将来、独立するならフリーランスで起業したいと考えている方は少なくないでしょう。実際、フリーランスは2018年から2021年のコロナ禍を挟んだ期間で大幅に増加しました。また、「フリーランス保護新法」が4月28日に参院で可決され、フリーランスを支援する動きも強まってきています。

回の記事では、現状で個人がフリーランスとして独立して事業を拡大させ、会社設立して成功していくための方法や重要ポイントなどを解説します。フリーランスでの起業に興味のある方、その経営課題やリスクを把握して失敗を回避したい方、フリーランスから会社設立して事業を拡大していきたい方などは参考にしてみてください。

1 フリーランスの特徴と現状

フリーランスの特徴と現状

フリーランスの定義は様々ですが、ここでは「フリーランス協会」の以下の定義(「フリーランスの現状と課題について」より)を紹介します。

フリーランスとは、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」のことです。

もう少し説明を加えると「雇用ではなく、業務委託・自営で働く、会社の看板ではなく、自分の名前で働く」者がフリーランスに該当し、フリーランスは以下の2タイプに分けられています。

●独立系フリーランス

このタイプは、基本的に企業との雇用関係のない方です。彼らは企業から業務委託契約により仕事を受けるタイプで、主に小規模事業者の法人経営者(マイクロ法人など)や個人事業主(開業届提出者)などが代表的と言えますが、定年退職者、学生や主婦などの「すきまワーカー」なども含まれます。

●副業系フリーランス

このタイプは、基本的に企業との雇用関係のある副業人材などです。正社員だけでなく派遣・アルバイトなども含まれます。働き方改革に対応して従業員の副業を認める企業や、コロナ禍での業績の悪化に伴う雇用対策として副業を認める企業などが増えたため、このタイプのフリーランスが増加しました。

なお、このタイプの中には企業との雇用契約を持ちながら、法人経営者、個人事業主、すきまワーカーとして活動する者などが含まれる場合もあります。

1-1 フリーランスの性質と主な仕事

フリーランスの特徴や仕事について簡単に説明しましょう。

1)フリーランスの特徴

上記の通り、フリーランスには独立した事業者と、雇用者としての側面があり、それらに関係した特徴が見られます。

●雇用者としての性質

企業に所属する雇用者は、労働者として各種の法律が適用され、保護や支援などが受けられる一方、制約を受けることもあります。また、雇用者は法律のほか、雇用先の就業規則や雇用条件などの社内ルールに従わねばならないですが、企業からの様々な援助などを受けられるのも魅力です。

副業系を望む場合、雇用主が副業を容認することが前提となりますが、一般社団法人 日本経済団体連合会が2022年10月に発表している調査では、「認める」が53.1%、「認める予定」が17.5%となっていますが、小規模企業ほど認めていない傾向が見られます。

副業は法律違反ではないですが、雇用先が就業規則等で副業が認めていない場合に、従業員が勝手にフリーランスを始めれば、懲戒処分の対象になり得るため注意が必要です。

また、副業を容認していても副業の影響により、雇用先の業務で支障をきたす場合(例えば、有給休暇が増える、残業できないなどで業務が滞る 等)問題になりかねません。

企業によって従業員の副業に対する扱い、制約やサポートなどは異なるため、 社内ルールを事前に確認し直属の上司などに相談しておくことも必要です。

●事業者としての性質

独立系でも副業系でも業務委託契約などによって仕事を請ければ事業者の立場となり、その扱いを受けることになります。具体的には、事業者としての法律が適用され支援や制約を受けることになるわけです。

もちろん特定の企業との雇用契約と関係ない自身の事業では、就労場所、就労時間や業務量等は自分の裁量で行うことが可能です。また、どの企業と、どれだけの企業と、どのように契約するかの経済的な自立性もあります。

このように会社(勤め先)に縛られるような働き方を極力少なくできるのがフリーランスの特徴です。しかし、その一方で経営資源が脆弱で取引先・販売先などが限られるほか、競争優位性のある仕事が提供できなければ、厳しい取引条件で仕事を請けることも少なくありません。

また、副業系や独立系に関係なく、事業を始めれば経営リスクもつきまといます。また、副業などで特定の企業と取引をしている場合、その企業への従属度が高まり、経営の自律性や自由度が大幅に低下するケースもあります。

2)フリーランスの主な仕事

フリーランスの仕事は様々で、クリエイティブ系、ビジネス系、職人系、などに分けられますが、ここでは「ITエンジニア系」「マーケティング系」「クリエイティブ系」「接客系」「経営・運営系」「インフルエンサー系」に分けて、その職業を示しておきましょう。

●ITエンジニア系

以下のような職業が含まれます。

  • ・Webコーダー
  • ・プログラマー
  • ・ゲームクリエイターやゲームプログラマー
  • ・クラウドエンジニア、データベースエンジニア、セキュリティエンジニア 等
  • ・AI/IoTエンジニア

●マーケティング系

  • ・デジタルマーケターやWebマーケター
  • ・ブロガーやアフィリエイター
  • ・データサイエンティスト

●クリエイティブ系

  • ・WEBデザイナー
  • ・グラフィックデザイナー
  • ・Webライター
  • ・映像クリエイター
  • ・TVカメラマン
  • ・フォトグラファーやイラストレーター
  • ・ダンサーや音楽家

●接客系

  • ・各種講師(習い事、資格取得支援 等)
  • ・美容師、理髪師、ネイリストやエスティシャン
  • ・各種営業代行
  • ・占い師
  • ・パーソナルトレーナーやスポーツコーチ
  • ・カウンセラー

●経営・運営系

  • ・士業(税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士や中小企業診断士 等)
  • ・経営コンサルタントや顧問 等
  • ・人事や財務のスペシャリスト
  • ・サロンやネットショップ等のお店の運営
  • ・住居、シェアハウスや事務所等の賃貸運営

