毎年東京商工リサーチでは『全国女性社長』という調査を毎年行っています。令和元年11月時点での最新調査結果では、全国の女性社長は41万1,969人でした。これは日本全国の約314万社の約13%が女性社長の経営する会社だという事になります。
今回は女性が社長をする会社の現状や人気の仕事や始めやすい業種等を紹介するとともに、会社設立やその後の経営や資金繰りに役立つ情報、国内で活躍している著名な女性起業家をご紹介します。会社設立を検討している女性は参考にしてみてください。
目次
1 女性経営の現状
日本全体としては少子高齢化により『人口の減少』と『起業数の減少』という、重要な2つの課題に直面しています。この課題の解決の一つが、女性経営者や女性社員の活躍になります。そのため、日本政府も女性の活躍を後押ししています。
男女共同参画社会という、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」という男女共同参画社会基本法第2条の実現を目指して、政府によるさまざまな施策が実施されています。
その影響もあり、日本全国の起業の占める女性社長数は増加し続け、現在では2010年から約2倍になっています。日本全体の企業数は減少傾向にある中で、女性社長数の増加は女性が活躍できている社会に変化している証です。
1-1 女性に人気の働き方や仕事とは
女性の仕事への思いは、仕事のやりがいや責任を求めるキャリア志向や、家庭や子育て等の働き方の重視など様々です。これらの女性の仕事への思いに対応するために、社会や企業ではワークライフバランス等の既存の仕事の仕方や会社のあり方を柔軟にしていく方向にあります。また、男性とは異なり『好きなことを仕事に』という思いが強いのが女性の働き方の特徴です。加えて、仕事だけではないですが、女性は男性以上に共感を大事にします。そのため、女性社長が経営をする会社には共感を覚えます。それはキャリア志向のタイプにも、働き方を重視するタイプにも両方にあてはまります。キャリアもあり、働き方も自分で決められる、という一つの理想形です。
女性として会社設立を考えるならば、一緒に理想的な働き方も考えましょう。女性が理想とする働き方は以下の3つになります。
- スキルが活かせる仕事
- 女性のセンスが活かせる仕事
- 安定した働きやすい働き方が出来る仕事
それぞれの具体的な働き方を紹介します。
①スキルが活かせる仕事
女性に限った話ではありませんが、自分の持っているスキルを活用できる形で独立や起業する事は重要です。飲食をやった事がないサラリーマンが、趣味が高じて飲食店を始めるといういわゆる『脱サラ』話はよく聞きます。しかし、それで成功したという話はあまり聞きません。むしろ、ほどなくして店を畳まざるを得なくなったという話を残念ながらよく耳にします。
活かせるスキルがあるという事は、それだけそのスキルを利用したい消費者やユーザーがいるという事です。もし、自分にしかないスキルがあって、お金を払って利用したい消費者やユーザーがいるなら、そのスキルを活かさない手はありません。また、そのようなスキルは仕事で継続的に利用し続ける事でより一層の磨きがかかります。よりニーズに合ったスキルになっていくという事です。そうなると、より一層顧客が増えていく事になります。
但し、男性社会ではよくある話で注意しなければいけないのが、自分で強みやスキルだと思い込んでいたコネクションが役に立たなかったというケースです。例えば、大手企業に勤務していた時代は様々な社長にアポイントメントが取れたが、退職した後には急に誰も会ってくれなくなった、というのは良くある話です。その人が会社の看板の力で勝負していたため、その看板が無くなった後にはみんな離れていったのです。このように自分の力やスキルだと思っていたが、実は自分の力やスキルではなかったという勘違いは非常に危険です。自分のスキルは何か、そのスキルは充分に価値があるのか=お金を払っても使用したいものか、という質問に“YES”という答えが出るものが活かせるスキルです。
②女性的センスが活かせる仕事
センスとは何か、先天的な全体的な発想や思考です。前述したスキルと比較すると以下のようになります。
センス | 主体的で学習する事が難しく、数値化できない感覚。全体的な結果に影響を与えます。 |
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スキル | 客観的で学習する事が出来て、数値化ができる技術。部分的な結果に影響を与えます。 |
つまり、どんなによいスキルを持っていたとしても、センスが悪いと全体として良い結果になりません。それだけセンスは重要だといえます。しかしセンスがあっても、それをそれぞれの部分で実現するスキルが無ければ良い結果にはなりません。センスとスキルは自動車でいうところの両輪であり、どちらもが求められます。但し、一人でセンスもスキルも持ち合わせる必要はありません。センスがあるならばスキルのある人を雇う事や協力・協業する事が可能です。
女性的センスとは、つまり女性的な発想であり思考です。男性では発想・思考できない『女性だから分かる』発想には価値があります。それは分からない男性にも、分かる女性にも受け入れられるため、より多い顧客を獲得できる可能性が広がります。
③安定した、働きやすい働き方が出来る仕事
仕事と生活の調和をライフワークバランスといいます。仕事が生活を支えているのは過去からあった考え方です。それに加えて、趣味やプライベートでの人とのふれあいなどの生活自体が充実することも重要な要素であるという考え方です。ライフワークバランスは”時間”と“体力”と“気持ち”などの要素のバランスを示しています。
バランスをとるには、安定している事が重要な要素になります。前述の女性の活躍など、男女平等の社会の実現が進む社会ではありますが、まだまだ女性のほうが両親や結婚して家庭の家事を行う機会など、生活におけるタスクは男性より多いのが実態です。老親の介護などは負担が多く、今までのキャリアを捨てざるを得ない場合もあります。また仕事自体も正社員ではなく派遣社員やパート社員などの非正規雇用で働かざるを得ない実態があります。
自分で経営する事で、自分にとって最適なライフワークバランスになる仕事のやり方を実現する事が可能です。また、同じ女性の立場から雇用する社員に対して最適なライフワークバランスが出来る職場環境を整える事が出来ます。
また働きやすさの具体的な施策としては、在宅勤務やフリースケジュール制(勤務時間を縛らない)や、出産前後の福利厚生の改善などさまざまな施策があります。これらも自身が経営者になる事で、自由を獲得する事が出来ます。
1-2 始めやすい仕事・業種はこれ!
