国交省およびNEXCO東日本らは9月、インバウンド産業発展の振興策としてレンタカーを利用する外国人旅行者限定で、全国の高速道路を乗り放題できるチケット「Japan Expressway Pass」を10月より販売開始すると発表しました。

チケットは最大14日間利用可能で、全国275店舗のレンタカー会社から申し込むことができ、外国人ほか、外国に永住権を持つ日本人も利用することができます。国交省は、今後、観光局等と連携しながら海外における周知活動を実施する方針です。

また、NEXCO東日本・中日本・西日本は、外国人向けの分かりやすい道路案内標識にするため「ナンバリング」を2020年までに導入するとしました。

政府は、先日、訪日外国人観光客数を「2020年までに4000万人、2030年には6000千万人」とする目標を掲げており、観光分野拡充に向けた新たな財源の確保に関する議論を始めたばかり。「質の高い」観光先進国の実現に向けて、大きく動き出しました。

1 高速道路フリーパスの概要

全国の高速道路を無制限に利用できる「Japan Expressway Pass」は、全国エリアを対象とした初めての高速道路乗り放題パスとなります。

プランは最大7日間または14日間の2種類から選ぶことになります。価格はそれぞれ、2万円と3万4000円で、対象者は外国のパスポートを所有しているか(外国人旅行者)、もしくは外国に永住権を持つ日本人で、日本で利用可能な運転免許証を持つ人に限られます。

プラン 価格 利用期間
7days 20000円 連続最大7日間
14days 34000円 連続最大14日間

(国土交通省資料より作成)

申し込みは全国275店舗の各レンタカー会社(タイムズカーレンタル、トヨタカーレンタルなど)から行うことができ、対象車両はETCを搭載したものに限られます。

 

1-1 乗り放題となる対象エリアは?

国交省によると、「Japan Expressway Pass」で利用できるエリアは、NEXCO東日本が管理する高速道路、NEXCO中日本が管理する高速道路、NEXCO西日本が管理する高速道路、宮城県道路公社が管理する三陸自動車道、京都府道路公社が管理する京都縦貫自動車道、兵庫県道路公社が管理する播但連絡道路となります。

また、北海道内の高速道路、第二神明道路、関門トンネル、首都高速道路、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路が管理する道路は対象外となります(2017年10月13日時点)。

(▲青色で記された道路が乗り放題対象の道路)

1-2 各地域で用意している「乗り放題」パス

「Japan Expressway Pass」とは別に、各地域版の外国人旅行者向け「乗り放題」パスが、現時点で7種類用意されています。

北海道内で乗り放題可能な「Hokkaido Expressway Pass」では、NEXCO東日本が管理する道内高速道路を、「2日間3600円」から「最大14日間1万1300円」で利用することができます。

また、名古屋高速道路公社が提供する「Nagoya Express Pass」では、1日間〜7日間が1500円、8日間〜14日間が2000円で利用可能となります。

・ 地域別「乗り放題」プラン

販売会社 商品名 価格
NEXCO東日本 Hokkaido Expressway Pass 1日間3600円〜14日間11300円
NEXCO東日本 Tohoku Expressway Pass 1日間4000円〜14日間12000円
NEXCO中日本 Central Nippon Expressway Pass 1日間5000円〜14日間16000円
NEXCO西日本 San’in-Setouchi-Shinkou Expressway Pass 1日間6000円〜10日間13000円
NEXCO西日本 Kyushu Expressway Pass 1日間3500円〜10日間11500円
名古屋高速道路公社 Nagoya Expressway Pass 1日間〜7日間1500円、8日間〜14日間2000円
愛知道路コンセッション Aichi Toll Road Pass 1日間〜7日間1500円、8日間〜14日間2000円

(国土交通省資料より作成)

1-3 利用できるレンタカー

「Japan Expressway Pass」で利用可能なレンタカー店舗は、指定の275店舗となりますが、国交省は状況次第で取り扱い店舗を増やす可能性もあるとしました。

