起業にあたり、商号である会社名をどう決めるかというのは、意外と悩ましい問題です。名は体を表すと言われるように、会社名は企業イメージを左右する重要なファクターです。上場している大規模老舗企業が、社名を変更することも珍しくありませんが、創業以来のアイデンティティーを損なわずに企業イメージの刷新を目指す社名変更は困難を極めると言われます。今回は重要な社名を決める際の、守るべき法的ルールや命名のポイントや、会社設立時に許認可が必要な業種について解説します。

目次

1 会社名を決める際のルール

会社の名称は、会社法では「商号」と定義され、登記事項となっています。商号の選定にあたっては、会社法のほか各種法令の規制を受けるため、これらのルールに適合しないと設立登記申請が受け付けられないこともあります。まずは、この法令上のルールについて十分な理解が必要となります。

 

1-1 会社法による規制内容

会社法第6条第1項は、「会社は、その名称を商号とする」と規定し、商法の「商号選定自由の原則」と整合しています。しかし、この原則は、下記のように一定の規制がなされています。

(表1)会社法による規制

規制事項 説明 会社法条項
所定の文字を用いること 会社は種類に従って、その商号中に、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければなりません。 第6条第2項
故意に、他の会社と誤認される商号の使用は禁止される 何人も不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称または商号を用いてはなりません。なお、「不正の目的」とは、故意に他の会社の商号等に類似した商号等を使用して公衆を欺くといった反社会的な行為をいいます。 第8条第1項
商号単一の原則 会社は一つの商号しか許されず、営業の種類ごとに異なる商号を用いることはできません。これは、会社法に明文規定はありませんが、判例法としての考え方によります。 判例を根拠とする

 

1-2 その他の法令による規制内容

会社法のほか、商業登記法や不正競争防止法、その他銀行法等の業法において使用が禁じられる文字等があります。主なものは以下の通りです。

(表2)その他の法令等による商号の規制

規制事項 法令・通達等
他人の商号として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商号等表示を使用して他人の営業と混同させる行為、及び、その商号を使用する行為は禁止されます。 不正競争防止法第2条第1項
その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、本店の所在場所が、当該他人の商号の登記所在場所と同一であるときは、登記することができません。 商業登記法第27条
登記すべき事項に無効または取消の原因がある時(暴力や違法行為を連想させるような商号など、公序良俗に反する商号)は認められません。 商業登記法第24条第10号
会社の本店の商号に支店であることを示すような文字(支社、支部、出張所等)を用いることはできません。なお、2009年7月に、「支部」という文字を使用することを可とする法務省商事課長通知が発出されましたが、相反する考え方も示されており、念のため使用しないほうが賢明です。 法務省民事局長回答(大正10年10月)
会社の商号中に、会社の一営業部門であることを示すような文字(営業部など)を用いることはできません。 登記研究404号(注1)
会社の種類と同じように、業種によって用いなければならない文字があり、これらの業種と関係のない者が使用することを禁じられているものがあります。 (例)「銀行」「信託」「生命保険」「信用金庫」等 各業種の業法
【商号に用いることができる文字】
商業登記規則によって使用できる文字が決められています。
①漢字、②ひらがな、③カタカナ、④ローマ字(大文字及び小文字)、⑤アラビア数字、⑥符号(「&(アンパサンド)」、「‘(アポストロフィー)」、「,(コンマ)」、「-(ハイフン)」、「.(ピリオド)」、「・(中点)」) なお、⑥の符号は、字句を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができ、商号の先頭または末尾に用いることができません。ただし、「.(ピリオド)」については、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます。また、⑤のアラビア数字は、数字を横書きする時に用いることができます。
商業登記規則第48条、第50条第2項

(注1)登記研究
法務省民事局が編集に関わっていると言われる登記に関する専門誌で、法務省の公式な見解を整理した「先例」に次いで登記実務に大きな影響力をもっています。

 

1-3 商号の調査

(表2)で示した商業登記法第27条の規定に沿うためには、自分の選定した商号を法務局等で調査する必要があります。自分の選定した商号が、既に設立予定の本店所在地で登記されている場合は、その商号をもって登記することができませんので、調査は必ず必要です。同一所在地とは番地まで含めますので、マンション等が要注意です。

 

1-4 「商標」登録と商号の関係

商業登記法第27条は、同一住所において同一の商号を登記することを禁じていますが、これは、イメージも良く独自性の強い社名を登記したとしても、極端な言い方をすれば、番地さえ違えば同じ町内でも同一の商号の会社が誕生する可能性があるということです。将来、自社が著名な企業になれば、不正競争防止法で護られますが、同一の社名の会社が近所に所在して快く思う人はほとんどいないでしょう。

商号とよく似たものに「商標」があります。商標は、商品やサービスにネーミングして登録する制度ですが、これは、全国でただ一つの権利であり、他人の使用を禁止し、自分(自社)が独占して使用できる権利です。商標は全部で45区分ありますので、どの区分で申請するかも重要です。万が一、同じネーミング又は類似のものがあっても、区分が異なれば登録の可能性はありますので留意しましょう。

ほとんど文字しか使用できず、また、株式会社や合同会社といった文字を必ず入れなければ登記できない商号に対し、商標は、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩の結合(「標章」といいます)といった幅広い表現が許されます(商標法第2条第1項)。これは、商品やサービスのネーミングだけでなく、商号との関連性を高めることで企業イメージを高める手段が増えることを意味します。

たとえば、商号「アサヒビール株式会社」が「アサヒビール」という商標を登録すれば、株式会社という文字が外れ、すっきりしてイメージも良く、しかも商号の本体部分を残せます。キャノン株式会社なら、製品に付されている「Canon」が商標ですが、商号本体部分をローマ字にかえてスタイリッシュで分かりやすい商標です。

