サラリーマンと聞いて、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。一昔前までは、サラリーマンといえば一つの企業に何十年も働き続け、その会社の成長に最大限コミットするイメージが一般的でした。しかし近年は、働き方改革や考え方の多様化などの影響で、従来型のサラリーマンとはイメージが変化しています。

その最たる変化が「副業」です。ここ10年間で副業を始めるサラリーマンの方が急激に増えてきました。副業とは、本来働いている職場とは別の場所で仕事を行うことを意味します。他の会社で勤務するのはもちろん、個人事業主や経営者として副業を本格的に行うサラリーマンも少なからず存在します。

新しい収入源を得られる点で大きなメリットがある副業ですが、サラリーマンである以上勤め先にバレた際のリスクが心配になります。昔ながらの考え方を持つ人もいるため、バレたらトラブルになるケースもあります。ただし、副業で会社設立したからと言って必ずしも勤め先にバレるわけではありません。

そこで今回は、サラリーマンが副業で会社設立した旨が勤め先にバレるケースや、バレないようにする方法を詳しく解説します。合わせて会社設立するメリットやデメリット、バレた場合のリスクについても解説するので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

1 サラリーマンが副業で会社設立するメリット

サラリーマンが副業で会社設立するメリット

そもそも副業は、会社設立をわざわざしなくても行えます。現に、個人事業主として副業しているサラリーマンの方は少なくありません。では一体、なぜサラリーマンが副業のために会社設立する必要があるのでしょうか。結論を言うと、個人事業主の場合と比べて、会社設立することで得られるメリットが大きいためです。

この章では、サラリーマンが副業で会社設立する3つのメリットをお伝えします。

サラリーマンが副業で会社設立する3つのメリット

1-1 所得税の節税につながる

まず大きなメリットとして考えられるのが、所得税の節税です。

所得税とは、会社での労働や事業で得られた所得の割合に応じて課税される税金であり、サラリーマンはもちろん経営者も支払う必要がある税金です。

個人事業主として副業を行うと、売り上げから費用を引いた所得全額に対して税金が課税されます。所得税は累進課税ですので、稼ぎが増えるほど税率は高くなり負担が増加します。一方で会社設立した場合、売り上げの中から会社からご自身の給与を支払うことになります。そのため、会社で働いているサラリーマンと同じように給与所得控除を活用できます

給与所得控除とは、給与所得者が受け取った収入について、その一部を控除(差し引く)できる制度です。給与所得控除を活用することで、課税所得を圧縮し課税される所得税を減らせます。個人事業主で言うところの経費のようなイメージです。

具体的に控除できる金額は下記の表にまとめています。

給与収入 控除金額
180万円以下 収入金額×40%-10万円円(55万円に満たない場合は55万円)
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

同じ収入でも個人事業主よりも控除できる金額が増えるため、場合によっては数十万円もの節税効果を期待できます。

節税できた金額はその分だけ手元に多くの利益を残せるため、副業である程度の売り上げを稼いでいる場合には会社設立した方がメリットが多いと言えます。また、これとは別に法人税は所得税とは異なり一定であるため、一定以上の売り上げを得ていると法人税の節税にもつながります(参考:No.1410 給与所得控除|所得税|国税庁)。

1-2 消費税の節税につながる

副業で会社設立を果たすと、消費税の節税につながるケースもあります。個人事業主にしろ法人にしろ、事業で1,000万円を超える課税売上高を稼ぐと消費税の課税事業者になります。課税売上高とは、売上高から消費税などの要素を差し引いた金額を指します。

の課税売上高が1,000万円を超える場合は、その年度から起算して2年後から消費税を支払う必要が出てきます。たとえば令和2年度に1,000万円を超えたら、令和4年度以降に消費税の支払いが発生します。現行法では消費税率は10%であるため、消費税が課税されるかされないかで手元に残るキャッシュは大きく変わってきます。なるべくならば、消費税の納税を免除したいと考えるのが普通です。

そこで役に立つのが会社設立という方法です。会社設立すれば消費税の計算期間が一度リセットされます。つまり会社設立から2年間は、それまでの課税売上高に関係なく消費税を納税せずに済むわけです。そのため、課税売上高が1,000万円を超えた年度に会社設立を果たせば、2年後に消費税を支払わずに済み、大きな節税効果となります。

