消費税は事業を営む全てのものが税務署へ納付をしなければいけない税金であり、インボイス制度は事業を営む者全てに関わりのある制度です。今回の記事では、インボイス制度について、そして会社設立前に知っておきたいインボイス制度や消費税について詳しく解説するので、これからの会社設立の参考にしてみてください。

1 そもそも消費税とは

消費税とは

消費税は最も身近な税金であり、また度重なる法改正によって複雑さを増している税金でもあります。そこでまずは消費税の概要を見ていきましょう。消費税は、法人や個人事業主といった事業を営むものだけにではなく、個人も対象とした税金です。それは、消費税が「消費をする」ことにかかる税金であるためです。

このときの消費をするものとは、形のあるもの(製品等)に限らず、形のないもの(サービス等)も対象となります。すなわち、消費税はお金のやり取りが発生する際に生じる税金といえるでしょう。ただし、全てのお金のやり取りが消費税の対象となる訳ではありません。

原則として消費税は、国内における取引を対象としています。そのため、国外から国内に入ってくる輸入品に対しては消費税が課されますが、輸出品や国外の業者への支払いには消費税は課されません。

また、日本国籍を有するものであっても、そのものが国外において行った取引には消費税は課されません。そして国内においても、課税の対象としてなじまないものや社会的配慮の必要なものは非課税となる、という取り決めがなされています。

非課税となる取引には例えば、土地は消費対象ではない(消費されない)ものであるという観点から、土地の譲渡や貸付けがあります。

非課税取引には他にも、有価証券等の譲渡、預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供、国や自治体等が行う一定の事務に係る役務の提供、社会保険医療の給付等、介護保険や社会福祉事業等のサービスの提供、学校教育、住宅の貸付け等があります。

また消費税は消費に対してかかるものですので、事業者にとっては、消費をする(仕入れ等を行う)際に発生するものであり、かつ自分(自社)の商品を消費される(売上が立つ)際に発生するものとなります。

すなわち消費税は、事業を営んでいない(個人事業主ではない)個人にとっては支払う際にのみ発生する一方通行の税金ですが、事業を営んでいる者(法人や個人事業主)にとっては入金(売上計上)時にも発生する、双方向の税金ということになります。

さて消費税では、その商品やサービスの行き着く先、すなわち最終的に消費をするもののことを「消費者」と呼んでいます。

ある商品が消費者の元に行き着くまでには、その商品を商品化するための仕入れや、販売する際の卸売り、小売りといった局面ごとに、それぞれ消費税が発生します。

そのため、ある商品には幾重にも消費税がかかっているように見えますが、実際には消費税は多重課税とならないような仕組みとなっています。

例えば、商品販売元の会社が小売業者に商品1個あたり1000円で卸したとします。このときの消費税は100円です。そして小売業者は消費者にその商品を1個あたり1400円で販売したとします。このときの消費税は140円です。

小売業者としては仕入れの際に100円を消費税として支払うことになりますが、その商品を売ることによって今度は消費者から消費税140円が手元に入ってくることになります。

このとき小売業者が税務署に納付することになる消費税額は、入ってきた140円から自分の払った100円を差し引いた40円となります。

このように、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引くことで自分の納める消費税額を算出することを、そしてその商品の最終的な消費税の支払者が消費者となる仕組みのことを「原則課税」と呼びます。原則課税についてはこの後にも出てきますので覚えておいてください。

さて、消費者に対応する言葉(商品を販売するもの)のことを「事業者」と呼びます。そして、消費税を認識して会計処理を行う事業者のことを「課税事業者」と呼び、消費税を認識しないで会計処理を行う事業者のことを「免税事業者」と呼びます。

1-1 消費税の会計処理の概要

商品やサービスを売り上げたときに入金されるお金の中には、売上にかかる消費税が含まれています。この消費税のことを会計処理では「仮受消費税」と呼んでいます。そして、仕入れや費用にかかるお金のうちに含まれる消費税のことは「仮払消費税」と呼んでいます。

仮受と仮払、どちらも「仮」がついていることが象徴するように、お金の入出金があった直後の消費税は、仮に(一時的に)預かっているか、または支払った先に預けているという状態です。