レンタカーは、「タイムズカーレンタル」104店舗、「トヨタレンタカー」151店舗、「ニッポンレンタカー」2店舗、「パジェット・レンタカー」3店舗、「平成レンタカー」5店舗、「JR西日本レンタカー&リース」7店舗、「JR東日本レンタリース」3店舗となります。

たとえば「タイムズカーレンタル」では、都内なら17店舗から利用できます。一方、トヨタレンタカーは大阪エリアが充実しており、全52店舗から利用することができます。

※ 東京17店舗(羽田店、羽田空港第1ターミナルカウンター店、羽田空港第2ターミナルカウンター店、目黒碑文谷、笹塚駅前、永田町駅前、新小岩駅前、立川駅南口、府中駅前、中野サンプラザ、潮見駅前、大手町・東京サンケイビル、恵比寿駅前、タイムズステーション池袋、八王子駅南口、タイムズステーション有楽町イトシア、品川駅前)。

※ 大阪全52店舗(箕面店、阪急石橋・阪大西店(大阪空港最寄店)、阪急服部天神駅前店、阪急高槻市駅前店、茨木店、江坂店、江坂駅前店、新大阪新幹線口店(新幹線 新大阪駅最寄店)、新大阪駅前店、新大阪店、天神橋筋六丁目駅前店、梅田北店、南森町店、大阪駅前店、プレミアムショップ梅田、大阪市エリア(東部)、東淀川上新庄店、蒲生店、町店、淀屋橋北浜店、御堂筋心斎橋店、船場店、なんばターミナル店、長堀橋駅前店、谷町店、玉造駅前店、緑橋駅前店、北巽駅前店、PiPit蒲生、歌島橋店、新梅田シティ店、野田阪神駅前店、西長堀駅前店(バス・トラックセンター)、なにわ筋阿波座店、阿倍野駅前店、住之江公園駅前店、平野店、枚方市駅前店、守口店、寝屋川市駅前店、大東店、東大阪商大前店、近鉄八尾駅前店、松原店、富田林駅前店、堺市役所前店、堺鳳浜寺店、泉大津駅前店、新金岡店、泉北深井駅前店、泉北泉ヶ丘駅前店、岸和田店、泉佐野店 (関西空港最寄店))

2 2020年までに高速道路ナンバリングを導入

国交省は、訪日外国人をはじめとする全ての高速道路利用者が分かりやすい道路標識を実現するため、2020年をめどに路線名に併せ、「ナンバリング」を導入すると発表しました。

 

2-1 ナンバリングとは

ナンバリングでは、高速道路の路線名に併せ、そのほか固有の言語に依存しない路線番号を用います。

具体的には、機能が似ている路線はグループ化し、道路種別や機能をアルファベットで表現。たとえば、「東名高速道路」は、路線番号の頭に高速道路(Expressway)を意味する「E」を用いて「E1」と表します。

首都圏、名古屋圏の環状道路は、アルファベットで機能を表現するとともに、既存の都市高速道路の環状道路との整合性にも配慮し、「東京外環自動車道」は「C3」となります。

このように既存の2桁以内の国道番号で表示するのが「ナンバリング」制度です。

・ ナンバリング標識(一例)

高速道路名 ナンバリング表示
東名高速道路 E1
新東名高速道路 E1A
新名神高速道路
勢湾岸自動車道
東京外環自動車道 C3
東京湾アクアライン C4
旭川・紋別自動車道 E39
函館・江差自動車道 E59

(参照:国交省HP


 

2-2 観光先進国の実現なるか

観光先進国の実現のために訪日外国人観光客をさらに呼び込み、併せて観光産業を発展させることで、政府は少子高齢化で低下する生産力を補いたい狙い。さらに新たな財源確保の手段として出入国者に対して負担を求める「出国税」導入に向けた本格的な議論も開始されました。

この度の高速道路無料パスにより、果たして訪日外国人観光客は増え、日本で使うお金は増えるのでしょうか。今後の動向に注目です。