近年はIT技術の進展に伴い、以前と比べてはるかに会社を設立しやすくなりました。
日本では、設立したばかりの会社を「スタートアップ」や「ベンチャー」と呼ぶことがありますが、実はスタートアップとベンチャーは似ているようで特徴が異なります。
そこでこの記事では、これから会社を設立したいと考えている方や、ベンチャー・スタートアップ業界に興味のある方に向けて、ベンチャーとの違いを踏まえつつスタートアップ企業について解説します。また2010年以降設立されたスタートアップ企業を15社厳選してご紹介します。実際に存在するスタートアップ企業の事業内容やミッションを確認することで、スタートアップの立ち上げのヒントを得られたり、スタートアップへの理解が深まるでしょう。スタートアップの特徴や具体的なスタートアップ企業について知りたい方はぜひ参考にしてください。

1 スタートアップ企業とは

「スタートアップ(startup)」という用語は、「起動」や「行動開始」という意味の英単語から来ています。元はアメリカのシリコンバレーが起源であり、「新しいビジネスモデルにより事業を展開する会社」を意味します。「会社」と説明しましたが、起業した後の動きや新規事業の立ち上げ自体をスタートアップと指す場合も多く、特定の企業形態ではなく概念的な意味合いが強いのが特徴です。

 

1-1 スタートアップ企業の定義

新しいビジネスモデルを用いて起業し、事業を展開する会社やその動きをスタートアップと呼ぶため、会社の事業規模や創業年数などはあまり定義的には重要視されていません。とはいえ、一般的にスタートアップと言う場合は、会社設立後1~3年にある企業を指します。

このようにスタートアップの定義は曖昧であり、定義する人や場所によっても変わってきます。そのためスタートアップと言った場合は、「新しいビジネスモデルによって企業規模の拡大を目指す会社」と認識しておけば良いでしょう。

 

1-2 スタートアップ企業の特徴

スタートアップ企業の特徴は、主に2つあります。

一つ目は、ビジネスモデルが既存のものとは大きく異なる点です。起業すると一口にいっても、飲食店や美容室など既存のビジネスモデルを真似て事業を展開するケースもあれば、全く新しいビジネスモデルを自ら考えて行うケースもあります。前者はスタートアップとは呼べず、単に「スモールビジネス」とか「中小企業」と呼ぶのが適しています。

一方でスタートアップは、これまで市場には存在しなかった新しいビジネスモデルを用いているケースが多く、消費者にとっては新鮮でユニークな事業を展開しているように見えます。このような特徴があるため、スタートアップと呼ばれる大半の企業は、インターネットに関連した事業を行なっています。

二つ目の特徴は、短期間での急激な成長を目指す(実現する)点です。先ほどお伝えした「スモールビジネス」や「中小企業」と呼ばれるような企業は、最低限生活できる程度のお金を稼ぐことや、長期的にのんびり成長する目的を持つケースが多くあります。

一方でスタートアップと呼ばれる企業は、短期間での急激な成長を目指すケースが多いです。会社設立から数年で上場や大規模なM&Aを果たす事例も多く見られます。短期間で急激な成長を果たすため、消費者にとっては突然これまで見たことが無かったサービスや製品が突然現れたように思えます。たとえばFacebookやインスタグラムといったサービスは、突然消費者の前に姿をあらわし、急激にサービスの利用者が拡大したため、スタートアップ企業の最たる例であるといえるでしょう。

 

1-3 スタートアップ企業の資金調達

スタートアップ企業は、短期間での急激な成長を目指すため、会社設立前後の段階で多額の資金調達を行う傾向にあります。会社の状態や国によっても変わるため一概には言えませんが、設立間もない段階で数千万円から数億円、場合によっては数十億円~数百億円もの資金を調達するケースも見受けられます。一見すると多すぎるように思えますが、全く新しいビジネスモデルや技術を駆使して事業を短期的に急成長させるためには、数千万円以上の資金調達は必要不可欠であると考えられます。

なおスタートアップ企業の資金調達は、借り入れ(負債を用いた資金調達)ではなく、株式を用いるケースが大半です。具体的にはスタートアップ側が株式を出資者に交付する代わりに、出資者側から資金を調達する形式になります。