●インフルエンサー系

  • ・ユーチューバー
  • ・インスタグラマー
  • ・ブロガー

1-2 フリーランスの人口動態と市場

フリーランスの人口・年齢などの状況とその市場について紹介しておきます。

1)フリーランスの人口や年齢

令和2年5月に内閣官房日本経済再生総合事務局が公表している「フリーランス実態調査結果」から、フリーランスの人口等を説明します。なお、対象とするフリーランスは以下の内容に該当する方です。

  1. 自身で事業等を営んでいる
  2. 従業員を雇用していない
  3. 実店舗を持たない
  4. 農林漁業従事者ではない
    ※法人の経営者を含む

●フリーランスの人口

試算では合計462万人で、本業している者が214万人、副業している者が248万人となっています。

●フリーランスの年齢構成

年齢構成は以下の通りです。

  • ・~29歳:11%
  • ・30歳以上40歳未満:17%
  • ・40歳以上50歳未満:22%
  • ・50歳以上60歳未満:20%
  • ・60歳以上:17%:30%

年齢構成では40歳代以上のミドル・シニア層が中心で、全体の7割を占めています。

2)フリーランスの市場

ランサーズ株式会社が実施した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」によると、フリーランス人口は1,577万人(フリーランスの対象範囲が広い)、経済規模は23.8兆円であると報じられています。

2015年と比較した場合、人口は68.3%(640万人)、経済規模は62.7%(9.2兆円)もの増加です。また、新型コロナの感染拡大前の2020年1月の調査ではフリーランス人口は1,062万人で、拡大後の2021年1月は1,518万人と急増しており、経済規模も17.6兆円から25.6兆円へと、コロナ禍でフリーランス市場が大きく拡大したことがわかります。

ランサーズ社の調査におけるフリーランスの職種とその比率は以下の通りです。

  • ・作業系:22.0%
  • ・接客系22.0%
  • ・専門・士業系:15.1%
  • ・事務系:12.5%
  • ・講師系:11.9%
  • ・デジタルスキル系:9.4%
  • ・クリエイティブ系:9.4%
  • ・営業・コンサルタント系:8.7%

この調査結果では、初心者でも比較的始めやすい作業系や接客系が多く占めている点が指摘されました。特定の知識・スキル・経験・資格などを必要とする職種を始めるには一定の時間が必要ですが、作業系や接客系についてはその影響は低いことが窺えます。

2 今日のフリーランスの課題

今日のフリーランスの課題

現在のフリーランスの状況や課題などについて確認していきましょう。

2-1 フリーランスという働き方

先の内閣官房の「フリーランス実態調査結果」では「フリーランスという働き方の満足度」に対する調査も実施されました。

その結果によると、7割以上のフリーランスが、「仕事上の人間関係」、「就業環境(働く時間や場所など)」、「プライベートとの両立」、「達成感や充足感」に満足しています。しかし、収入にいて満足しているフリーランスは4割です。

「仕事上の人間関係」では、「非常に満足」と「満足」を合わせて85.7%で、「就業環境(働く時間や場所など)」も両者計で82.9%、「就業環境(働く時間や場所など)」も両者計で81.8%、と高い満足度になっています。

これらの項目は従業員としての、労働意欲に影響する要因であり、離職の要因になるものです。従って、フリーランスは労働意欲を高める働き方となっていることが分かります。

一方「収入」については、「不満」が46.4%、「非常に不満」が16.2%で合計62.6%が不満を感じているのです。いかに仕事を行う環境がよくても、仕事にやりがいを感じられても、事業を維持する、生計を維持する、そして、より豊かな生活を送ることができなくてはフリーランスになる意欲が薄れてしまいます。

そのため、この収入の向上がフリーランスになる、継続していくための重要な課題になるわけですが、その年収の実態について上記報告書は以下のように示しています(P6)。

「主たる生計者が本業として行うフリーランスの年収は、年収200万円以上300万円未満が19%と最も多い」ほかは、100万円未満が16%、100万円以上200万円未満が16%、300万円以上400万円未満が16%、400万円以上500万円未満が12%、500万円以上600万円未満が8%となっており、600万円以上は14%程度です。

年収400万円未満で見ると、67%程度と年収の低い層が多いことが分かります。

2-2 フリーランスという働き方での障害

「フリーランスとして働く上での障壁」について見ると、「収入が少ない・安定しない」が全体の6割と最多です。

次いで多いのでは「1人で仕事を行うので、他人とのネットワークを広げる機会が少ない」が17.2%で、ほかには「仕事がなかなか見つからない」(15.3%)、「仕事が原因で負傷した・疾病になった場合の補償がない」(12.7%)、「就業時間や休日に関する規制がない」(11.1%)などが挙げられています。

やはり「収入」を問題視しているフリーランスが多く、また、単に収入が少ないだけでなく、仕事の確保も重要な課題となっているようです。

収入の不安定さの原因には、「仕事がなかなか見つからない」ことが挙げられ、また、それには「1人で仕事を行うので、他人とのネットワークを広げる機会が少ない」ことが影響している可能性も小さくありません。

取引上の問題として、「契約条件があいまい・事前に明示されない」(10.7%)が挙げられており、フリーランスに対する取り扱いの問題が懸念されます。

フリーランスには仕事の確保の難しさや取扱上の不利といった面が少なからず存在しており、その改善・向上のための取組が必要となっているのです。

2-3 フリーランスの就労状況

「フリーランスの就業時間・就業日数」(P9)については、以下の結果が示されています。

●1日あたりの就業時間(平均)

  • 1時間未満:11.4%
  • 1時間以上2時間未満:13.1%
  • 2時間以上4時間未満:19.8%
  • 4時間以上6時間未満:19.4%
  • 6時間以上8時間未満:19.6%
  • 8時間以上10時間未満:10.8%
  • 10時間以上12時間未満:3.2%
  • 12時間以上:2.6%

一般の会社員と単純に比較できないですが、8時間以上労働するケースはあまり多くなく、労働としての負担はあまり重くないでしょう。逆に6時間未満が63.7%も占めており、収入の面からは好ましい状況とは言えません。

