会社を設立するまでの手順と、会社を設立するために必要なお金をご存知でしょうか。会社を設立するまでには様々な作業を行い、また手数料や税金を納めることがポイントです。特に最近は会社設立アプリが会社設立の助けとなり、会社設立の手間と費用を削減する可能性を持っているとして注目を集めています。

また、会社設立時には何かとお金が必要となるため、助成金や補助金、そして融資制度といったできるだけリスクの低い手段で調達するのがおすすめです。

そこでこの記事では、会社設立アプリと資金調達に役立つ助成金・融資制度を紹介しますので、ぜひ最後まで読んで会社設立の参考としてください。

1 会社設立の概要

会社設立の概要

初めに、最もメジャーな会社の形態である「株式会社」を設立する流れを見ていきます。株式会社の設立手順を見て、後にアプリが会社設立にどのような役割を果たすか説明します。

会社は「法務局」にて「法人設立登記」(以下、設立登記)を行うことで設立することができます。設立登記を行うためには、その前準備として会社の基本的な情報を決めておかなければなりません。

会社の基本的な情報とは、会社の名前や発起人(会社設立者)、決算期、業種などのことです。それらの基本情報を、「定款」という会社のルールブックにあたる書類に記載します。

基本情報の中には耳慣れない単語や、どのように設定すれば良いか分かり辛いものがあります。そのため、定款の作成は会社設立に立ちはだかる最初の壁といえるでしょう。

定款を作成したとして、定款はそのままでは会社の基本情報を記載した只の書類です。その書類に収入印紙を貼り、定款としての効力を持たせます。この収入印紙は4万円と定まっています。

また、定款にはもう一つ重要なポイントがあります。定款を公的に認証するための「定款認証」という手続きです。定款認証は、公的機関となる「公証役場」にて行いますが、この認証手続きには手数料5万円が必要です。

定款認証を済ませ、後の手続きのために必要な定款謄本を取得したら、次に資本金の払込みを行います。資本金とは会社設立時の事業運転資金にあたるものです。1円から設定することができますが、大きい額の方が事業をスムーズに運転することができます。

設立登記に幾分か近付いてきましたが、まだやるべき作業が残っています。設立登記を行うには、登記申請書や役員(社長など)の就任承諾書と印鑑証明書などが必要となるため、法務局へ赴く前にそれらの必要書類の準備を行います。

また、会社には実印が必要となります。印鑑は、法務局にて印鑑登録をすることによって実印となります。設立登記を行う際には、実印となる印鑑も用意しておき印鑑登録を合わせて行うと良いでしょう。この辺りは独力で行う場合は二度手間になりやすいポイントです。

さて、ここまで完了するといよいよ設立登記に移ります。設立登記の申請は、用意した書類を法務局に提出し、登録免許税を納めることによって成立します。なお、登録免許税は資本金によって変動します。資本金が2143万円以下の場合は15万円、2143万円以上の場合は資本金の0.7%額です。

設立登記の完了時期は申請後1~2週間が目安です。そのため、会社を設立するには最短でも1週間程度を見ておく必要があります。独力で行う場合は後戻り工程が発生しやすいため、1週間プラス数週間~1ヶ月程度は見ておいた方が良いでしょう。

なお、会社設立時の手続きはこれで全てではありません。会社設立時には様々な役所での設立手続きが必要となりますが、ここまではあくまでも法務局への手続きが終わった段階となります。

設立登記が完了した後に行うことの1つには、会社所在地である都道府県と市区町村にそれぞれ会社設立届を提出することがあります。そして、社会保険(労働保険含む)の加入のために、年金事務所や労働基準監督署、そしてハローワークでの設立手続きを行うことも会社設立時の手続きの1つです。

独力で会社設立を行っていると、設立登記が終わった時点で気を抜いてしまい、その後の手続きに漏れがあるケースが少なくありませんので注意してください。

以上が会社設立の手続きの概要となります。会社の設立費用は合計して約24万円が目安額です。この24万円には資本金や印鑑代、また公証役場への交通費などの諸経費は入っていませんので、計画を立てて行動しないと、手間の面でも費用面でも余計に嵩みがちとなります。