ただし、例外的に会社設立から2年を経たない状況でも、消費税が課税されるケースがあります。具体的には、特定期間(6ヶ月間)の課税売上高が1,000万円を超える場合や、給与支払額の合計が一定以上、資本金が1,000万円を超えるケースでは、たとえ会社設立から2年以内であっても消費税の課税事業者になる可能性があるため注意が必要です。

とはいえ、サラリーマンとして副業を行う場合は、上記の例外的なケースにはほぼ該当しないと考えられます。副業が軌道に乗って売り上げが1,000万円を超えたときは、会社設立のタイミングとしてベストであると考えてもらって問題ないでしょう(参考:売上高が1,000万円を超える場合(消費税について) 国税庁)。

1-3 信用力が高くなる

たとえ副業だとしても、本格的に事業を行うとなると信用力が成功を左右する上で非常に重要となります。たとえば事業を行う際には、金融機関や投資家から資金調達が必要です。もしくは、商談などで取引先から案件を獲得する必要が出てきます。商談にせよ資金調達にせよ、成功させるには信用力が非常に重要となります。

しかし個人事業主の場合、相手によっては中々信用してもらえない可能性があります。最近は働き方の多様化で偏見を持つ人は少なくなったものの、副業で個人事業主をやっているということに対して、胡散臭いとか本気でやっていないと見下してくる人はゼロではありません。ただ見下されるだけなら良いですが、取引を断られたり、融資や出資を受けることができないリスクもあるため看過できません。

一方で会社設立すれば、たとえサラリーマンが副業で行っていたとしても、赤の他人から見ると経営者になります。会社設立するだけで、よくわからない個人事業主から会社の経営者になるわけです。そのため、金融機関や投資家からの資金調達、重要な取引先との商談を成立できる可能性が高くなります

加えて、BtoCビジネスであれば、顧客からもより一層の信頼を獲得できるでしょう。副業かそうでないかに関係なく、ビジネスにおいて信頼は非常に重要な要素です。本格的に副業ビジネスをスケールさせたいならば、会社設立を検討するのも賢い戦略でしょう。

2 サラリーマンが副業で会社設立するデメリット

サラリーマンが副業で会社設立するデメリット

上記でお伝えしたように、副業で会社設立するとさまざまなメリットを得られます。しかし一方で、サラリーマンが副業で会社設立することには、デメリットもいくつかあります。メリットのみを見て安易に会社設立を行うと、思わぬデメリットに直面するリスクがあります。

この章では、サラリーマンが副業で会社設立する上で注意すべきデメリットを3つお伝えします。

サラリーマンが副業で会社設立する3つのデメリット

2-1 会社設立に手間や費用がかかる

まず会社設立の際に生じるデメリットが、手続きにかかる手間や費用です。会社設立のためには、会社の基本的なルールを定める定款の作成や資本金の払い込み、登記書類の作成・提出などの手続きが必要となります。必要となる書類も少なくないため、簡単に終わる手続きではありません。

ただでさえサラリーマンは、本業と副業を両立させるだけでも精一杯でしょう。それに加えて会社設立の手続きが発生すると、本業や副業が疎かになるくらい忙しくなるリスクがあります。とくに副業ビジネスを拡大することで忙しい場合はなおさらです。

また、手間のみならず費用も副業でビジネスを行うサラリーマンにとって大きな負担となります。まず定款の認証時に定款認証の手数料として、およそ5万2,000円の費用が発生します。加えて、会社設立の登記では15万円の登録免許税が必要となります。つまり株式会社を設立するだけで20万円もの費用がかかってしまうのです。忙しさを理由に司法書士に依頼した場合には、さらに手数料が発生します。

なお合同会社を選べば、定款認証が不要となる上に登録免許税も6万円で済むため、株式会社の設立と比べて遥かに費用を節約できます。とはいえ会社設立するだけで数万円もの出費が嵩むのは、副業で会社設立を行うサラリーマンにとっては決して少なくない金額でしょう。

以上のとおり、会社設立には多大な手間や労力、費用がかかります。本業ならまだしも、副業で会社設立を行う上ではかなりの負担となります。すでにかなり儲かっているケースや本格的に副業を行いたい場合でない限り、無理に会社設立する必要はないでしょう。