女性の起業に向いている、始めやすい仕事や業種をピックアップします。始めやすくて、将来的なニーズもある仕事で起業すれば、安定した経営を行える事が見込めます。
〇エステティシャンやセラピスト
いつまでも美しく若くありたいと思う女性の願いはいつの時代も一緒です。美容関連業界で比較的始めるのが簡単な仕事が『エステティシャン』や『セラピスト』です。エステティシャンもセラピストも、理美容師などと違い国家資格がありません。そのため、センスやスキルがあれば、誰でも始める事が出来る仕事です。見た目の美しさを追及するエステティシャンも、アロマセラピーやリフレクソロジーなどの心身のバランスを整えるセラピストも、今後もニーズが高い業種であり続けます。
〇塾講師
子供に良い教育を提供したい、という親の思いに応える仕事が、塾教師です。実は小学生~高校生までに勉強を教える塾講師も女性の起業に人気な仕事の一つです。
進学塾や学習塾をどこにするか、を決めるのは通常母親の意思が大きく関与します。そのため、女性特有のきめ細かい行き届いた心遣いができる塾経営を行えば、非常に大きなアドバンテージを持つ事になります。起業するのは、完全な個人経営で1から行う事も可能ですが、大手フランチャイズで起業するという事も可能です。フランチャイズの力を借りて起業すれば、起業や経営のノウハウなどのアドバイスを利用しながら自分らしさをプラスした経営を行う事も可能です。
少子高齢化社会の中で子供が少ないからこそよりよい教育を受けさせたいという親の思いは強くなっていきます。子供の数は減ってもニーズが強くなっていくのに応える事が出来るのが、この業種です。
〇ネイリスト
指先のおしゃれを手軽に楽しめるのがネイルアートです。そして、ネイルアートを楽しみたいニーズに応える仕事がネイリストになります。リクルートライフスタイルが発表した『美容センサス2019年上期≪ネイルサロン編≫』によると、15~69歳までの女性の過去1年間の間のネイルサロン利用状況は約10%と横ばいの市場になっています。ここで注目するべきは、15~19歳は前年比3.7%減少、20代も前年比1.5%減少している点です。サロン利用減少の原因は、現在ネイル市場では自ら自宅で行うセルフネイル市場がユーザーを獲得しているからです。
3Dプリンタやインターネットサービスを通じて、ネイルファンのニーズを満たしているのです。高解像度の家庭用デジタルプリンターなどは自宅で好きなデザインを作る事が出来たり、自分で作成したデザインのネイルを月額定額で届けてもらえるネットサービスが誕生するなど、1700億円市場といわれる需要を掘り起こしに挑戦する企業が増えているのがこの業種です。自分のお気に入りのデザインを人に紹介する事もそのデザインのネイルを届けてもらう事も可能になっているので、デザインセンスがあればサロンとネットサービスを通じて日本全国で顧客獲得が可能になっています。
また、ネイリストも国家資格はなく、特別な設備・機器は不要なので起業は比較的簡単なのもポイントです。
〇カウンセラー
SNSやネットの普及によりさまざまな情報にさらされ、変化のスピードが速くこれから世の中がどうなっていくのか見通しが立てにくい現状は、ストレスフルな社会と言えます。そんな心の悩みや不安や具体的な問題に対して、臨床心理学といった専門的な知識やスキルを活用して相談や支援を行うのが、カウンセリングという仕事です。臨床心理学とは、精神障害や心身症等の精神的な疾患を予防・回復・支援する事を目的とした学問です。
カウンセリングを行う人をカウンセラーと呼びます。カウンセラーの約78%が女性になります。繊細で細かい女性の方が感情の機微にまで敏感に気づく事が出来て、女性カウンセラーのほうが男女ともに患者は話しやすいという点があります。
カウンセリングを主に行う場合には、特別な設備は不要である点もポイントです。通いやすさや話しやすさを目指して、自宅の一室を利用した開業も可能です。また、「ナーシングホーム」など、新たな医療サービスを提供する分野でも必要とされてきています。
資格については、2017年に『公認心理師』という国家資格ができ、2018年9月に第1回公認心理師国家試験が実施されました。それまでは『臨床心理士』や『認定心理士』や『産業カウンセラー』などの専門知識やスキルによる民間資格のみでした。これから国家資格を取得して公認心理師として起業する事は簡単ではありません(資格の取得条件等は詳細は後述します)。しかし、カウンセラーの淘汰が進むという事は起業後の競争という点においては有利になるという事です。我こそはと思う人はチャレンジすべき職種といえます。
1-3 女性の起業に便利な資格はこれ!
