止まらない人口減少と少子高齢化。今年6月に内閣府から公表された平成29年版高齢社会白書によれば、総人口1億2693万人のうち65歳以上の高齢者人口は3459万人で、高齢化率は27.3%と過去最高を更新しました。2065年には高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上になると試算されます。

総人口が減少するなかで、上昇する高齢化率。その影響は経営者の平均年齢にも影響していることが判明しています。

帝国データバンクの調査によれば、企業における経営者の平均年齢は59.3歳となり、こちらも過去最高を更新しています。
帝国データバンクは、社長の平均年齢が上昇していることについて「今後一層の高齢者増加・人口減少が見込まれるなか、企業の繁栄と存続に向け、トップの高齢化について考慮すべき問題は山積している」と警鐘を鳴らしました。

本記事では、帝国データバンク「全国社長分析2017」および東京商工リサーチ「2016年 全国社長の年齢調査」をもとに、都道府県別の社長の平均年齢などを詳細に見ていきます。

1 社長の平均年齢、過去最高を更新して59.3歳

調査は、昨年末時点での全国の株式会社、有限会社を対象に行われ、社長の年齢と2016年における社長の交代状況を帝国データバンクがまとめたものになります。

調査結果によると、全国の社長の平均年齢は前年より0.1歳上がり、59.3歳となりました。平均年齢は1990年以降、一貫して上がり続けており、前年に引き続き昨年も過去最高を更新しました。

・ 社長の平均年齢の推移

平均年齢 交代率
2007年 58.1歳 4.36%
2008年 58.2歳 4.22%
2009年 58.3歳 4.34%
2010年 58.4歳 3.90%
2011年 58.5歳 3.88%
2012年 58.7歳 3.61%
2013年 58.9歳 3.67%
2014年 59.0歳 3.83%
2015年 59.2歳 3.88%
2016年 59.3歳 3.97%

(帝国データバンク発表資料より作成)

(比較参照:東京商工リサーチ「2016年 全国社長の年齢調査」)

このほか、性別による調査では、女性社長は2015年の8.2%から10.6%へと上昇しています。

1-1 業種別ではサービス業が最も若く57.9歳

社長の平均年齢を業種別にみると、サービス業が57.9歳と最も若くなりました。次いで、建設業58.5歳、運輸・通信業59.2歳、小売業59.5歳、卸売業60.4歳、製造業60.8歳、不動産業61.3歳と続きました。

また80歳以上の社長が多い業者は不動産業の7.3%で、次いで小売業4.3%、卸売業4.2%、製造業4.1%、運輸・通信業3.4%、サービス業2.6%、建設業2.5%となりました。

・ 業種別平均年齢ランキング

順位 業種 平均年齢
1 サービス業 57.9歳
2 建設業 58.5歳
3 運輸・通信業 59.2歳
4 小売業 59.5歳
5 卸売業 60.4歳
6 製造業 60.8歳
7 不動産業 61.3歳

(帝国データバンク発表資料より作成)

(比較参照:東京商工リサーチ「2016年 全国社長の年齢調査」)

1-2 年商別では1000億円以上が最も高齢

次に、年商別に社長の平均年齢をみると、「1000億円以上」が60.8%で最も高くなりました。次いで「1億円未満」60.2歳、「100億円以上500億円未満」で59.6歳、「500億円以上1000億円未満」で59.5歳、「50億円以上100億円未満」で59.0歳、「1億円以上10億円未満」で58.4歳、「10億円以上50億円未満」で58.3歳と続きました。

1990年との比較では、「1億円未満」での平均年齢が7.8歳上がっており、最も高齢化が進んでいることが分かりました。このほか、「1億円以上10億円未満」で4.4歳上昇、「10億円以上50億円未満」で2.3歳上昇、「50億円以上100億円未満」で1.7歳上昇、「100億円以上500億円未満」で1.2歳上昇しました。

一方、「1000億円以上」および「500億円以上1000億円未満」では0.8歳下がりました。

・年商別平均年齢

年商 2016平均年齢 1990年比
1億円未満 60.2 7.8
1億円以上10億円未満 58.4 4.4
10億円以上50億円未満 58.3 2.3
50億円以上100億円未満 59.0 1.7
100億円以上500億円未満 59.6 1.2
500億円以上1000億円未満 59.5 ▲0.8
1000億円以上 60.8 ▲0.8

(帝国データバンク発表資料より作成)

2 都道府県別の社長平均年齢ランキング発表!

社長の平均年齢を都道府県別に見ると、最も若いのは滋賀県と三重県で58.1歳となります。一方、最も高齢なのは岩手県で61.4歳となりました。

2-1 最も若いのは三重県と滋賀県で58.1歳

滋賀県と三重県に次いで、平均年齢が若かった都道府県は、3位愛知県および大阪府58.4歳、5位沖縄県58.5歳、6位岡山県、石川県、福岡県58.7歳、9位兵庫県、愛媛県、奈良県58.9歳となりました。

トップ10までには関西地方や中部地方から多くの都道府県がランクインし、関東地方や東北地方、また沖縄を除く九州地方からは入らなかったのが特徴的です。

沖縄県は、出生率が高く、また高齢化率が全国一低い19.6%となっています。

・ 社長の平均年齢が若い都道府県ランキング TOP10

順位 業種 平均年齢
1 滋賀県 58.1歳
1 三重県 58.1歳
3 愛知県 58.4歳
3 大阪府 58.4歳
5 沖縄県 58.5歳
6 岡山県 58.7歳
6 石川県 58.7歳
6 福岡県 58.7歳
9 兵庫県 58.9歳
9 愛媛県 58.9歳
9 奈良県 58.9歳

(帝国データバンク発表資料より作成)

2-2 最も高齢なのは岩手県で61.4歳

岩手県についで、平均年齢が高い社長が多い都道府県は、2位秋田県61.1歳、3位島根県および青森県60.8歳、5位高知県60.7歳、6位山形県60.6歳、7位長崎県および新潟県60.3歳、9位長野県および神奈川県60.1歳と続きました。

トップ10には、過疎化や高齢化が全国でも顕著な東北地方や中国地方から多くがランクインしました。

平成29年度高齢社会白書によれば、2015年の高齢化率は、岩手県30.4%、秋田県34.8%となっており、2040年には岩手県39.7%、秋田県43.8%になると予測されます。

・ 社長の平均年齢が高い都道府県ランキング TOP10

順位 業種 平均年齢
1 岩手県 61.4歳
2 秋田県 61.1歳
3 島根県 60.8歳
3 青森県 60.8歳
5 高知県 60.7歳
6 山形県 60.6歳
7 長崎県 60.3歳
7 新潟県 60.3歳
9 長野県 60.1歳
9 神奈川県 60.1歳

(帝国データバンク発表資料より作成)

帝国データバンクは、社長の平均年齢が上昇傾向にあることについて、「小規模企業では大きな課題となる事業承継が進んでいないため、平均年齢が上昇しているとの見方もできる」と分析しました。

今後について東京商工リサーチは、「今年は団塊世代の社長が70代になるなど、今後一層の高齢化に対しどう対処していくのか、経営者は決断を迫られている現状がうかがえる。若者世代の起業や女性社長の活躍などを後押しする政策面での支援拡充が期待される」と述べました。

つづけて、「少子高齢化で社長の平均年齢も上昇の一途をたどるのは必然」とし、「社長の高齢化が一概に悪いとは言い切れないが、新陳代謝を織り交ぜた開廃業支援や事業承継への取り組み強化は急務だ」と強調しました。(参照:全国社長分析2017)

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