事業規模の成長と共に株価(企業価値)はぐんぐん上昇するため、出資者側からするとスタートアップ側の事業が上手くいけば、勝手に保有する資産価値が急上昇することとなるため、メリットが大きいです。事業が十分拡大した段階で保有する株式を売却すれば、莫大な利益を得られる可能性もあります。一方でスタートアップ側から考えると、調達した資金には返済義務がないため、利息や元本返済による資金繰り悪化の心配が無くなります。また、VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から経営上様々なサポートを得られるメリットもあります。

 

1-4 スタートアップ企業の成長過程

スタートアップ企業は一般的に、「シード」→「アーリー」→「エクスパンション」→「グロース」→「レイター」の順で成長すると言われています。ここでは、成長過程ごとの特徴をご紹介します。

シードとは、会社設立前の準備期間を意味します。ビジネスモデルをベースに具体的なサービスや商品を作ったり、マーケットの調査などを行う段階です。会社設立前で事業は行なっていませんが、マーケット調査費用や人件費などがかかるため、この段階でも資金調達が必要となるケースは多いです。

アーリーとは、会社を設立してから事業が軌道に乗るまでの期間を指します。立ち上げ当初であるため多額の運転資金がかかる一方で、軌道に乗っていないため十分な収益を得られていない段階です。そのためこのフェーズに入るスタートアップのほとんどは、赤字を計上します。

エクスパンションとは、サービスや一定数のユーザーが存在し、これから本格的に事業を進めようとしているフェーズです。未だ赤字を計上しているケースが多いものの、ある程度顧客からのニーズがあると考えられるため、一気に資金を調達・投入することが大事です。

グロースとは、事業が軌道に乗り事業が黒字転換した段階です。黒字にはなっているもののさらに事業を拡大する目的で、依然として多額の資金調達が必要となるのが一般的です。

レイターとは、十分事業が軌道に乗っており、エグジット(M&AやIPO)などが十分視野に入っている段階です。収益で言えば数十億円以上稼いでおり、信用力も十分あるため資金調達に苦慮する心配もほぼない状況です。もしくは既に上場している会社であっても、レイターと呼ぶケースもあります。

一般的なスタートアップは上記の順番で成長を遂げます。ですが多くのスタートアップは、途中で成長が止まったり事業を辞めるため、グロースやレイターまで到達するケースは稀です。また途中の段階で、M&Aによるエグジットを果たすケースも多いです。

2 ベンチャーとの違い

スタートアップ企業とよく似た概念に「ベンチャー企業」というものがあります。両者の意味は混同されがちですが、正確に見ると若干違いがあります。基本的に同じものとして認識しても問題はありませんが、これから会社を設立する方は両者の違いを知っていて損はないと思います。一般的にベンチャーとスタートアップには、主に以下3つの違いがあると言われています。

 

2-1 ベンチャーは「設立間もない会社」、スタートアップは「イノベーションを起こす会社」

そもそもベンチャーとは、新しく設立されたばかりの会社を総称した用語として使われている用語です。また、一般的な中小企業と比べると、行動の速さや資金調達の大胆さの面で勢いのある会社を「ベンチャー」と呼ぶ傾向があります。元々は日本で作られた和製英語であるため、アメリカなどの諸外国で使用しても理解されにくい可能性があります。

一方でスタートアップは、新しく設立されたばかりの会社の中でも、イノベーションを起こし人々の生活やビジネスに多大な影響を与える会社を意味するケースが多いです。ベンチャー企業はあくまで、既存事業の延長線にあって顧客から受け入れられることがある程度見込めるビジネスを展開しますが、スタートアップは既存事業とは根本的に異なる技術やビジネスモデルを用いるため、消費者にサービスや商品が受け入れられるか全く不透明であるケースが多いです。ただし全く新しいサービスや商品であるため、消費者のニーズにマッチすれば市場全体に及ぶ大きなイノベーションを発生させます。

単純に勢いのある新興企業であればベンチャー企業、消費者の生活を劇的に変える可能性を秘めた事業を行なっていればスタートアップと判断できるでしょう。

 