世の中にはさまざまな資格があり、資格自体に女性向け男性向けという垣根はなくなっています。しかし、女性の起業に向けて便利な資格というと、資格もいくつかに絞られてきます。今回はそんな中で特に起業を目指す女性に知ってほしい資格を紹介します。
〇フィナンシャルプランナー
お金ならびに金融商品の専門知識を持つ専門家の資格です。実は女性の資格者が非常に多い国家資格の一つです。仕事としては、個人を顧客としてお金を通じての人生設計を提案します。具体的には資産の運用方法や、保険や貯蓄方法や住宅購入時のローンや保険について最適な提案を行います。資格を持ちながら、銀行や保険会社などの既存の金融機関で働く人も多いですが、独立開業を行っている人も多くいます。独立開業する際には、専門知識だけではなく、ノウハウや人脈ネットワークをもっている事も求められますが、コンサルタントと同様に相談に応える知識が必要なだけで、特別な設備が必要ない点で開業に向いた資格であるといえます。
また、家計という点において多くは女性が財布のひもを握っているケースが多いため、男性より女性に相談するほうが安心という人も多い点もポイントです。もしフィナンシャルコンサルタントになるのであれば、2級技能士を最低限として1級の取得を目指すのがベストといえます。
なお受講料は、令和元年11月時点でFP技能士1級~3級とそれぞれ価格は異なりますが、3級が6,000円で2級が8,700円、1級は8,900円になります。(学科と実技でそれぞれ価格が異なります。)
なお、試験日時や試験申し込みなど詳細は日本FP協会のホームページで確認が出来ます。
〇カラーコーディネーター
メイクやファッションや料理の盛り付けなど、色のバランスをコーディネイトする仕事の資格が、カラーコーディネーターです。カラーコーディネーターの資格は、受験者の男女比率が2:8と圧倒的に女性の受験が多くなっている、女性に人気の資格といえます。また、1級は2割の合格率と難関ではあるものの、2級でも50%と合格率が比較的高めである事も人気の理由です。また、カラーコーディネーターの資格は、商工会議所が主催する民間資格になります。〝色彩でビジネスを彩る”というキャッチコピーもありますが、ビジネスに活かす事を目的とした実務的な知識を習得できる資格である点も開業向きの資格といえます。
カラーコーディネーターは色同士や空間とのバランス等の“色”についての体系的かつ論理的な専門知識を活用し、ビジネスを行う資格になります。ビジネスでの活かし方としては、色彩は人の心理に影響を与える事を利用して、商品パッケージを購買意欲が高まる色の提案や、家の中の空間をより広く見える色の家具のコーディネイトを行う等があります。商品が多く流通し競合商品が多くなっていく中においては性別や年齢層などのターゲット層に訴求するための色彩の提案は、今まで以上にニーズの広がりが期待される分野になります。また、お祝いやパーティなど、インテリアや服装・化粧品など幅広い分野・機会でカラーコンサルティングを担う事もあります。
なお受講料は、令和元年11月時点で1級~3級とそれぞれ価格は異なりますが、3級が5,340円で2級が7,480円、1級は9,620円になります。なお、試験日時や試験申し込みなど詳細はカラーコーディネーター検定資格で確認が出来ます。
〇公認心理師
既にカウンセラーの章で記述した国家資格になります。2015年9月に公認心理師法が成立し、2017年9月に同法が施行され、公認心理師が国家資格となりました。そのため、まだ歴史は浅い国家資格といえます。それゆえに、まだ資格取得者も少なく、比較的競争力の高い資格といえます。また、前述の説明ではありますが、不安やストレスの多い社会においてカウンセラーのニーズが高い点やカウンセラーという仕事柄が女性向きである点も大きなポイントです。
公認心理師の仕事は、心の問題をもつ人とその周囲の人に対して、問題の解決に向けた相談・助言・援助を行う事です。また、心の健康における情報の提供・発信を行う事です。
それまであった『臨床心理士』と混同されることも多いですが、臨床心理士は民間資格で公認心理師は国家資格になります。実は受けらえる療法・サービスという点では大きな違いがないのが実態です。しかし、まだ厚生労働省での議論の段階ですが、公認心理師の療法を診療報酬で算出しようという話もあります。そうなれば、患者の負担が軽減され、公認心理師と臨床心理士の差も大きく広がる事になります。
公認心理師の資格を得るには、受験を受けるために一定条件があり、そのうえで試験に合格する必要があります。受験を受けるための一定条件とは、以下になります。
①4年制大学において指定科目の履修と、かつ大学院で指定科目*の履修を完了している事 |
②4年制大学において指定科目の履修と、かつ特定施設**での実務経験を2年以上有している事 |
③海外の大学において心理科目の履修と、海外の大学院で心理科目の履修を完了している事*** |
*指定科目については、厚生労働省のカリキュラム等検討報告会報告書で確認する事が出来ます。
**特定施設とは、病院や診療所などの『保険医療』業か、認定こども円や障碍者支援施設などの『福祉』業、学校などの『教育』業、裁判所や厚生施設などの『司法・犯罪』、広域障がい者就業センターや地域障害就業・生活支援センターなどの『産業・労働』業をいいます。
***本詳細は、公認心理師法第7条第3号に基づく受験資格認定で確認する事が出来ます。
・経過措置
上記①~③の条件にあてはまらないが、十分なキャリアもクライアントもいる臨床心理士の方もいます。しかし、今から大学に通いなおすという事は現実的ではない、と考える人もいます。そんな現場経験も充分な臨床心理士の方々の救済措置が、経過措置です。
①~③に当てはまらないが、心理職として実務経験を有して、2022年9月5日時点に5年以上の実務経験と現任者講習会を修了していること、が追加条件になっています。
なお受講料は、令和元年11月時点で試験受験手数料28,700円になります。なお、試験日時や試験申し込みなど詳細は、一般財団法人日本心理研修センターのホームページで確認できます。
2 会社設立