●1月あたりの就業日数(平均)

  • 5日以内:23.5%
  • 6日以上10日以内:14.3%
  • 11日以上15日以内:12.4%
  • 16日以上20日以内:15.7%
  • 21日以上25日以内:17.6%
  • 26日以上:16.4%

以上の通り、全体的には稼働日数がやや少ない状況です。特に「15日以内」が全体のほぼ半分を占める状況となっており、仕事量を増やし稼働日数を増大させる必要性が窺えます。

2-4 フリーランスとしての今後の取り組み方

「フリーランスという働き方の継続意思」の調査では、「フリーランスとして働き続けたい」者が78.3%、「会社員になりたい(会社員に戻りたい)」が3.4%、「わからない」が17.5%、「その他」が0.7%です。

色々と不安や不満を感じながらもフリーランスを継続していきたいという人が多いのが分かります。特に「会社員になりたい(会社員に戻りたい)」というフリーランスを断念したいという者が少ないことから、改善は必要であるものの現状ではそれほど悲観するような働き方になっていないようです。

なお、継続意思を示す者の内訳を見ると、「今後は受ける仕事を増す予定」が46.2%、「現状の仕事の規模を維持する予定」が46.0%、「今後は受ける仕事を減らす予定」が7.8%となっています。

以上の通り、継続意思を示す者の約半分は仕事の拡大が課題となっているわけです。

2-5 取引先に関する問題

1)取引先とのトラブル

下表は「取引先とのトラブルを経験した者の属性分布」の内容を示しています。

主な取引先が事業者 主な取引先が消費者
業務・作業の依頼(委託)を受けて仕事を行う者 54.1%(1,220) 16.0%(360)
上記以外の者 7.9%(178) 22.0%(496)

上表の通り、取引先とのトラブルを経験したことがある者の中で、事業者から「業務・作業の依頼(委託)を受けて仕事を行う者」が最多で、全体の約5割です。

これは業務・作業の依頼(委託)を受ける働き方が多いことの証左ですが、業務委託等に関する取り決めやルールを明確にしているのか、といった問題が懸念されるところです。

2)取引社数

フリーランスの取引社数は、以下のような内訳になっています。

  • 1社:40.4%
  • 2社:18.0%
  • 3~4社:21.8%
  • 5社:19.8%

以上の通り、1社が約4割、1~2社合計では約6割となっており、いかに少数の取引相手に仕事を依存しているかが分かるはずです。この状況が仕事の不安定化や収入不足の要因になっていると言ってもよいでしょう。

3)取引先の規模

取引相手の規模について、「事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランスのうち、資本金1000万円以下の企業と取引をしたことがある者は4割」で、そのうち「資本金1000万円以下との取引から得られる売上が直近1年間の売上の過半を占めている者は4割」と指摘されています。

なお、「資本金1000万円以下の企業との取引がフリーランスとしての売上に占める割合」の内訳は以下の通りです。

  • 90%以上:19.9%
  • 70~90%未満:5.5%
  • 50~70%未満:10.8%
  • 30~50%未満:12.3%
  • 10~30%未満:18.4%

以上の通り、フリーランスがいかに小規模事業者との取引の多いことが確認できます。この状況もフリーランスの仕事の不安定化や収入不足の原因になっている可能性が高いです。

4)フリーランスの業務従事状況

業務受託のフリーランスが業務にどう従事しているか、の内容が以下のように示されています。

  • 業務の内容や遂行方法について、具体的な指示をうけている:36.8%
  • 勤務場所や勤務時間が指定されている:16.0%
  • 自分が受けた仕事・業務の遂行を他の人に依頼することが認められていない:14.2%
  • 報酬が作業に要した時間数に基づき計算されている:12.9%
  • 具体的な仕事の依頼、業務従事の指示を断ることができない:10.5%
  • 上記に該当するものはない:41.5%

以上の通り、業務に関する具体的、細かな約束事が決められて委託されるケースは多くありません。良い解釈をすれば、仕事の自由度が高く業務遂行等に関して受託者の裁量が大きいとも言えますが、遂行方法、成果物等の水準、それに対する評価のあり方、などが決められていないと様々な面で問題が生じやすくなります。

トラブルの発生は、単に受託者だけが負担するだけでなく、委託者にとっても手間やコストの増加に繋がりかねないため、両者合意による事前の取り決めが望ましいです。

取引先とのトラブルの有無を見ると、「事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランスを母数として、取引先とのトラブルを経験したことがある者の割合を算出すると4割」というデータが示されており、一定の取り決めの必要性が感じられます。

●取引先からの書面の交付とトラブル

トラブル経験者における取引先からの書面の交付状況を見ると、次のような結果になっています。

  • 受け取っていない:29.8%
  • 受け取っているが、取引条件の明記が不十分である:33.3%
  • 十分明記された書面や電子メールを受け取っている:36.9%

以上の通り、取引先とのトラブル経験者には、取引先からの書面の交付を受けていない者が約3割も存在している状況です。さらに受け取っていても取引条件の明記が不十分である場合が3割ほどおり、書面による仕事の内容を指示・確認しない慣行がトラブルの引き金になっていることが推察されます。

●取引先とのトラブルの内容

トラブルの内容は以下の通りです。

  1. 発注時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった:37.0%
  2. 報酬酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった:28.8%
  3. 報酬の未払いや一方的な減額があった:26.3%
  4. 仕様や作業期間・納品日を一方的に変更された:24.4%
  5. 仕事の業務内容・範囲について揉めた:23.5%
  6. 代金が低すぎるなど不利な条件での取引を求められた:22.8%

こうしたトラブルや不利な扱いは、フリーランスに限らず多くの小規模事業者等でよく見られますが、そんな彼らを保護するための下請代金支払遅延等防止法(下請法)が施行されています。

下請法とは、「親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律」であり、上記のような扱いを受けないように親事業者の「義務」と「禁止行為」が規定されているのです。

  1. 義務:
    書面の交付
    支払期日の定め
    書類の作成・保存
    遅延利息の支払い
  2.  