なお、以上は株式会社の場合ですので、合同会社の場合の会社設立手順と費用の場合とは主に2つの違いがあります。1つは合同会社には定款認証が必要ないことです。すなわち、定款認証手数料の5万円も不必要となります。

そしてもう1つは、合同会社の登録免許税は6万円となりことです。この2つの違いにより、合同会社の設立費用は株式会社よりも11万円安く抑えることができます。

このように、会社設立にはやり方によって手間と費用を減らす余地があります。しかし、そのやり方は通常、会社設立後に振り返って気付くことです。会社設立アプリは、その気付きを会社設立の作業中に気付かせる役割を担う可能性があります。

2 会社設立アプリ① 会社設立freee

会社設立アプリ① 会社設立freee

それではここからは、おすすめの会社設立アプリを紹介していきます。まず1つ目は「会社設立freee」です。「freee」とは事務管理のためのクラウドシステムのブランド名となります。

freeeには、預金口座データーの取り込みや経費清算などの機能を持つ「会計freee」や、給料計算や勤怠管理ソフトの「人事労務freee」、税務申告ソフトの「申告freee」などがあります。会社設立freeeは、freeeの中でも会社を設立することに特化したアプリです。

会社設立freeeは「3ステップで会社設立ができる」ことを謳っています。その3ステップとは「準備」、「設立」、「その後」です。その3ステップに沿ってアプリの流れを追ってみましょう。

最初の「準備」ステップでは、会社設立に必要な書類を作成するための会社の基本情報を入力します。基本情報には会社名や形態、会社の住所、事業内容、決算期、そして公告の方法などの、定款に記載するために必要な項目が並びます。

上記項目中の形態とは「株式会社」や「合同会社」のことです。日本では株式会社が最もメジャーな形態であり、会社設立アプリでも株式会社のみに対応しているものがありますが、会社設立freeeでは株式会社と合同会社にも対応しています。

各入力項目の中に見慣れない単語が出てきても、項目ごとに単語の説明が用意されています。前章にて定款作成は会社設立の最初の壁と言いましたが、アプリの助けにより随分と低い壁になるでしょう。

基本情報の入力内容に応じて、定款認証の際に必要となる設立者の印鑑証明書などの添付書類を確認することができます。

また、公告方法の選択画面では「freee電子公告」というオプションサービスを選ぶことができます。このオプションはfreeeの電子公告サービスにより公告するというもので、3,980円/年(税抜)となります。

そして、この入力ステップでは会社設立時に必要な法人印鑑の購入項目も用意されています。印鑑購入のあてが無い場合は購入しておくと良いでしょう。

電子公告や印鑑購入などのオプションを選択している場合は支払い画面へと進み、支払いの確認を行います。ここまで入力ステップは完了となり、次の「設立」ステップへと進みます。

設立ステップでは、定款認証と出資金の払込み、そして設立登記書類の印刷と提出が主な処理です。なお、会社設立freeeでは定款を「電子定款」とすることができます。

電子定款を選択した場合は、電子定款代行手数料として5千円の支払いが発生しますが、定款認証費用の4万円は不要となります。

定款は紙または電子のどちらの場合でも、認証済みの定款を公証役場にて受け取ることになります。その受け取り場所となる公証役場を、このステップの流れの中で選択することができます。ステップはその後出資金の払込みへと移りますので、画面の案内に従って処理を進めます。

出資金の払込みが完了したら、いよいよ設立登記へと移ります。ここまでに入力した会社の基本情報を元に、設立登記用の書類がアプリで自動的に作成されます。定款を初めとした設立登記用書類の内容とまとめ方の解説ページへと移りますので、書類を印刷して解説を参考にまとめましょう。