そして、預かった消費税(仮受消費税)から預けた消費税(仮払消費税)を差し引くことで、納付する消費税額を算出することになります。

なお、消費税はお金のやり取りの発生した際に生じる税金であるといいましたが、法人の場合は基本的に取引のあった際に消費税を認識(会計処理)することになります。

どういうことか順に見ていきましょう。まず法人間における取引の多くは、商品やサービスの取引の事実(契約)が生じたタイミングより、お金の入出金は後になるものです。

取引の事実が発生したタイミングで、すなわちお金の支払いに先んじて掛けで売上(または仕入れや経費)と消費税の計上を行うことを、会計処理においては「発生主義」と呼んでいます。

一方、お金の入出金があった際に消費税を計上することを「現金主義」と呼びます。法人は現金主義ではなく発生主義によって会計処理を行うということです。

さて、消費税の税率は、導入当初の3%から何度かの改定を経た後に、令和5年2月現在では標準税率10%となっています。そして、標準税率が10%へと変更する際には「軽減税率」という考え方が採り入れられました。

軽減税率とは一部の商品では税率8%となるというもので、その商品にはイートインではないテイクアウト用の飲食物や新聞等があります。

なお、消費税は国税に相当する分と地方税に相当する分(地方消費税)とに分かれます。ですが、地方消費税は消費税の中に含まれるものですので通常意識する必要はありません。納付すべき消費税額を算出する際に、消費税(国税)と地方消費税とに分ける処理を行うということです。

それでは次に消費税の算出方法を見ていきます。消費税の納付額を求める基本的な考え方は、先に見た原則課税のように、売上にかかる消費税(仮受消費税)から仕入れや経費にかかる消費税(仮払消費税)を差し引く「原則課税方式」と呼ばれるものです。

もう少し細かく見ると、取引の中には先に見たように非課税となる取引がありますので、非課税分と課税分とを分けた上で、原則課税方式により消費税額を求めていくことになります。

そして、消費税額の算出方式にはこの原則課税方式以外にも、「簡易課税方式」というものがあります。簡易課税方式とは、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した上で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者が適用できるものです。

簡易課税方式の特徴は、消費税額の算出基準を課税売上高に求めるというところにあります。すなわち、簡易課税方式では仕入れにかかる消費税(仮払消費税)のことは勘案しません。簡易課税方式による消費税額の算出数式は次のようになります。

消費税納税額 = (課税売上高 * 消費税率) – (課税売上高 * 消費税率 * みなし仕入率)

数式中の「みなし仕入率」とは、簡易課税制度で消費税額を求める際の割合のことで、業種ごとに定められています。

第1種事業と呼ばれる卸売業では90%、第2種事業である小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)は80%となり、第6種事業となる不動産業では40%になるなど、業種によってみなし仕入率には大きな差があります。

簡易課税方式は入金(課税売上高)のみを計算対象とするため、原則課税方式よりも簡便な方法といえます。しかし、消費税額としては一概にどちらの方式が多い少ないとはいえません。

事務処理面だけを考えて簡易課税方式を選択したところ、結果としてより多くの消費税を納めることになってしまったとなる可能性もあります。

また簡易課税方式では、複数の業種を営んでいる場合にはそれぞれの業種ごとの売上高をしっかりと集計をしておくことが重要なポイントとなります。もし全ての業種の売上高を一緒くたにしていたとすると、最も低い割合のみなし税率をもって全ての業種の消費税額を算出することになります。

2 新設法人の消費税について

新設法人の消費税について

前前項の最後に、事業者は課税事業者と免税事業者の2つに分かれるということに触れました。これは、法人の方が課税事業者であり、個人事業主の方が免税事業者となるわけではありません。

法人で免税事業者の場合もあれば、個人事業主で課税事業者の場合もあります。一方、多くの新設法人は免税事業者となります。2つの区分の事業者がどのように分けられるのか見ていきましょう。

課税事業者と免税事業者を切り分ける基準は、課税期間(ある事業年度)の基準期間(課税期間の前前事業年度)における課税売上高が1,000万円を超えるか否か、というものです。

このとき、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者が課税事業者となります。また、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(前事業年度の開始日から6ヶ月間)における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その課税期間から課税事業者となります。

以上の基準を満たさない事業者が免税事業者ということになります。ただし、免税事業者となる事業者があえて課税事業者となることは可能です。

そして、基準期間が前前事業年度を指すということは、新設法人には基準期間に当たる前前事業年度というものが存在しないため、新設法人は基本的に免税事業者になるということになります。