  3. 禁止行為:
    受領拒否
    下請代金の支払遅延
    下請代金の減額
    返品
    買いたたき など11項目

フリーランスの取引もこの下請法が適用されるケースは多いため、この法律の内容を把握の上、発注者と取引条件、業務内容や成果物の評価などを事前に取り決め、できるだけその内容について書面を交付してもらえるように交渉しましょう。

書面の発行を依頼しても応じてくれない場合、受注の拒否や第三者への相談も必要です。

2-6 仲介事業者の利用

フリーランスの仲介業者とは、業務委託の仕事を請けるフリーランスにそうした仕事を仲介する業務を担う事業者等のことです。

具体的には、インターネット等を活用して、シェアリングエコノミーやクラウドソーシングを運営して業務委託の仕事の仲介を行う、フリーランス向けのジョブマッチングや仕事案件の掲載などを行う事業が仲介事業に該当します。

従って、フリーランスは新しい仕事を探す、増やすための方法として、この仲介事業者の活用が1つの手段になるはずです。この仲介事業者の利用状況について、先の調査では以下のような点が指摘されています。

  • ・仕事の獲得手段として、仲介事業者を活用しているのは21.5%で、活用していないのが78.5%である
    ⇒仕事の件数や量の増大が期待できる仲介事業者の活用が2割程度と少ないです。この点も収入の不安定化や不足に影響していることが推察されます。
  •  

  • ・仲介事業者を利用している者の中で、直近1年間で利用している仲介事業者が1社のみの者が5割近い
    ⇒1社の利用が46.8%、2社利用が22.7%となっており、利用している者においても仲介事業者を積極的に活用しているとは言い難い状況です。

なお、仲介事業者の利用においてのトラブルの有無も調査されており、その結果は、「トラブルを経験したことがある」が20.9%、「特に経験したことがない」が79.1%でした。多少のトラブルはあるものの、仲介事業者の利用を躊躇するほどの障害は少ない状況です。

また、仲介事業者とのトラブルの内容として以下の点が挙げられています。

  • ・仲介業者が報酬や業務の内容などの条件を決めているが、一方的に条件を変更された:53.0%
  • ・事前に明示されていないにもかかわらず仲介手数料を徴収された、仲介手数料が事前に提示された金額と異なった:29.5%
  • ・仲介事業者と連絡が取れなくなった:19.6%
  • ・仲介事業者のサービス内容等を示した規約が、同意なく変更されていたために不利益を被った:16.4%

以上のように仲介事業者によっては、不適切な仲介、取り扱いを行う者もいるため、信頼できる事業者の選定が求められます。

3 フリーランスの課題と法人化の関係

フリーランスの特徴と現状

ここではフリーランスの法人化のメリット・デメリットが、先の課題にどう関係するかを確認しましょう。

3-1 法人化のメリット

フリーランスから株式会社などの法人になることで以下のようなメリットが得られ、課題解決に役立つことも多いです。

1)収入が多いと節税効果が高まる

経営者の所得に対する税金を考えた場合、個人事業主のフリーランスは累進課税の所得税が適用されます。一方、法人化した場合、会社には法人税等が、役員には所得税が課されますが、個人事業主以上の節税が可能です。

例えば、会社の利益にかかる税金は法人税、地方法人税、住民税、事業税、特別法人事業税で、会社が利益に対して負担するそれらの税金の額の割合である実効税率は30%程度になります。

役員の報酬は適正な方法で支給されるものは会社の損金扱いとなり節税に有効です。また、その報酬には所得税が課せられますが、役員は従業員と同様に給与所得控除や保険料控除などが受けられるため個人事業主が支払う税金より低くなり得ます。

一方、個人事業主が支払う所得税は、課税所得が多くなるほど税率が高くなる累進課税です。現在の税率は5%~45%となっており、収入が多くなれば法人税率を大きく上回ることになります。

以上のことから、フリーランスが高額の収入を得るようになると税金負担が重くなり、法人化した方が節税できて資金の確保に有効です。

2)経費の拡大

法人化により、以下のような個人事業主では対象外であった支出が経費の対象となり節税できます。

  • 住居の社宅化
  • 出張手当等の支給
  • 車両等の支出(全額経費も可能)
  • 生命保険料の支出(掛け金を経費に)
  • 退職金の支給(損金扱い)

経費として処理するには社内規定の整備などが必要ですが、法人化により上記のような経費が認められれば、税金支出の低減が可能です。その結果、資金繰りが楽になるほか、少しでも手元に資金を残せるようになります。

3)社会的信用の向上

ビジネスを始める、拡大していく、という点において、社会的信用の有無や程度は重要であり、その信用が高い方が取引において有利に働きやすいです。この信用においては、知名度のない個人よりも法人の方が一般的には高いとされ、ビジネスで有利になることも少なくありません。

取引を開始する場合、発注者は受託者の取引上の信用度(提供物・サービスの品質・コスト・納期等)を確認する必要がありますが、個人についてはその者の申告情報が主な査定材料になります。

一方、相手が法人である場合、発注者は登記内容から法人としての存在を確認でき、ホームページからは業歴、事業実績や取引先など、公告では業績等を確認できるため、取引の判断がつきやすいです。

消費者にとっても同様で、法人の方がより客観的な情報で確認しやすいため、購入の判断がしやすく、個人よりも注文もしやすくなります。

4)取引の拡大

法人の信用の向上は、ビジネスにおいて様々な面で有利となり、事業の拡大に有効です。例えば、創業時の課題とされる、資金・人材・取引先の確保についても一般的には個人より法人の方が有利になり得ます。

資金調達の面では、個人の場合は自己資金と金融機関融資に頼るケースが多いですが、その融資も簡単ではありません。法人の場合はそれらに加えて ベンチャーキャピタル(VC)や投資家からの出資等が受けられることもあります。