このように、商号から株式会社などの文字を外して商標登録する方法は、かなり多くの企業が行っています。文字商標として登録をしておけば、専用使用権がありますので他者から侵害されることはありません。商号のネーミングが決まったら、すぐに商標登録をして商号としても使用できるように、専用使用権を確保しておくのが賢明です。また、商号と商標には登記や登録に関する期間の制限がありますので、これも留意しておく必要があります。商号は、正当な事由なく2年間使用しないときは抹消請求の対象(商業登記法第33条第1項2号)となり、商標は、使用の有無に関係なく設定の登録の日から10年間(商標法第19条「存続期間」)で終了します(更新登録申請により存続期間の更新は可能)。

2 会社名を決めるポイント

商標を押さえるという段取りも大事ですが、まずネーミングができないと話しは始まりません。ここからは、いくつかの角度から社名決定のポイントを整理してみます。

 

2-1 ローマ字・カタカナの使用上の注意

2002年の商業登記規則の改正で、社名にローマ字を用いることができるようになり、ローマ字の会社名が増えてきました。石川島播磨重工業は、2007年に「株式会社IHI」と改称しました。以前から子会社等で「アイ・エイチ・アイ」というカタカナ表記は使用していましたが、法改正を機に本体の社名にローマ字を採用したものです。エヌ・ティ・ティ・ドコモは「NTTドコモ」に、日本ケンタッキー・フライド・チキンは日本KFCホールディングと改称しています。

このあたりの会社は、上場会社で広告戦略による知名度が高いこともあり、漢字やカタカナからローマ字表示にかわってもさしたる問題はないと思いますが、「株式会社NSD」や「株式会社JCU」、「株式会社TBK」等々、株式会社がついているため、かろうじて何かの会社だと言うことはわかりますが、何をやっている会社なのかを知るためには、公式サイトを見ないとわかりません。

社員を採用する際などは、企業情報の提供やイメージを高めるための仕方に工夫をしないと、学生から認知されにくいのではないかと心配になります。しかも、ローマ字の羅列は、どれも似通って見え、また、同一商号の制限される範囲が極めて狭いことを考えれば、同名の会社が頻出する可能性が高くなります。漢字は、表意文字(注2)ですので意味を伝えやすいと言えますが、カタカナやローマ字というのは表音文字(注2)のため意味を掴みづらいという難点があります。

できれば、業務のイメージが伝わるような表現を心がけ、一部漢字を入れるとか、よく知られた言葉に通じる文字並べにするといった工夫が必要です。とにかく、分かりやすく、企業イメージを掴みやすいネーミングとすることが大きなポイントの一つです。

(注2)表意文字・表音文字
一つ一つが意味を持つ文字を集めたものが表意文字で、漢字やアラビア数字などが該当します。表音文字は、音声を通して意味を伝える文字で、アルファベット文字を使用する英語などが該当します。

 

2-2 愛称や略称を同時に考える

たとえば、「アーク引っ越しセンター」と「アート引っ越しセンター」という一文字しか違わない企業がありますが、間違える人が多いのではないでしょうか。引っ越し業者ならどこでも構わないという人もいれば、口コミなどで評判の良いほうを選びたい人もいるはずです。一方で、宅配業の会社を見てみると、「クロネコヤマトの宅急便(ヤマト運輸)」、「ペリカン便(日本通運)」、「飛脚宅配便(佐川急便)」、といった、キャッチフレーズというか代名詞のようなコピーを普及させることで企業価値の向上につなげるケースもあります。

商号を補完するという意味でも、商号以外で企業のイメージを高めるという意味でも、このようなキャッチコピーは重要性が高いと言えますので、「ニックネーム(愛称・略称)」を同時に考えることも大きなポイントといえます。愛称・略称が付けやすい商号を選ぶことも一つでしょう。また、ちょっと趣旨は違いますが、新聞社や雑誌では、基本的には企業の略称を勝手に書いていますが、企業側の要請で変えることもあるようです。

日本経済新聞は、記事で使用する企業名の上限を6文字としており、その範囲内で掲載する企業によって使用する文字数は異なります。同社が使用する企業の略称で、ステンレス管最大手のモリ工業は、「モリ工」から「モリ工業」に変更になっています。これは、一見すると「もりえ(ファミマの子会社に「モリエ」が存在)」に読めます。このように、同様の名称の企業が実在するようなときは、変更の要請があるというのです。商号自体も重要ですが、企業イメージや、企業の特性・属性を伝えるためには、当事者である企業とともに、メディア側も一定の配慮が必要だと言うことです。

これから起業し、社名を考える方にとっては、これも一つのヒントと言えます。この記事の後半でご紹介する有名企業の商号の中には、諸々の事情で変更することもあれば、代表的な商品の名称を商号とすることで、その企業の存在意義を主張する旗のごとく守り抜く企業もあります。一旦つけた商号が、ステークホルダーに対して何を語り、周囲がどのように扱ってくれるのかを想定することもまた、ネーミングの重要な要素と言えます。

2-3 差別化ネーミングも検討する

「俺の」シリーズで一世を風靡している「俺の株式会社」。ブックオフの創業者である坂本孝氏が世に送り出しました。「俺の」シリーズは、「フレンチ」、「イタリアン」、「やきとり」、「焼き肉」、「そば」と、次々と業容を拡大しています。別の商標で似たようなシリーズもあります。コンビニを展開する株式会社ファミリーマートの、「俺の」スイーツシリーズ、東洋水産株式会社の「俺の」麺シリーズなど、ここまでくると商標の奪い合いになってしまいますが、「俺の株式会社」は、サービス名の商標が商号になった成功例の一つでしょう。

 

2-4 広告媒体はヒントの山

伊藤忠商事系のリサーチ会社、マイボイスコム株式会社がおこなった自主企画アンケート調査で、電車の広告に関するものがあります。電車利用者8割のうち、電車内の広告を見る人は9割弱。中吊りが7割強、窓の上・ドアの上が各3~4割という結果です。この電車内の広告を見る人が興味をもって読む広告は「雑誌」が最も多く、「旅行・観光、ホテル」、「書籍」、「食品、お菓子」などが続きます。