設立登記用書類をまとめたら、会社の住所に基づいて表示された管轄法務局に提出します。登記完了予定日までに法務局から補正連絡がなければ登記の完了です。ステップに表示された持ち物リストを印刷して法務局へ出向き、その後の手続きで必要となる書類を受け取りましょう。

法務局で受け取る書類の一つである「登記事項証明書」(登記簿謄本)には会社の設立日が記載されています。その日にちをアプリ上に登録して、次の「その後」ステップに移りましょう。

その後ステップでは、設立登記後の年金事務所や税務署、自治体での手続きを行います。設立した会社に一人でも役員報酬または給料が発生する人がいる場合は、社会保険加入のために年金事務所に加入手続きを行います。

また、税務署や自治体にも各種税金納付のために設立届を提出する必要があります。役員報酬(給料)発生者の有無や従業員数によって提出する書類や提出先が異なりますので、アプリの進行画面を参考に用意をしてください。

このステップ中には、会社の銀行口座を開設する画面が設けられています。開設できる銀行口座にはジャパンネット銀行やりそな銀行などが用意されており、口座開設のために必要な情報はここまでの会社の基本情報を流用することができます。

以上がアプリの概要となります。なお、アプリにはオプションとして、専門家による電子定款代行と、有料のフルサポートを選ぶことができます。アプリは無料から始めることができるため、気になる場合はまず試してみると良いでしょう。

また、会社設立freeeに引き続いて会計freeeを使用する場合は、自動的に会社の基本情報が会計freeeに引き継がれ、更に会計freee1ヶ月分のクーポンの特典が用意されています。

3 会社設立アプリ② 弥生のかんたん会社設立

会社設立アプリ② 弥生のかんたん会社設立

弥生のかんたん会社設立(以下、弥生設立)は、会計ソフトの老舗ブランドである「弥生会計」の、会社設立のためのコンシェルジュアプリです。弥生設立は弥生会計の契約が前提ということはなく、無料で使用することができます

弥生設立のホームページ上では、当アプリを会社設立手続きに時間や費用がかからないこと、また会社設立の専門知識がない人へのおすすめをしています。

また、同ホームページでは弥生設立の3つの特徴を謳っています。1つ目の特徴は「入力が簡単」なことです。案内に従って必要な情報を入力することで、定款を初めとした会社設立に必要な書類を自動生成することができます。

なお、弥生設立が対応する会社の形態は株式会社となります。合同会社は非対応となり、また同アプリは2017年2月末時点の法令を参考・参照に設計されています。

2つ目の特徴は「充実バックアップ」です。アプリの操作で分からないところがあったら、面右下に表示されるチャットサポートにて即座にサポートを仰ぐことができます。

そして、3つ目の特徴は「登記後の手続きも頼れる」ことです。会社設立時には、設立登記後にも年金事務所や自治体などへの手続きが残っていますが、それらの手続き手順も当アプリには含まれています。

アプリのおおまかな流れは、操作性や使い勝手の違いなどはあるものの、先の会社設立freeeと同様に、会社設立手順の流れに沿って各項目の指南に従って入力項目を埋めていく形式となります。

4 会社設立アプリ③ マネーフォワード会社設立

会社設立アプリ③ マネーフォワード会社設立

マネーフォワード会社設立は、クラウド会計ソフトブランドの「マネーフォワード」(以下、MF)中の会社設立用アプリです。MFにはブランドの中心ソフトとなる「MFクラウド会計・確定申告」や、経費精算システムの「MFクラウド経費」などがあります。

MF会社設立の操作手順は、デザインや使い勝手は異なるものの基本的な使用感は前2アプリと同じく、会社設立の流れに沿って情報を入力して必要な書類を作成していくものとなります。なお、MF会社設立は株式会社と合同会社の2種類の会社形態に対応しています。

MF会社設立ではアプリ内に印鑑の購入画面が用意されています。また、定款の媒体を紙か電子か選択することもできます。電子とした場合は電子定款の手数料5千円が必要となります。この電子定款手数料5千円は、会社設立後にMFクラウドの法人有料プランを契約することで無料とすることができます。