2-2 ベンチャーは中長期的な成長、スタートアップは短期間での成長を目指す

ベンチャーとスタートアップには、事業の成長スピードにも違いがあります。一般的にベンチャー企業と呼ばれる会社は、長期的な目線で事業規模を成長させる傾向があります。事業を長期的に継続し利益を得続けるのを前提とし、数年でのエグジット(M&AやIPO)は視野に入れていないケースが多いです。そのため今現在ベンチャー企業と呼ばれている多くの会社は、数年後には俗にいう「中小企業」として事業を継続する可能性が高いと言えます。

一方でスタートアップは、短期間での成長を目指す傾向があります。FacebookやInstagramなどのように数年で社会を席巻するレベルまで事業を拡大し、短期間でエグジットを実現するケースが多いです。

 

2-3 日本ではベンチャー≒スタートアップとしてみなすケースが多い

ここまでスタートアップとベンチャーの違いを解説してきましたが、日本ではベンチャーとスタートアップを一緒くたにするケースが多いです。

そもそも日本国内では、FacebookやInstagramなどのような世界的にイノベーションを起こすレベルのスタートアップの成功事例がほとんど見かけられません。日本の新興企業の多くは、既存ビジネスの延長線上にあるサービスや商品を開発・販売しています。そのような事情があるため、本来の意味での「スタートアップ」が認知されていないと考えられます。

とはいえ実は、日本国内にも画期的なビジネスモデルや技術力を駆使して事業を展開する「スタートアップ」は存在しています。その多くは今後Facebookなどのように世界的なイノベーションを巻き起こすかは定かではありませんが、順調に事業を拡大すれば生活に大きな影響を与え得ると考えられます。

既存事業の延長線上であるベンチャーとどのように違うのかを確認する上では、実際にスタートアップ企業の事業内容を確認するのが良いと思います。そこで次の項では、日本国内で2010年以降に設立されたスタートアップ企業を厳選して15社ご紹介します。

3 2010年以降に設立されたスタートアップ企業15選

先ほどもお伝えしたように、知られていないだけで日本国内にも、イノベーションの可能性を秘めたスタートアップ企業が数多く存在します。スタートアップ企業とベンチャー企業の違いを確認する上では、実際に活動しているスタートアップの事例を見るのが一番です。

この項では、2010年以降に設立されたスタートアップ企業について、その特徴的な事業内容を分かりやすくご紹介します。スタートアップ企業の活動内容を詳しく知ることで、スタートアップに対しての理解が深まるかと思います。

 

3-1 株式会社Astroscale

株式会社Astroscaleは、2013年の5月に設立されたスタートアップ企業です。シンガポールに本社を置く同社では、日本やイギリスにも拠点を持っています。

そんな同社では、宇宙ゴミの除去に取り組んでいるスタートアップ企業です。宇宙ゴミとは、事故などにより使えなくなった衛星や宇宙探査機の残骸です。現在宇宙上には数多くの宇宙ゴミが存在し、将来的には私たちの生活に多大な悪影響を与えることが予想されています。

そのような宇宙ゴミの問題に立ち向かう目的で、同社では様々な最新技術を用いた活動を行なっています。たとえば宇宙上に漂う宇宙ゴミを観測する目的で、「IDEA OSG1」という超小型衛星の打ち上げを行いました。打ち上げ計画は失敗に終わりましたが、今後の活動に対する重大なヒントを得られたそうです。

また同社では、宇宙ゴミを実際に除去する「ELSA-d」の打ち上げを2020年に計画しています。これまで宇宙ゴミの除去を行う衛星機の活動は前例が無かったため、成功すれば本格的に宇宙ゴミの除去ビジネスが活発化することが予想されています。

2020年に予定しているミッションに向けて、同社は昨年(2018年)に日本円で100億円を超える資金調達を行いました。多額の資金調達を実施したことで、宇宙ゴミの除去という壮大な計画の実現可能性が高まったと言えるでしょう。

これまで前例のない事業に挑戦している上に、多額の資金調達を実施している点で同社は典型的なスタートアップ企業と言えるでしょう。

 

3-2 株式会社ABEJA

株式会社ABEJAは、2012年の9月10日に設立されたスタートアップの会社です。東京都港区に本社を置く同社では、現時点(2019年3月)で64名の従業員を擁しています。