注目すべきは「雑誌」です。週刊誌の広告は新聞でも必ず目をひきますが、電車の中吊り広告は、かなり注目されているため、某有名週刊誌2社がしのぎを削ってちょっとした問題が起きたこともある代物です。「見出し」は、売上部数に直結するもので、「生鮮品」である週刊誌の命ともいえるものです。各社が、どうやって読者を獲得するのかという一点において叡智の限りを尽くすテーマですので、起業における社名決定の大きなヒントを与えてくれるものでもあります。

どのキャッチコピーが優秀かという戦争のようなもので、注意を引くためには、短く、的確な言葉で要点を表現しなければなりません。キャッチコピーの基本は、「自分に関係があると思ってもらう」、「強い言葉を使う」、「相手の心に(どうして?)という疑問を創り出す」ことだと言われます。

キャッチコピーの作り方から、長く使い続け、伝統をつなぐための社名をつけるときのヒントを得るためには、「注目を惹く」ということが必要です。例えば、「語呂のよさ」です。これは愛称や略称を考えるときのポイントとなります。「言葉のリズム」、「同じ言葉を並べる」、「方言を用いる」など、いくつかの要素から社名や愛称・略称につながるものをあげてみることも一つの方法です。

 

2-5 切り口を多角化する

漠然とネーミングを考えようとすると、何らかの偏りがでてくるものです。業界の流行りや、業界特有のワードからはじまるのが常ですが、そのあたりで漂ってしまって前進できないというケースはよくあります。同じ言葉を唱えるにしても、多角的な視点で検討してみると意外といいアイデアが浮かぶかもしれません。下表は、ネーミング開発の草分け会社㈱創造開発研究所代表の高橋誠氏が提唱している、「ネーミング・チェックリスト法」といわれる手法です。ネーミング例も示されていて、イメージしやすいものですので参考になります。

(表3)ネーミング・チェックリスト法(最新のネーミング強化書/PHPビジネス新書・高橋誠著より一部加工して記載)

  1. ひらがな、カタカナ表現にしてみる(りそな銀行、セブン銀行、らでぃっしゅぼーや/社名)
  2. 漢字表現にしてみる(無印良品/社名)
  3. ローマ字表現にしてみる(au/社名、KITTE/商業施設)
  4. 数字表現にしてみる(1Q84/書名)
  5. 記号表現にしてみる(a7Ⅱ/カメラの商品名)
  6. 長文表現にしてみる(もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら/書籍)
  7. 短文表現にしてみる(俺のフレンチ/店名等商標)
  8. 色彩表現にしてみる(赤いきつね、黒霧島、金麦/商品名)
  9. 擬人化表現にしてみる(なっちゃん、ガリガリ君/商品名)
  10. 地名表現にしてみる(霧ヶ峰/エアコン)
  11. 人名表現にしてみる(草刈機MASAO/草刈機)
  12. 方言表現にしてみる(おたべ/京菓子)
  13. 時間表現にしてみる(TODAY/自動車)
  14. 語呂合わせ表現にしてみる(ムシューダ/防虫剤)
  15. 呼びかけ・掛け声表現にしてみる(お~い お茶/飲料)
  16. 擬音・擬態語表現にしてみる(じゃらん/旅行サービス業)

 

2-6 各種辞典からヒントを得る

「国語辞典」、「古語辞典」、「漢和辞典」、「四字熟語辞典」、「類語や同意語辞典」等々様々な辞典、そして、ちょっと毛並みが違いますが「座右の銘」や「雑学」系の書籍など、目をつぶって意図なく開けたページから閲覧するだけで、注意を惹く言葉やエピソードが満載です。その言葉自体を使わないまでも、思い浮かぶ言葉だけでネーミングを考えるよりも、ずっと多くの言葉やヒントのシャワーを浴びることができます。

最近の「令和」元号の出典として一躍脚光を浴びることとなった「万葉集」なども当たってみる価値はあります。雑学系の書籍にも、古来のエピソードなどが多く掲載されていますので、格式ばった書籍にはない斬新な命名のヒントが隠されているかもしれません。

 

2-7 グルーバル化を意識する

「トヨタ自動車」や「ホンダ」、「キヤノン」、「ソニー」といったグローバル展開する企業も多いですが、トヨタやホンダなどは、長い歴史の中で積み上げてきた実績で知名度が向上した企業です。しかし、海外へ進出した当初は、TOYOTAは「TOY OTA(玩具のオータ)と読まれ、HONDAは、フランス語読みではHが発音されないため「オンダ」と読まれ、英語読みでは「ハンダ」と読まれたそうです。日本の名前が世界で通じない例が大変多いとのことですが、グローバル化した今日、これから起業して社名をつける際、海外で難なく通用するネーミングも必要です。

前出の高橋誠氏は、グローバル・ネーミングについても提言を行っています。それが次の5つのポイントです。「主要言語で良いイメージ(英・独・仏・西・伊・中)」、「通常の英文字で表記できる」、「伝えたい意味が伝わる」、「発音して音感が良い」、「視覚イメージが良い」。これらは、本格的に取り組むには外国人の力も借りないといけませんが、ローマ字やカタカナ表記は、業務の内容と企業イメージを伝えることができるものがベストだということを念頭に、対外的にシンプル且つ文字だけで会社のイメージを能弁に語る社名を選びましょう。

 

2-8 最終チェック

ここまで挙げたポイントを整理し、条件を満たしているかを検証してみましょう。

チェック項目 内容
法令上の制限はクリアしているか 会社法、商業登記法等関係法令に抵触しないかを確認
商標登録可能か 商品名やサービス名は必ず商標登録し、社名に使えそうなワードがあれば、登録区分を検討して極力商標登録すること
会社の業務やイメージが伝わるか 「雪印乳業株式会社(略称:雪印)」、「オイシックス・ラ大地株式会社(略称:オイシックス)」などは、企業イメージと業務内容が分かりすい典型例。
見やすく、書きやすく、聞いて違和感がないか 会社名は、長いものは記憶してもらえない。読みにくいものや、一度聞いただけでは覚えられないような奇抜なものも避けたほうがよい。
ローマ字・カタカナが含まれる場合、文字の使い方は適切か 見て・読んだだけで意味がわかり、業務を連想させるようなネーミングか
愛称や略称を考案したか 商号を補完する意味でも必要なので、必ず同時に考案すること。
同業他社のネーミングと差別化できているか 類似の商号を使用する利益はないため、独自性、他社との差別化を意識すること。
グローバル展開に耐えられるか 製造業なら輸出を念頭に、海外でも通用する社名を意識すること。国内で通用しても、国によっては印象の良くない言葉もあるため、注意が必要。