人材確保の面では、人材募集を行う場合、個人よりも法人の方が採用できる可能性は高いです。求職者が長期の就業を望む場合、事業継続の可能性や労働条件の安定性などの評価で個人より法人を選ぶ傾向が見られます。そのためフリーランスが事業の拡大等で人材を確保する際には法人化が有利です。

取引先の面では、販売先・仕入先・協力先(パートナー等)の確保・拡大を進める際も、個人より法人の方が有利になるでしょう。特に大手企業では、個人との取引について、取引上の信用や管理の手間等から消極的なケースが多く見られます。

こうした傾向は単に販売先として大手企業との取引が困難であるというだけでなく、商品・サービスの提供を受ける場合の仕入先・調達先・協力先としての取引についても同様です。

大手企業の取引に関する社内審査等では、個人に対しては法人以上に信用面等での査定が厳しくなり、取引の実現が難しくなっています。従って、法人化が大企業等の取引を拡大させる有効な手段になり得るのです。

5)個人リスクの限定

法人化して出資者の有限責任を確保できれば、事業で大きな損失や損害賠償などが生じた場合、経営者の責任は出資の範囲に限定されます。

一方、個人の場合は無限責任であるため、損失・賠償が生じた場合、その責任や債務等を個人が引き受けねばなりません。つまり、個人は出資金のほか、個人が所有する財産でそれらを補填する必要があるのです。

こうした個人保証がフリーランスとしての起業の障害の1つになっていますが、法人化によりその問題が解決できます。

3-2 法人化のデメリット

以下のようなデメリットがフリーランスの課題となる可能性が高いです。

1)登記手続の手間とコスト

フリーランスが会社設立する場合、法務局に設立登記を申請することとなりますが、それには手続の準備等にかかる手間と一定の費用が発生します。

この設立登記の手間とコストは、どの会社形態(株式会社や合同会社等)にするか、どのような規模で事業を始めるか、などで異なります。例えば、株式会社の場合でも、経営者が1人のみの会社と複数人の会社(複数人の経営者、従業員)とでは手間とコストも違ってくるわけです。

また、株式会社や合同会社などの形態の違いにより、設立時の準備と設立後の会社運営などにおいて、手間もコストも変わってきます。このように法人化すれば、フリーランスでは発生しない手間とコストがかかることになり、特に法人化前後の一定期間における負担は重いため注意が必要です。

2)ランニングコストや運営の手間の増大

フリーランスが法人化した場合、経営者や従業員の社会保険料の半分は会社の負担となり、現金流出が増大します。また、株式会社を設立した場合には毎年、株主総会を開催する必要があり、そのための準備・運営に関する手間とコストを負担しないといけません。

人材確保の点では、従業員を集めやすくするために給与を一定水準以上に保つ必要があるほか、福利厚生の充実、適正な職場環境の確保、などが求められるようになり、人件費関係が増大する可能性が高いです。

また、コストではないですが、会社が赤字の場合でも「法人住民税の均等割」は支払い義務があり、税金がゼロにはなりません。フリーランスとしての収入が多くない場合に法人化すれば、資金不足をより深刻にしてしまいます。

3)事務や税務の複雑化

法人化して事業規模・組織規模が拡大すると、個人に比べ事務の手間が増えます。法人会計では複式簿記で記帳して法人税等を申告するため、経理部門の設置や税理士等の活用などが必要となり、個人以上の手間と費用が発生することになるのです。

また、株式総会やその他の会社運営において、会社法に準拠した対応が必要となるため、それらに関する手間が増え、本業以外の業務で人員が割かれることも多くなります。

4 フリーランスの事例とその成功ポイント

フリーランスの事例とその成功ポイント

ここではフリーランスの事例を紹介し、どのような行動が成功に繋がるのかそのポイントを説明しましょう(事例は2019年度中小企業白書から)。

4-1 売上高と雇用の面で着実な成長を続けるフリーランス

株式会社ベイジ

事例2-2-3から紹介します。

●企業概要

  • 企業名:株式会社ベイジ
  • 所在地:東京都世田谷区
  • 従業員14名、資本金500万円

●事業内容

株式会社ベイジはデザインのほか、事業分析に基づく戦略を反映してBtoBサイトを構築するのが得意なWeb制作会社です。

●起業の経緯および事業展開

・きっかけ

同社社長の枌谷(そぎたに)力氏は、大手のシステムインテグレータ(SIer)に勤務していましたが、「より顧客を重視した仕事」を自らの主導で行いたいとの思いを強くし、起業を検討し始めました。

・起業の準備

枌谷氏はWebデザインの仕事に興味を持ち、勤務を継続しながらグラフィックの専門学校に2年間通い知識・スキルを獲得しています。その後、勤務先を退職して、Webデザイン会社に2回転職して実務の経験を重ね、起業準備を着実に進めていきました。

・起業

起業の準備を進める中で、従業員を雇用できるほどの仕事量を確保できるか、不安があったため、まずはフリーランスとしての起業を決定されたのです。

起業の直後は資金繰りで苦労されましたが、徐々に受注が安定するようになっていき、やがて十分な収入も得られフリーランスとして働くことの楽しさも感じられるようになりました。

・法人化

しかし、業界慣行から大企業と契約する場合、元請けになりにくいこともあり、自分一人でビジネスを行うフリーランスの形態では、事業の拡大に限界があると認識されたのです。

こうした状況の中で、独立を考えた頃の考えを思い起こし、家族や取引先の経営者からの後押しも受けて、2010年に法人化されました。そして、同社は設立1年目から従業員を雇用しています。

この雇用により、「業務の分担が可能となり、自分が得意な仕事に注力できるようになったため、仕事のスピード感も格段に上がった」という効果が得られているのです。

・今後

「自身がいなくても回る組織づくり」を目標として、共通の価値観を有する従業員を着実に増やすとともに、無理のない事業拡大を目指す」、とされています。

●成功のポイント

・起業への思い

起業は、あまり高い目標を設定せずとも、自身が仕事として実現してみたいことを強く抱くことから始まります。

起業では、まず、自身が「○○の仕事をやってみたい」「自身の考えで事業を動かしたい」などの思いを強く描くことが重要です。その起業への熱い思いが自身の行動を駆り立て、事業を具体化させてくれます。

