり交換したりして利用する共有型経済システムのことです。たとえば、個人が持っている未利用・遊休となっている資産を他者に貸し出すための仲介サービス等が該当します。

今まで購入することを前提としたモノ・サービスのやり取りから「貸し借り」の行為に変える経済活動と言えるでしょう。そのシェアリング・エコノミーの市場は、総務書の平成27年度版 情報通信白の図表4-2-1-3によると、2013年に約150億ドルだった市場規模が2025年には約3,350億ドル規模へと期待されています。

米国では車の配車サービスのUber、宿泊施設の提供サービスのAirbnbなどが有名で日本国内でもAirbnbの物件を仲介する事業者も登場しているのです。

従来のマーケティング手段では売るための製品作り、価格設定やチャネル構築などに重点が置かれてきましたが、利用者の価値観が変わりシェアリングというニーズへの対応が迫れる時代となっています。

図表4-2-1-3 シェアリング・エコノミーの市場規模

・サスティナビリティ

現代では消費者及び企業でサスティナビリティ(持続可能な成長・社会)を重視した活動が注目されており、その価値観に対応したマーケティング手段も求められているのです。

特に欧米などでは持続可能な社会に関する意識が高いですが、2015年の国連総会において「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、その実現に向けた具体的な行動が顕在化し始めています。

SDGsでは持続可能エネルギーの利用増大のほか、海洋資源の保護や気候変動対策などに関する目標が設けられ、国連に加盟する各国はその実現のために具体的な行動を起こしています。

また、消費者の購買に関する意識にも変化が生じています。米国の調査会社ニールセンは、2015年10月に世界60カ国の消費者を対象にした調査(「企業の持続可能性への取り組みに関するグローバル調査」)を発表していますが、その結果の中で持続可能性を重視したブランドを支持する動きが認められているのです。

たとえば、「持続可能な製品には少し高いお金を払ってもよい」と考える消費者が2013年の50%から14年が55%、15年には66%に上昇しています。つまり、サスティナビリティを反映した製品・サービスにしていくことが消費者の支持を得ることに繋がるのです。

・サブスクリプション

サブスクリプション(subscription)とは元々雑誌等での「定期購読」を意味する言葉ですが、そのサービスは現在では会員制や定額制の利用サービス「定期的に商品・サービス等を提供して対価を得る販売方法」として使用されています。

株式会社矢野経済研究所のWEBサイトによると(2019年4月9日)、サブスクリプションサービスの国内市場規模は5,627 億3,600万円(8市場計)(消費者支払額ベース)です。

*図表は矢野経済研究所WEBサイトより

そして、同社の予測では2020年度には7,184億円、2023年には8,623億円に達すると見込んでいます。予測対象の市場としては、ファッション系定期宅配、ファッションサービス(前出項目を除く)、食品系定期宅配、飲食サービス、生活関連、住協(シェアハウス等)、教育と娯楽(音楽や映像等)です。

つまり、こうした分野では都度の購入への対応から定期購買への対応というマーケティング手段を取ることで業績を伸ばせるチャンスが得られます。

従来の購買では無くなった時にその都度注文するスタイルであるため、都度発注の手間がかかります。また、時には発注のタイミングが遅れたり忘れたりして品切れしてしまい不便を被ることもあるはずです。加えて都度に発注すれば購入単価を下げることは難しくなります(まとめ買いでないため)。

しかし、サブスクリプションサービスは定期購入であるため商品の配送は自動的・定期的に行われ、発注の手間は少なく発注忘れもなくなり、割安で買えるようになります。こうした利便性を求める消費者等が増えつつあり同サービスの市場規模が増大しているのです。

・コト消費(体験)

消費者ニーズの変化では、若い世代を中心に「コト消費」重視の姿勢が目立つようになってきました。モノを消費する楽しみ方から「~することへの楽しみ方」へ消費者の意識がシフトしつつあるのです。

平成29年度版の消費者白書の「第1部 第3章 第1節(2)若者の消費支出について」の中で若者の消費支出の傾向が示されています。

その中でいくつかの特徴が確認できますが、その1つが若者の「車離れ」「アルコール離れ」です。白書の図表I-3-1-7では自動車等関係費について男性が大きく減少傾向にあり、2014年には1999年の半分以下の支出となっている点が確認できます。一方、女性は増加傾向で2014年は1999年の2倍以上の支出です。

酒類の消費については(図表I-3-1-8)男女とも減少傾向にあり女性の場合は特に1999年が1,026円(1人・月の支出額)、2014年には約半分の519円へと大幅に減少しています。