ただし、基準期間が前前事業年度ということで新設法人は設立後の2年間が免税業者になるように思えますが、実際にかつてはそうでしたが、現在(令和5年2月現在)はそうではありません。

平成25年に施行された消費税法において、資本金1,000万円未満の場合に消費税が免除となるのは原則として2年間ではなく1期目のみとする、という条項が加わったため、新設法人が免税事業者となるのは原則として初年度のみとなっています。

また、新設法人であるにも関わらず初年度から免税事業者とならない法人もあります。次の項では新設法人でも課税事業者になるケースを見ていきます。

2-1 新設法人の消費税免除の注意点

新設法人でも、また個人事業主の場合でも、前項の基準期間のルールの例外となり課税事業者となるケースがあります。そうなる5つのケースを見ていきましょう。

1つ目は、法人を新設した時点で資本金が1,000万円を超えるケースです。この場合は法人新設後の初年度から課税事業者扱いとなります。

2つ目は、相続により事業を継承した年の基準期間が1,000万円を超える課税売上高となるケースです。このときも事業継続後の初年度から課税事業者となります。

3つ目は、1つ目の翌年及び翌々年に、相続人と被相続人の基準期間における課税売上高の合計額が1,000万円を超えるケースです。

4つ目は、設立した法人が「特定新規設立法人」に該当するときです。特定新規設立法人とは、設立時の資本金が1,000万円未満であるものの、他の者が発行済株式等を50%超保有し、他の者及び他の者が完全支配している他の法人のどちらかの基準期間の課税売上高が5億円を超えるような法人を指します。

上記中の「他の者」とは、新規設立法人の株主のことです。このときの株主が個人である場合は、その個人の親族の保有している株の割合も含めて50%超を判定することになります。

5つ目は、新設法人が「新設合併」「吸収合併」「新設分割」「吸収分割」の4つのいずれかにより設立される際に適用される可能性のある判定基準です。

このとき課税事業者と判定されるのは、上記4つのいずれかが生じた日の属する事業年度の基準期間に、すなわち上記4つのいずれかのケースにより設立された法人の元の形態となる法人の最終年度における基準期間に、課税売上高が1,000万円を超える場合です。

以上の5つのケースでは新設法人であっても課税事業者となります。資本金1,000万円を超えるケースを除き、いずれのケースも法人成りにより法人を設立する場合は基本的に無縁の話しといえますが、法人を設立するからには早くから消費税を納めることを考えて資金繰りをするのが良いでしょう。

3 インボイス制度の概要

インボイス制度の概要

インボイス制度のインボイス(invoice)とは、直訳すれば「請求書」を意味します。そのため、インボイス制度は請求書に関する制度で「適格請求書等保存方式」のことを指します。適格請求書を発行できる事業者は「適格請求書発行事業者」と呼ばれることになり、例えば適格請求書を発行したあと、取引先から適格請求書を貰ってきちんと保管していないと、消費税の仕入額控除を受けることができません。

「消費税の仕入額控除を受ける」とは、消費税を消費税と認識して会計処理を行うという意味です。例えば、売り手側(請求書を発行する側)の請求書の中には、買い手側の消費税が含まれていることになります。請求書の金額が入金された時には、売り手側は買い手側の消費税を預かったということになります。消費税は税金ですので、預かった消費税は、買い手側に代わって売り手側が後に税務署に納める形です。

事業を行っている以上、自分(自社)は売り手になることもあれば買い手に回ることもあります。納めるべき消費税を算出する基本的な考え方は、預かった消費税と預けた消費税の差額を計算するというものです。このとき預かった消費税の方が多いということになれば、その分を税務署に納めることになります。

このように、預かった消費税(売上中の消費税)から預けた消費税(支払った、すなわち仕入額の中の消費税)を差し引いて消費税の納付額を求める算出する方法のことを「消費税の仕入額控除」と呼びます。

消費税を消費税として会計処理を行い、消費税の納付を行う事業者のことを「課税事業者」と呼びます。インボイス制度開始後は、消費税の仕入額控除を受けるためには、課税事業者となり、かつ適格請求書発行事業者となる必要があります。

請求書発行事業者となるためには税務署に登録申請を行う必要があります。登録申請は2021年10月1日より受付が始まっており、インボイス制度の開始予定日は2023年10月1日です。