・無理のない用意周到な準備・進め方

起業の考えをビジネス化していく場合、知識・スキル・ノウハウ・人材・取引先等が必要となるため、それらを着実に確保するための準備を進めなくてはなりません。起業のタイミングも重要ですが、急ぎ過ぎて不十分な状態で起業するのは避けた方がよいでしょう。

起業は転職ほど簡単ではない、成功の難易度が高いと考える人は少なくないですが、十分な準備や適切なスピードなど、用意周到に進めて行けば成功確率は高くなるはずです。

4-2 地域の雇用創出に貢献したフリーランス

株式会社Ponnuf

*事例2-2-4から

●企業概要

  • 企業名:株式会社Ponnuf
  • 所在地:千葉県富津市
  • 従業員20名、資本金100万円

●事業内容

株式会社Ponnufは、Webメディアの運営、コワーキングコミュニティの運営などを行う企業で、「田舎フリーランス養成講座」を開設しフリーランスの育成・支援も手掛けています。

●起業の経緯および事業展開

・きっかけ

社長の山口拓也氏は、大学時代にイベント企画の経験を持っており、「新しいつながりを作りたい」という考えを実現するために、起業を考えていました。

2012年から約半年の間ほど知人が経営するベンチャー企業に勤務して、その中で企業経営や事業運営を学び、その経験を通じてWebメディアの立上げ支援を主な事業とするフリーランスとして起業されたのです。

・フリーランスの選択

フリーランスを選択した理由として、自身が稼ぐ力を修得すること、起業の初期費用を低く抑えたいこと、が挙げられています。起業後に安定した受注が得られるか、という不安があったからとのことです。

・法人化

その後、山口氏はWebメディアの事業を中心に、口コミで顧客を増やしていき、案件の継続受注にも成功し、起業から約1年半後に法人化しました。

法人化のきっかけは、事業イメージが定まり、事業を進展させる中で「人をしっかり雇い、仲間と大きな仕事をしたい」という思いが強まったことが理由として挙げられています。

・法人化後

同社は、事業を拡大させ売上を伸ばすことに成功し、人材も積極的に採用しました。法人化から5年でパート・アルバイトを含めて従業員は20名にもなっています。

●成功のポイント

・ビジョンの明確さと熱い思い

ビジネスを成功させる重要な要素の一つとして「事業としてやりたいこと、やるべきことを明確にすること」が挙げられます。「誰に対して、どんなことをやるのか」という事業のコアとなる部分が事業ビジョンから創出されるため、その内容を明確にすることが重要です。

山口社長には起業前からの「新しいつながりを作りたい」という思い、法人化時の「人をしっかり雇い、仲間と大きな仕事をしたい」や「フリーランスのコミュニティを作りたい」という思いがあり、これが事業ビジョンとして現在の会社の成功や今後の成長に繋がっています。

・身の丈に合った起業

起業時から法人化し社会的な信用を高めるなどして、事業をスタートさせるケースは多いですが、一定の仕事量の確保に目途が立たない状態では負担が重くなりかねません。初期費用や起業後の運営コストを抑えた身軽な経営ができるフリーランスの選択は悪くないです。

特に起業時において、事業システムや事業展開が発展段階で今後の変化・拡大の余地が大きい場合に多額の費用が生じる大きな組織で事業を始めるのはリスクも大きくなりやすいです。

そのため、起業後に事業内容や展開の進め方を少しずつ固めていくような場合には身軽な組織形態で始めるのは無難な方法になります。

4-3 副業から本業への移行を果たした企業

バタフライボード株式会社

事例2-2-6からの紹介です。本事例は「副業」で「製品開発」に取り組んだものですが、フリーランスで起業し事業を進めるにあたっての参考にもなるでしょう。

●企業概要

  • 企業名:バタフライボード株式会社
  • 所在地:神奈川県横浜市
  • 従業員なし、資本金500万円

●事業内容

同社は、携帯性・拡張性・共有性などに優れたホワイトボードと極細マーカーを開発・製造・販売しています。

●起業の経緯および事業展開

・起業のきっかけ

同社社長の福島英彦氏は、前職の音響メーカーで音響エンジニアを長年担当した後、マーケティングやプロダクトマネージャーの職務へ異動することになりました。

当時の福島氏はそれまでの職務で多くの人とコミュニケーションを取って仕事を進める経験が少なく、移動後の職務において「コミュニケーションを円滑にするために、どこでも使えるホワイトボードが欲しい」という思いを強めていたのです。

そして、福島氏はその思い実現するために、就業後の時間や週末を活用してホワイトボードの製品開発を副業として始めました。

・事業化への取組

製品開発の当初、量産ではない「試作品」を生産してくれる工場がみつからず苦労されましたが、その後、何度か試作を繰り返して、マグネットでつながるヒンジ機構を開発し量産が可能な構造で特許も取得されたのです。

そうした経験を通じて、商品コンセプトと特許技術の優位性を確信し、大手メーカーや中小規模の工場に量産化を打診するに至りました。しかし、その段階では市場性が認められず、対応してもらえなかったのです。

・クラウドファンディング(CF)の活用

製造業で創業するには多額の資金が必要となることも多いですが、同氏はCFを活用されました。国内のCF(Makuake:購入応援のサービスを提供するCF)に挑戦した結果、800名から約300万円の資金調達に成功されたのです。

この成功により、生産委託先が条件としていた市場の確保(≒応援購入者の確保)という要件を満足することが可能となり、初の製品供給が実現しました。その後、CFで獲得した応援者等の意見をもとに極細マーカーの開発や耐久性向上といった改良に取り組み、再度CFを行って法人化へと進んで行ったのです。