また、洋服の支出額もやはり男女ともに減少傾向にあり、両方ともに1999年と2014年とで比較すると大幅な減少となっています(図表1-3-1-9)。

このように若い世代でのモノへの消費支出は減少していますが、コト消費への支出は増加しているのです。そして、その内容は、消費者庁の「消費者意識基本調査」(2016年度)で調査した「お金を掛けている」内容(図表Ⅰ-2-2-3)で確認できます。

若者で「お金を掛けている」との回答割合が高いものは、「ファッション」や「理美容・身だしなみ」などの「自分の外見に対する費用」や「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」といった「コト消費」関連の費用です。

「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」(図表I-3-1-14)について年代別で見ると15歳~29歳の層の回答割合が他の世代の2倍~3倍ほど高くなっています。つまり、若い世代でのコト消費の意欲が高いと言えるのです。

このように消費者において消費に関する価値観が変化し、単に商品・サービスを販売するだけでは消費者ニーズに応えることが難しくなってきているのです。商品の販売や食事の提供の際に消費者が何か体験できる「~すること」が含まれる要素をマーケティング手段に加えることが重要になってきています。

・多様性重視

ビジネスの世界においても多様性(ダイバーシティ)を重視したマーケティング手段も必要です。

ここでの多様性の重視とは、国籍、人種、宗教、文化、言語、性別、年齢、ハンディキャップ等の有無により差別や排斥せずその特徴等を受け入れ対応することを指します。

先の持続可能な開発目標(SDGs)において「ジェンダー平等の実現」が目標として設定されており、世界的な多様性重視の流れが認められるのです。国連及びその国連開発計画(UNDP)により2000年以降でジェンダーの平等に注力されてきた結果、学校に通う女児が15年前よりも増加して多くの地域で初等教育での男女平等が実現されています。

農業以外の雇用者に占める女性の割合は、1990年が35%でしたが、現在は41%にまでに増加しているのです。SDGsでは、これらの成果を基礎にすべての地域で女性と女児に対する差別の撲滅に取り組んでいます。

ビジネスの世界でも多様性重視の動きが見られるようになってきており、ペプシコのようなグローバル会社では国籍・性別にかかわらず優秀な人材がCEOとして選出されるようになっているのです(ペプシコでは2006年に女性でインド人であるインドラ・ノーイ氏が最高経営責任者に選出された)。

社会全体でも民族・宗教・LGBTなどのマイノリティ(社会的少数派)に対する差別・排斥が非難される流れが生じつつあり、彼らに対応するためのマーケティング手段も重要となってきています。

たとえば、宗教やアレルギーなどに対応した食事や食材の提供、多言語での情報提供、視覚・聴覚に障害を持つ方への各種商品・サービスの提供、ジェンダーフリーの施設の設置、外国人の買物・商品発送への対応 などが必要です。

こうした多様性重視の視点でマーケティング手段を用意することが利用者からの支持だけでなく社会全体からの評価を高め事業の成功に繋がることもあります

2 今後も重要となるトレンドのマーケティング手段

現在、注目を集め多方面で活用されているマーケティング手段を説明します。必要に応じて自社のビジネスへの導入を検討してみてください。

2-1 インフルエンサーマーケティング

SNSが若者を中心に社会全体でのコミュニケーション手段として確立されてきた現状を考えれば、ビジネスを成功させるためにはSNSをマーケティング手段として活用することは不可欠です。

とりわけ会社設立後間もない企業にとって、SNSは低コストで運用できるため積極的な運用が求められます。そのSNSの利用ではLINE、Facebook、Twitterやinstagramなどの各種サービスの特徴を考慮した運用が重要です。

さらにSNSをマーケティング手段として利用する上では、各サービスでの利用者に影響力のあるインフルエンサーの活用がポイントになります。ここではインフルエンサーを活用したマーケティング手段について説明しましょう。

①インフルエンサーマーケティングとは

インフルエンサーマーケティングとは、ブログ、YouTubeやinstagramなどの特定のコミュニティの中で発信(口コミ等)による他者への影響力が強いインフルエンサーをマーケティング手段として活用する方法のことです。

つまり、自社の商品・サービスを購入・利用してもらえるようにインフルエンサーを活用するのがインフルエンサーマーケティングと言えます。

一般的な企業の商品等に関するPRは、企業がターゲットに対してテレビやWEBサイト等を通じて直接的に行うものでした。この方法でも宣伝広告としては一定の効果はあります。