2-2 事務的な負担が増加する

会社を設立して副業を行うと、個人事業主として副業を行う場合と比べて事務的な負担が増加します。たとえば確定申告一つをとっても、個人事業主よりも複雑な会計処理が必要です。確定申告や日々の経理にかかる手間が増えるため、その分だけ本業に費やす時間が減ったり、精神的に疲労が重なる可能性があります。

また、単純に手間が増えるだけでなく処理の内容も高度となります。大学で専攻していた、簿記2級や1級を持っているなどであれば問題ありませんが、そうでない限りご自身で会計処理を行うのは難しいでしょう。税理士に依頼すれば税務処理を代行してもらうことも可能です。ですが手間が省ける分だけ費用がかかってしまうので注意が必要です。

事務的な負担は、確定申告や日々の会計処理のみではありません。会社設立を行った場合は、たとえ副業であったとしても労働保険や社会保険に関する手続きも必要となります。保険に関する手続きは定期的に発生するため、本業の妨げになるリスクがあります。

加えて、重要な意思決定を行う際には株主総会の決議が必要となります。たとえば定款の変更や資本金の増額・減額、事業譲渡などを行うためには、その都度株主総会の決議を行わなくてはいけません。とくに株主が複数存在する場合は、都度召集して賛成を得る必要があるため、余計手間がかかります。

以上のとおり、会社設立を果たすとその時点から多大な手間が発生するようになります。経理や総務に関して人を雇用しない限り、すべてご自身でおこなう必要があります。副業での会社設立では、あらかじめ負担が大幅に増加することを十分に検討しておきましょう。

2-3 副業をしていることが会社にバレるリスクが高まる

本業で会社設立した場合のデメリットは以上になります。しかしサラリーマンが副業で会社設立する際には、もう一つ注意すべきデメリットがあります。そのデメリットとは、副業が会社にバレるリスクです。

個人事業主として副業を行っている場合でも、会社にバレる可能性はゼロではありません。しかし会社設立した場合は、個人事業主よりも格段に副業が会社にバレやすくなります。昭和の時代や平成初期と比べると、社会全体で副業を認める風潮が広まっています。ですが依然として、従業員が副業を行っていることを良く思わない経営陣がいるのも事実です。

こうした経営陣のもとで働いている場合、副業がバレた際のリスクは非常に大きいです。できれば、副業をしていることをバレたくないでしょう。後述するように対策はあるものの、確実に副業がバレたくないならば、個人事業主として副業を続けるという選択肢もあるでしょう。

サラリーマンが副業で会社設立するデメリットは以上になります。とくに副業の場合、最後の項目でお伝えしたように会社にバレるリスクが大きなデメリットに感じられるでしょう。次の章からは、会社設立がバレた場合のリスクやバレるケース、バレないようにする対処法などをご紹介します。

3 会社設立がバレたらどうなる?

会社設立がバレたらどうなる?

デメリットこそあるものの、税金や信用力の面でメリットがあるため、副業で会社設立したいサラリーマンの方は少なくないでしょう。しかし、副業が会社にバレた場合を考えると、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか?

そこでこの章では、会社設立がバレた場合にどうなるかを、法律や現状などを交えつつ解説します。

3-1 法律的には問題ない

そもそも、サラリーマンが副業で会社設立することは法律的には問題ありません

まず日本を根本的に支える憲法では、職業選択の自由を定めているため、副業だろうがなんだろうが自由に仕事を行うことができます。また、労働基準法をはじめとした労働関連法規に関しては、そもそも副業を禁止する規定自体がありません。このように、法律では副業を禁止しているような規定はない上に、憲法上はサラリーマンが副業を自由に行うことを実質的に認めています。

加えて、政府が公表している「モデル就業規則」にも副業を禁止する旨は書かれていません。モデル就業規定とは、従業員が就業する上で守るべきルール(就業規則)について、お手本として政府が示しているものです。従来このモデル就業規則には、許可なく副業を行ってはいけない旨が記載されていましたが、改訂されたことで届出を行えば副業を行えると記載が変更されました。