開始日以降は適格請求書を発行するようにして、そして買い手側に回った際に貰う請求書も適格請求書とすることで、仕入額控除を受けることができます。

逆にいえば、取引先から適格請求書を貰わないと仕入額控除を受けられず、また自分(自社)が適格請求書を発行しないと取引先は仕入額控除を受けられません。

さて、課税事業者の対義語は「免税事業者」となります。免税事業者とは消費税を会計処理しなくても良い事業者のことです。

免税事業者は売り手側、買い手側に関わらず、また請求書の消費税の記載の有無に関わらず、消費税を消費税として会計処理をしなくても良い事業者です。そのため、消費税を納める必要はなく、売上にかかる入金額は全額自分のお金ということになります。

それでは免税事業者である方が良いということになりますが、免税事業者になるか課税事業者になるかは恣意的に選択できません。詳細は以下の通りですが、次は適格請求書とインボイス制度開始前の請求書との違いを見ていきましょう。

3-1 適格請求書と既存の請求書(区分記載請求書)との違いとは

インボイス制度開始前の請求書、そして制度開始後の免税事業所が発行する請求書には「区分記載請求書」という呼び方があります。区分記載請求書と適格請求書は呼び方が異なるだけではなく、記載する項目も異なります。

まず、区分記載請求書に記載される項目は次の通りです。

  1. 請求書発行事業者の氏名又は名称
  2. 取引年月日
  3. 取引の内容(軽減対象税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額
  5. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
  6. そして、適格請求書には上記の区分記載請求書の項目に加えて、次の項目を記載します。

  7. 登録番号(課税事業者のみ登録可)
  8. 適用税率
  9. 税率ごとに区分した消費税額等

インボイスと区分記載請求書には記載項目の違い以外にも、消費税の申告を行う際の消費税額を求める方法の違いもあります。

消費税には売り手側(売上税額)と買い手側(仕入税額)の2つの側面があるということでした。インボイス制度開始前の、消費税申告における売上税額の計算方法は、年間の税込総額から税抜金額を割り出して申告税額を算出する「割戻し計算」というものです。

そしてインボイス制度開始前の仕入税額の算出方法は、売上税額と同様に割戻し計算方式となりますが、それとは別に「積上げ計算」というものもあります。積上げ方法とは、一つ一つの取引(仕訳)ごとに計上した消費税を積み上げて年間の合計額を算出する方式です。

この積上げ計算は、インボイス制度開始前には売上税額への適用は認められていませんでしたが、インボイス制度では、適格請求書発行事業者に限り売上税額にも認められることになりました。

ただし、売上税額を積上げ計算とした場合には仕入税額も積上げ計算としなければいけません。売上税額を積上げ計算として、仕入税額を割戻し計算とすることは認められない、ということです。

なお、区分記載請求書とは、消費税の標準税率が10%となり軽減税率制度が導入された際(2019年10月1日)に設けられた請求書の呼び方です。区分記載請求書では、請求書中の標準税率(10%)における税込金額と、軽減税率(8%)における税込金額が記載されます。

一方、インボイス制度における適格請求書では、請求書だけではなく領収書や納品書等にも適正税率(標準税率か軽減税率か)と税率ごとの合計額、税率ごとの消費税額、そして適格請求書発行事業者の登録番号が記載されるようになります。

この記載項目の増加により、税務署は事業者のより正確な消費税の情報を把握することができるようになります。インボイス制度が導入される理由の1つには、軽減税率と標準税率を明確に区分して、正しい消費税額の納付に繋げることがあります。

インボイス制度は、税務署にとってはより適正で公平な消費税納税へと繋がるものですが、事業者側にとっては事務作業が増えて現場の改修が必要になるという負の側面を持つ制度ということになります。

4 インボイス制度と免税事業者

インボイス制度と免税事業者

先に事業者には、消費税を納める必要のある課税事業者と納める必要のない免税事業者があることに触れましたが、自分はこの二者のうちどちらとされるのかの流れを見ていきましょう。

免税事業者は、「基準期間」における課税売上高が1,000万円以下の事業者が該当します。基準期間とは、会社の場合は前々事業年度を、会社設立前の個人事業主の場合は前々年を指します。すなわち、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えることで課税事業者となる、ということです。