しかし、この従来の方法は企業や商品等のブンランド力・信用力、広告量などに左右されるため、新設会社で資金が少なく知名度の低い企業では大きな効果が期待しにくいです。

こうした場合の欠点をカバーしてくれるのがインフルエンサーマーケティングになります。

インフルエンサーは特定のコミュニティでの発信力が強いだけでなく信頼度が高く大きな支持を集めているため、そのコミュニティ内の利用者の購買行動に強い影響が与えられるのです。

つまり、インフルエンサーがある特定の商品やサービスに対して高い評価や好感を示せば、彼・彼女を支持するコニュニティの参加者は影響を受け購買に駆り立てられます。また、インフルエンサーが高評価で投稿すれば、他の参加者がその情報を拡散しさらに広まる可能性が高まるのです。

従って、インフルエンサー1人の発信からその商品等の情報が広まり、知名度とともに大きな売上が期待できるようになります。インフルエンサーマーケティングを言い換えると、企業や商品等と利用者との関係を作る、維持する担い手を活用したマーケティング手法と言えるでしょう。

②インフルエンサーマーケティングの行い方

インフルエンサーマーケティングを行うポイントはいくつかありますが、特に以下の点は重要です。

A 自社や商品等にマッチしたインフルエンサーを探す

インフルエンサーには様々なタイプが存在しますが、ビジネスを考える上では一定数のフォロワーを有するとともに自社の商品等を利用する消費者等に近い立場のインフルエンサーを選ぶべきです。

インフルエンサーの中には一般の消費者、芸能人やスポーツ選手などがいますが、その中である程度のフォロワー数があり自社の商品等にマッチすることが条件となるでしょう。

まず、フォロワー数の少ない方の場合は情報の発散の程度が限られ大きな影響力が望めません。また、有名な芸能人等でフォロワー数が多くてもそのフォロワー層と自社の商品等がマッチしなければ購買に繋がる可能性は高くないです。

自社を利用しそうな消費者が憧れや親しみを感じるインフルエンサー、しかも同じ消費層にいる者が最も効果を発揮する可能性があります。自分と同じ層にあり支持している身近なインフルエンサーが好感を抱いている商品なら試しに買ってみよう、という行動に繋がっても不思議ではないでしょう。

B インフルエンサーから商品等について情報発信してもらえるように依頼する

自社の商品等の情報を発信してもらえるようにインフルエンサーに何らかの形で依頼する必要があります。しかし、その依頼する方法を誤ると依頼は断られ、自社や自社の商品等にマイナスの感情がもたれビジネス上逆効果が生じかねません。

まず、インフルエンサーに依頼するためにコンタクトを取る必要がありますが、できればインフルエンサーが利用しているSNSに投稿して関係のきっかけを作ることから始めるのがよいでしょう。

インフルエンサーはSNSでの人間関係を重視するため、ビジネス目的の契約に縛られた商品PRの情報発信をしてくれるとは限りません。つまり、彼らはビジネスやお金のためだけに特定の商品等を取り上げPRする可能性が高くないのです。

彼らが信用できる会社や気に入った良いと思える商品・サービスでないとフォロワーに情報発信してもらえず契約もしてもらえません。まず、インフルエンサーに信用できる会社であることを理解してもらう必要があり、そのために彼らとの人間関係を第一に築いていく必要があります。

たとえば、彼らのSNSに投稿してアプローチを始め、少しやり取りができれば直接メールのやり取りができるようにもっていくのです。その上で自社のビジョン、商品のコンセプト、キャンペーンなどの内容を説明し共感を得られるよう取り組まねばなりません。

なお、インフルエンサーと契約する場合、条件提示は慎重に行うべきで、情報発信の内容を規定する、投稿数を設定する、などは要注意です。また、最初のアプローチでいきなり契約を持ち出すと嫌われやすいため控えたほうが良いでしょう。

インフルエンサーに対する報酬の相場は、彼らが保有するフォロワーの数が参考になります。たとえば、フォロワー数が約1万人のインフルエンサーが1つの情報を発信する場合その単価は1万数千円程度です。こうした相場情報を参考に様子をみながら交渉してみましょう。

C インフルエンサーの情報発信に協力する

会社としてはインフルエンサーに良い情報発信をしてもらえるように協力していくことが重要です。

インフルエンサーが自社や自社の商品等の知名度を高め、購買に結び付くような情報発信ができるように会社はそのための必要な協力を惜しんではいけません。具体的には、会社はフォロワーに興味をもってもらえるようなコンテンツをインフルエンサーと協力しながら作っていかねばならないのです。

情報発信の内容をインフルエンサーに任せることは重要ですが、会社としてアピールしたい点などを丁寧に説明したり、実際の商品を使ってもらったりして彼らに理解を深めてもらわねばなりません。