同社では、AIを活用したサービスを複数展開しています。たとえば「ABEJA PLATFORM」というサービスでは、AIをビジネスに導入したいと考えている会社に向けて、AIを活用する上で必要となる「データの取得・蓄積」や「学習」、「デプロイ」などの機能を一貫して実装できるプラットフォームを提供しています。これにより自社で一からAIを導入する場合と比べて、はるかにAIを導入する難易度が簡単となります。

また同社では、「ABEJA Insight for Retail」というサービスも展開しています。こちらのサービスでは、来客属性や動線に基づいて顧客データの取得・分析を行うAIのサービスとなっています。AI技術により入店から購買に至るまでの顧客の行動を可視化し、集客施策の効果検証を行えるようにすることで、効率的に業績の向上を実現できます。

「イノベーションで世界を変える」ことをビジョンとしている同社では、2018年の12月に第三者割当増資を行いGoogleからの資金調達を果たしました。また今年度には、ダイワロジテックや大和リビングマネジメントとの業務提携も検討し始めており、今後の事業規模の拡大がますます期待されています。

AIが世界中に普及すれば、これまで不可能であったことが可能となり、私たちの生活は劇的に変わるといわれています。そんなイノベーションの可能性を秘めたAIの普及を最前線で推進している同社は、日本が誇れるスタートアップ会社と言えるでしょう。

 

3-3 株式会社ispace

株式会社ispaceは、2010年9月に設立されたスタートアップ会社です。100億円を超える資本金を持つ同社では、70人を超える社員を擁しています。

同社では、月に眠る資源の有効活用を目的とした事業を展開しています。具体的には、小型かつ軽量の月面探索機や月面着陸機(ランダー)の開発により、低コストかつ定期的に資源を輸送できるプラットフォームの実現に向けて活動を行なっています。

また同社は、民間企業が月面着陸・探査を競うレース「Google Lunar XPRIZE」に日本から唯一参加するチーム(HAKUTO)の運営も行なっています。月面探査に関する高度な技術力が認められ、同社はモビリティ部門の中間賞を獲得しています。レースの優勝と民間企業としては世界初の月面探査の成功が期待されている同社は、世界的に見ても将来有望のスタートアップ企業と呼べるでしょう。

加えて同社は、技術開発時点のスタートアップとしては国内最大規模となる103億円の資金調達を達成しています。この点からも、多方面から期待されていることが見て取れます。アメリカの工科大学院で修士号を取得している創業者に加え、多数のエンジニアなどのスペシャリストを抱えており、人材の優秀さの面から見ても優れたスタートアップであると言えるでしょう。

 

3-4 株式会社MOLCURE

株式会社MOLCUREは、2013年5月に設立されたスタートアップ企業です。東京都品川区に本社置く同社は、AIを用いた医薬品の配列設計を主な事業内容としています。

同社の特徴は、AIを使った独自の医薬品開発プラットフォーム(Abtracer)を保有している点です。このプラットフォームでは、従来の方法では発見が困難であった抗体の発見を可能としています。具体的には最短で10分の1の時間で抗体の候補を発見することを可能としています。また創薬自動化システムである「HAIVE」も、同社の誇る画期的な技術力です。

昨年(2018年)の11月には、新薬や検査試薬の製造販売を行う上場企業「日本ケミファ」からの資金調達を行いました。資金調達を行っただけでなく、業務提携の協議にも着手しており、今後のさらなる事業規模の拡大が期待されています。

AIを用いた医薬品開発は、従来の方法では不可能なレベルでの精度やスピードで医薬品を開発できる可能性があるとも言われています。そんな最先端技術の発展に尽力している同社は、将来有望なスタートアップでしょう。

 

3-5 リバーフィールド株式会社

リバーフィールド株式会社は、2014年5月20日に設立されたスタートアップの会社です。東京都新宿区に本社を置いており、従業員23名を擁しています。

同社が行なっている事業は、医療機器の開発・販売です。国立大学発のスタートアップとして、最先端の科学技術を駆使した研究開発に取り組んでおり、国が認定している「J-Startup認定企業」にも選出されています。