ただしモデル就業規則では、下記のケースに該当する場合は従業員の副業を禁止・制限できるとしています。

  • ・労務提供上の支障がある
  • ・企業秘密が外部に漏洩する
  • ・会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を壊す行為がある
  • ・競業により企業の利益を害する

上記のケースに該当する場合は、いやおうなしに副業での会社設立が制限されるため注意が必要です。とはいえ、基本的には政府も副業を奨励している上に、憲法や労働関連の法律でも副業は禁止されていません。法律で禁止されていない以上、刑事罰に問われるなどのリスクはないため、その点については安心しても大丈夫でしょう(参考:モデル就業規則 - 厚生労働省)。

3-2 会社によっては副業が禁止されている場合がある

法律上問題ない上に政府が副業を奨励していることから、近年は多くの企業で従業員の副業を認める動きが加速しています。しかし会社によっては、副業を禁止する規定を設けているところもあります

本来法律的な観点から言うと、就業規則などで副業を禁止する旨を定めるのは法律的には問題です。違反とまではなりませんが、法的には好ましい行為ではありません。加えて法律はもちろんのこと、副業を奨励している政府の意向にも背くことになります。

ではなぜ、法律を無視してまで副業を禁止する企業が依然として多いのでしょうか?結論から言うと、本業に支障をきたす事態を予防する目的で副業を禁止しています。サラリーマンが副業を行う場合、基本的には本業の業務が終わった後や休日などに副業を行います。

副業をやることで休む暇がないため、疲労が蓄積しやすくなり、結果的に本業でのパフォーマンスが悪化するリスクがあります。疲労が蓄積しないとしても、副業での稼ぎが気になりすぎて、本業が疎かになるリスクもあるでしょう。こうした本業へ支障が及ぶことを防止する目的で、副業をわざわざ禁止する企業が多いわけです。

上記の理由とは別に、顧客の奪い合いになるリスクや、副業により会社の信用自体が損なわれるリスクもあります。サラリーマンの副業には大小さまざまなリスクがあるため、企業が副業を禁止することは合理的といえば合理的なのです。

副業を始めようと考えているサラリーマンの方は、まずはご自身の働いている会社が副業を認めているかどうかを確認しておきましょう。

3-3 禁止されている副業が会社設立でバレた場合のリスク

では、禁止されている会社で副業のために会社設立したことがバレた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?結論から言うと、会社に与えた損害や本業への影響などによりリスクは変わります。

まず、副業と本業を明確に区別できていて、本業にまったく支障をきたしていない場合は、口頭での注意で済む可能性があります。それまで十分本業で成果を出してきて、上司や同僚との関係性も良好であればそこまで大事にはならないでしょう。

しかし、疲労などで本業に支障をきたしていた場合や、本業で十分なパフォーマンスを出していない、上司との関係性が悪いなどの状況に該当する場合は、重いペナルティを科される可能性があります。具体的には、減給や降格、自宅待機などのペナルティが科されるでしょう。顧客を奪うなどして会社に損害を与えた場合は、解雇されるリスクもあります。

前述したとおり、法律的には副業をしていることを理由に罰則を与えることはそもそも問題です。しかし、本業に支障をきたしている以上、全面的に会社の非を追求することは難しいのが現実です。そもそも裁判には膨大な時間や労力、費用がかかるため、なるべくは裁判沙汰にまで持っていかないのがベストです。

そもそも処罰が与えられるかどうかに関係なく、副業が一度バレると同じ会社では副業を継続できなくなる可能性が非常に高いです。損害を与えたり本業に支障が出ていれば、モデル就業規則の記述にあるように、会社側は副業を制限できます。支障が出ていなくても、上司からは「本業に支障を出しているのではないか」と思われるため、これまで通り副業を続けにくい環境になります。

法律上はサラリーマンの副業は認められているものの、バレた場合は全面的に自らの権利を主張するのは難しいのが現実なのです。上司との関係がギクシャクしたり、裁判沙汰にまで発展することのないように、なるべくはバレないように注意するのが最善策です。

4 副業での会社設立が勤め先にバレるケース

副業での会社設立が勤め先にバレるケース

副業で会社設立すると勤め先にバレるとよく聞きますが、必ずしもバレるとは限りません。つまり、バレるケースを回避すれば勤め先に会社設立したことをバレずに済むわけです。