3 有名企業の社名と由来

有名企業の社名は「ブランド」となって、「利用者に安心・安全を保証する力」、「その会社を利用する価値の高さ」、「自ずと他社との違いを識別できる存在感」が備わっています。そこには、創業以来歴史を刻んできた重みもあれば、その社名を名乗ることとなった由来があるはずです。有名各社の社名の由来と歴史の一端を覗き、参考にしましょう。

 

3-1 日産自動車(商号:日産自動車株式会社)

創業者である鮎川義介氏は、1933年3月に戸畑鋳物㈱(1910年設立)に、当時既に傘下に収めていた「ダットサン自動車製造」を中核とする自動車部を創設し、本格的な自動車生産に乗り出しました。これと間を置かず、同氏が設けた持ち株会社である「日本産業㈱」と戸畑鋳物の共同出資で1933年12月26日に自動車製造㈱を設立し、1934年6月には日本産業の100%出資となって社名を「日産自動車㈱」へと変更するに至ります。

「日産」は、日本産業株式会社の日本産業の部分を短縮しただけで、社名の由来という意味では面白みに欠けますが、実は、この前身となった「ダットサン」の由来のほうが話題は豊富なのです。この話しは省略しますが、ダットサンは、車のブランド名としては1983年頃まで存続し、技術の日産と言われた高い技術力の基幹部分でした。一旦消滅したものの、2013年7月にインド特定車両のブランドとして復活しています。現在の日産自動車は、ゴーン問題で動揺していますが、長い歴史の中で培われた技術力とファンの多さは、日本を代表するブランドとして揺るぎない地位を築いたと言えます。

 

3-2 花王(商号:花王株式会社)

国内の化粧品の世界では、資生堂と花王が双璧です。1887年に長瀬富郎氏が、石鹸や輸入文具などの販売を目的に創業した「長瀬商店」が始まりです。その後1923年から石鹸の製造に着手し、1925年に花王石鹸株式会社を設立して、1946年に社名を現在の「株式会社花王」としました。花王は、もともと洗剤分野に強みを持つ会社でしたが、化粧品業界2位のカネボウを子会社化したことで、今や押しも押されもせぬ化粧品大手の地位に上りました。

「花王」という社名は、「花王石鹸」の誕生と深い関りがあると言われます。創業時に製造した石鹸は、洗顔にも使える高品質なものであり、商品のネーミングにあたり、「顔石鹸」という名が考案されたそうです。しかし、これではあまりにも芸がないため、「香王」や「花王」という名が浮上し、親しみやすさが決め手となって「花王」に落ち着いたそうです。これは、商品名(商標)が商号になった典型例でしょう。

 

3-3 資生堂(商号:株式会社資生堂)

海軍病院の薬局長を務めていた福原有信氏が、1872年に23歳で洋風調剤薬局を開業したのが始まりです。このときから「資生堂薬局」としており、創業者の資生堂という言葉への思い入れが伝わってきます。株式会社資生堂の公式サイトに、社名の由来として、中国の古典、四書五経のひとつである「易経」の一節からとったこの言葉についての次のような解説が掲載されています。

「至哉坤元 万物資生(いたれるかな こんげん ばんぶつ とりて しょうずる)」からとったと言うことです。意味は、「大地の徳はなんとすばらしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる」と解説しています。福原氏は、当時出回っていた粗悪な薬品に不満を持ち、「この世の優れたものをあまねく取り入れ、新しいものを創造する」との意欲に燃えていたと伝わっており、現在の資生堂の業容を表しているかのようです。

 

3-4 ブリヂストン(商号:株式会社ブリヂストン)

株式会社ブリヂストンは、1931年久留米市で石橋正二郎氏が創業した企業です。現在は、タイヤメーカーとしては世界のトップを走る企業ですが、設立以前は、家業の仕立て業から足袋の製造業へ、そして、ゴム底製の地下足袋を量販体制に乗せて世界的な地下足袋メーカーとしての地位を築き、ブリヂストン創業へのステップとしています。

ブリヂストンという社名は、創業家のファミリーネームに由来しています。石橋の「石=Stone(ストーン)」と「橋=Bridge(ブリッジ)」を逆にしたものです。当初は「ブリヂストンタイヤ株式会社」でしたが、後に「株式会社ブリヂストン」となり、グローバル企業となった今日、ロゴを「Bridgestone」として海外への拡大志向を前面に打ち出しています。

ブリヂストンの特徴は、創業者である石橋正二郎氏が標榜した「社会性」と「先駆性」を重視していることでしょう。石橋氏は、創業当初から海外を目指していたといわれ、その意志はこの会社のDNAとして脈々と引き継がれています。代表執行役CEO兼取締役会長の津谷氏は、2014年11月26日の講演で、ブリヂストンの歴史で重視してきた伝統的方針について、①海外進出(国際化)、②継続的改善の2点を挙げています。

海外進出については、1980年代前半にオーストラリア及びアメリカに進出し、当時大きな話題となった老舗メーカー「Firestone(ファイアーストン)」の買収に成功しています。これが大きな転機となり、タイヤ業界ではシェア世界№1の地位に上るとともに、事業の多角化にも成功しています。また、ビジネスモデルとしては、原材料開発~生産~小売りまで展開するという大きな特徴をもっています。

