会社設立後には社会保険に加入することになりますが、社会保険の1つである健康保険には、協会けんぽと健康保険組合の2種類があることをご存じでしょうか。社会保険は保険料の納付や事務手続き等により会社の運営面に直結するため、種類や内容をしっかりと確認しておくことが大切です。今回の記事では、協会けんぽと健康保険組合の特徴や違いについて詳しく解説するので、最後まで読んで会社設立後の運営に役立ててください。

1 社会保険の種類

社会保険の種類

「協会けんぽ」と「健康保険組合」は、どちらも社会保険の中の1つである「健康保険」のことです。まずは健康保険を初めとする社会保険の概要を見ていきましょう。

1-1 社会保険とは

日本では原則として、全国民が公的保険に加入する国民皆保険制度となっています。公的保険の中には医療に関する保険がありますが、医療保険を大きく分けると、会社勤めをする人のための健康保険と、会社勤めをしていない人(個人事業主等)のための「国民健康保険」の2種類となります。

前者の健康保険は、会社勤めをする人が加入する「社会保険」の中の1つです。すなわち社会保険とは、会社勤めをする人が加入をする(しなければいけない)公的保険の呼称となります。

この「会社勤めをする人」とは、いわゆるフルタイムで働く従業員と、社長などの役員、そして特定の条件に該当する事業所のパートやアルバイトが該当します。

特定の条件には「事業規模が常時500人超」でかつ「週の所定労働時間が20時間以上」等があります。なお、この特定の条件は年々改正が進んでおり、令和4年10月からは前述の「事業所の規模が常時500人超」から「事業所の規模が常時100人超」に変わります。

次に、健康保険そのものを見ていきましょう。社会保険には健康保険の他にも、老後の保険である「介護保険」「厚生年金保険」、失業時や業務中の怪我の保険である「労働保険」があります。

1-2 健康保険、介護保険とは

健康保険とは、会社勤めをする人が加入する社会保険の中の医療保険、ということでした。健康保険はここから「協会けんぽ」と「健康保険組合」の2種類に分かれます。この2種類の違いについて、そして会社設立時に加入するのがどちらということは次の章で取り上げるとして、ここでは健康保険の概要を説明します。

健康保険では、医者にかかったとき等の医療費の一部を支給します。その一部とは医療費の7割であり、自己負担割合は3割です。

なお、健康保険の対象となる人、すなわち「被保険者」には、会社勤めをする本人以外にも、一定の収入までの配偶者や子ども等の家族、すなわち被保険者の「被扶養者」も含みます。70歳以上及び小学校入学前の児童の場合には、医療費の8割が健康保険にて支給され、自己負担の割合は2割となります。

また社会保険には、自身が高齢者となり介護サービスを受ける際の費用の負担を受けられる保険である「介護保険」があります。介護保険の負担割合は保険が9割、自己負担は1割です。介護保険は、健康保険に加入していると、40歳に到達することで自動的に加入することになります。

健康保険と介護保険、またこの後に説明する厚生年金保険を加えた3つは、会社が毎月の給与から保険料を天引きして徴収を行います。そして、会社が会社負担分も合わせて保険料の支払いを行います。これら3つの社会保険は、会社設立時に会社勤めをする人が1人でもいると加入をすることになります。

1-3 厚生年金保険とは

厚生年金保険とは、日本年金機構が管轄をする、老後の生活を保障する年金のための保険です。厚生年金保険における年金の受給開始年齢は、令和4年現在では原則として65歳となっています。

厚生年金保険も、前項の健康保険と同様に、会社設立後にその会社勤めをする人が1人でもいる場合は加入をしなければいけません。その1人が社長である場合(従業員ではない場合)も例外ではなく、加入しない場合には「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」の罰則が用意されています。

厚生年金保険とは、会社勤めをしている人のための年金保険で、個人事業主等のような会社勤めをしていない人には「国民年金」という制度が用意されています。国民年金の管轄は厚生年金保険と同じく日本年金機構です。

これは厚生年金保険と国民年金が異なる年金制度ではなく、同じ年金制度であることを意味しています。国民年金は、個人事業主等のための保険であり、保険料はその個人事業主等が支払います。これは保険料としては1人分ということになります。かたや厚生年金保険の保険料は、被保険者の1人分と、会社も同額を支払いますので、いうなれば2人分を支払う形となります。