また、MF会社設立を利用すると、銀行口座の振込手数料の割引やバックオフィスツールの初期費用無料、決済システムの初期費用・手数料優遇などの特典が用意されています。詳しくはホームページを参照してください。

5 助成金と補助金について

助成金と補助金について

会社を設立し、経営を軌道に乗せるためには資金額が重要な要素となります。資金には様々な調達方法がありますが、まずは、リスクの低い資金調達方法の代表格である助成金と補助金について解説します。

助成金と補助金は、申請が通らなかった場合には時間をロスすることになりますが、通常、申請作業に特別な費用が掛かる訳ではありませんので、申請してみる価値は大いにあるといえます。

5-1 助成金と補助金の概要

助成金、そして補助金とは、厚生労働省や経済産業省などによる資金提供制度です。助成金と補助金は原則として給付金であり、返済の必要がなく、融資(借入金)のように担保を設定する必要がないことを特徴としています。

制度ごとに雇用促進などの要件(目的)が定められており、その要件を満たすことで申請を通すことができる、あるいは定められたお金が支給されることになります。

助成金の主要な要件は雇用の促進や労働環境の整備などです。助成金は補助金に比べると通常、高額ではないものの要件を満たしやすく、申請期間も長いため受給をしやすいのが特徴です。

補助金は経済活動の推進を制度のテーマとすることが多く、補助金が支給された場合の使いみちを策定したり、事業計画を作成したりすることなどが要件となります。助成金に比して高額な補助金額となっている場合が多いです。

ただし、助成金制度に比べると一般に申請期間が短く、資料の作成などを厳密に求められ、申請が通っても結果として目標に達しなかった場合は支給されないこともあります。

補助金は主に経済産業省が取り組んでいる制度です。経済産業省では、個人事業主や中小企業のコロナ対策や雇用促進などに対する様々な支援策を行っており、その支援策の1つに補助金制度があります。

他にも、自治体でも独自の助成金・補助金事業を行っている場合があります。都道府県庁や市区町村役所、また地域の商工会議所に問い合わせを行うことで、自分にも適用できそうな補助金・助成金を見つけられる可能性があります。

また、公益財団法人などの民間団体でも助成金事業を行っている場合があります。いずれの助成金・補助金も時期や管轄団体によって内容や要件が異なりますので、常にアンテナを張ってインターネットで検索するなどして、情報収集を行うと良いでしょう。

5-2 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

助成金・補助金の中から会社設立時に役立つ具体的な制度を見ていきます。最初に紹介するのは「人材確保等支援助成金」です。

この助成金は厚生労働省が管轄をしており、「評価・処遇制度」などの雇用管理制度を導入するなどして雇用管理の改善を行い、離職率低下という目標を達成した場合に支給されます。

雇用管理制度

雇用管理制度には、前述の「評価・処遇制度」を初めとして、「研修制度」、「健康づくり制度」、「メンター制度」、「短時間正社員制度(保育事業主のみ)」の5つがあります。これらの制度の整備計画を作成し、管轄の労働局の認定を受けることで申請をすることができます。

そして、指定の期間中に指定された「低下させる離職率」を達成できれば、助成金57万円(生産性要件を満たした場合72万円)を受給することができます。なお、低下させる離職率は雇用保険対象者によって異なり、例えば雇用保険者が1~9人の場合には15%の値が設定されています。

5-3 キャリアアップ助成金

こちらは前項の助成金同様に厚生労働省が管轄をしており、賃金規定の改定などを要件とする助成金です。現在、コロナ禍の影響を踏まえた手続きの緩和も行っています。

当助成金には「正社員化コース」、「賃金規定等改定コース」、「健康診断制度コース」、「賃金規定等共通化コース」、「諸手当制度共通化コース」、「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」、「短時間労働者労働時間延長コース」の7つのコースが設けられています。