少しでも勤め先とのトラブルを回避するためにも、なるべく副業で会社設立したことはバレないようにすべきでしょう。そこでここでは、副業での会社設立が勤め先にバレるケースを6つご紹介します。

勤め先にバレるケースを6つ

4-1 登記簿を閲覧される

可能性としては低いケースですが、登記簿を閲覧されることで副業で会社設立したことがバレる可能性もあります。

会社設立する際には、会社を設立した旨を広く開示し、社会的な信用力を担保するために「会社設立登記」という手続きを行います。設立登記を行うことで、はじめて法人格(会社の権利)が付与されるため、会社設立の際には登記は必須の手続きと言えます。なお設立登記は、法務局と呼ばれる場所で行います。法務局は全国8ヶ所(地方法務局は42ヶ所)あり、基本的には本店所在地の最寄りの法務局で手続きを実施します。

設立登記の際には、取締役の氏名や会社の所在地、事業目的など、重要な事項を記した書類を提出することになります。そして、設立登記で提供した情報は、法務局に保管されている登記簿(履歴事項全部証明書)に記載されます。

ここで注意したいのが、会社の登記簿は誰でも取得できてしまう点です。商業登記法第10条第1項の規定により、手数料を支払えば誰でも会社の登記簿を取得できる決まりとなっています。自社の登記簿はもちろん、他社の登記簿も取得することができます。書面の提出や印鑑の押印も不要であるため、とても簡単な手続きで完了します。
つまり、理論上は会社の上司や社長に登記簿を閲覧されることで、副業がバレてしまう可能性があるのです。ただし、誰がどのような会社を経営しているかわからなければ、登記簿を取得しようがないため、現実的にはほぼバレる心配はありません。とはいえ、リスクがゼロとは言い切れないため、念のため知っておいて損はありません(参考:法務省:商業・法人登記 Q&A

4-2 法人番号公表サイトで検索される

こちらも可能性としてはそこまで高くありませんが、法人番号公表サイトで検索されることで、副業で会社設立した旨がバレてしまうリスクがあります。

そもそも法人番号とは、行政の効率化を目的に法人に対して割り振られている識別番号であり、個人でいうマイナンバーのようなものです。法人番号公表サイトでは、法人番号の指定を受けた会社について、商号または名称、本店または主たる事務所の所在地、法人番号を公表しています。

この法人番号公表サイトは、法人番号はもちろん、会社名や所在地などの条件を入力すれば、その条件に合致する会社がピックアップされる仕組みとなっています。直接役員の名前が出てくるわけではないため、一見すると副業で会社設立したことはバレないように思えるかもしれません。

しかし、たとえば本店所在地を自宅にしている場合、所在地を検索されることで副業を行っている疑いを持たれる可能性は十分にあります。疑われた上で登記簿を閲覧されれば、カンタンにご自身が役員として登記している旨が知られてしまいます。

正直、一人のサラリーマンが副業しているかどうか調べるために、わざわざここまでするような会社はないと思います。ですが、100%ないとは言い切れないため、こうしたリスクを許容した上で会社設立することが必要です(参考:国税庁法人番号公表サイト)。

4-3 社会保険への加入

一番副業がバレやすい要因として挙げられるのが、社会保険への加入です。社会保険とは、病気や怪我、老後の生活に備えて加入する保険であり、健康保険と厚生年金保険が該当します。

本来サラリーマンの方は、勤務している会社の社会保険に自動的に加入しているはずです。しかし会社設立した上で給与をもらう役員になった場合、ご自身が設立した会社の社会保険にも加入する必要が出てきます。社会保険への加入は受け取る金額には関係ありません。つまり、本業で勤めている会社とご自身が経営する会社で、二重に社会保険に加入する状態となるわけです。

二重に社会保険に加入する場合、納付する社会保険料の金額は本業と副業の報酬額に対して、それぞれの会社の報酬月額で按分した上で、給与から天引きすることになります。そのため二重に社会保険に加入する状況になったら、年金事務所に対して、「二以上事業所勤務届」という書類を提出しなくてはいけません。