つまり、厚生年金保険の方が納める保険料が大きく、その分支給される年金も手厚いものになる、ということです。

厚生年金保険の保険料は給料の総額が基準となり、これは健康保険も同様です。厚生年金保険の被保険者の家族が(条件に該当することで)被扶養者となることも、健康保険と同様の扱いとなります。なお、厚生年金保険における被扶養者が配偶者の場合は「第3号被保険者」という呼び名となります。

1-4 労働保険とは

労働保険は社会保険の中で、失業時や業務中の怪我に対する保険です。また労働保険は従業員のための保険ですので、従業員が1人でもいる場合は加入必須となります。もし会社勤めをしている人の中に従業員がいなければ(社長等の役員だけの場合は)、原則として労働保険に加入する必要はありません。

また労働保険は、保険対象によってさらに「労災保険」と「雇用保険」の2種類に分かれます。まず労災保険とは、就業中や通勤時の怪我が対象となる保険です。

労災保険適用の手続きや条件は、その怪我が就業中あるいは通勤時のどちらであるかによって異なります。就業中の怪我は「業務災害」となり、通勤中の怪我は「通勤災害」となります。

業務災害の場合、事業主の管理下における業務であることと、勤務時間中の怪我であることを明らかにするという条件があります。この労災保険の保険料は従業員の負担はなく、会社が全額負担をします。

労働保険のもう1つの保険である雇用保険は、失業時や休業時に対する保険です。労災保険と同じ労働保険の括りの中にある保険ですが、労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークが管轄となるので、役所ごとにそれぞれ加入手続きを行うことになります。

雇用保険も従業員のための保険ですが、厚生年金保険や健康保険と同様に、加入するのは従業員だけではなく、特定の条件(例えば、週の労働時間が20時間以上であること)を満たすパートやアルバイトも加入をすることになります。

失業時に雇用保険によって支給される手当のことを「失業給付」と呼びますが、雇用保険は失業や休業だけが対象となるのではありません。雇用保険は他にも、教育訓練や技能習得、また技能習得のための一時寄宿に対して等の給付制度を設けています。

なお、雇用保険の保険料は会社と従業員の双方負担となります。雇用保険の保険料は、厚生年金保険や健康保険と同様に毎月の給料から天引きするものですが、会社が従業員分と会社負担分をまとめて支払うのは、年1回の「労働保険概算・確定保険料申告書」を通してとなります。

2 会社設立後に加入するのは協会けんぽか健康保険組合か

会社設立後に加入するのは協会けんぽか健康保険組合か

さて、それでは健康保険に属する「協会けんぽ」と「健康保険組合」のそれぞれの違いについて、そして会社設立後に加入するのはどちらになるのかについて見ていきましょう。

2-1 協会けんぽと健康保険組合 会社設立後に加入するのは

協会けんぽとは「全国健康保険協会」が運営をする健康保険のことを指します。もう1つの健康保険組合とは、運営団体名のことであり、健康保険組合が運営している健康保険のことを「組合健保」と呼びます。

まずこの2つの概要を説明すると、健康保険組合とは、大会社等が独自に設立をする健康保険を取り扱う組合のことです。協会けんぽは、そのような会社独自に設立した健康保険組合がない会社が加入をするための健康保険です。

健康保険組合を単独で設立する場合、常時700人以上の社員がいることが条件です。そのため、大会社のような規模の会社でないと作る条件を満たせません。この条件を満たして国の認可を得て設立する公的な健康保険組合のことを「単一型健康保険組合」と呼びます。

単独で700人に満たない場合も、複数の会社が共同して健康保険組合を設立することができます。これを「総合型健康保険組合」と呼びます。ただし、この総合型健康保険組合は、共同体となる複数の会社の合計従業員数が常時3,000人以上となることが条件となります。

もう1つの協会けんぽについてですが、協会けんぽとは健康保険組合に加入していない会社が加入するための健康保険です。健康保険組合を設立するための従業員の人数の条件を考えると、多くの中小企業が加入するのは協会けんぽになります。

そして、会社設立後の会社が、直ちに健康保険組合を設立する程の従業員数を擁することはまずないことから、会社設立後に加入する健康保険は(殆どが)協会けんぽです。

2-2 協会けんぽと健康保険組合の違いとは

この2つの健康保険の特徴と違いについて、より掘り下げて見ていきましょう。この2つの健康保険の最大の違いは「保険料率」、すなわち保険料の金額です。健康保険組合の保険料率は独自に設定することができ、その料率は3%から13%の間です。