●成功のポイント

・ビジネスアイデアの発想と具現化

起業はビジネスアイデアの発想から始まりますが、福島社長は業務の中でアイデアを見出しました。具体的にはエンジニア職からプロダクトマネージャー職務等への異動がきっかけで、今までにない経験、必要性や不便さなどを感じたことからアイデアが生まれたのです。

そして、そのアイデアを事業化するための一歩を踏めるかどうかが、起業の分かれ目になりますが、福島社長はそれを「副業での製品開発」として実施していきました。

・困難を乗り越える挑戦意欲の高さ

製造業での起業の場合、資金、施設、技術などでの障害が大きくなる傾向があり、その分だけリスクも大きくなることから、起業を躊躇する人も多いです。また、起業してもそうした資源の不足から事業を円滑に進めることができず、早期に事業を断念するケースも少なくありません。

製造業にはそうした困難さが伴いやすいですが、福島社長にはそれを乗り越える挑戦意欲があり、開発と事業化を工夫と努力でそのハードルを飛び越えられました。

・CFの活用

今や多くの起業家が事業を実現させる手段としてCFを活用しています。Makuakeのように購入応援のサービスを提供するCFは、資金調達とともに今後のユーザーやファンを獲得する手段としても有効です。

同社は2015年にCFを開始して以来これまでに累計1億円の資金を調達して生産と販売に活かしており、米国のCFを通じて世界39カ国の応援者に製品を提供しています。

5 フリーランスの会社設立・事業拡大へと進む流れと重要点

フリーランスの会社設立・事業拡大へと進む流れと重要点

フリーランスが、起業→事業の安定化→会社設立→事業の拡大→さらなる成長、へと発展していくための流れやそのポイントを説明しましょう。

5-1 フリーランスの起業の流れ

起業のあり方やタイプを簡単に整理しておきます。なお、ここでのフリーランスは「企業や団体、組織に専従しない独立した事業者」のことです。

1)起業のタイプ

①副業からの起業

特定の企業に所属・勤務しながら、その企業以外の仕事をするという起業がこのタイプになります。一般的には学生時代や勤務時代に培った知識・技術・スキル等を活かして事業を進めるケースが多いです。

また、趣味など自分の好きなコトや得意なコトなどを事業とするケースも多く見られます。勤務しながらの、就業後や休日での事業活動となるため、事業量や範囲は限られますが、初期費用などを抑えやすくリスクを低くした起業ができるのが魅力です。

②フリーランスからの起業

会社での勤務経験や副業での経験などを活かして、企業等から独立した個人事業主として事業を始める起業がこのタイプになります。副業と類似していますが、企業等に属さないで事業を行う、業務を請け負うのがフリーランスです。従って、フリーランスは自身の事業からの稼ぎで生計を立てねばなりません。

そのため会社員からフリーランスに転身する場合、会社員時代の収入額をフリーランスとして稼ぐことができなければ、今までの生活を維持することが困難になります。また、個人事業主になった場合、税金や社会保険料等の費用負担が変わり、支出が多くなりかねない点は要注意です。

フリーランスも事業規模を抑え費用負担というリスクを小さくして、事業実績や経験を積む方法は有効ですが、必要資源の確保、事業展開や事業拡大等の対策を少しずつでも進めないと成長が困難になりかねません。

③会社設立からの起業

学生のまま、あるいは会社員等が会社を退職し法人を設立して起業するのがこのタイプです。法人は個人より社会的信用が高く、資金調達・人材確保・取引先の拡大などの面において有利になることが期待できます。

資金・人材・取引先は事業を発展させるための重要な要素であるため、会社設立してそれらをできるだけ多く、できるだけ質のよいものを確保することは事業の成功確率を高める上で有効です。

法人経営は経営者一人で行うことが可能であるため、設立当初の不安定さに伴うリスクを抑えるには一人や少人数で運営するという経営は合理的と言えます。また、収益の確保・拡大と実績の蓄積に伴って、従業員を増やし事業を拡大したり、新たな事業を展開したりするのも法人の方が有利です。

2)起業から発展していく経路

以上の①、②、③のどのタイプを選ぶかは創業者自身の状況や考え方次第であるため、特に副業→フリーランス→法人、という順番で経営の形態を進める、変化させる必要はありません。

リスクを抑えながら経験等を積み、じっくりと事業を拡大させたいなら、上記のような順番で進めるのも悪くないでしょう。しかし、それにこだわる必要はなく、副業から法人化して事業を拡大させたり、いきなり、フリーランスや法人で起業したりする方も多いです。

事業をどのように拡大させたいか、いつまでのどのような事業を実現したいか、自分の思い描く事業を行うための経営資源等が確保できるか、といった状況を考慮して、それにマッチした起業を行うとよいでしょう。

また、事業を拡大させるためには、経営資源等の確保だけでなく、それに応じた経営ノウハウも必要です。自分が目指す事業を実現するための経営の知識やスキル等もそれに合わせて修得しなければならないことも留意しましょう。

5-2 起業のきっかけから事業化へ

起業のきっかけは、「自分の知識・技能等を活かして○○のようなことがしてみたい」、「勤務先の業務でZ世代の新しいニーズを発見した」や「業界の問題を今までにない方法で解決したい」といった思いとアイデアの発想からで、それらが事業の出発点になります。

起業や事業化への意欲や熱いが弱ければ、優れたアイデアを持っていても挑戦を躊躇したり断念したりするケースは多いです。思いがビジネス化の原動力となるわけですが、それを促すにはアイデアを具体的なビジネスへと昇華させる構想が必要となります。

具体的にはアイデアからビジネスコンセプトやビジネスモデルへと発展させる作業が重要です。ビジネスコンセプトは、誰のどのようなニーズ(欲しいモノ、解決してほしいコト等)を、何でどのように充足するのか、を簡単にまとめビジネスのコア部分と言えます。