この手続きを行うと、年金事務所が本業と副業の社会保険料を按分し、それぞれの事業所へ通知を送付します。この通知が見られることで、副業を行っていることがバレてしまうわけです。ただし、厳密に言うとあくまで別の会社で給与をもらっていることがバレるだけであり、会社設立したことや取締役として会社を経営していることは発覚しません。

とはいえ、副業を行っている事実がバレることには変わりないため、バレた際には前述したような事態に発展するリスクがあります。会社設立して給与を受け取る以上、この通知を回避することはできないのでほぼ確実に副業がバレてしまいます。

4-4 住民税の増加

副業の結果住民税の金額が増加した場合、会社に副業を行っていることが判明する可能性があります。

サラリーマンにしても経営者にしても、一定以上の所得を稼いでいる場合には住民税が課税されます。住民税とは、地方自治体(市区町村や都道府県)に支払う税金であり、福祉や教育などの行政サービスに対して支払うものです。基本的には1月1日時点で住所があった場所に対して住民税を支払いますが、地域によって税額は変わってきます。

会社に勤務しているサラリーマンの場合、給料から住民税が引かれています。ちなみにこの仕組みを天引きと言います。会社が住民税を天引きすることで、サラリーマンは自ら住民税を自治体に納税する必要がないわけです。

ここで問題となるのが、自治体が会社に対して各従業員の住民税の金額について通知を行う点です。そもそも住民税の金額は、自治体によって異なるのはもちろん、前年度の収入によっても異なります。副業を行うと当然ご自身の所得は増えるため、給与は変わらないのに住民税の額は増えることになります。自治体は住民税の額を会社に対して通知するため、この時に住民税の増額に気づかれてしまうのです。

あくまで住民税の金額が増えるだけで、副業を行っていることが直接バレるわけではありません。しかし給与が変わっていないのに住民税が増えているとなると、まず副業が疑われるでしょう。

とくに、副業をわざわざ禁止しているような会社は、こうした住民税の変化も細かくチェックしている可能性が高いので細心の注意が求められます。

4-5 うっかり話してしまう

意外と馬鹿にできないのが、ご自身でうっかり会社設立したことを話してしまい、副業がバレてしまうケースです。人は誰しも承認欲求を持っています。副業がある程度軌道に乗り、会社設立したとなると、親しい同僚などに自慢したくなってしまうのが人の性です。とくに会社設立すると「代表取締役」という肩書きがつくため、なおさら同僚に自慢したくなるでしょう。

「自分は口が堅いし真面目だから絶対話さない」と思う方もいるでしょうが、宴会の席などで話してしまうケースがあるので注意です。宴会でお酒を飲むと、楽しい雰囲気も相まってどうしても気が大きくなったり、注意力が散漫になりやすいです。そうしたときに何気なく副業で会社設立したことを話してしまい、あっという間に上司や社長にバレることもあるので注意しましょう。

4-6 SNS経由でバレる

ご自身でビジネスをしている方であれば、プライベート用とは別にSNSのアカウントを持っているかもしれません。とくに会社設立した場合は、承認欲求を満たす目的やさらにビジネスを拡大する目的で、新しくビジネス用のSNSアカウントを開設するケースが多いです。

しかし注意してもらいたいのが、SNSは基本的に誰でも閲覧できるという点です。たとえ会社の人に副業用のアカウントを教えていないとしても、本名でやっていたり顔を出している場合は、検索することで簡単にアカウントを見つけられてしまいます。とくにSNSには、投稿内容を拡散する機能が備わっているため、わざわざ相手が調べなくても偶然アカウントを見つけてしまう可能性があります。

SNSを副業で活用している方、または今後活用予定の方は、かなり副業が会社にバレるリスクが高いということを肝に銘じておきましょう。

5 副業での会社設立が会社にバレない方法

副業での会社設立が会社にバレない方法

上記でお伝えしたように、意外と些細な理由で副業での会社設立は勤め先にバレてしまいます。では、どうしたら勤め先の会社にバレずに済むのでしょうか?