会社を起業しようとする時は、これから作り上げていく自分の会社への期待感で胸がいっぱいの経営者が多くいます。その時に想像するのは、自分のサービスや商品に満足するたくさんのお客様やそこから生まれてくる利益になる事が多いです。しかし、その幸せな想像の手前に現実的な超えなければいけない最初の課題が“会社設立”です。
『会社設立』といった検索ワードで表示されるネットの情報をみると、1人で専門家の力を借りなくても簡単に会社設立ができるような情報もあります。しかし、全部自分一人で行うと苦労は多いです。会社設立だけを行うのであれば別ですが、ほぼ事業や営業開始準備と平行して行うのが現実です。そうなってくると、それぞれに必要な時間を確保する事が難しくなる、という問題が発生します。
そのため、事前知識として会社設立のタスクと手順を理解し、場合によっては専門家などに業務を依頼する事も視野に入れながら進めていけるように、ポイントを説明していきます。
2-1 起業のメリット/女性の起業のメリット
起業のメリットを個人事業主など会社設立しないで事業を行う事と比較する『起業のメリット』と同じ起業でも女性が起業するという事に焦点をあてた『女性の起業のメリット』という2つの視点から説明します。
〇起業のメリット
法人にするか、個人事業主として事業を行うか、という事を検討する時には基本的に性別による起業メリットの違いはありません。大きなメリットは会計面と税制面と信用面の3点になります。
会計面 |
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税金面 |
*1年目の上期売上が1,000万円以上の場合には、2年目移行は消費税納税の義務が発生します。 |
信用面 |
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〇女性の起業のメリット
女性の起業においては女性目線やスキルを活かした事業展開が出来る事は、非常に大きなメリットになります。女性をターゲットとした場合に、女性だからわかる深い推察を活用し、商品やサービス展開をすることで会社を成功させている女性社長は多数います。
また、女性の起業は男性に比較して小規模になっています。中小企業庁の発表の『女性起業の現状と課題』によると、起業した際の平均所得は男性が約273万円に対して女性は約93万円で、所得構成でみると100万円未満が男性で約32%に対して女性が約69%と倍以上になっています。また雇用している従業員も女性が社長の場合約90%が1名、つまり本人だけが働いているという数値になっています。
大きな会社を目指して頑張る社長もいますが、実は小規模な会社であるという事は非常にメリットが大きいのです。ここでは小さな会社の主なメリット3つを紹介します。
やりたいこと”に集中できる | 会社の規模が大きいと、会社を維持する事自体に力を注がなくてはいけなくなります。小規模である場合は、やりたい事は何かという起業時のビジョンに100%集中する事が出来ます。自分の得意分野やスキルなどが活用できて、100%やりたい事に集中する事で自分の思いの実現が出来る可能性が高まります。これは起業を目指す女性に非常に大きなメリットになります。 |
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利益が出やすい | 会社であれ個人事業主であれ、事業を行う上で大事なのは利益を残す事です。利益は『収入』から『費用』を差し引いた残りになります。利益を残すためには、収入を増やす事と費用を抑える事が必要になります。事業が小さければ小さいほど、費用が少なくて済みます。特に売上に関わらず発生する家賃や人件費などの固定費用を抑える事が出来るのは、利益を残すためには大きなアドバンテージになります。少しずつ確実に利益を出していきたい人には会社の規模を小規模にしておくことをお勧めします。 |
自分のペースで仕事や生活が出来る | 家事や育児などで時間制限がある場合でも、ライフスタイルに無理なくフィット出来る形での事業・起業を行う事が出来るのが小規模な会社であるメリットです。また、ライフステージが変化していく事に適用して事業スタイルを変更する事も比較的簡単に出来るため、女性の起業において最大のメリットとも言えます。 |
女性であるという事を生かしつつ、小規模な会社である利点を最大限利用する事が女性の起業のメリットになります。
2-1-1 女性の起業の注意点
女性に限定した話ではありませんが、会社を設立し継続していくためには会社経営に必要な知識は必須です。会社経営に必要な知識とは、会計・税務・財務といったファイナンス知識や商法やこれから行おうとする事業に関わる法律などになります。会社を経営する上では、知らなかったという事で済ませない事態が発生します。サラリーマンなどの会社勤務をしているとこのような情報に触れる機会が多いですが、起業を考える女性の中にはほとんど必要知識がない中で起業しようとする方も少なからずいます。そのような場合には、早い段階で専門家へ相談などを行う事で、不足した知識を補う事が賢明です。
また、社長という仕事は想像以上にハードです。前述のように様々な知識を習得しながら、商品の販売やサービスを提供し、より良い商品やサービスなどのアイデアを探し、資金繰りをしなければいけません。起業の動機が『空いた時間を使って、お金を稼ぎたい』などの軽い気持ちで始めた方には継続が難しいといわざるを得ません。
社長の仕事は孤独といわれます。女性の社長の数は増えていますが、まだ全体の10%であるため、女性社長が本当に必要な情報収集を行うのは簡単ではありません。この情報交換の課題については、現在いくつかある女性社長向けのポータルサイトを利用する事で解消できる事もできます。
2-2 会社設立
会社を設立する場合には、多くは株式会社を設立する方になります。会社には『合同会社』や『合資会社』や、『一般社団法人』や『一般財団法人』などいくつかの種類があります。目的に合った会社を選択・設立する必要があります。株式会社と比較して『手続きが簡単』『設立費用が抑えられる』などのメリットがある合同会社については検討の余地があります。但し、一般的には法人になるため、ここでは株式会社の設立に絞って説明を行います。