また、インフルエンサーが発信する際に必要な商品等の情報や、キャンペーン・イベントなどの開催、限定品販売といった情報も随時提供すべきです。

インフルエンサーやフォロワーが興味を持ちそうな情報を整理してインフルエンサーに提供することが有益なコンテンツ作りになるということを留意しておきましょう。

2-2 多様性への対応

価値観が多様化する現代において性別、国籍、肌の色などの違いを超えて平等に接する、扱うという多様性重視の経営が求められています。そして、自社のビジネスシステムの中に多様性に対応したマーケティング手段を取り入れることが競争優位性の確保などに役立つでしょう。

①多様性に対応するマーケティング手段

多様性に対応したマーケティング手段とは、多様性に配慮する或は他者と同様に扱う方法で商品・サービス等の提供を行うことです。

たとえば、宗教によっては食事や服装など禁止されているモノや行為がありますが、それらに対応した商品・サービスなどを提供することが多様性に対応したビジネスになるでしょう。

具体的にはイスラム教の「ハラール」(イスラム法上許されるもの)や「ハラーム」(非合法のもの・禁じられるもの)に対応したビジネスを行うことです。ハラールと言えばハラール食品を思い浮かべる方も多いでしょうが、食品以外にも化粧品や旅行なども該当するケースもあります。

観光立国を目指す日本おいて、東南アジア諸国からの訪日客も増加しておりその中でイスラム教徒(ムスリム)のお客も少なくありません。わざわざ遠方から訪日してくれたムスリム旅行者に対してハラールやハラームに対応しなければ彼らを落胆させ今後のビジネスに悪影響を及ぼすでしょう。

逆にハラール等に対応できれば今後のビジネスを拡大する可能性が高められるのです。

訪日客全般への適切な対応が観光関連業界では必須であり、それをマーケティング手段として利用しなければならない状況にあります。自社のホームページ、店頭のサンプル、商品案内・メニュー、食事の仕方・商品の扱い方などを多言語で示すことも必要です。

文字で説明しにくい内容は動画(解説は英語等で)で説明したり、従業員が直接英語で教えたりするなどのサービスも望まれます。

・ジェンダーフリーやLGBT(性的マイノリティー)等への対応

公共施設においては性別に関係なく、またLGBTの方なども利用しやすい施設が求められるようになってきており、そうした対応はビジネスチャンスとなるだけでなく社会的な評価を高めてくれるでしょう。

男女が共用で利用しやすいジェンダーフリートイレも公共施設の中で増加していますが、さらにLGBTの方にも配慮したトイレが設置されるようになってきています。TOTOではLGBTの方にも利用しやすいパブリックトイレのプランを提案できるようにし社会の要請に応えているのです。

ほかにはジェンダーフリーに対応した衣料などファッション関連の事業は多く見られ、シェアハウスやアパートなども増えつつあります。

2-3 サスティナビリティ重視

国連の「ビジネス&持続可能な開発委員会に」よると、SDGsにおける2030年の世界の市場規模は年間12兆ドル、3億8千万人の雇用創出があると試算しています。つまり、持続可能性を重視したビジネスは大きなビジネスチャンスになり得るのです。

・持続可能性を重視したビジネス

持続可能性を重視したビジネスは海外のグローバル企業で進んでおり、ユニリーバ、P&Gやネスレなどが有名です。

P&Gは、持続可能な社会の実現に貢献するため、再生可能エネルギーの利用、リサイクル資源等の使用、資源保存に配慮した設計、製造過程・製造及び消費後の廃棄物ゼロなどに取り組んでいます。

たとえば、北米の工場内にバイオマス燃料を用いた熱電供給プラントを建設し、50メガワットの熱電併給を可能にしました。また、紙製品を生産する米国カリフォルニア州のオックスナード工場では、上水の利用量を28%削減する取り組みに成功しています。

自社製品の洗濯洗剤「タイド HE ターボ」は高い洗浄力がありながらすすぎ水の使用量が少なく、家庭の節水に貢献しているのです。

P&Gはこうした取り組みを通じてサスティナビリティを重視する消費者等から高い評価と支持を得てサスティナビリティ重視のブランドとしてビジネスを拡大させています。

・持続可能な開発目標ビジネス創出支援事業

日本では内閣総理大臣を本部長とするSDGs推進本部が設置され、「SDGsアクションプラン2019」に基づく取り組みが進められており、各都道府県では持続可能な開発目標ビジネス創出支援事業などが実施されようとしています。

