着々と準備が進められるカジノ含む統合型リゾート(IR)。政府は秋の臨時国会でIR実施法を提出する予定で、懸念されているキャンブル依存症対策に向けて、実態調査を行い、結果を発表しました。

国内で「ギャンブル依存症の疑い」ありと診断された経験者は3.6%で(20歳以上)、人口に換算すると320万人いると推定されました。
また過去1年以内に「ギャンブル依存症の疑い」の経験者は、成人の0.8%に当たる約70万人と推定されました。

諸外国との比較では、欧州が0.5~0.8%、米国が1.9%(過去1年間では欧州0.2%~1.9%、オーストラリア約2%)であることから、日本は比較的高い水準であることがわかります。

政府は、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議を開き、今年8月には各種目の強化対策を決定しました。今後は、ギャンブル等依存症対策基本法案の成立後にさらなる対策の拡充を検討する予定です。

あらためて浮き彫りとなった配達ドライバーの過酷な労働環境。政府は、「過労死等が多く発生しているとの指摘がある重点業種」として、「自動車運転従事者」「外食産業」の2業種を挙げ、より掘り下げた調査・分析を行いました。

1 成人の3.6%がギャンブル依存症?

厚生労働省は9月、ギャンブル依存症に関する実態調査の中間まとめを発表しました。
調査は、国立病院機構久里浜医療センター協力のもと、20歳から74歳の全国1万人の男女のうち、4685人を対象に面接調査が行われました。


 

1-1 人口換算すると320万人

生涯で「ギャンブル依存症の疑い」と診断された経験者は、成人の3.6%にあたる320万人と推定されました。

また、過去1年以内に「ギャンブル依存症の疑い」と診断された経験者は、成人の0.8%の人口換算70万人と推定されます。

 

1-2 パチンコ・パチスロが全体の8割

最も費用を投じた種目では「パチンコ・パチスロ」が78%で最も多くなりました。

生涯におけるギャンブル依存症の発現率を諸外国と比較すると、欧州各国が0.5~0.8%、米国1.9%で、日本は米国よりも低く欧州と同程度となります。

また、過去一年間では欧州各国0.2~1.9%、オーストラリア2%前後で、日本は比較的高くなりました。

2 3月末に行われた調査結果と一致

厚労省は今年3月末にもギャンブル依存症調査の実態調査を行っています。その際の調査対象者数は2,200名で、回答者数993名、回答率は45.1%でした。

過去12か月以内のギャンブル等の経験等について、「ギャンブル等依存症が疑われる者」とされた割合は、成人の0.6%、平均年齢は45歳、男女比は4:1でした。

「最もよくギャンブル等を行っていた頃に最もよくお金を使ったギャンブル等の種別」では、「パチンコ・パチスロ」が最も多く、その掛け金の平均は1ヶ月2.8万円でした。

 

2-1 ギャンブル依存症の相談件数は過去3年間で1件

各競技施行者はギャンブル依存症者に対して専用の相談窓口を設けたり、最寄りの精神保健福祉センター、保健所、医療機関等に関する情報提供を行ったりしますが、たとえば、中央競馬及び地方競馬を通じた過去3年間の相談件数は2015年のわずか1件のみとなります。

競馬主催者らはギャンブル等依存症に関する相談を受け付けていることの周知活動に取り組んでおらず、また、相談を受けた際の対応などがマニュアル化されていないなどギャンブル等依存症へ対応する体制が整備されていません。

そのため、厚労省は、「各競馬主催者の職員及びインターネット投票サイト運営者の職員に対してギャンブル等依存症に関する知識向上のための従業員教育を行い、ギャンブル等依存症へ対応する体制を整備する必要がある」と述べました。

2-2 パチンコに対する規制強化は?

また、パチンコのギャンブル依存症者に対してはリカバリーサポート・ネットワーク(RNS)と呼ばれる専門の治療相談窓口が設けられており、専門のスタッフが平日午前10時から午後4時、常時3~4名の体制で対応しています。

また課題としては、18歳未満のパチンコ店への立ち入り禁止の徹底や出玉(パチンコで客が獲得する玉のこと)の基準の見直し、各営業店舗による「パチンコ店における依存(のめり込み)問題対応ガイドライン」や同「運用マニュアル」を策定などの積極的な取り組みが求められています。

 

2-3 各種目ごとに強化対策を決定

8月末、政府は、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議を開催し、各種目の強化対策を決定しました。

種目 管轄
競馬 農林水産省
競輪 経済産業省
モーターボート競走 国土交通省
パチンコ 警察庁

今後、IR推進本部は、秋の臨時国会で提出されるIR実施法案とは別にギャンブル等依存症対策基本法案を整備し、依存症の予防、治療、相談体制の整備に取り組むとしました。