継続的改善への取り組みは、1968年にデミング賞(注3)を受賞したことでもその品質の高さが知れます。統計的科学的手法を用いた生産体制が有名ですが、現在では、工場、販売、管理部門に至るまで「継続的改善」に取り組んでいます。毎年開催される、同社の「グループ・グローバルTQM大会」において、現場の改善事例の発表会が行われるなど、たえず「改善」に取り組む姿勢は、同社の企業理念である「最高の品質で社会に貢献」につながるものです。

(注3)デミング賞
日本で品質管理の普及に功績のあった米国の統計学者デミングを記念して1951年に設けられた、工業製品の品質管理に関する賞。積水化学やトヨタ自動車など名だたる企業や個人が受賞している。

 

3-5 アサヒ(商号:アサヒグループホールディングス株式会社)

1887年に国産ビール会社の数がピークを迎えたと言われていますが、ちょうど業界の隆盛を迎えた1892年5月に、大阪麦酒会社の大阪麦酒吹田村醸造所から出荷された国産ビールが「アサヒビール」でした。この大阪麦酒会社初代社長が鳥井駒吉氏で、その系譜は現在のアサヒビール株式会社(持株会社はアサヒグループホールディングス)に連なります。

この大阪麦酒は、創業17年目を迎えた1906年3月、日本麦酒、札幌麦酒と合併し、国内でも屈指の大企業と言われた「大日本麦酒」が誕生します。大日本麦酒は1949年に分割されて新会社となり、朝日麦酒株式会社を名乗り、その後カタカナ表記に変わるという歴史を歩むことになります。

アサヒの由来についてはいくつか説があるようですが、1892年に初めて出荷されたときにすでに使用されていましたので、鳥井氏の思い入れの強さによるものであることは確かです。関係者によれば、「輸入を防ぎ国産を興さん」という創業の理念から、「日出づる国に生まれたビールへの誇りと、昇る朝日(旭日昇天)のごとき将来性、発展性を願ったもの」と語り継がれてきたようです。

創業者である鳥井駒吉氏は、酒造関係の全国組織の役職に就くなど財界において積極的に活動し、日本の酒造業の発展に寄与しましたが、大阪府会議員や堺市会議員なども歴任して公職の経験も豊富でした。その彼が、多数の事業や経験から得た教訓として、「信為万事之本(まことこそ ばんじの もといなり)」の信条を大切にしていたと伝わっています。事業の利益は社会へ還元するという思想を実践し、本業以外の報酬は公共の寄付に費やすことが多かったとも言われ、その信条と事業に対する熱い情熱は、グローバル化した現代にあっても色あせることなく、企業経営のあり方を示しているようです。

 

3-6 キヤノン(商号:キヤノン株式会社)

「Canon」のロゴの説明が、同社のサイトに掲載されています。Canonの語源には、「正典」、「規範」、「標準」という意味があり、先進の技術とサービス活動において世界の標準となり、業界の規範として活動していくという企業精神が込められているとのこと。キヤノンに社名変更する前は「精機光学工業株式会社」ですが、その前身は「精機光学研究所」で、この創設に深く関わったのが御手洗毅氏です。

御手洗氏は、1901年に大分県に生まれ、医師として産婦人科病院を開業したのですが、1933年に知人の吉田五郎氏とその義弟である内田三郎氏が創設した「精機光学研究所」に出資するとともに経営に参画し、企業経営者としての第一歩をしるしています。この研究所は1937年に会社化され、「精機光学工業株式会社」となりますが、創業者の中心であった内田氏の海外赴任を機に御手洗氏が社長に就任し、経営にの中心となりました。カメラの最初の試作機は「KWANON(カンノン)」と名付けられましたが、この名前は、観音様のお慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい、との思いが込められていました。

その後、カメラの本格的な発売に向けて、世界で通用するブランド名が必要となり、1935年に、「キヤノン(Canon)」という言葉を商標登録したとのことです。Canonの語源については前述したとおりですが、「キヤノン」の発音が「観音(カンノン)」と似ているため、名称の変更には違和感がなかったそうです(このくだりは、キヤノンのサイトに掲載されています)。

さて、この商標を押さえていたこともあり、1947年に社名をキヤノンカメラに変更しますが、この頃から医療用機器の研究開発にも着手し、御手洗氏は1967年に「右手にカメラ、左手に事務機」のスローガンの下、キヤノンの多角経営を宣言して今日に至ることになります。

そして、キヤノンと言えば、現代にあってなお「終身雇用」を貫く姿勢に注目が集まりますが、これもまた御手洗氏のDNAと言えます。現在の代表取締役会長である御手洗富士夫氏は甥にあたります。富士夫氏はアメリカ式経営を持ち込んだことでも有名ですが、実力主義を併用した終身雇用を採っており、制度の長短を把握した上で実践していることでも知られています。

実は、この終身雇用は、毅氏が経営の多角化を宣言した時期に、実力主義と家族主義を旨とする経営理念を標榜したことが始まりです。そして、国内のどの企業よりも早く、1959年に週休二日制を導入したこととあわせ、現代のキヤノンにつながる雇用制度の礎を築いたことも、社名の由来とは無関係ではないでしょう。

 

3-7 シチズン(商号:シチズン時計株式会社、持株会社は「シチズン・ホールディングス」)

シチズンの公式サイトでは、1918年に同社の前身である「尚工舎時計研究所」の創立をもって創業としています。創業者は、山崎亀吉氏で、もともとは貴金属製品、装身具、頭飾品、理髪具等を製造販売する「清水商店」から発展したものです。1924年に、「懐中時計」第1号を発表したときに、山崎氏と親交があり当時の東京市長であった後藤新平氏(後の初代NHK総裁)が、市民に愛され親しまれるようにとの思いを込め、英語のCitizen(市民)から「シチズン」と名付けたそうです。

この商品名(商標)が、1930年に株式会社に移行する際の商号となったもので、そういう意味では、前出の「花王」とよく似ています。商標の重要性が知れるエピソードの一つでしょう。当時は、明治・大正時代ですので、スタートは商品名とはいえ、英語由来のカタカナ商号は珍しかったのではないでしょうか。この商号とともに、もともとは舶来品であった物品を製造するという事業ですので、品質の向上を含め、難事が多かったものと推察できます。