こうした事業ではSDGsの実現を目的としたビジネスを「SDGsビジネス」と位置づけ、地域の企業がSDGsビジネスでのチャンスを掴めるようにSDGsビジネスの創出に向けた支援が行われているのです。

具体的には、SDGsビジネスの支援者とSDGsビジネスを行う企業等を結びつける「SDGsビジネスマッチングイベントの開催」などが実施されています。

2-4 コト消費

消費に対する価値観が変わり、必要な商品やサービスを単に購入するだけでなく購入のプロセス、消費に関連した体験やストーリーなどに価値を置く消費行動が目立つようになってきています。こうしたコト消費のトレンドに対応することでビジネスの幅を広げ自社の成長に繋げることが可能です。

①体験型コマース

ECサイトでの商品販売が当たり前に行われている現代において、他社との差別化を図ることは容易ではないですが、その手段として体験型ECコマースが期待されています。

体験型ECコマースとは、ECサイトを商品販売の場だけでなく体験する場にするECと言えるでしょう。具体的には、ECサイトで単に商品の写真や動画で説明するだけでなく、その商品を購入することで消費者がどのような体験ができるかなどをストーリーにして訴求する仕組みにすることです。

たとえば、鞄なら職人の製品作りにかける意気込み、こだわりの材料、工夫を凝らしたモノづくりなどの製造過程を熱く語るページ、ビジネスや旅行など使用するシーンを画像で訴えるページなどを用意します。また、鞄の使用後のメンテナンスをどうするかなどの手入れのページも重要です。

さらに仮想現実(VR)をWEBサイトで実現できるようにすれば消費者はその利用シーンを店舗にいなくても体感できるでしょう。

こうした消費活動を自社のサイトで体験させるという仕組みが不可欠となりますが、そうした体験型ECコマースを導入する支援サービスも提供されています。

WEBサイトやスマートフォンアプリから消費者の行動、経験、感情などの変化をリアルタイムに読み取り解析し、その結果で顧客目線に基づく顧客体験を創るサービスが提供されているのです。自社だけで体験型ECサイトを作るのが困難な場合はこうした支援サービスを利用するとよいでしょう。

2-5 AIと人間の活用

人手不足が深刻化する今日おいて高度なIT活用がさらに重要となってきましたが、とりわけAIを利用したマーケティング手段の実施は大きな効果が期待されています。

たとえば、顧客からの問い合わせ対応はコンシューマービジネスにおいて重要な役割を担っていますが、人手不足によりサービスの品質低下を心配する企業も少なくありません。

そうしたコールセンター業務での負担を軽減するためにAIが組み込まれた「チャットボット」の利用が普及し始めているのです。顧客からの定型的な質問に対しては自動で回答し、困難な場合はオペレーターや担当者にバトンタッチしコールセンター業務全体での効率性を高めています。

こうしたAIを活用した業務対応をマーケティング手段として導入することで業務の生産性を高めるととも人間以上に迅速かつ高度な情報提供を顧客に対して行えるのです。会社設立前後の企業にとっては優秀な人材を確保するのは容易でないため、AIを含む高度なIT化の導入は企業の成長の源泉になり得るでしょう。

しかし、AIを含む高度なIT化を過度に進めてしまうと業務内容やサービス品質が画一的になり過ぎ逆に他社との差別化が困難になる恐れが生じます。業務の生産性が改善しても顧客対応が機械的過ぎて顧客との関係性が構築できず業績を低下させることもあるのです。

たとえば、デジタルマーケティングを強化しすぎて、商品等の案内やイベントの開催の招待などがテンプレを使った画一的なマーケティング手段に終始すれば、顧客とのコミュニケーションの質が低下します。人間味のない情報のやり取りは軽視され支持されなくなってしまうのです。

ビジネスにおいては消費財や生産財を問わず売手と買手との関係性が売上に大きな影響を及ぼすため、顧客との関係の構築・維持は重要な経営課題あり解決しなければなりません。

そのため顧客との業務対応で情報システムを有効活用していくのは当然ですが、人である担当者が定期的に顧客との直接的なコミュニケーションをとり良好な関係を築いていく必要もあります。

どの顧客にも同じ情報を提供するだけなく、時々担当者が特定の顧客に対してその顧客だけに対応したEメールや電話でのコミュニケーションを取ることも重要です。また、ケースによっては直に訪問するといった行動も必要であり、関係構築に大きな効果をもたらすでしょう。

3 会社設立時でのマーケティング手段の注意点

最後にまとめとして、会社設立時等で採用するマーケティング手段に関する注意点を説明しましょう。

 