7つのコースのうち例えば正社員化コースでは、派遣社員などの有期雇用労働者を正規雇用労働者へと転換することが要件となります。このコースでは、中小企業が有期から正規への転換を行なった場合に57万円(生産性の向上が認められた場合72万円)が支給されます。

他のコースもかいつまむと、賃金規定等改定コースでは全ての賃金規定等を2%以上増額改定すること、健康診断制度コースでは有期雇用労働者の4人以上に健康診断の受診を行なうことなどが要件となります。

5-4 小規模事業者持続化補助金

この補助金は経済産業省とその下部機関となる中小企業庁が管轄をしています。令和2年度では「コロナ特別対応型」が補正予算として新たに組み込まれています。

この補助金に応募するためには、「サプライチェーンの毀損への対応」、「非対面型ビジネスモデルへの転換」、「テレワーク環境の整備」のいずれかに合致すること、かつ小規模事業者の定義を満たしていることが要件となります。1つずつ語句を見ていきましょう。

まず、サプライチェーンの毀損への対応とは、製品供給継続のために必要な設備投資や製品開発を行うことです。非対面型ビジネスモデルへの転換とはリモートでのサービス提供のための設備やシステム投資を行うことで、テレワーク環境の整備はその名の通り、従業員のためのテレワーク環境の整備となります。

小規模事業者の定義とは、宿泊業・娯楽業除く商業・サービス業では従業員5人以下、宿泊業・娯楽業では従業員20人以下、製造業その他では従業員20人以下であることです。また、商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいることも要件の1つとなります。

補助金額は、先に上げた設備投資などに掛かった費用を元に算出することになります。サプライチェーンの毀損への対応の場合、150万円以上の設備投資には100万円が、150万円未満の場合にはその2/3の金額が支給されます。

なお当補助金は、令和2年度では第5回受付締め切りである令和2年 12月10日を以て最終受付となっていますが、令和3年度も経済産業省にて同補助金の継続を検討しているところです。(P9「地方公共団体による小規模事業者支援推進事業」)

5-5 ものづくり補助金

この補助金は中小企業庁による中小企業・小規模事業者などのための補助金制度で、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼ぶものです。

中小企業・小規模事業者にとって、働き方改革や賃上げなどの制度改革は大きな負担です。その負担に対応するために、革新的なサービスの開発や生産プロセスの改善用の設備投資などを支援するために支給される補助金となります。

補助金の対象事業には「一般型」と「グローバル展開型」があります。一般型とは、中小企業などによる「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」用の設備・システムへの投資を支援するものです。

一般型の場合の補助率は中小企業1/2、小規模事業者などは2/3となり、補助金額は100万円から1,000万円と設定されています。

グローバル展開型とは、設備などの投資対象を海外事業の展開を目的とするものです。こちらの補助率も中小企業1/2、小規模事業者など2/3となり、補助金額は1,000万円から3,000万円となります。

更に、令和2年度の4次締め切り(締め切り日:令和2年12月18日)においては、新型コロナウィルス対策として特別枠を設けており、補助率の引き上げや営業経費も補助対象とするなどして優先的に支援を行っています。

当補助金も先の小規模事業者持続化補助金と同様に経済産業省発布の同資料にて、令和3年度の継続を示唆されています。(P9「ものづくり補助金」)

5-6 IT導入補助金

こちらは中小企業・小規模事業者などが、自社の課題やニーズに対する解決策としてITツールを導入する際に、その経費の一部を補助するという補助金です。

当補助金はA・B・Cの3つの類型に分かれており、A類型は補助金申請額150万円以内(補助率1/2以下)、B類型は補助金申請額450万円以内(補助率1/2以下)、C類型は補助金申請額450万円以内(補助率3/4以下)となります。

A類型では、「顧客対応・販売支援」を初めとする6つの業務内容のうち1つに合致するITツールであることが要件となります。B類型の場合は同6つの業務内容の4つ以上が要件です。