そんな同社が取り組んでいるのが、「医療用のロボット開発」です。たとえば同社が販売している内視鏡ホルダロボット「EMARO」は、世界初となる空気圧で稼働する内視鏡ホルダロボットです。内視鏡検査を空気圧の力で行うため、従来よりも安定した操作を可能になっています。EMAROを用いることで手術を行う医師の負担軽減につながるため、医師不足が進む日本では将来的に重宝されることが期待されています。

先ほどもお伝えしましたが、同社は国内では珍しい大学発のスタートアップ企業です。大学発のスタートアップというだけあり、大学の研究開発で得られた高度な技術力を活かした製品開発が強みとなっています。また、国立の大学から派生したスタートアップであるため、事業の公益性を重視している点も特徴的です。収益性よりも社会全体への貢献度を重視している点は、民間発のスタートアップとは若干異なる点と言えるでしょう。

医師不足の進む日本で、有用性の高い医療用ロボットを普及させることができれば、大きなイノベーションとなるでしょう。

 

3-6 株式会社Liquid

株式会社Liquidは、2013年12月に設立されたスタートアップの会社です。東京都千代田区に本社を置いており、従業員数は2017年時点で50人となっています。

同社では、「画像認識エンジン」や「生体照合端末」、「タブレット型レジ」などの製造・開発を主な事業内容としています。具体的には「LIQUID Key」や「LIQUID eKYC」などの製品・サービスを販売しています。

LIQUID Keyはマンションなどのドアに設置する生体認証スキナーであり、指紋や顔を用いた生体認証によるセキュリティを実現しています。役職や日時に応じた権限を設定できるなど、単なる生体認証を超えた利便性を誇っているのが特徴です。この商品を導入すると、最終的には従業員の数だけ社員証を発行する必要がなくなるため、セキュリティ管理に関係する雑務の手間を省くことができます。

一方、LIQUID eKYCとは、生体認証クラウドを用いた本人確認サービスです。簡単に言えばオンライン上で本人確認を行えるサービスであり、導入により本人確認に要する配送業務の手間や時間を大幅に削減できる効果が期待できます。高い精度の照合率を低コストで実現するこのサービスは、チケットの不正転売防止やシェアリングエコノミーなど多様な場面での活用が期待されています。

以上のように同社では、最先端の生体認証を活用した画期的なサービスや商品を提供しています。そんな画期的な事業内容が認められ、昨年7月には30億円を超える資金調達を成功させています。手間と時間がかかる面倒な本人確認を、低コストかつ短時間で実現することを可能にする点で、同社も日本が世界に誇れるスタートアップ企業です。

 

3-7 株式会社TBM

株式会社TBMは、2011年8月30日に設立されたスタートアップの会社です。東京都中央区に本社を置いている同社は、2019年4月時点で107人の社員を擁している比較的大きな会社です。

海外子会社も有している同社が行なっているのは、世界初の新素材「LIMEX(ライメックス)」の開発・製造・販売です。石灰石を主原料とするLIMEXは、プラスチックや紙の代替品として活用できる素材です。メニュー表やポスターなどの紙製品の代替はもちろん、買い物袋やクリアファイルなどのプラスチック製品の代替品にも活用できます。

LIMEXの凄い点は、埋蔵量の豊富な石灰石を用いて製造できる点です。世界中で採掘できる石灰石を活用可能な上にリサイクルして再利用できるため、実用化されれば現在問題となっている資源の枯渇問題を一気に解決することが期待されています。また石油の使用量を大幅に削減することにより、CO2削減による環境保全の効果を得られます。加えて、紙製品の代替として使う場合は、高い耐水性・耐久性を誇るため、長期的に利用できる点も魅力的です。

このような実用性の高い素材であるために、世界各地のビジネスアワードで数々の賞を受賞しています。近年は合計で100億円を超える資金調達を果たし、資源革命を起こすためにさらなる事業拡大を目指しています。

世界的に問題となっている「天然資源の枯渇問題」。それを一つの素材で解決できれば、インターネットが普及した時と同じレベルのイノベーションとなり得るでしょう。

 

3-8 株式会社チャレナジー

株式会社チャレナジーは、2014年10月1日に設立されたスタートアップ企業です。東京都墨田区に本社を置いている同社には、電気エンジニアや制御エンジニアなど、優秀な技術者が数多く在籍しています。