2-2-1 会社設立の手順
会社設立については出来るだけ手間を減らし、各定められた期間までに申請を行う必要があります。すべてを滞りなく実施するためにも、まずは大枠の手順を理解し、その後各項目の詳細を把握する事が良いです。
大枠の会社設立の手順は以下になります。
①定款作成 | 定款に定める会社の基本事項を決定し、作定款の作成ならびに認証を行います。 |
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②登記申請 | 資本金の払い込みや登記書類の作成などの必要事項を行い、公証役場で登記申請を行います。 |
③登記後の手続き | 登記事項証明書や法人代表印印鑑証明書等の取得を行った後、税務署や都道府県や市町村税事務所で設立届出や法人口座開設などを行います。 |
続いて、大枠の会社設立の手順それぞれの詳細を説明します。
①定款作成
定款とは、『絶対的記載事項』『相対的記載事項』『任意的記載事項』の3つの事項からなる会社の在り方や運営方法を定めたその会社の規則になります。定款を作成する前には、この定款に記載する事項を決定していくため、各記載事項の項目とその意味と目的を把握する必要があります。
◇絶対的記載事項
定款に必ず記載しなければいけない事項が絶対的記載事項になります。
〇目的
会社設立は事業を行うためですので、ここでいう目的とは事業目的になります。この目的に記載している事業のみを、その会社は原則実施する事が出来ます。つまり、記載していない事項を事業として行う事が出来ません。将来行う可能性がある事業については漏れなく記載する事が必要です。
〇商号
株式会社の会社名になります。株式会社の場合には、前後どちらかに『株式会社』とつける必要があります。
〇本店所在地
会社の本社住所になります。記載するのは住所の最小行政区画(例:東京都新宿区)までが必要です。全ての住所を記載する事も可能ですが、最小行政区画内での移転でも定款変更が必要になるため一般的ではありません。
〇設立時に出資される財産の価額またはその最低額
会社設立時に行う出資の最低額を記載する事が一般的です。最低額を記載しておくことで、予定していた出資額全額が設立前に用意できない事態になっても最低額を上回れば設立を行う事が出来ます。なお、登記申請時点では発行済株式総数を決定する必要があるため、出資金額を確定する必要があります。
〇発起人氏名または名称及び住所
発起人とは会社設立の手続きの責任を負い、実際に手続きを進める人をいいます。発起人には法人でもなる事が可能です。
〇発行可能株式総数
将来的に株式を発行できる最大株式数を記載します。株式を発行するという事は新しい株主を会社に受け入れる場合などに行います。
本来であれば発行可能株式総数は絶対的記載事項に含まれているわけではありません。しかし、定款に定めない場合には会社成立までに定款変更の定めを設ける事が必要になるため、実質的に必ず定款に記載する事項になります。
◇相対的記載事項と任意的記載事項
相対的記載事項は、定款に記載がなくても定款は成立しますが、定めない場合には規則の効力が認められない事項です。現金以外で出資する場合の『現物出資』や『発起人の報酬』、『取締役の任期に関する事項』などが代表例になります。
任意的記載事項も、記載がなくても定款は成立し、定款に記載しなくても効力は否定されません。定款に記載する事で拘束力を期待する自主的な記載項目になります。一般的には、株主総会に関する『招集時期』や『株主総会議長』や、事業年度や取締役員数について記載されます。
最後になりますが、定款に1度記載した事項を変更するためには、株主総会を開き定款変更の特別決議が必要になります。また、登記申請が必要な場合には特別決議を行った議事録を添えて法務局に登記申請が必要になります。つまり、簡単には定款を変更する事は出来ないのです。そのため、現在だけではなく将来を見通して、それぞれ各事項の意味を理解して定款の事項はそれぞれ決定する事が必要となります。
②登記申請
登記申請を行うまでに必要な事は、『資本金の払込み』と『登記申請の作成』と『法務局での登記申請』になります。この資本金払込みから2週間以内に設立会社の本店所在地を管轄する法務局にて会社設立の登記申請が必要になります。
◇資本金の払込み
定款に記載した出資される価額もしくは最低額を、発起人代表者の口座に振込名義を発起人にして振り込みます。そして、振込が行われた銀行通帳の表紙と1ページ、振込が記載されたページをコピーし、振込証明書を作成します。
なお、会社設立が完了して法人口座開設できた際には、この振込金額を法人口座に移します。
◇登記書類の作成
株式会社の設立に際して必要な登記書類を記載します。
登記申請書 | 法務局の『商業・法人登記の申請書様式』でダウンロードできます。 |
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登録免許税納付用台紙 | 窓口で登録免許税を収入印紙にて納付するために必要な台紙になります。(中小企業の費用は15万円になります。) |
OCR用申請用紙 | OCR専用の登記申請用紙を法務局窓口で取得し、記載します。CD-R等の磁気ディスクで代替する事も可能です。 |
定款 | 公証人から認証を得た定款の謄本になります。電子定款の場合には磁気ディスクを提出します。 |
払込証明書 | 資本金の払込が行われたことの証明書類です。 |
発起人の決定書 | 定款で本店所在地を最小行政区画(例:東京都新宿区)までしか記載していない場合に、本店の所在地が発起人の過半数の一致をもって決定したことを示す書類です。定款に住所の詳細を記載している場合には、本書類は提出不要になります。 |
就任承諾書 | 設立した会社の、代表取締役や監査役などの取締役の就任の承諾書になります。なお、代表取締役の就任承諾書は実印の捺印と、印鑑証明書の添付が必要になります。※取締役会を設置していない会社は、就任承諾書に各取締役個人の実印を捺印する事と、印鑑証明書も必要になります。 |