この章では、副業での会社設立が勤め先にバレないようにする方法を6つご紹介します。副業での会社設立を検討しているサラリーマンの方は必見です。

勤め先にバレないようにする方法を6つ

5-1 家族を社長し、自分は役員にならない

登記簿や法人番号公表サイト経由で副業がバレるリスクに対しては、設立登記の際に家族を社長にして、自分は役員にならない方法で対処可能です。

そもそも登記簿や法人番号公表サイト経由で副業がバレるのは、会社設立時に登記した内容にご自身が役員であることが記されているからです。ですので、配偶者や両親、子供などを社長にして、ご自身は役員にならなければ登記簿に名前が載らないので、副業で会社設立した旨がバレずに済みます。
加えて、社員が少ない会社(常時雇用の従業員が5人以下)であれば、社会保険への加入も不要となります。そのため、登記簿のみならず社会保険が理由でバレるリスクもなくなります。

副業で会社設立したことがバレるリスクを大きく削減できる方法ではあるものの、いくつか注意したいデメリットもあります。最大のデメリットは、ご自身が経営者として会社を経営できない点です。仕事をするにしても、対外的には経営者として取引先や顧客と接することができないため、商談や資金調達などの場面で不利になる可能性が出てきます。

加えて、そもそも役員ではないため、役員報酬を受け取ることもできません。また、経営者としてのステータスも得られないため、承認欲求を満たすことも当然できません。

いわば、会社の経営者として得られるメリットをすべて捨てることになるため、実質的には副業で会社設立したとは言えなくなります。

それでもなお会社を設立したいならば良いですが、そうでない限り個人事業主として副業を続ける方が良いでしょう。

5-2 役員報酬を0円にする

「どうしても会社の経営者として副業を行いたいけど、社会保険が理由で副業が会社にバレてしまうのは怖い」

このように考えている方におすすめの方法が、役員報酬を0円にする方法です。本来会社の役員になった場合、たとえ副業だとしても社会保険への加入が義務となります。しかしご自身の役員報酬を0円にすれば社会保険に加入する必要がなくなるため、社会保険が理由で副業がバレる心配はなくなります。加えて、役員報酬を0円にすると副業により所得が増えないため、当然住民税が理由で副業がバレるリスクもなくなります。

社会保険と住民税が理由でバレるリスクを無くせるため、副業がバレるリスクを軽減する方法としてはかなり優秀な方法です。加えて、形式上は会社の経営者として活躍できるため、取引や商談で不利になる心配もないでしょう。

ただし注意したいのが、副業で得られた収益をまったく手元に残せない点です。副業を行う理由はさまざまでしょうが、基本的には収益を得る目的が大きいと思います。副業でせっかく収益を得られても、その収益をまったくご自身の手元には残せないので、副業のモチベーションが低下するおそれがあります。

ただし、配偶者を役員にしている場合、その配偶者とは生計を共にしているため、家族全体で見た場合は収入が入ってくることになります。ご自身でどうしても収入を得たいという理由がない限り、ご自身の役員報酬は0円にして、配偶者に収入が入るようにするのが良いかもしれません。

加えて、この方法は税法上のリスクが非常に高いです。税法上は実質的に経営している人が誰かという観点で課税するため、場合によっては脱税であるとみなされるリスクがあります。実際にこの方法を用いる際は、税法上のリスクも考慮して事前に税理士に相談するのがベストでしょう。

5-3 非常勤役員として社会保険に加入しない

社会保険が理由で副業で会社を設立した事実が勤務先にばれたくないならば、ご自身を非常勤役員にする方法もあります。非常勤役員とは、簡単にいうと常勤ではなく限られた時間帯や日時のみ働く役員を意味します。

先ほどおつたえした通り、たとえ社員が自分一人でも会社設立すると社会保険に加入する必要があります。しかし非常勤役員の場合は、例外的に社会保険への加入が不要となります。社会保険への加入が不要になるので、当然ながら副業がバレるリスクも減らすことが可能です。

ただし、非常勤役員になったからといって、100%必ず社会保険に加入する必要がないとは言い切れないので注意です。たとえば、代表取締役(ご自身)しか社員がいない場合は、報酬をもらっているならば社会保険への加入が必須となる場合が多いです。
また、他にも役員がいる場合も、実質的に常勤で労働しているとみなされた場合は、社会保険への加入が義務となる可能性があります。場合によっては、過去にさかのぼって未納分を請求されるリスクもあるので注意が必要です。