そして、それをもう少し具体的なシステム、収益構造などの儲かる仕組として表現したものがビジネスモデルで、具体的なビジネスとしてイメージできる状態になりす。そして、その内容が事業として儲かるのか、成功するかの成否を分けるポイントになるのです。

従って、アイデアの発想からビジネス化するためには、アイデアをコンセプトからモデル化へ進める適切な作業が必要になります。漠然とした起業も、アイデアの発想によって一歩進み、そしてコンセプトを策定すれば、どの資源でどのような仕組を作ればよいか、などの事業のイメージ(モデル)が明確になっていくのです。

さらにビジネスモデルの策定によって、儲けるための具体的なシステムが設定されていきます。そして、実際の事業化では事業計画の作成が重要です。事業計画は、起業や事業化を具体的進めるためのスケジュールであり、必要資源を確保・運用していための設計図や航路図にもなります。

また、事業計画はVCや銀行などの資金提供者や仕入先・協力先などとの取引で重要なPR材料や説得材料となり得るため、その点においても適切な作成が欠かせません。

5-3 起業時の環境分析

ビジネスモデルの内容が優れていても起業時の経営環境が良くない、モデルに対して悪影響を及ぼす場合は、事業化の失敗に繋がります。ビジネスモデル⇒事業戦略⇒事業計画と策定されますが、これらの前提は環境分析です。

環境分析と言えば、外部環境の機会と脅威、内部環境の強みと弱みを分析対象とするSWOT分析が有名ですが、どのような手法であっても企業を取り巻く環境がどのような状況にあるかを適切に分析・評価することが求められます。

例えば、現在の経営環境で特に注視しなければならないのが、「コロナ禍」、「物価高騰」、物価高騰との原因となっている「ウクライナ問題」や「アメリカの経済状況(インフレや金融機関の破綻問題 等)」などです。

各企業や各起業家のビジネスモデルの内容次第ですが、こうした要因がこれから始めようとする事業にどのように、どの程度影響するかを評価して、起業のタイミングや規模等を判断することも必要となります。

特にコロナ禍による影響については丁寧な分析・評価が要求されるでしょう。新型コロナの感染拡大で人々の暮らしとともに価値観や行動が大きく変化しました。現在ではコロナは収束に向かいつつあり、ビジネスにおいてはコロナ禍前の水準の需要回復も見られ始めています。

しかし、一旦、変容してしまった価値観や行動様式は元に戻るとは限りません。まだしばらくは3密を意識した行動が重視されるため、それに対応したビジネスの仕組も一定程度残しておく慎重さも必要です。

コロナ禍では、会社の業務はリモートワーク、オンラインによる販売やサービスの提供等が普及し、家庭生活では自宅や屋外の活動が中心となりましたが、コロナが収束に向かう現在では会社への出勤や対面サービスが増え、家庭は買物やレジャーを楽しむ人が増えています。

問題はこうした変化にどう対応するか、ターゲットのニーズをどう読み取るかという環境分析が必要な点です。あるニーズについては、コロナ禍前に戻る、別のニーズは戻らない、さらに別のニーズは半分程度戻る、また別のニーズは新たなニーズに変化する、といった可能性を適切に分析しなければなりません。

そして、こうしたニーズの変化は、単にコロナの影響だけでなく、物価高騰や米国を中心とする世界経済の状況などに加え、Z世代や高齢者層などの各世代の価値観の変化などに影響を受けるため、様々な角度から分析することが求められます。

5-4 会社設立の判断

副業やフリーランスの形態で起業した後、事業の拡大には会社設立は有効な手段になるため、その時の状況を踏まえつつ法人化の検討を行うことも必要です。

副業やフリーランスの形態では、資金・人材・取引先の確保・拡大の上で不利になることもあるほか、一人や少人数による組織運営では事業の拡大に限界が生じやすくなります。

販売先や仕入先・パートナーの拡大は直接的に事業の成長に繋がり、優秀な人材の増員がその成長を支える基盤となりますが(優秀な従業員が多いほど、彼らの知識・経験と努力に基づく成長が可能)、そうした拡大・獲得には個人事業主より法人の方が有利です。

また、個人事業主としての収入が増えてくると、法人の方が節税効果は高くなりキャッシュフローも改善しやすくなります

5-5 事業拡大向けた取組

事業者としてのさらなる発展を目指す場合、法人化して事業を拡大していくことはビジネスの定石です。事業の拡大には必要資源を確保し、協力者・パートナーや販売先を増やしていく必要があります。そのためには法人化を含めたやるべき取組があるのです。

先に示した通り、法人化は資金・人材・取引先を増やすための重要な手段となりますが、それだけでは効果は発揮されません。適切な活動を実施して初めて必要な資源等が得られるのです。

例えば、資金や取引先等の開拓については、VCに直接アピールする、VCや大企業等のビジネスコンテストに参加してビジネスモデルをPRする、クラウドファンディングを活用する、などの取組も必要になります。

また、人材確保もそうしたコンテスト等での受賞、公的施策での事業の受託や補助金・助成金の入手、などで実績を積んで知名度が向上すれば、人材採用も楽になるはずです。

もちろん創業した事業を安定させ、マーケティングに注力して少しずつでも事業を拡大させるための取組を計画的に実施していかねばなりません。この行動は事業の発展に必要となるだけでなく、VC等を含む支援者等の支持を得るためにも不可欠です。

自社および事業を発展させるための要素は様々ですが、その根本となる経営資源や支援者等を確保していくための取組には特に注力しましょう。

6 まとめ

フリーランスが成功していくには

コロナ禍を挟んでフリーランスが大幅に増加しました。人手不足で困っている企業などではフリーランスの活用に積極的な事業者もおり、フリーランスにとっては追い風が吹いていますが、コロナが収束に向う現在、今後の仕事量には不透明さも残ります。

こうした状況の中でフリーランスが成功していくには、各種の資源や取引先等を増やして事業を安定・拡大させる必要があり、そのための手段として会社設立は有効です。法人化は取引面や金銭面でのメリットも大きいため、適切な時期に実現できるように検討してみてください。