同社では、次世代風力発電機の開発・普及を主な事業内容としています。このような事業を始めたのは、創業者自身が東日本大震災の原発事故を目の当たりにしたことがきっかけであるそうです。

チャレナジーの開発した次世代風力発電機は、マグナス効果と垂直軸型を活用したものとなっており、これにより台風レベルの強い風でも安定的に発電するのを可能としています。また従来の風力発電機と比べると低回転でる点も特徴であり、バードストライクや騒音に関連した被害の軽減効果も期待できるそうです。現在沖縄県に風力発電の試験場を持っており、年々その発電技術を着実に工場させ続けています。

2014年3月のテックプラングランプリで最優秀賞を受賞したのを皮切りに、数多くのビジネスプランコンテストで賞を受賞しているなど、国内外から期待を集めているスタートアップ会社となっています。

2018年2月には三井住友海上キャピタル株式会社など数社から、合計で約2.8億円の資金調達を実施しました。この資金調達により同社は、風力発電機の量産に向けて、さらなる技術力の向上に努めるそうです。

次世代風力発電の技術力が確立すれば、台風が頻繁に発生する新興国でも安定的に電気を生み出せるようになります。日本のみならず世界各地の人々にイノベーションをもたらすスタートアップであるため、今後の事業展開が多方面から期待されています。

 

3-9 デジタルグリッド株式会社

デジタルグリッド株式会社は、2017年10月16日に設立された比較的新しいスタートアップの会社です。東京都千代田区に本社を置くこの会社は、従業員13名を抱えています。

同社では、電力供給に関する独自の技術(デジタルグリッド技術)を用いたサービスの提供を主な事業内容としています。デジタルグリッド技術は、外部のコントローラの指令により電力を送受信できる「デジタルグリッドルータ」、電気を受け取る場所に設置されたメーターの情報を取得する「デジタルグリッドコントローラ」、そしてこれら2つの機器との連携やブロックチェーン技術の活用により電力取引を実行する「デジタルグリッドプラットフォーム」の3つの技術により構成されます。

同社は上記で紹介した独自の技術を基に、電力の売買をサポートする事業を2019年の10月から実施する予定を立てています。AI技術による高性能かつ長期的な電力需要予測が可能となるため、発電事業者と電力需要者双方の取引コストを削減しつつ、安定的な電力需給を実現できると期待されています。また電力を受け取る際には複数の事業者がグループ単位で電気を入札するため、事業規模が小さい受容者でも取引できると考えられています。

また同社ではデジタルグリッド技術を活かして、再生エネルギーの電力の取り扱いも行うことを想定しています。これが実現すれば、環境に配慮した取り組みを行う事業者に向けた電力取引サービスを展開できると考えられます。

以上のことから同社は、AIやブロックチェーンなどの最新技術を電力取引の分野に応用しようと模索するスタートアップであると言えます。この技術が確立すれば電力取引にイノベーションが巻き起こり、ビジネス上での電力取引がより効率的かつ低コストで行えるようになるでしょう。

 

3-10 WHILL株式会社

WHILL株式会社は、2012年5月に設立されたスタートアップの会社です。神奈川県横浜市に本社、アメリカや欧州などにも法人を持っており、合計で約200人の従業員を擁しています。

「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションを掲げている同社は、機能性の高い電動車いすの開発や販売を主な事業内容としています。同社の開発した電動車いすは、特殊な前輪を搭載することにより最小で76cmの回転半径を実現しています。また高出力のモーターや大容量のカゴもついているため、段差の乗り越えや買い物も可能としています。自動ブレーキや片流れを防止する機能も搭載されているので、子供からお年寄りまで誰もが安心して使用することができる車椅子です。

上記のように素晴らしく画期的な性能を持つ同社の製品ですが、デザインにもこだわっており、従来の車いすとは全く異なるかっこよく洗練された外見に仕上がっています。

障害を持っている方にとってイノベーションを巻き起こしている同社は、その実績や技術の革新性から有力なスタートアップを支援する目的で経済産業省が行うプログラム「J-Startup」に選ばれています。また、昨年(2018年)9月にはおよそ50億円の資金調達を果たしており、今後のさらなる技術力向上や事業規模の拡大が期待されています。

