企業経営者になるのは東大や京大といった超難関国立の卒業生ばかりではありません。

東京商工リサーチは10月、「全国社長の出身大学調査」を行い、社長の出身大学で最も多かったのは7年連続で日本大学になったと発表しました。通信学部や短期大学部を含めれば学生数7万5000人を超えるとされる同大学。卒業生は114万人を超えるなど名実ともに日本最大のマンモス大学と言えます。

日大出身の社長は全国で2万人を超えており、2位の慶応義塾大学を倍以上引き離しました。以下、3位早稲田大学、4位明治大学、5位中央大学となります。

上位100以内の4分の3は私立大学が占め、国立大学は25校のみ。最も多かったのは11位の東京大学(3759人)となります。次いで、京都大学(21位)、大阪大学(25位)、北海道大学(26位)、九州大学(29位)、東北大学(30位)と旧帝国大学が名をつらねました。

本記事では東京商工リサーチ発表の資料をもとに、社長の出身大学ランキングを詳細に見ていきます。

1 最も社長を輩出している大学ランキング

東京商工リサーチによる「全国社長出身大学調査」は今回で7回目となり、対象となった企業は同社データベースに登録されている296万9431社におよびました。

 

1-1 日本大学が7年連続首位を獲得

調査結果によると、最も社長を多く社長を輩出しているのは日本大学で、2万2135人でした。次いで2位慶応義塾大学(1万890人)、3位早稲田大学(1万771人)、4位明治大学(8921人)、5位中央大学(8324人)、6位法政大学(6588人)、7位近畿大学(5895人)、8位東海大学(5579人)、9位同志社大学(5145人)、10位関西大学(4001人)と続きました。

・ 全国社長出身大学ランキング トップ10

順位 大学名 輩出人数
1 日本大学 2万2135人
2 慶応義塾大学 1万0890人
3 早稲田大学 1万0771人
4 明治大学 8921人
5 中央大学 8324人
6 法政大学 6588人
7 近畿大学 5895人
8 東海大学 5579人
9 同志社大学 5145人
10 関西大学 4001人

(東京商工リサーチより作成)

トップとなった日本大学は2010年以降、7年連続で首位を維持しています。学生数は国内最大となる7万5261人(通信教育部・短期大学部含む)で、女子学生数数は2万1427人で全国一となります(2016年5月時点)。創立127年の歴史をもち、卒業生の数は113万人を超えます。

このほか、同大学は女性社長の出身大学別ランキングでも全国1位となる231名を輩出しています。(参照:帝国データバンク)

11位以下は、東京大学(3759人)、12位立教大学(3633人)、13位青山学院大学(3590人)、14位専修大学(3558人)、15位立命館大学(3519人)、16位福岡大学(3208人)、17位関西学院大学(3098人)、18位東洋大学(2631人)、19位愛知学院大学(2548人)、20位駒澤大学(2481人)と続きました。

・ 11位以下の大学

順位 大学名 輩出人数
11 東京大学 3759人
12 立教大学 3633人
13 青山学院大学 3590人
14 専修大学 3558人
15 立命館大学 3519人
16 福岡大学 3208人
17 関西学院大学 3098人
18 東洋大学 2631人
19 愛知学院大学 2548人
20 駒澤大学 2481人

(東京商工リサーチより作成)

1-2 社長数は意外と少ない国立大学勢

一方、東大はじめ最難関とされる国立大学の社長輩出数は意外と多くありません。

最も多いので11位東京大学の3759人となり、次いで、21位京都大学(2400人)、25位大阪大学(2103人)、26位北海道大学(2093人)、29位九州大学(1900人)、30位東北大学(1860人)となりました。

このほか、国公立大学は、33位神戸大学、40位広島大学、46位千葉大学、54位長崎大学、59位鹿児島大学、63位新潟大学、66位岡山大学、68位東京医科歯科大学、69位一橋大学、73位信州大学、74位金沢大学、75位大阪市立大学と全部で25校がランクインしました。

・ 国公立大学抜粋

順位 大学名 順位 大学名
11 東京大学 54 長崎大学
21 京都大学 59 鹿児島大学
25 大阪大学 53 新潟大学
26 北海道大学 66 岡山大学
29 九州大学 68 東京医科歯科大学
30 東北大学 69 一橋大学
33 神戸大学 73 信州大学
40 広島大学 74 金沢大学
46 千葉大学 75 大阪市立大学

(東京商工リサーチより作成)

2 都道府県別に見る社長輩出数

次に、都道府県別に大学別の社長数を見ると、日本大学が東日本を中心に計20都県でトップとなりました。

・ トップとなった20都県

青森県 福島県 埼玉県 新潟県 静岡県
岩手県 茨城県 東京都 山梨県 香川県
秋田県 栃木県 神奈川県 長野県 高知県
山形県 群馬県 千葉県 岐阜県 宮崎県

(東京商工リサーチより作成)

 

2-1 西日本では各県を代表する大学がトップに

日本大学出身の社長は東日本に特に多くなりますが、西日本では高知県、宮崎県のみとなりました。

西日本は、石川は金沢大学、京都は同志社大学、神戸は甲南大学、島根は島根大学、広島は広島大学、沖縄は琉球大学のように、各県に所在する私立大学もしくは国立大学出身の社長が多くなるという特徴が見られました。

・ その他道府県の出身大学トップ(日大以外)

北海道 北海道大学 島根県 島根大学
宮城県 東北大学 岡山県 岡山大学
愛知県 愛知学院大学 広島県 広島大学
三重県 三重大学 山口県 山口大学
富山県 富山大学 徳島県 徳島大学
石川県 金沢大学 愛媛県 松山大学
福井県 福井工業大学 福岡県 福岡大学
滋賀県 立命館大学 佐賀県 福岡大学
京都府 同志社大学 長崎県 長崎大学
大阪府 近畿大学 熊本県 熊本学園大学
兵庫県 甲南大学 大分県 福岡大学
奈良県 近畿大学 鹿児島県 鹿児島大学
和歌山県 近畿大学 沖縄県 琉球大学
鳥取県 鳥取大学    

(東京商工リサーチより作成)

2-2 U・Iターン現象が強まっている?

東京商工リサーチは、国公立を中心に昨年より順位を上げた大学が多くなったことについて、

「景気の先行き不透明感を払拭できないことに加え、親の収入の伸び悩みなどで東京への一極集中から地元大学の見直しが進んでいることが背景にあるのかも知れない。こうした動きが進むと、これまで東京一極集中だった地方の学生の進学が地元大学に定着することも期待される。ただ、その一方で地方の企業はこれまで以上に優秀な学生が就職を考慮するだけの技術や業務の将来性を示し、賃金や福利厚生など待遇面の改善を求められることになる」

と述べました。

大企業本社の3割超は東京に集中し、オフィスワークも東京ほか神奈川、埼玉、千葉の1都3県や、大阪、奈良、兵庫に偏在しています。しかし独立行政法人の労働政策研究・研修機構の調査によれば、「地元に戻って働きたい」と希望する地方出身の出身県外移住者は45%にのぼるとされます。

(独立行政法人労働政策研究・研修機構「地域雇用の現状と課題」より)

現在、地方創生政策の一環としてUIJターンの促進・支援の動きが活発しており、たとえば、農水省はこのような傾向を踏まえ、地方での就業機会の確保や定住を用意にするための環境を整備に取り組んでいます。