印鑑届出書 | 会社実印を法務局に登録するための届出書になります。一般的には、登記申請時に同時に届出します。会社印と代表取締役個人の実印捺印が必要になるため、代表者取締役の印鑑証明書が必要になります。 |
③登記後の手続き
登録後の手続きは大きく分けて以下の3つの手続きになります。
- 〇税務署に税務の届出を行う。
- 〇地方自治体に地方税についての届出を行う。
- 〇年金事務所へ社会保険の届出を行う。
以下で一つずつポイントを説明します。
〇税務署に税務の届出を行う。
会社の本店所在地を管轄する税務署で、会社開設後1ヶ月以内に税務関連の手続きは行う必要があります。届出に必要な書類は以下の4つの書類になります。
・法人設立届出書 |
・青色申告の承認申請書 |
・給与支払事務所等の開設届出書 |
・源泉所得税の納付の特例の承認に関する申請書 |
なお、上記の他に定款の写しや登記事項証明書などは添付書類として必要になります。
〇地方自治体に地方税についての届出を行う。
税務署と同じように、本店所在地がある都道府県・市区町村で会社開設後2ヶ月以内に会社の地方税の納付のための手続きを行う必要があります。
申請書類の形式は管轄する都道府県・市区町村によって異なります。届出を行う際には必ず事前にホームページや窓口への問い合わせを行う事を忘れないようにしてください。
〇年金事務所へ社会保険の届出を行う。
株式会社を設立した場合には、厚生年金と健康保険からなる社会保険に加入する必要があります。社会保険の届出提出期限は登記から5日以内になるため、注意が必要になります。必要な書類は以下の3つになります。(添付書類として登記事項証明書が必要になります)
健康保険・厚生年金保険新規適用届 |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 |
健康保険被扶養者(異動)届 |
これらの書類とは別に、従業員を雇う場合には労働保険の加入手続きを労働基準監督署と公共職業安定所(通称、ハローワーク)で行う必要があります。この手続きは雇用を開始した日から10日以内に労働基準監督署に『労働保険保険関係成立届』と『労働保険概算保険料申告書』を、ハローワークに『雇用保険適用事務所設置届』と『雇用保険被保険者資格取得届』をそれぞれ届出する必要があります。
2-3 会社設立支援
女性経営者が会社を設立した時に受けられる支援は大きく、女性社長であるから受けらえる支援と、会社を開設したために受けられる支援があります。立ち上げて間もない会社を軌道に乗せる事は、簡単ではありません。そのため、受けられる支援は受ける事に越したことはありません。支援を受けられる条件と、支援内容を理解して、滞りなく必要な支援を必要な時に受けられるようにポイント解説をします。
2-3-1 女性経営者向け補助金と助成金、融資制度
支援の方法には大きく返済する義務のない補助金と助成金と、返済す必要がある融資があります。女性経営者だから受けられる補助金・助成金、融資制度のそれぞれのメリットと注意点を含めたポイントを解説します。
〇日本政策投資銀行『女性新ビジネスプランコンペティション』
日本政策投資銀行は、起業5年以内の女性起業家を対象としたコンペを実施しています。コンペの受賞者は、事業奨励金最大1,000万円を受け取る事が出来ます。また、事業支援を1年間受けられることもノウハウの少ない起業時には大きな助けとなります。
〇日本政策金融公庫『女性、若者/シニア起業家支援資金』
女性起業家が開業7年以内であれば、事業資金の融資を受けられる制度をいいます。“国民生活事業”と“中小企業事業”の2種類があり、融資限度額や諸条件が異なってきます。
〇商工会議所による創業・起業支援
創業・起業時の手続き、ならびに公的融資制度の紹介などの創業や起業時の課題に対する相談会やセミナーが開催されています。
〇その他創業支援
事業計画の策定から実行を支援するための『創業補助金』や、小規模事業者を支援するための『小規模事業者持続化補助金』などもあります。女性に限定していませんが、創業や小規模である事で受けらえる支援は、ぜひ活用を検討すべきです。
3 国内外で有名な女性起業家5選
現代では生き方が多様化し、個人の、そして何より女性の自立化が進んでいます。女性の社会進出によって、今後ますます女性の活躍の場は増え、起業をする女性も増加の一途を辿るでしょう。ここでは国内だけではなく海外にも目を向けている、また海外生活での実体験を活かしている女性起業家を5人紹介します。自分の力で未来を切り開こうとする女性たちの活躍と奮闘のドラマを見ていきましょう。
3-1 小室淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス)
最初に紹介するのは小室淑恵氏です。氏は女性の社会進出や女性の社会的ポジションの確立に尽力しており、自ら現代の女性の社会像を牽引する存在といえます。
小室氏は2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立しており、同社の代表取締役社長を勤めています。同社は働き方を変えることをコンサルタントする会社で、残業や長時間労働を無くす・減らすことを目標としており、建設業界から官公庁に至るまで様々な業界の顧客がいます。
小室氏の略歴を見ていきましょう。日本女子大学文学部の在学中に、猪口邦子氏(元少子化・男女共同参画担当大臣)の講演の中で、出産と仕事との両立や女性の自立という、後の人生に大きな影響を及ぼす当時まだ社会において一般的と言えなかった考えに出会います。
その後、女性の社会進出が進んでいるアメリカに在学中に留学し、シングルマザーの元でベビーシッターとして住み込みます。そこでそのシングルマザーが、育児休暇を利用して大学で資格を取得してスキルを磨いた後に社会復帰を果たす様を目の当たりにしました。
日本においては、育児休暇といえば育児に専念するための休暇、あるいは育児に専念しなければいけない休暇という考えが根強く、また育児休暇を取得することそのものにまだ高い壁があるのが現状です。しかし、小室氏が目の当たりにしたアメリカの育児休暇は、自分のスキルアップのために活用するというものでした。