3-1 マーケティング手段はマーケティング戦略に基づく

事業をスタートさせ迅速に軌道に乗せるには事業に適したマーケティング手段の構築が欠かせませんが、その構築はマーケティング戦略に従って行われるべきです。

ビジネス上の目標がありそれを実現させるための方針と一連の活動内容をまとめたものが経営戦略であり、マーケティング戦略は経営戦略の「売るための仕組み」を形成する部分です。

ビジネス目標の売上に関する部分の達成はターゲットの顧客(層)のニーズを自社の商品・サービス等で捉えることで可能となりますが、その内容を仕組みとして具体的に示すものがマーケティング戦略になります。

そして、マーケティング戦略では、目標に基づきターゲットとそのニーズが設定され、それらに従い商品・サービスの価格、プロモーション、チャネル(4P)などの内容が定められるのです。

今まで見てきたトレンドとなっている新たなマーケティング手段は4Pのどれかに属するものですが、何を採用するかはあくまで目標、ターゲットとそのニーズに加え自社の経営資源や競合状況などにより決定されます。

たとえば、インフルエンサーマーケティングが有望であっても自社のターゲット層がSNSをあまり利用しない高齢者層であれば大きな効果は期待できません。マーケティング手段はターゲットや自社の状況等にマッチしたもので採用しなければなりません。

 

3-2 トレンドの手段でも成功するとは限らない

今まで取り上げてきた新たなマーケティング手段は今後もビジネスにおいて重要な役割を果たすでしょうが、トレンドの手段でも成功しないこともあります。

多様性への対応やサスティナビリティ重視のビジネスは今後さらに注目されるでしょうが、需要が決して大きいとは限らないため業績への貢献度が低いかもしれません。

多様性に対応する事業は社会的に意義の大きいものですが、事業として成立し継続できる需要がなければ成長させることは難しいでしょう。そのためどのような分野の事業を進めるにしても需要予測を丁寧に行わないと失敗する可能性が高くなるため注意するべきです。

 

3-3 マーケティング手段は時代の流れの中で変化する

世の中の変化とともに顧客のニーズや価値観も変わり、それに対応する新たなマーケティング手段がどんどん登場してくるため、その時々で最適な手段を導入できるように努めなければなりません。

自社を取り巻く環境が変わり、顧客やそのニーズに変化が生じれば、自社も売り方を変える必要があります。そして、ITを含め科学技術が進化するにつれ新たなマーケティング手段も生まれてくるのです。

こうしたビジネス環境の変化は激しいため、注意して業界や顧客の動きを観察しておかないとその変化に気づけず、事業を衰退させかねません。トレンドの手段を導入しても状況が変われば効果が直ぐに低くなってしまうこともあるでしょう。

業界等の動向とともに自社の業績の細かな変化に注意を払いマーケティング手段の効果測定を行うように努めなくてはなりません。

取るべきマーケティング手段の内容によって事業の成否も分かれるため、上記の内容を参考に適切な「儲かる仕組み」を作ってください。

4 会社設立で利用できる助成金・補助金とは

会社設立した直後に課題となるのが、運転資金の不足です。起業した直後は十分な利益を得られない一方で、宣伝広告費や人件費などがかかります。銀行から融資を受けようとしても、会社設立当初は信用力がないため、中々満足いく条件で融資を受けるのは難しいのが現実です。融資を受けられたとしても、利益が十分でない状況で利息の支払いを行うのは大きな負担となり、資金繰りが悪化する恐れがあります。
そんな会社設立したばかりの企業に役立つのが、助成金や補助金です。返済不要の助成金は、十分な利益を得られない中小企業にとっては大きな助けとなります。

そもそも、助成金・補助金とはどのようなものでしょうか?この章では、助成金・補助金の意味をおさらいします。

 

4-1 助成金・補助金の概要

助成金・補助金とは、会社設立後の企業が資金調達として利用できる手段の一つです。融資や株式による資金調達とは違い、返済や見返りを渡す必要がありません。

 

4-2 助成金と補助金の違い

返済不要という点では助成金と補助金は似ていますが、厳密には支給目的や制度の内容面に違いがあります。

助成金とは、受け取り条件さえ満たせば原則必ず受給できるお金です。また長期的に資金を受けられるケースや複数の助成金を利用できるケースが多い点も特徴です。

一方で補助金とは、審査に通れば受給できる資金です。条件を満たしていればほぼ必ず受給できる助成金とは異なり、審査次第では受給できない場合もあります。審査こそ厳しいものの、助成金と比べて受給できる金額が多い傾向があります。そのため、ある程度大きな金額を調達したいのであれば、補助金の利用を検討した方が良いでしょう。

