今年8月末、原付50ccの小型バイクとして海外からも人気の高いモンキーの生産終了を発表したホンダ。50年の歴史に終止符を打ち、11月に開催される東京モーターショウでは125ccのモンキーが初披露される予定です。

また、ホンダは10月、53年間操業した埼玉県狭山市の工場を2021年を目処に完全閉鎖する予定であることを明らかにしました。寄居町にある寄居工場に従業員を含めて集約し、新たな生産体制を構築する方針です。

狭山工場は、オデッセイ、ステップワゴンなどの4輪完成車を組み立てる工場として1964年5月に製造を開始。生産能力は年間25万台でしたが、昨年の生産台数は17万台に減少するなど低迷していました。

このほか、国内にある三重県・鈴鹿工場、ヤチヨ四日市工場は引き続き生産体制を維持していくとのことです。

今後、寄居工場では電気自動車などの生産能力を向上させ、四輪事業の強化を目指すとしています。

1 日本のモノづくりを支えてきた工場閉鎖

ホンダは古くなった国内組み立て工場を閉鎖して生産体制を見直すことで、新しい一歩を踏み出す決断を下しました。

 

1-1 従業員含めて寄居工場に集約

この度閉鎖するのは埼玉県狭山市にある狭山工場。1964年に完成車組み立て工場として操業開始されましたが、2022年3月末を目処に終了し、4000人以上におよぶ従業員は、2013年に開設されたばかりの寄居町の新工場に移ります。

寄居工場では排ガス規制基準が厳しい電気自動車を増産させる必要があり、狭山工場を閉鎖して一本化することで、稼働率を工場させたい狙いです。ホンダは2030年までに自動車販売のうち3分の2をEV化(電気自動車)する目標を掲げています。

ホンダの八郷隆弘社長は記者会見で「現在、自動車産業は歴史上最も大きな転換期を迎えている。そのため、ホンダはEV化やインテリジェンス技術などの新技術を開発している。(寄居工場に集約することで)生産活動と製品開発を大きく進化させるだろう」と述べました。

このほかホンダは9月、三重県四日市市にある八千代工業の工場を完全子会社にすることを発表しました。同工場ではホンダに代わって商用車などの少量モデルを生産していました。

 

1-2 電気自動車の開発に本腰を入れたホンダ

狭山と寄居の工場は、合計で年間生産能力50万台で、国内総生産能力106万台の約半分を占めています。しかし、近年のホンダの生産台数は、その水準を大幅に下回っていました。

2010年に日本で99万2502台を生産したものの、昨年は82万226台に減少。一方、海外生産は、2010年の270万台から2016年には420万台に急増しました。その間、日本からの輸出は30万5,412台から14万7,185台に減少しました。

ホンダは、狭山工場を閉鎖し、国内生産能力を約81万台に引き下げることを目指しています。2022年からは約70万台の車両を国内で販売し、残り10万台を輸出する予定です。これにより現在約76%の稼働率を100%に近づけたい狙いです。

今後、寄居工場は、自動車のEV車生産の拠点として位置付け、より多くのハイブリッド車とEV車を海外に投入することで、海外生産におけるテンプレートモデルとなることが予想されています。

ホンダは今年6月、EV車開発体制の強化のため、研究所内に専門部門を立ち上げ、EV専用プラットフォームを開発に取り組むことを発表しました。2018年に中国で現地用の電気自動車を発売する予定です。

・ EV化に関する今後の目標と対応強化策

1 2030年に四輪車グローバル販売台数の3分の2を電動化
2 ハイブリッドシステムをベースとする、ホンダ独自の高効率なプラグインハイブリッドシステムを採用したモデルの開発
3 ゼロエミッションビークル(ZEV)、燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(バッテリーEV)の開発を強化
4 2018年発売予定の中国専用モデル(バッテリーEV)に加え、他の地域に向けて専用モデルの開発
5 パワートレインから車体まで1台を一貫して開発する専門組織「EV開発室」を昨年10月に研究所内に設立し、電動車両の開発体制を強化して開発速度を速める

(ホンダニュースリリースより)

八郷社長は「日本は、自動車のEV化を含め、製造業でトップの地位をとる必要がある。これらのプロセスを世界中の他の工場に適用する方法を検討する」と語りました。

 

1-3 激化するEV開発競争〜ライバルたちの動向〜

2017年10月の現時点までで、ルノー・日産などのライバルは、EV自動車開発のため中国企業の東風汽車集団とともに新会社を設立しました。2019年から中国現地で小型車の生産を開始する予定です。

トヨタ自動車は、昨年、独自のEV開発部門を立ち上げ、さらにマツダとサプライヤーであるデンソーと共同で名古屋に合弁会社を設立し(出資金1000万円、トヨタ90%、マツダおよびデンソー5%)、電気自動車を開発していくことを発表しました。

また、フォードやフォルクスワーゲンなどはラインナップにEV車の大体的な計画を発表しています。

2 秋の東京モーターショウでお披露目

9月にドイツ・フランクフルトで開催された同社は2019年にヨーロッパで発売予定のコンパクトな街道を予告するハッチバックスタイルの「アーバンEVコンセプト」を披露しました。

このほか、ホンダは秋に開かれる東京モーターショウで、世界初公開となるスポーツタイプのEV車「Honda Sports EV Concept(ホンダ・スポーツ・イーブイ・コンセプト)」や、ドライバーの表情や声の調子からストレス状況を判断して安全運転のサポートを行う「7Honda NeuV(ホンダニューヴィー)」などを公開する予定です。

 

2-1 モンキーが8月末で生産終了となったばかり

また今年8月に生産を終えた排気量50ccの人気小型バイク「モンキー」の125cc版を世界初公開する予定です。

さらに極低速走行時にマシン自体がバランスを保ち、自律走行することで話題の「Honda Riding Assist-e(ホンダ・ライディング・アシスト・イー)」も出展されます。

(倒れないバイクとして話題のホンダ・ライディング・アシスト)

 

2-2 8月の世界生産は過去最高を記録

今年8月における自動車の世界生産、海外生産、アジア生産、中国生産が8月として過去最高を記録しました。

海外生産は前年同期比108%となる37万9272台、中国生産は前年同期比129.8%となる10万6790台で、世界生産は前年同期比107.7%となる43万7395台となりました。

また国内生産も2ヶ月ぶりに増加に転じ、前年同期比105.6%となる5万5123台でした。国内販売は4万4123台(前年同期比103.2%)で、2ヶ月連続で増加となりました。

・ 2017年8月度における自動車生産台数

  生産台数 前年同期比
国内生産 55,123 105.6%
海外生産 379,272 108.0%
北米 171,436 93.8%
(米国) 115,274 93.9%
欧州 8,268   123.3%
アジア 182,582 123.7%
(中国) 106,790 129.8%
その他 16,986 119.5%
世界生産 434,395 107.7%

(ホンダニュースリリースより作成)