健康保険組合の保険料率は、その母体となる会社の業種や組合の加入者数(被保険者数)、年齢構成、給与額などの様々な面を考慮して、組合が設定します。

なお健康保険組合連合会では、全国の健康保険組合の2022年度予算推計は前年度から0.03ポイント増の平均保険料率9・26%となり、過去最高となることを2022年4月28日のまとめにおいて発表しています。

協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとに医療費の実態に合わせて決定されます。2022年の40歳未満の(介護保険第2号被保険者に該当しない場合の)協会けんぽの保険料率は、全国最低が新潟県の9.51%、全国最高が佐賀県の11.00%です。

医療費の支払い時に、保険が7割負担で個人が3割負担となるのは協会けんぽと健康保険組合の両方とも同じです。医療費が高額となった際には、支払った医療費の一部が高額医療費制度によって戻ってくることも両者同じ扱いです。

その上で健康保険組合には、「付加給付」という、1ヶ月の医療費の支払いが高額療養費の自己負担限度額を上回った場合、その上回った分の医療費の払い戻しが行われるという制度があります。

このときの自己負担限度額は健康保険組合によって定めるものとされていますが、完全に自由に定められるという訳ではなく、厚生労働省の指導により25,000円までと通達されています。

さらに健康保険組合には、保険料の負担割合を変更できる裁量が認められています。協会けんぽでは保険料を会社と社員で折半とすることになっていますが、健康保険組合では規約に定めることにより、会社の負担割合を増大させることができます。

また健康保険組合では、独自の福利厚生活動を行うことも可能です。独自の福利厚生活動とは例えば、健康診断や保健指導、スポーツ大会の実施等であり、これらにより社員の健康増進を図ることができます。

3 社労士に依頼できることとは?

社労士に依頼できることとは

会社設立後に社労士に依頼をすることで、事務負担を軽減できる場合があります。初めに、社会保険労務士(以下、社労士)とはどのような専門職で、どのような業務内容を取り扱うのかを見ていきましょう。

社労士とは「社会保険労務士法」に基づいた国家試験に合格をし、社会保険労務士として登録をした人のことです。世の中には弁護士や税理士等の「士業」と呼ばれる国家試験による専門資格が8つあります。それらを合わせて「8士業」と呼んでいますが、社労士はその8つの中の1つとなります。

8士業はそれぞれ専門分野があります。社労士はその名に冠するように、社会保険労務士法に規定された社会保険や労務関係の業務のスペシャリストです。

社会保険労務士法第1条には「この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もって労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする」とあります。

そして、社会保険労務士法第2条の1項1号から3号には、社労士の業務を次のように規定しています。

  • 1号 労働・社会保険法令に基づく書類作成や手続代行、個別労働紛争のあっせんや調停の手続き代理
  • 2号 労働・社会保険法令に基づく帳簿の作成
  • 3号 労働・社会保険に関する相談や指導

社労士の業務は、上記を指して1号業務、2号業務、3号業務と呼びます。すなわち1号業務とは、労働保険を含む社会保険の加入・脱退手続きのための書類作成や、書類提出代行業務のことです。

ただし、1号業務の「個別労働紛争のあっせんや調停の手続き代理」については、社労士の中でも「紛争解決手続代理業務試験」に合格した特定社会保険労務士の資格が必要です。

次の2号業務は、労働者名簿や賃金台帳、また就業規則の作成を行う業務を指します。3号業務は、人事制度や労務関係のコンサルティング業務のことです。

これら3つの業務の中でも、1号業務と2号業務は社労士の(有償)独占業務です。なお、3号業務については社労士の独占業務ではなく、社労士以外でも行えます。

社労士は労働・社会保険に関する法律全般を扱うことから、試験科目の対象となる法律も、次に上げる労務・社会保険に関するものとなります。

  • ・労働基準法及び労働安全衛生法
  • ・労働者災害補償保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
  • ・雇用保険法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
  • ・労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識
  • ・社会保険に関する一般常識
  • ・健康保険法
  • ・厚生年金保険法
  • ・国民年金法

(上記の一般常識の中には、育児介護休業法や男女雇用機会均等法なども含まれます。)