そもそも、非常勤と常勤に関しては厳格な決まりがあるわけではありません。社会保険をめぐって問題となった際は、そのケースごとに判断されることになります。ご自身で非常勤だから大丈夫だと判断するのは危険なので、必ず弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

5-4 住民税の納付を「普通徴収」にする

住民税の増加で副業や副業で会社設立した事実がバレないようにするには、住民税の納付方法を「普通徴収」に変更する方法が効果的です。そもそも住民税の納税(徴収)方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類が存在します。

普通徴収とは、住民税の納税者みずからが住民税を納税する方法です。主に事業所得を得ている個人事業主やフリーランスの人が普通徴収により住民税を納税しています。自治体から送られてくる納税通知書が年数回送付されるので、その内容にしたがって住民税を納税することになります。

一方で特別徴収とは、毎月の給料から天引きすることで、従業員の納税分を会社が納税する方法です。従業員の側から見ると、毎月自動的に住民税が徴収されているわけです。ここまで読んでわかる通り、会社に勤めているサラリーマンに適用される住民税の納付方法です。

結論から言うと、特別徴収から普通徴収に変更すればご自身で納税するようになるので、副業で収入が増えても住民税が理由ではバレなくなります。主に下記の理由があれば、給与所得を受け取っているサラリーマンでも普通徴収に変更可能です。

  • ・従業員数が2名以下
  • ・他の事業所で特別徴収を受けている
  • ・給与が少ないために税額が引けない
  • ・5月末までに退職する予定がある

さて、一見すると良い方法ですが、この方法にもいくつかデメリットがあります。まず最大のデメリットは、普通徴収に変える際に副業が疑われるリスクがある点です。わざわざ手間をかけてまで普通徴収に変える以上、会社側から副業が疑われるリスクはなきにしもあらずです。

また、ご自身で住民税の納税手続きを行う面倒が出てくる点もデメリットです。ただでさえ副業と本業の両立が忙しいにも関わらず、複雑な税金の計算の手間も発生する点は無視できません。

5-5 最新の注意を払って話さないようにする

ご自身でついつい話すことで副業がバレるリスクに対処するには、最新の注意を払って口を滑らせないようにするしかありません。

たとえば極力不必要な飲み会には参加しないとか、意識がはっきりしなくなるまで飲みすぎないなど、ご自身なりに対策を講じる必要があります。とくに注意すべきなのは、身近な同僚から社内に副業をしていることがバレてしまうケースです。どれほど仲が良くても、100%副業をしていることを他言しないとは言い切れません。なるべく副業をしていることをバレないようにするには、同僚には一切副業をしていることを言わないようにするのがベストです。

5-6 SNSをやらない・個人情報を出さない

SNSをやらない・個人情報を出さない

SNS経由で副業で会社設立した事実がバレないようにするには、当たり前の話ですがSNSをやらないのが一番です。

そもそも経営者だからといって必ずしもSNSをやる必要はありません。人気が重要なビジネスモデルならば経営者個人がSNSで情報を発信する必要はあるでしょうが、基本的にほとんどのビジネスではSNSがなくても事業が成り立ちます。SNSをやる理由が承認欲求を満たすためであれば、副業がバレるリスクを考慮してSNSは行わない方が良いでしょう。

どうしてもSNSをやる必要があったとしても、なるべくご自身の個人情報を出さないようにしましょう。たとえば見込み顧客を獲得することが目的ならば、会社名でSNSのアカウントを開設すれば問題ないでしょう。

SNSは誰でも閲覧できる分だけ副業がバレるリスクも高いので、よほどの理由がない限りやらない、もしくは個人情報を出さない方が良いです。

6 まとめ

サラリーマンが副業で会社設立すると、登記簿や住民税、社会保険などを理由に副業をしていることがバレるリスクがあります。一応いくつかの対処法こそあるものの、どの方法にもリスクやデメリットがあるので100%安全に副業をバレないようにするのは困難です。

副業で会社設立する際には、最大限バレないように対策を講じるのはもちろん、バレた場合のリスクもあらかじめ検討しておくことが重要です。

特に住民税と社会保険に関しては法律も絡んでくるため、ご自身で判断して対策するのではなく、社労士や弁護士、税理士などの法律の専門家に必ず相談しましょう。