 

3-11 株式会社フーディソン

株式会社フーディソンは、2013年4月1日に設立されたスタートアップの会社です。東京都中央区に本社が所在している同社は、IT技術を駆使した水産流通プラットフォームの運営や鮮魚仕入れサービス「魚ポチ」の運営、鮮魚専門店「sakana bacca」の運営、そして人材紹介サービス「フード人材バンク」の運営の計4つの事業を行なっています。

魚ポチはスマホを使っていつでも簡単に水産物の仕入れができるサービスであり、現在では登録店舗が11,000を超える大人気サービスとなっています。「sakana bacca」は都内で展開されている実店舗の魚屋さんであり、鮮魚はもちろん全国各地の珍しい水産物が販売されています。フード人材バンクは飲食業界に特化した人材紹介サービスとなっており、食べ物の調理技術に特化した人材が自身のスキルを最大限に活かせる就業先を見つけられるサービスです。

IT関係に特化するスタートアップが多い中で、実店舗の運営や「食」という身近なテーマに取り組んでいる点で、同社は独自路線を行くスタートアップと言えるでしょう。2017年以降は海外への事業展開も行なっており、食の分野でどのようなイノベーションを起こすのか注目を集めています。

 

3-12 株式会社マネーフォワード

株式会社マネーフォワードは、2012年5月に設立されたスタートアップ企業です。東京都港区に本社を置く同社は、北海道や東北、九州など全国各地に支社を所有しています。

「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げる同社は、個人か法人に関係なくあらゆる人のお金に関する課題を解決するサービスを多数展開しています。

たとえば同社が展開する「マネーフォワード ME」は、自動で家計簿をつけられるサービスです。銀行やクレジットカードなどの口座のデータを一元的に管理し、家計簿を自動で作成してくれるため、これまで家計簿を継続的につけるのが無理だった人でも簡単に継続できます。また「tock pop」と言うクーポン情報に特化して紹介するアプリも、多方面から好評を得ています。グルメや美容健康など、身近な生活で役立つ割引券や優待券を提供してもらえます。

一方で法人に対しては、クラウド会計ソフトやクラウド給与計算ソフトなど、経営管理を効率化できるサービスを提供しており、事業規模に関係なく多くの会社から支持を獲得しています。今回ご紹介したサービスはあくまで一部であり、同社では上記以外にもお金に関連した様々なサービスを展開しています。

いわば「お金」に関するイノベーションを巻き起こしている同社は、これまで総額で40億円以上の資金調達に成功しており、一昨年(2017年)にはマザーズへの上場も果たしています。上場を果たしている点からも、日本国内では大成功しているスタートアップ企業と言えるでしょう。

 

3-13 ピクシーダストテクノロジーズ株式会社

ピクシーダストテクノロジーズ株式会社は、2015年1月に設立されたスタートアップ企業であり、東京都千代田区に本社を置いています。

同社は筑波大学の学長補佐を務めており、「現代の魔法使い」として多数のメディアで取り上げられている落合陽一さんがCEOを務めている会社としても有名です。

そんな落合氏が経営している同社では、魔法のように生活に溶け込むコンピュータ技術の開発を軸に置き、イノベーティブなプロダクトを開発しています。具体的には、超音波フェーズドアレイ技術を始めとした先進的な技術を駆使し、人ごとに異なる音を届けたり、三次元で物体を認識させるプロダクトの開発を実現しています。

研究技術を紹介した動画は世界的な反響を呼び、経済産業省の「Innnovative Technologies賞」を始めとした様々な賞を獲得しています。イノベーティブな技術力のみならずその実績も相まって、2019年3月には約10億円の融資契約の締結も果たし、今後のさらなる活躍が期待されています。

「J-Startup」にも選出されている同社は、卓越した技術力や落合氏のカリスマ性も含めて、世界的に見ても潜在的な爆発力を秘めたスタートアップ会社と言えるでしょう。

 

3-14 スマートニュース株式会社

スマートニュース株式会社は、2012年6月15日に設立されたスタートアップの会社です。東京都渋谷区に本社を置く同社は、サンフランシスコやニューヨークにも支社を持つ比較的大きなスタートアップ企業です。