なお、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者も、消費税課税事業者選択届出書を出すことで課税事業者になることができます。

また、インボイス制度開始後も、基準期間の課税売上高が1,000万円以下かつ適格請求書発行事業者とならないことを選択した場合には免税事業者となることができます。

それではここで、インボイス制度開始後に自分は免税事業者で、取引先は課税事業者であるという状況を考えてみましょう。取引先が自分に支払った消費税は、自分(免税事業者)にとっては全額自分のお金ということになります。これは自分にとってはメリットといえます。

一方取引先は、自分(免税事業者)から適格請求書を貰えないので、仕入額控除を行うことができません。すなわち、取引先にとっては納める消費税が多くなるということです。

取引先がそれで構わないのなら問題はありませんが、もし取引先が今後の取引の条件を適格請求書を発行することを条件とした場合は、取引を失うか自分が適格請求書発行事業者となるかの二択を迫られることになります。

5 会社設立時に知っておきたいインボイス制度のこと

会社設立時に知っておきたいインボイス制度のこと

最後にインボイス制度のまとめと、本記事のテーマである会社設立前に知っておきたいインボイス制度のポイントを見ていきましょう。

インボイス制度の開始にあたっては、会社設立前(個人事業主)か会社設立後かに関わらず、適格請求書発行事業者となるかならないかを検討する必要があります。検討材料の一つは、取引先の適格請求書発行事業者の登録状況です。

自分は適格請求書発行事業者となることを選択した場合、もし取引先が免税事業者であるとすると、自分は取引先の消費税で差し引きできない分消費税の納付額が多くなります。また、取引先が適格請求書発行事業者である場合には、忘れずに適格請求書を発行して貰う必要があります。

逆に自分が適格請求書発行事業者とならないことを選択する場合には、免税事業者であり続けることがその後の取引に問題が生じないか、すなわち取引継続に悪影響が出ないか調べておく必要があります。

免税事業者を続けることで売上金中の消費税分を自分のお金とすることができますが、取引そのものが停止されたのでは失うもののほうが大きいからです。

そのため、適格請求書発行事業者であることが取引継続の条件となるのであれば、会社設立前の個人事業主時代に、またはインボイス制度開始前の早い時期に適格請求書発行事業者となる手続きを進めるのが良いでしょう。

もし会社設立を予定しており、免税事業所となることが(当面は)問題ない場合には、インボイス制度の開始前に会社を設立するのが良いといえます。その理由は、会社設立後の原則として基準期間にあたる2事業年度間は免税事業者でいられることができ、消費税を納めずに済むためです。

また、インボイス制度と会社設立のタイミングは、別の視点からの判断基準があります。その判断基準とは、会社設立の時点で資本金が1,000万円以上となる場合は、基準期間は関係なく設立後の初年度から課税事業者となるというものです。

もし、会社設立時点で資本金1,000万円以上となる予定の場合は当初から課税事業者となりますので、インボイス制度の開始前後に関わらず、すなわちインボイス制度を念頭におかず自分にとってのベストタイミングで会社を設立するのが良いでしょう。

会社設立日から適格請求書発行事業者となるには、会社設立後の初年度の決算日までに「消費税課税事業者選択届出書」と「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出する必要があります。そうすることで、社設立日から適格請求書発行事業者かつ課税事業者であることになります。

また、インボイス制度の開始予定日は2023年10月1日ですが、この開始予定日から適格請求書発行事業者となるためには、適格請求書発行事業者の登録申請を2023年3月31日までに済ませておく必要があります。

インボイス制度で注意するべきことは、インボイス制度の理解だけではありません。スーパー等の店舗型事業である場合は、適格請求書発行事業者となる際にはインボイス制度に対応したレジの導入や既存のレジの改修等を行う必要があります。

その他の事業の場合でも、適格請求書の発行に備えたシステムの用意や会計処理を行える人員教育をする必要があります。いずれもお金や工数のかかることなので、その時になって慌てないように計画を立てて進めることが重要です。

インボイス制度に対しては、取引先から適格請求書発行事業者となることを事実上強いられた実入りのお金の減る個人事業主を中心に延期や改正を求める動きがありますが、いずれにしても導入は避けられない状況です。そのためにも損をしないように、あるいは最小限の損失で済むように、どのように対応するのが自分にとってベストかを検討しましょう。