事実、1938年には軍部の敵性語規制を受けて、社名を一旦「大日本時計」に変えざるを得ない境遇に陥っています。戦後の1948年に「シチズン」に復することになりますが、数々の難事に遭遇しながら、今日の、世界に誇る企業に成長できたのは、創業者である山崎亀吉氏の経営姿勢が、脈々と受け継がれてきたことによるのではないでしょうか。

山崎氏は、1918年の尚工舎時計研究所を設立して間もなく、1921年には人材育成を目的とした「尚工舎時計工業学校」を開校し、常に技術力向上を含め先進的な経営姿勢を貫いた人物として語られています。同社の各時代のリーダーたちは、商号という旗の下、人材を育成することで会社を成長させ、揺るぎない信頼を築き上げてきたと言えます。

 

3-8 タイガー魔法瓶(商号:タイガー魔法瓶株式会社)

1923年、菊池武範氏が大阪市西区で「菊池製作所」として創業し、「虎印魔法瓶」の製造・販売を始めました。会社となるのは、1936年の合名会社化が始まりで、その後、1949年に「日新工業株式会社」、1953年に「タイガー魔法瓶工業株式会社」に社名変更を繰り返し、1983年に現在の社名に改称しています。

タイガー(虎印)の由来として、3つの要因が語られています。一つは、当時の魔法瓶は、内瓶のガラス部分が小さな衝撃でも割れるような脆弱な材質であったため、割れない構造を模索して改良を重ねていましたが、一層壊れにくい製品を生み出すための決意として、「強い」=「虎」をブランド名にしたこと。二つ目は、事業を始める際に励ましてくれた「寅年生まれ」の父に報いる意味を込めたこと。

三つめは、品質の向上とともに世界展開にとりかかった当時、魔法瓶の輸出先のほとんどが東南アジア諸国であり、アジア諸国においては、虎が最強の動物であるとされていたことから命名したと伝えられます。同社は、国内においても、お客様目線を貫き、独創的な工夫の積み重ねと愚直ともいえるモノづくりで、当時贅沢品だった魔法瓶を、日常的に使える便利な道具として一般家庭に広めてきた功績があります。

この姿勢は、創業者の菊池武範氏の体験が影響しています。初めて大阪に奉公に出た当時、輸入品の「テルモス瓶」という魔法瓶を見た時から彼の事業に対する姿勢が固まります。冬場に、冷めたお茶をご飯にかけて食べる奉公人生活の中で、「熱いお茶がいつでも飲めたらいいなあ」と思っていた彼は、この魔法瓶を目の当たりにし、将来性のある商品としての魅力を感じたと言います(このくだりは、同社の公式サイトに掲載された内容です)。その後、魔法瓶製造会社に移り、そこでの製造経験を活かして菊池製作所の創業につなげています。

〇本質を極めた独創性、〇誠実を極めた信頼性、〇温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識をつくり続ける、〇世界中に幸せな団らんを広める。これが、同社の企業理念です。製品は、いまや魔法瓶にとどまらず、炊飯ジャー、ホットプレート、ホームベーカリー、餅つき機など、どれも企業理念に基づく「温かい食卓」につながるラインナップです。この企業理念に至る創業の精神をつなぐため、社名には「魔法瓶」の言葉が残されているのではないでしょうか。

 

3-9 龍角散(商号:株式会社龍角散)

この会社はかなりの老舗で、その歴史には由緒が感じられます。ご存じの方も多いとは思いますが、「龍角散」は、もともと商品としての薬の名前で、鎮咳去痰作用を活発にする生薬(キキョウ・セネガ・キョウニン・カンゾウ)のみを成分としたのど薬です(現在の処方は異なります)。事業としての創業は1871年と伝えられますが、ルーツは江戸時代にまで遡ります。出羽の国(現在の秋田県)久保田藩の藩主である佐竹家の御典医(お抱えの医者)だった藤井家が、江戸後期に龍角散を創薬したと言われます。

この薬は、廃藩置県を機に、佐竹家から創薬した藤井家に下賜され、以降、一般向けの薬として売り出され今日に至っています。薬名は、漢方の龍骨・龍脳・鹿角霜という生薬に由来し、「散」とは、漢方医学で微粉末を意味する言葉です。1945年代には「龍角散」をアジア諸国に輸出を始めており、現在でも中国の観光客の訪日目的の一つが龍角散の購入にあると言われるほど、その効能とともにアジアにおける知名度は高いものがあります。

社名については、1871年に「藤井得三郎商店」として創業し、1928年に株式会社藤井得三郎商店として法人化を果し、1964年に現在の社名である「株式会社龍角散」に改称しています。以降、経営難の時代があったものの、龍角散を中核とした、多様な「のど薬」を開発し、世界に通用する老舗薬品メーカーとしての地位を築いています。この企業もまた、商品名を商号としたケースです。

 

3-10 はごろもフーズ(商号:はごろもフーズ株式会社)

1931年に、静岡県清水市において「後藤缶詰所」として創業しています。1947年に「株式会社清水屋」として法人化し、1948年に、社名を後藤物産缶詰株式会社と改称して、社名に後藤の文字を復活させています。その後、1958年にビッグ商品「シーチキン」の商標を登録し、名古屋、大阪などに営業所を開設し全国展開に着手しています。1969年に、社名を「はごろも缶詰株式会社」に改称し、1987年に現在の社名である「はごろもフーズ株式会社」としています。

創業地の名勝「三保の松原」に残る羽衣伝説が社名の由来で、幸福をもたらす天女の「はごろも」を社名としたものです。同社は、「人と地球に愛される企業を目指し」、「人と自然を、おいしくつなぐ」ことを経営理念として事業を展開しています。「自社製品の提供と食文化活動を通じて、食卓の笑顔・家族の団らん・人々の幸せを追求します(以上、同社の公式サイト)」とし、社名の由来である「幸福をもたらす天女のはごろも」たらん意思を発信しています。商品名とはまた違った魅力があり、社名のつけかたの多様性を感じさせるケースです。