5 助成金・補助金を支給する団体の種類

助成金や補助金を支給する団体は、大きく下記4種類にわけられます。

 

5-1 経済産業省

会社設立後に利用する補助金の多くは、経済産業省が管轄のものが多いです。経済産業省では、地域経済の活性化や中小企業の発展を支援する目的で、補助金制度を運営しています。そのため、会社設立直後や事業を発展させたい企業に役立つ補助金が多いという特徴を持ちます。

 

5-2 厚生労働省

雇用や福祉などを担当する厚生労働省では、主に従業員の雇用や教育を支援する助成金を運営しています。たとえば障害者の雇用により、一定額を受給できる助成金などがあります。会社設立後に従業員を雇用する場合には、厚生労働省の助成金を利用するのがオススメです。

 

5-3 地方自治体

全国の市区町村では、地域活性化を目的とした補助金制度が運営されています。たとえばある自治体では、地域の活性化に資する事業を行うことを条件に、家賃補助や販路開拓の費用を受け取れます。地方で会社設立する際には、その自治体が行なっている補助金制度を確認してみましょう。

 

5-4 民間の団体

営利企業や交易団体などの民間団体も、助成金や補助金制度を行なっています。その多くは革新性や実現可能性などを厳しく審査されるため、受給する条件自体は厳しいです。ですがチャレンジする価値は十分あるものばかりです。

6 会社設立後に利用可能な助成金・補助金

会社設立後に利用できる助成金や補助金はさまざまあります、毎年行なっているものもあれば、ある年度限定で行われるものもあります。また、受給条件や利用目的、金額も多種多様です。今回はさまざまある補助金・助成金の中から、特に役立つものを厳選して4つご紹介します。

 

6-1 IT導入補助金

最初にご紹介するのは、IT導入補助金という制度です。この補助金制度は、中小企業や個人事業主がITツールを導入する際の費用の一部を補助する目的で行われている制度です。会社設立後に事業をスケールさせるには、業務の自動化ツールや顧客管理ツールの導入・活用が重要となります。IT導入補助金を利用することで、事業を拡大する際の負担軽減の効果を見込めます。

2019年度IT導入補助金では、ソフトウェアの導入や運用の費用を対象としています。補助金自体は、A類型とB類型の二種類があり、それぞれ補助金の額が異なります。A類型では40万円から150万円未満の間で資金を受け取れます。一方でB類型では、150万円から450万円までの間となります。なお補助率は類型に関係なく、2分の1以下となっています。

なおIT導入補助金の利用にあたっては、2点注意点があります。1点目は、導入するツールには制限がある点です。補助金を受け取るには、IT導入補助金のホームページ内で紹介されているITツールを導入する必要があります。2点目は、補助事業の開始時期です。補助金の交付が決定する前に導入したITツールは補助対象とならないので、必ず補助金の交付が決定してから、事業を始めなくてはいけません。

 

6-2 キャリアアップ助成金

次にご紹介するのは、厚生労働省が運営するキャリアアップ助成金です。こちらの制度は、有機契約労働者や派遣労働者といった非正規雇用の労働者のキャリアップを促進する目的で行われている制度です。こちらの制度を活用すれば、非正規雇用の労働者のキャリアアップに資する施策を行った際に、助成金を受け取ることができます。

取り組み内容によって助成金は、全部で7つのコースにわけられます。コースごとに、助成金を受け取る条件や助成金の額などが異なるため、あらかじめ入念に確認しておく必要があります。たとえば有期契約労働者を正規雇用労働者等に転換もしくは直接雇用した際に受け取れる「正社員化コース」の場合、中小企業は28万5,000円から72万円の助成金を受け取れます。

なおキャリアアップ助成金を受給するには、事前にキャリアアップ計画を作成し、それを労働局・ハローワークに提出する必要があります。また、キャリアアップ助成金の受給には、全コース共通で事業主が満たすべき条件があるので注意してください。具体的には、「雇用保険適用事業所の事業主であること」や「事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること」などが条件となります。詳しい条件は、厚生労働省のホームページ内で公表されているパンフレットをご参照ください。

 

6-3 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、経営計画に基づいて小規模事業者が販路開拓などに取り組むための費用を補助する制度です。なおこの制度は、日本商工会議所によって運営されます。この補助金を利用することで、会社設立後の販路開拓や業務効率化に必要な費用負担を軽減できます。また、商工会議所からの指導や助言も受けられるため、会社設立後の経営に自信がない方にはオススメの制度です。