C類型は新型コロナ対策として設けられたもので、先の6つの業務内容のうち1つと、小規模事業者持続化補助金の場合と同様に「サプライチェーンの毀損への対応」、「非対面型ビジネスモデルへの転換」、「テレワーク環境の整備」のいずれかに合致することが要件となります。

IT導入補助金は2020年12月18日を以て最終受付としていますが、前2つの補助金と同様に、同資料中にて令和3年度も補助金事業継続を検討中であるとする記述を見ることができます。
(P9「IT 連携支援事業」が相当部分。)

5-7 事業承継補助金

事業承継補助金

事業の承継や再編、統合により経営の革新や事業の転換などの新たな取り組みを行う中小企業に対しての補助金です。この補助金には「後継者承継支援型」と「事業再編・事業統合支援型」の2つのタイプがあります。

後継者承継支援型では、2017年4月1日から補助事業期間完了日(現行制度では2020年6月5日に完了済み)までに事業承継を行う(行なった)こと、地域に貢献する中小企業であること、そして経営革新や事業転換などのための新たな取り組みを行うこと、の3つの要件を満たす必要があります。

事業再編・事業統合支援型にも3つの要件があります。そのうちの1つは2017年4月1日から補助事業期間完了日(現行制度では2020年6月5日に完了済み)までに「事業再編・事業統合」を行う(行なった)ことです。残りの2つの要件は後継者承継支援型と同様となります。

補助金額は、後継者承継支援型では最大300万円(新制度で補助率2/3以内の場合)、事業再編・事業統合支援型では最大600万円(新制度で補助率2/3以内の場合)です。

なお、先に触れているように当補助金は、現行制度の交付申請受付は既に完了していますが、経済産業省発布の令和3年度概算要求資料中に「事業承継補助金を措置」とあることから、令和3年度も同制度の設置を示唆されています。

6 融資制度について

融資制度について

補助金と助成金は返済不要のお金ですが、事業運転資金とするには心もとなく、サポート的なものと考えたほうが良いでしょう。事業運転資金のようなまとまったお金を調達するには、融資が第一候補に上がります。

6-1 保証付融資

保証付融資とは信用保証協会による融資のことです。信用保証協会とは、銀行などからの融資を信用保証によりサポートを行うことを目的とする公的機関のことです。

保証付融資では、連帯保証人に会社の代表者以外を求められることは原則としてありません。また、無担保でも利用することができるため、会社設立者にとっては安心のできる融資となります。

そして、新規設立時の会社へ融資を行うことはリスクが高いことから、信用保証協会がサポートをする保証付融資は、銀行側にとってもメリットの大きいものとなります。

6-2 日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫(日本公庫)とは、地域活性化や経済成長などを担う政府系金融機関で、新規設立会社に対する融資をその事業内容の1つとしています。

新規設立会社への融資制度は「新創業融資制度」と呼ぶものです。雇用創出などを要件に、担保無し・保証人無しで、融資限度額3,000万円(運転資金1,500万円)までの融資を行なっています。

他にも、女性、または35歳未満か55歳以上が創業者であり、おおむね設立後7年以内の会社を対象とした「女性、若者/シニア起業家支援資金」があります。こちらは融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)の融資制度です。

日本公庫による新規設立会社関連の融資には「生活衛生新企業育成資金」というものもあります。こちらは生活衛生関係を事業内容とする新規設立会社用の融資制度となります。

日本公庫からの融資は、新規設立会社にとってリスクの少ない、心強い味方です。まとまったお金を必要とする場合は、まずは日本公庫に相談をしてみると良いでしょう。

いかがでしたでしょうか。会社設立は独力で行うには手間と時間がかかり、専門家に頼むにはお金がかかります。ここに上げた会社設立アプリは基本的に無料なので、まずは試しに使ってみることをお勧めします。

また、助成金と補助金は本文中でも触れている通り、期間の定めがあり、制度内容に変更がある場合があります。確実で最新の情報は、各制度のホームページを確認してみてください。