4 会社設立時に許認可が必要な業種

社会にはいろいろな業種があります。その中で手続きをしなくても会社を作れば始めても大丈夫な業種もあれば、監督官庁や市役所、警察、税務署に許可・認可・届出等(登録・認定)を求めなければならない業種もあります。

 

4-1 許認可がなぜ必要とされる業種があるのか

そもそも、なぜ許認可や届出等が必要とされている業種が存在するのでしょうか。多くの場合は、人・物、安全、環境、公序良俗などに関わる業種の多くで、許認可、届出などが必要となっています。

詳しくは後述しますが、建設業、産廃業、不動産業、娯楽業(ぱちんこ店、ゲームセンターなど)、人材派遣業など特定の業種は、特に要件を厳しく確認されます。

上記以外にも、人・物・お金・公序良俗に関わる業種の多くは、当事者や取引者、利用者の安全や環境、治安などを守るために、一定の基準を設けているのです。

 

4-2 許認可の、許可、認可及び届出の違いとは

官公庁から、「この事業を行ってよいですよ」というお墨付きをもらうことを、一般的に許認可といいます。ただ、この許認可については許可・認可、届出、その他の登録、認定などもあります。

「許可」という手続きは、「本来国がOKと認めていないことを特別に認めてもらう」、という手続きですので、全般的に条件は厳しくなります。

「認可」の場合、物事に対し官公庁が「これを行っていいですよ」とお墨付きを与える、という形ですが、一定の要件を満たさないと認めてもらえないという点では、違いはありませんし、認可の手続き自体も厳しいです。

また、官公庁の許諾を得ることを、一般に許認可とひとくくりにしますが、「届出」など、許可・認可以外の手続きも存在します。

「届出」の場合は、書面を届け出るだけのように思われますが、官公庁側で、きちんと要件を満たしているか、犯罪歴、反社会的勢力との関与など問題のある人物がいないかなど、一定の基準はあり、問題があると書類を受理してもらえませんので、「届出」だから、単に届け出るだけでよい、というわけではないことにご注意ください。

他にも、官公庁がお墨付きを与える「認定」、官公庁にこの事業を行いますよ、ということを登録する「登録」の手続きも存在します。

 

4-3 許認可が必要な業種かどうかを確認するには

一番確実なのは、許認可を扱うことができる行政書士など専門家に相談することでしょう。また、監督官庁・官公庁がわかれば、問い合わせやホームページの確認などで、許認可が必要かを確認するという手もあります。

ただ、許認可の手続き自体が複雑であるケースも多いので、できれば最初から行政書士などの専門家に問い合わせることをおすすめします。

5 許認可等が必要な業種とは

業務に関する許認可、届出などが必要な業種は数千から一万以上に及ぶといわれています。許認可、届出を要するか否かは各官公庁が定めており、具体的な総数の把握が難しいくらい、許認可が必要な業種は多いです。その中で、主な許認可等を要する業種を挙げていきましょう。

 

5-1 許認可が必要となる主な業種

許可

業種 届出先
建設業 都道府県または国土交通大臣
産業廃棄物処理業 都道府県知事
食品製造業 保健所・都道府県知事
旅館業 保健所・都道府県知事
自動車運送業 地方運輸局
宅地建物取引業 都道府県知事または国土交通大臣
介護事業 都道府県知事
中古品販売 公安委員会(警察を通じて)
風俗営業 公安委員会(警察を通じて)
タバコ販売 財務局長
飲食店 保健所
タクシー業 国土交通大臣
一般労働者派遣業 厚生労働大臣
酒類の販売 税務署長
産業廃棄物収集運搬業 都道府県知事
ぱちんこ店、麻雀店など風営法の規制業種 公安委員会(警察を通して)

認可

学校法人 文部科学省
医療法人 厚生労働省
保育施設 市区町村長経由で都道府県知事

届出

美容院 保健所
理髪店 保健所
クリーニング店 保健所
探偵業 公安委員会(警察を通して)
軽トラック運送業 運輸局長
飼料の製造販売 都道府県知事
高圧ガスの販売 都道府県知事

認定

警備業 警察署
LPガス保安業務 都道府県知事または経産大臣

登録

旅行業 都道府県知事または観光庁長官
貸金業 都道府県知事
倉庫業 運輸局
毒劇物販売業 都道府県知事または保健所

この他にも、多数の種類の許認可等が必要な業種が存在します。

また、ドローンのように、飛行の際は多くの場所で運輸局の許可が必要な一方、ドローンを利用した様々な事業の許認可申請自体は、令和元年8月の時点では必要ないなど、運用時に許可申請が必要な反面、開業時の許認可申請は不要という業種もあります。

 

5-2 特に許認可に関して注意する業種は?

許認可申請に関し注意が必要な業種は、「人的要件」「物的要件」、つまり、人の経歴やスキル、人数、資本金、事業場所など厳しい制限がある業種です。

具体的には、産業廃棄物処理業、建設業、一般労働者派遣事業、旅行業などが挙げられます。

具体的にどのような制限があるか、主だったものを挙げますが、これ以外にも細かな制限や条件が存在する業種があります。その点ご留意いただければと思います。

①産業廃棄物処理業

  • 産業廃棄物が飛散し、及び流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬船、運搬容器その他の運搬施設を有すること
  • 積替施設を有する場合には、産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように必要な措置を講じた施設であること
  • 講習会の受講
  • 利益が計上できていること又は自己資本比率が1割を超えていること(少なくとも債務超過の状態でないこと)や事業の用に供する施設について、減価償却が行われていることなど、経理的要件が充足されていること

②建設業

  • 経営業務の管理責任者としての経験がある者を有していること
  • 一般、特定それぞれが必要とする特定要件を満たした専任技術を置く
  • 財産的基礎(一般建設業であれば、自己資本が500万円以上など、一定の要件を満たすこと
  • 許可を受けようとする者が一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分を受けてから5年を経過していない、暴力団員等が実質的に事業を支配していないなど一定の人的要件にあてはまらないこと