小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の管轄地域内で会社設立している小規模事業者が対象となります。小規模事業者であるかどうかについては、小規模事業者支援法に基づいて判断されます。商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く)については常時雇用の従業員数が5人以下、宿泊・娯楽業や製造業その他については20人以下の会社は小規模事業者となります。なお補助金の金額は原則50万円が上限、補助率は3分の2以内となっています。

補助対象経費となるものは、次にあげる三つ全ての条件を満たす費用となります。「使用目的が事業遂行に必要なものと明確に特定できる」、「交付決定日以降に発生し対象期間中に支払いが完了している、「証拠資料などによって支払金額が確認できる」の三つです。会社設立後に小規模事業者持続化補助金を利用したい方は、補助金の使い方に注意しておきましょう。

また、他の補助金制度と重複する場合にはこの補助金を受けられない点や、補助金の支払いを受けた後でも一定の取得財産の目的外使用や廃棄に制限がある点などにも注意しなくてはいけません。

 

6-4 ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金

会社設立に役立つ4つ目の補助金は、中小企業庁が行う「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」です。この補助金は、複数の中小企業が取り組む生産性向上や地域経済への波及効果の拡大をもたらす革新的なサービス開発や生産プロセスの改善などを行うための設備投資を支援する制度です。会社設立後にこの制度を活用すれば、事業の拡大に必要な原材料費や機械設備費用などを補助金でまかなえます。

この補助金制度には、「企業間データ活用型」と「地域経済牽引型」の二種類があります。企業間データ活用型の場合は、補助上限額が2,000万円、補助率は2分の1または3分の2となっています。一方で地域経済牽引型の場合は、補助上限額が1,000万円、補助率は2分の1または3分の2です。

なお補助対象経費は、機械装置費や技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費などが該当します。ただし補助金を受給するには必ず50万円以上の設備投資が必要となります。また、家賃や仲介手数料などは対象とならない点にも注意が必要です。他の補助金と同様に、採択率は高くありません(この補助金は4割前後)。会社設立後にこの補助金を利用したい場合は、入念に準備して手続きを行いましょう。

7 助成金・補助金を受給する際の注意点

助成金や補助金を受給するに際しては、いくつかの注意点を踏まえる必要があります。この章では、助成金・補助金を受給する際の注意点を3つご紹介します。

 

7-1 必ずしも受給できるとは限らない

補助金や助成金を受給する上で最も注意すべき点は、必ずしも受給できるとは限らない点です。先ほどもお伝えした通り、補助金は申請しても必ず受給できるとは限りません。受給金額や条件が魅力的な補助金ほど応募数が多くなり、採択される可能性が下がります。また助成金にしても、そもそも受給条件を満たさなければお金を受け取ることはできません。補助金や助成金を利用する際は、なるべく受け取れる可能性をあげるように、入念な計画や準備が必要です。

 

7-2 ある程度の自己資金は必須

補助金や助成金は、返済不要がない上に株式による出資のようなデメリットもありません。つまりノーリスクで利用できるため、会社設立したばかりの経営者にとっては、とても魅力的な資金調達手段です。しかしながら、補助金や助成金に頼り切って自己資金が0円なのは良くありません。そもそも助成金や補助金は、一時的な資金繰りの手段であり、その資金だけで永続的に経営を行える訳ではありません。会社設立後に事業をスケールさせたいのであれば、ある程度の自己資金は確保しておき、補助金や助成金は不足金額を補填する目的で利用するのが望ましいです。

 

7-3 申請手続きに手間と時間を要する

ノーリスクで資金を得られる反面、補助金や助成金の受給手続きには時間と手間を要します。多大な書類を揃えるのはもちろん、受給できるようなアピールを考えた上で書類を書く必要があります。書類作成や準備に多大な労力や時間を要するため、思い立ってすぐに資金を調達できるほど甘くはありません。会社設立した直後は、本業の活動が忙しく、どうしても申請手続きに時間を割けない場合が多いです。時間に余裕がない際は、司法書士などの専門家に相談したり、書類作成を手伝ってもらうことがおすすめです。

返済する必要がない資金調達手段であるため、会社設立後の経営者にとって補助金や助成金はとても重宝します。しかし補助金や助成金は、必ず受給できるとは限らない点など、注意すべき点も沢山あります。助成金・補助金を利用する際は、注意すべき点をおろそかにしないようにしましょう。なお今回ご紹介した補助金や助成金はほんの一部です。これ以外にも、会社設立の後に役立つ助成金や補助金は多くあるので、ぜひご自身でも調べてみるのをオススメします。