社労士試験は難易度の高い、合格倍率の高い狭き門ですが、社労士試験に合格したとしても直ぐ社労士を名乗れる訳ではありません。

社労士試験に合格することは社労士になるための第一歩であり、合格した上で2年以上の実務経験、またはそれと同等以上の経験が必要となります。その後、社労士名簿への登録申請を行うことで、晴れて社労士を名乗れるようになります。

3-1 経営者が経営に専念するべき理由

会社設立後には仕入れや交渉等の営業活動が待ち構えていますが、同時に多くの事務作業も発生します。これらを会社設立者(社長)である自分一人で対応するのは非効率的で、また不備や抜け、間違いのもとになります。

会社設立後の事務作業には、日用品の調達・管理から電話番、日々の入出金や預金口座の帳簿付けといった会計業務、営業事務、そして給与計算等の労務や社会保険業務等があります。

健康保険や厚生年金保険といった社会保険は、従業員を雇わないとしても、会社設立者である自分に給料が発生している場合は、会社設立者も加入をしなければいけません。事務の中でも決算申告作業に関しては税理士に委託をする会社は多いですが、社会保険は良く分からないという理由で敬遠されがちです。

そのため、会社設立後しばらくしても社会保険に加入していない(法律違反をしている)会社が実は少なくありません。もし社会保険に加入しなければいけないのに未加入となっている場合のために「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」という罰則が設けられています。

なお、中には決算業務を請け負った税理士が、税務に関係するという理由で決算申告を済ませるために社労士業務を行うケースがありますが、これは前章で見たように社労士の独占業務に抵触するため法律違反です。

仮に事務担当の従業員を雇ったとしても、雇うことによって就業規則の作成や給与規定の整備等の労務関係事務が発生します。これらの労務関係の整備は、関係する法律を遵守し適切に処理する必要があります。

雇った従業員が仕事をこなせるようになるには教育や時間が必要です。初めのうちは間違えも多々生じますし、慣れない業務や畑違いの業務はストレスも多くかかるため、その従業員の退職リスクも高まります。

退職はどのタイミングでも会社にダメージの大きいものですが、経験を積んで仕事のクオリティも安定してきたベテランならば猶更です。ベテランが退職した際は、また次の担当者を一から育てることになり、社内効率もまた悪くなります。

退職に備えて社内にマニュアル等のノウハウを蓄積しておくことが重要となりますが、労務等の法律に関するものは、毎年法改正による制度や各種数値の算出率(料率)の変更があるため、常にマニュアルや担当者自身の知識のアップデートが必要となります。

また、法律に基づいた申請や申告は、今でこそオンラインに対応してきましたが、オンライン申請・申告を行うにしても、そもそものその分野の知識を持っていなければ申請・申告どころではありません。

すなわち、オンラインシステムが申請や申告までをオートメーション化しているところまでは行きついていないということです。また、オートメーション化するには規定や但し書きが枝分かれし過ぎているため、今後もオートメーション化は絶望的といえるでしょう。

以上のように、会社設立後の事務作業は多種多様なものがあるものの、それらの専門性の高さ、また会社設立者の忙しさにより、社会保険に加入しなければいけないのに加入していない会社が少なくないのも現場の実態です。

3-2 事務作業は社労士に依頼する

社労士は労務・社会保険関係の専門家であるため、その分野の事務業務を全般的に依頼することができます。社労士に依頼できる具体的な実務内容には、労働保険を含む社会保険の加入や脱退の手続き書類や代行、就業規則や36協定の作成、労務関係や人事制度に関するコンサルティング等があります。

先に見たように、基本的に健康保険や厚生年金保険といった社会保険は、会社設立者自身も会社設立時に加入をすることになります。

この社会保険の加入手続きも、社労士に依頼することができます。もちろん、社労士に依頼しなければいけないというわけではなく、会社設立者が自分で行うこともできますが、自分で行う場合は書類や書き方の不備がある等して後戻り工程が発生し、余計に時間がかかる場合があります。

社労士の中にはスポット業務にも対応している社労士がいます。スポットであるため、費用は社労士に依頼したそのときに支払うだけでよい、ということです。

自分で対応すれば費用はゼロで済むという考えもありますが、何らかの作業にかかった時間を自分の給料の時間単価で計算した場合、ゼロで済む作業はありません。特に慣れない作業は余計に時間がかかるため、自分で行う方が高くついた、社労士に頼んだ方が安く済んだ、ということもあり得ます。