③一般労働者派遣事業

  • 各種財産的要件を満たすこと(基準資産額が2,000万円×営業所数を超えること)
  • キャリアコンサルタントの有資格者か人事経験が3年以上あるものを担当者として届け出るなど人的要件を満たす
  • 事務所の使用面積が20平方メートル以上であること

④旅行業

  • 種別に応じた、一定の営業保証金(もしくは旅行業協会への加入)・基準資産が必要(種別によっては不要なケースも)
  • 旅行業務取扱責任者の選任が必要
  • 許可を受けようとする者が旅行業の許可の取消処分を受けてから5年を経過していない、暴力団員等が実質的に事業を支配していないなど一定の人的要件にあてはまらないこと

以上、許認可が難しい業種(他にも、宅地建物取引業、風適法などは要件が厳しいです)について、主だった要件を列挙しました。

これらから見られる共通点として、

  • 一定のまとまったお金を用意している
  • 業務を遂行するのに適した人員を配置できる体制がある
  • 業務に関し、一定の面積を持つ専用の事務所空間がある
  • 取消処分を5年以内に受けた者や反社会的勢力の関係者が関与していない

このように、人・お金・リソース・関与する人間に問題のある人物はいないかなどをチェックする意図が見受けられます。

6 許認可が必要な業種の開業手続きの流れまとめ

それでは、許認可が必要な業種を開業するときはどのようにするとスムースに進むのでしょうか。手続きの流れをまとめてみましょう。

 

6-1 手続前に、許認可が必要かを行政書士などの専門家・監督官庁・官公庁に相談する

大切なのは、会社を設立する手続きに入る前に、「そもそも許認可の要件を満たせるのか」を確認することです。これを確認せずに会社設立の手続を終えて、いざ許認可を得ようとしたら、要件を満たさない、こういう状況では、全てが無駄になってしまいます。

 

6-2 人的要件、物的要件を満たすかをあらかじめ確認

行政書士などの会社設立の専門家(税理士・司法書士は行政書士資格も保有しているケースや、行政書士とパイプがあるケースが多いです)に事前に相談し、「人的資本」「物的資本」の面で要件を満たせるかを明確にしておくことです。

当然ではありますが、要件に満たない場合は、いくら専門家であっても、許認可を取得することはできません。ただ、専門家の場合、方法や条件などを検討し、できるだけ許認可の要件に合致する方法を経験として蓄積しています。

 

6-3 許認可の代行は行政書士などの専門家にお願いすることが重要

許認可の手続きは複雑です。起業を行う人自身が許認可の手引を読むだけでは無理と思ってしまう部分でも、専門家から見れば、「この方法であれば許認可を取れる可能性がある」など、依頼者ができるだけ許認可を取得できるように、様々な視点から可能性を探ってくれるのです。

ただでさえ、官公庁の許認可に関する手引は難解で量も多いものです。手引を読み解く時間コストのことを考えると、最初から専門家に相談したほうが確実かつ時間と労力の節約にもつながるでしょう。

 

6-4 開業手続きの大まかな流れ

許認可手続自体だけでなく、会社設立の手続き自体も、専門家に一任するのが望ましいでしょう。開業手続きの大まかな流れを記述します。

①会社の業務、事業計画などの方向性、本店所在地、などの大枠を決める

何も決めていない状態で専門家に相談するなり、官公庁に確認しては、先方も適切な答えを返すことはできません。

まず、起業の方向性、大まかな事業計画を相手に伝えられる文書、本店の場所、資本金をどのようにするか、融資は受けるかなど、ざっとした方向性はまとめておきましょう。

②専門家や管轄官庁への事前相談

行政書士・税理士など会社設立の専門家に、起業を考えている業種を伝えます。その際に、要件を満たすかどうかに加え、専門家と話が合うか、わかりやすく説明してくれるかなどの点も確かめておくとよいでしょう。

③会社設立の手続きを始める

事前に専門家、官公庁の確認を受けた上で、会社設立の手続きを行っていきましょう。一番スムースなのは、相談した専門家に、会社設立の手続き、許認可の手続きをまとめて依頼することです。

専門家の側としては、当初相談を受けているので、現状を踏まえた各種書類作成をスムースに行えます。また、定款の事業に関する部分や、資本金の部分などで、許認可の要件を満たせるよう、配慮して定款作成や資本政策の提案、制度設計を提案してくれます。

大半の許認可の場合、会社の事業目的の部分に、許認可を得る分野に関する業務を行うことを記載していることが要されます。

ですので、許認可の相談当初の段階から会社設立の手続きまで、一連の流れを専門家にお任せし、設立以前に改善できる部分は、専門家としっかり話し合いクリアしておくことは重要と言えましょう。

④許認可の取得

会社設立が完了すると、許認可の取得に入ります。(事前準備も含め、実務上では同時並行で進めるケースが多いです)

当然ですが、許認可の取得ができて初めて、業務が開始できるので、できるだけ会社設立後、すぐに許認可手続きをできるように準備をしておいた方が良いでしょう。

許認可の重要点は、最初の段階での「人的要件」「物的要件」などの条件に当てはまるかを確認することです。そのためには、許認可に関して専門家に相談し、会社設立も専門家の資本や人材、目的などの部分についてアドバイスを受けたり、適切な書類を作成してもらうことが欠かせません。スムースな会社設立と、その後の許認可取得、業務運営開始の一連の流れをスムースにするためにも、できるだけ専門家の知識を活用することをおすすめします。

7 まとめ

今回は、有名企業の社名の由来をひもときながら、社名を決める際のポイントを探ってきました。商品名が商号となった企業も多く見られ、商標登録の重要性を再認識する機会となったのではないでしょうか。また、今回取り上げたどの企業も、社会との関わりを強く意識し、人の幸福を願うという企業理念を鮮明にしています。社名にとどまらず、起業にあたっての参考としてみてください。