留学後、大学を卒業すると資生堂に入社します。当初はルートセールスという自身の希望しない部署の配属となりましたが、そこでトップの営業成績という結果を出し、社内のビジネスモデルコンテストに挑みます。
しかし、当時の社内コンテストは、勤務年数の長い男性役員のみが参加するというものでした。小室氏は前例を打ち破りプレッシャーをはねのけるべく、コンテストのプレゼン本番に向けて原稿を暗記し、会議室を借りて場馴れをするといった準備を行います。
プレゼン時の歩数も計算に入れて何度も本番当日のシミュレーションを行って、晴れて優勝を果たします。そして、予算を承認されて一人で社内起業をするに至りました。
小室氏が立ち上げた事業は「育児休業支援」でしたが、当時の小室氏は独身で子供もおらず、批判も少なくないものでした。そのため小室氏は次に、実際に育児休暇中の人たちから生の声を聞いて回ります。
そこで集まった声は、育児休暇取得中には社会と断絶しているという不安を感じている、というものでした。多くの人が不安を抱えた中で育児をして休暇を取得していることが分かり、小室氏は自身の考えと事業の方向性が正しいことを確認しますが、なかなか業績は伸びません。
残業時間は増え、焦りを募らせていくそんな中、ある日上司から、残業をせずに早く帰るようにと進められます。小室氏はこの上司の一言が転機のきっかけであったと語ります。
それからは毎日決まった時間に帰るようにして、帰社後の時間を知人や友人との食事などの時間に充てるようにしました。ある日友人から、自分の会社も女性支援に力を入れ始めた、ということを聞き、そこからプロジェクトの受注へと繋げます
当時、時代は正に女性支援という転換期を迎えていました。法整備は進んで、上場企業も女性支援へと舵を切っていたことも重なり、時代の潮流に乗って、小室氏の事業は受注を増やし始めます。
そして2005年9月に資生堂を退社して、2006年7月に株式会社ワーク・ライフバランスを設立します。同社は、生産性を高めるためのコンサルタントを営み、「ワーク・ライフバランス組織診断」等の開発や、ワーク・ライフバランスコンサルタントを養成する講座を主催しています。
小室氏は同社の顧客である内閣府の「男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」の委員も務め、2012年には通常国会・衆議院予算委員会の公聴会で「日本の長時間労働の問題点と解決策」を提案するなど、活躍の場をますます拡げています。
3-2 吉井絵梨子(株式会社ペア)
次に紹介するのは吉井絵梨子氏です。氏は世界的ミス・コンテストの「ミス・グランド・インターナショナル」の日本大会にあたる「ミス・グランド・ジャパン」を設立して、運営事務局の代表を務めています。
吉井氏は自身も日本代表としてミスコンの世界大会へ出場経験を持っており、その自身の経験を活かしてミスコンを運営しつつ、ミスコン参加者へのバックアップを行っています。
吉井氏の略歴です。秋田県に生まれ育ち、高校卒業後にはアメリカの大学に留学しました。そこで語学やコミュニケーション学を学び、通訳として働いた後、ミスコン挑戦への道を歩み始めます。
ミスコンの参加実績には、2012年のミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストや、2013年のミス・グランドの日本代表などがあります。また、2015年にはミス・グローバル特別賞を受賞するなど、輝かしい経歴を持っています。
そして現在、「Stop the war」をスローガンに掲げて社会的な課題にも目を向けているミス・グランドの日本国内運営団体であるミス・グランド・ジャパンの運営者へと転身し、ミスコンの国内における中心人物として活躍しています。
吉井氏がミス・グランド・ジャパンを設立したきっかけは、自身が世界大会に挑んだ際の孤独な経験を原点としています。
自身が世界大会に出場した際には、他に協力する人や頼れる人がおらず、自分ひとりで考えて、費用も自分で用意しなければいけませんでした。その経験を後進にさせないように、ミスコンのバックアップになれる運営組織を設立したのです。
ミス・グランド・ジャパン運営当初は資金もなく、コツコツ貯めた自己資金で組織の運営を賄い、そしてスポンサー獲得のために東奔西走し、メールや電話はもちろん飛び込み訪問も行いました。
未経験であった営業資料を作っては作り直し、とにかく動いた結果、多くのスポンサー企業が付くようになって現在に至ると吉井氏は語っています。
吉井氏は翻訳・通訳・ミスコン運営を行う「株式会社ペア」も設立しており、そこでもミスコンの運営やバックアップに携わっています。
3-3 平野未来(株式会社シナモン)
平野未来氏は人工知能(AI)エンジン開発会社である株式会社シナモンの設立者であり代表取締役です。氏はアメリカのシリコンバレーで開催された、国際的な次世代イノベーションのコンペティションである「International Women in Tech」のファイナリストでもあります。
株式会社シナモンは「日常的に発生する無駄な業務をなくし、人が創造性溢れる仕事に集中できる世界を目指します」というミッションを掲げ「世界No.1のビジネスAI企業」を目指しています。
平野氏の子供の頃の夢はパイロットだったものの、身長制限により断念し、モノづくりの世界を志してお茶の水女子大学情報科学科に進学しました。
大学4年生時と修士1年生時の2回、国によるIT系人材発掘プロジェクトの助成金「未踏ソフトウェア創造事業」に選ばれ、そのときの助成金を元にして、東京大学大学院在学中の2006年に「ネイキッドテクノロジー」を設立して起業家としての道を歩み始めました。
ネイキッドテクノロジー社は、現在でいうところのビッグデーターの人工知能による分析技術を事業としていましたが、当時時代が追いついていなかったのか業績は上がりませんでした。しかし、そのような逆風でも投げ出さず、東大エッジキャピタルから増資を受けて挑戦を続けます。
次に開発した、HTMLのコードからスマホとフィーチャーフォン両方のアプリを開発できるミドルウェアがミクシィの目に留まり、ミクシィから事業売却の話を受け、同社を売却しています。