事務担当の従業員を雇う場合、先に退職した時のリスクに触れましたが、社労士に依頼をすると、そのようなリスクも考えずに済みます。また、事務担当者がいる場合には、社労士の手続きを勉強して貰って社内にノウハウを蓄積していくということもできます。

会社設立後は、社会保険への加入など必要な手続きを社労士に依頼をし、会社が大きくなるに連れて事務担当の従業員を置いて内製化していく、という流れが会社設立後の1つのモデルケースです。ただし、内製化する過程でも社労士に依頼できることがあります。

それは、段階を踏んで着実に内製化をするために、給与計算や労務関係の専門的なことを社労士にコンサルティングの依頼をするということです。独りよがりの内製化ではなく、会社が着実にステップアップするために社労士にコンサルティングを依頼するということです。

さて、ここまでは事務作業に重きを置いて社労士に依頼できることを見てきましたが、もう一つ社労士には、会社にとって非常に有用な役割となり得る業務があります。それは、助成金制度に関する業務です。

助成金には様々なものがあり、雇用促進や労働環境の整備に関する助成金もあります。新しく従業員を雇ったり、労働環境の整備を行ったりするのであれば、せっかくならばそれらに関係する助成金制度を活用し、助成金を得たいものです。

しかし、助成金は通常、申請時に目標達成のための計画作りや各種手続きが必要となり、その作業が複雑で手間がかかるため、結局申請しないままで終わる会社が多いのも事実です。

また、自社が助成金制度の要件を満たしている場合でも、そもそもその助成金制度のことを知らないのでは、活用する以前の話しです。なにより、厚生労働省が管轄をする助成制度の申請代行は、社労士の独占業務に該当します(「補助金」の場合は社労士以外でも代行可能)。

助成金に関して(助成金のことに詳しい)社労士に依頼をすれば、自社に適用可能性のある助成金制度を紹介して貰うことができ、申請手続きに関しても、自社の情報を社労士に提供すれば、後のことは社労士が代行をしてくれる、ということが望めます。

また、助成金の要件でもある各種計画を策定する際には、自分で行った場合は実現不可能な目標を計画してしまう可能性もあります。そして助成金制度の中には、申請受理後に適宜計画の進捗を報告するものがあり、報告を怠ると、せっかく申請が通った助成金が受給できない場合もあります。

これらのことに関しても、社労士に依頼をすることで、適切で実行可能な計画をアドバイスして貰え、また適切なタイミングで報告を行うことに繋がります。

4 社労士の探し方

社労士の探し方

最後に社労士の探し方、社労士を探すポイントを見てみましょう。現在ではインターネットという、あらゆる情報が集まるネットワークがあります。インターネットから社労士を検索することが1つの方法です。

インターネットの「全国社会保険労務士連合会」のホームページを通じて、各都道府県の社労士会に連絡してみるのも良いでしょう。また、社労士がインターネットに広告やホームページを出している場合があるので、そのようなサイトを見るのも参考になります。

他には、口コミや人づてで地域の社労士を紹介して貰うという探し方があります。知人からの口コミや人づては、インターネットよりも有用な場合があります。

広告を出している社労士は、もちろん自分のことを悪くは書かないものです。実際に接してみると、広告とは印象が違うということがままあります。口コミや人づてを活用することで、その社労士の評判の生の声を聞くことができる、より信頼の置ける社労士に出会える可能性が高まる、ということです。

依頼をする前に相談をしてみることも重要です。自分の実績を自慢したり、誇張したりする社労士は、実態以上に自己過大評価している可能性があります。

また、スポットで依頼をしたいのに長期継続となる顧問契約を進めてくる社労士にも注意が必要です。顧問契約に納得できたり合理的な理由があったりすれば別ですが、社労士側の都合にしか思えない理由の顧問契約は、その後の会社運営の経費に重く負担としてのしかかります。

また相談をしてみる場合は、あらかじめ自分が何を重視しているのか、例えば社会保険の加入手続きを依頼したいのか助成金を活用したいのか等、あらかじめ洗い出しておくのが良いでしょう。

社労士に限りませんが、士業に何かを依頼するときは自分が何に困っており、何をゴールとしているのか分かっておくことが非常に重要です。まず洗い出しをして、時間とお金を無駄なものとしないことが大切です。