「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」というミッションを掲げている同社では、有名なニュースアプリ「SmartNews」を運営しています。SmartNewsはスマートフォンでの読みやすさに特化したアプリで、その時点で話題になっている記事を独自のアルゴリズムにより、自動で取得・表示してくれます。

ただ単に良質な情報を読めるだけでなく、スマートでバビスに特化した機能も「SmartNews」の強みです。たとえば一度ニュースを取得すれば、インターネットに繋がっていない状況でも引き続きニュースを読める機能があるため、飛行機の中などの時間つぶしにも最適です。また一瞬で記事を読み込むため、ストレスを感じることなくニュースを読めます。

最新の記事を手軽かつ便利な機能付きで読めることから、世界中の幅広い人に支持されるアプリとなっており、今やダウンロード数は4000万を超えています。また、AppleのベストアプリやGoogleのベストアプリなど、名だたる賞を数多く受賞している点も同社の強みです。

世界的にヒットを記録しているアプリを開発・提供している点で、今や同社は国内を代表する有力スタートアップとして注目されています。今現在も利用者数が増えており、今後ますますの事業規模の拡大が期待されています。

 

3-15 株式会社メルカリ

最後にご紹介するのは、株式会社メルカリです。株式会社メルカリは2013年2月1日に設立されたスタートアップの会社であり、東京都港区にある本社のみならず、仙台や福岡、アメリカなどにもオフィスを持っています。

言わずと知れた有名なフリマアプリ「メルカリ」を開発・運営している同社は、現時点では国内で最も成功しているスタートアップとして世界中で有名です。同社はシリアルアントレプレナーとして実績がある山田進太郎氏によって設立されたスタートアップです。既存ビジネスとは抜本的に異なるイノベーティブなビジネスモデルと卓越した経営手腕により、近年急成長を見せています。

メルカリには、出品する側が値段を決定できる点やスマホで簡単に取引できる点など、従来のオークションサイトとは根本的に異なる特徴が数多く存在します。そんなユニークで画期的なサービスが多方面で話題を呼び、リリース直後から右肩上がりに業績が拡大していきました。今や国内のフリマアプリではダウンロード数1位、資金調達額は国内スタートアップでは最高額を誇っており、昨年(2018年)6つきにはマザーズへの上場を果たしました。

マザーズへの上場後もその勢いは止まらず、アメリカへの海外展開を順調に成功させて、全世界でのダウンロード数は1億を優に超えています。今や時価総額は数千億円を上回り、マザーズに上場している数々の企業の中でも、トップクラスの事業規模を誇っています。現在は子会社を設立したりキャッシュレス事業を立ち上げたりと、新たな動きも加速させており、今後のさらなる躍進が期待されています。

日本で最も成功しているスタートアップとの呼び声も高い同社は、世界中の消費者にイノベーションをもたらし続けています。スタートアップの立ち上げを志す方にとっては、お手本とも言える事例でしょう。

4 まとめ

今回の記事ではスタートアップ企業について、ベンチャーとの違いや特徴、近年設立されたスタートアップ企業を交えつつ解説しました。
スタートアップとは、「新しいビジネスモデルにより事業を展開する会社」や「起業した後の動きや新規事業の立ち上げ」を意味する用語です。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、短期間での成長を目指す点がスタートアップに見られる特徴であり、既存事業の延長線上にあるビジネスモデルで長期的な成長を目指すベンチャーとはこの点で異なります。
スタートアップ企業は一般的に、「シード」→「アーリー」→「エクスパンション」→「グロース」→「レイター」の順で成長を遂げると言われており、多くのスタートアップはエグジット(IPOやM&A)を最終的な目標に据えています。ただし全てのスタートアップがエグジットできるわけではなく、大半はシードやアーリーの時点で事業運営からリタイアしてしまいます。

また今回は、日本国内で近年設立されたスタートアップ企業を15社ほどご紹介しました。AI技術を始めとして、多くのスタートアップは革新的な技術やイノベーティブなビジネスモデルを持っています。今後私たちの生活を根本から変え得るスタートアップは、成功可能性は低いものの魅力的な会社であると言えるでしょう。