そして、2012年に売却資金を元にして、株式会社シナモンを海外のシンガポールに設立しました。かねてからの目標であった海外でビジネスを行う構想を実現させたのです。
平野氏はその後もベトナムへの開発拠点の設立や、台湾やバンコクにマーケティングチームの設置など、アジア進出を行います。そのベトナムのハノイの開発拠点には、当地の工学系大学出身のトップ技術者が集っています。
当時は早すぎた人工知能の発送も、時代がやっと追いついてきており、平野氏と平野氏率いる同社の活躍はこれから正に花開くところといえます。平野氏は、人工知能によって人間の生産性を高め、日本人の顔を一人ひとり明るくしていきたいと語っています。
3-4 小林りん(ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン)
小林りん氏は「社会起業家」です。社会起業家とは、営利法人のように株主や経営者の利益を優先するのではなく、社会に広く有益さをもたらす組織・団体を設立する起業家のことです。
小林氏が社会起業家に至るまで、そして具体的な社会活動の内容を見ていきましょう。小林氏は東京に生まれ、1990年に東京学芸大学附属高等学校に入学しました。難関として知られる高校ですが、小林氏は同校を卒業することなく中退しています。
そして、カナダの高校にあたるピアソン・カレッジに入学します。同校には、小林氏がそうであるように、各国から奨学金を受けて優秀な生徒が集っていました。勉強はできて当たり前、それではあなた(自分)には何ができるのか、ということを問われ続ける学校生活であったと小林氏は語っています。
同校では社会貢献活動にも重きを置いており、小林氏はソーシャルワーカーであった母親からの影響もあり、週に2回の小児麻痺患者の施設へボランティア活動を行います。その傍らメキシコにも行き、そこで現地の貧困さと自分の環境の幸福さを実感します。
同校の在学中には、国際的な大学入学資格にあたる「国際バカロレア資格(IBPD)」を取得して、一旦慶應義塾大学に入学、その後大学東京大学経済学部に入学し直し、卒業後は外資系投資銀行の1998年にモルガン・スタンレー日本法人に入社しました。
その後はラクーンホールディングス、国際協力銀行(JBIC)へと活躍の場を移し、2005年にはスタンフォード大学大学院の国際教育政策学の修士号を取得しています。2006年には国際児童基金(UNICEF)にてフィリピンにてストリートチルドレンへ非公式教育活動を行っています。
そうした中で小林氏は、自分に何ができるのか、自分の価値を最も出せるものは何か、ということを問い続け、それは教育や社会貢献である、という考えに至ります。
そして2009年、社会貢献や開発経済のリーダーを育てる全寮制のインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団(ISAK)を立ち上げて、代表理事に就任しました。
同校の建学精神は、日本に留まらないアジアの、そしてその先を見据えるグローバル社会のチェンジメーカーを育てることです。
小林氏は、「チェンジメーカー」とは社会のリーダー的な役割を持つ人ではあるものの、CEOや政治家といったイメージを避けて、社会に対して無から有を生み出してイノベーション(変革)を起こすことができる人をイメージしている、と語っています。
同校は公益法人の認定を受け、その後2016年10月にはユナイテッド・ワールド・カレッジ国際理事会から日本初のUWC加盟校の承認を受けました。
長野県軽井沢にある同校は、海外からの留学生が多く奨学金制度にも力を入れており、自分で選択して判断できる将来のチェンジメーカーを育てようと、小林氏を初めとした熱意ある人たちによって運営されています。
3-5 岡崎礼奈(株式会社ALE)
最後に紹介するのは岡崎礼奈氏です。ここまで世界に目を向けた女性起業家を紹介してきましたが、岡崎氏が見据えている舞台は宇宙です。
岡崎氏は、科学とエンターテインメントの両立を掲げて、世界初の人工流れ星を開発する、株式会社ALEを設立しています。
岡崎氏は鳥取県に生まれ、東京大学理学部天文学科を卒業しました。同大学の在学中には、ネットワークゲームの開発や科学教育のコンテンツ作りを行うRevealLaboratoryという会社を設立していました。
卒業後はゴールドマン・サックスに入社しますが、学生の頃に見た獅子座流星群の衝撃を忘れられず、コンサルティング会社を設立して人工流れ星の研究を始め、そして世界初の宇宙をエンターテインメントする株式会社ALEの設立に至ります。
人工流れ星は、天然の流れ星に比べると流れ星の素となる物質が大きく、そのためより長く発光させることができるという特徴を持っています。人工流れ星が実用化された際には、地上の任意の時間・場所で、花火のように流れ星を鑑賞することができるようになります。
2019年1月には、初号機をJAXAのイプシロンロケット4号機に搭載して軌道投入を成功させ、地上との通信を確認するという足跡を残しました。続く2号機も2019年10月に完成しており、着実に歩みを進めています。
岡崎氏と同社は、人工流れ星の開発によって基礎科学の発展への寄与を目標としています。2020年春に予定していた世界初の人工流れ星イベントは延期となりましたが、同社は今日も人工流れ星の実現に向けて邁進しています。
以上、5名の女性起業家を紹介しました。自分の目標に邁進し自己実現を目指している女性は光り輝いています。これからますます増えるであろう女性起業家に期待しましょう。
4 まとめ
今回は女性社長の会社開設のための役に立つ情報をまとめました。女性の起業や会社設立は男性に比べると、費やせる時間が多くありません。そのため限られた時間の中で、自分の思った会社が設立できて、事業が行えて、成果を出すためには優れた戦略が必要になります。優れた戦略を立てるのには、適切な情報収集と計画的な行動・準備を行う必要があります。費用は掛かりますが、適切な情報収集には専門家への相談が最も有効で、かつ時間もかかりません。自分がやりたい会社や事業をおこなうためにはどんな情報を探すべきか、それにあった専門家が見つけられるようにしてみてください。