一部の許認可などが必要な業種を除いて、会社設立や起業・独立には資格は必要ありません。しかし資格を持っていると、専門性をアピールできたり、学習で得られた知識が自身のビジネスで役に立ったりと、さまざまなメリットがあります。とくにはじめて会社設立する方は、ビジネスの実績がないため、資格を武器にする戦略はとても有効な戦略です。

とはいえ、世の中には数多くの資格があります。起業や独立にとても役立つ資格もあれば、取得してもあまり役に立たないものもあります。そこで今回の記事では、数ある資格の中から、会社設立や起業・独立に役立つ資格とアイデアを厳選してご紹介します。

会社設立後のビジネスを有利に進めたい方や、専門知識を身につけて起業後のビジネスに役立てたい方は必見です。

目次

1 日商簿記

日商簿記

まず初めにご紹介するのは、「日商簿記」という資格です。

1-1 資格の概要

日商簿記検定とは、企業の日々の取引を記録する「簿記」や財務諸表の作成や分析に必要な「会計」の知識を問う試験です。

単純に帳簿付けの知識を得られるだけでなく、経営状況の改善に役立つ知見を得られることもあり、就職活動や転職活動のみならず、経営者でも取得を目指すケースは少なくありません。また、税理士試験の受験資格を得られるため、税理士の受験生が受験する試験としても有名です。

日商簿記試験には初級(4級相当)から1級まであり、1級になると税理士や公認会計士の受験で問われるレベルとなります。会社設立や起業・独立を目指す方には、簿記の基礎知識や財務諸表を読んで分析する力を身につけることができる「2級」の受験がオススメです。

1-2 資格を取得するメリット

日商簿記の資格を取得する最大のメリットは、日々の帳簿付けや会計処理、確定申告で必要となる最低限の知識を身につけることができる点です。たとえば小売業や卸売業では、買掛金や売掛金というワードが頻繁に出てきます。こうした単語の意味をしっかりと理解できるため、普段の会計処理をスムーズに行うことができます。

また、2級や1級レベルまで学習を進めると、事業で重要な意思決定に役立つ手法や、経営状況を分析する指標などを導く知識を習得できます。たとえばCVP分析という分野を日商簿記で学ぶことで、「どれほど売り上げを得られれば、赤字にならずに済むか」を判断できるようになります。

1-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

日商簿記では普段の会社経営で必須となる会計知識を得られますが、資格自体を持っていることでビジネスが有利になることはありません

というのも、日商簿記はあくまで基礎的な知識を持っていることを証明する資格に過ぎず、何かの仕事を独占的に行えたり、融資を受ける際に大幅に有利になるなどの恩恵はありません。

1級まで取得すれば多少は専門知識の高さを証明できるかもしれませんが、難しい割に得られる恩恵が少ないため割に合いません。資格をご自身のブランディングに役立てたい方や、案件獲得に有利に役立てたい方は、別の資格を取得した方が良いでしょう。

2 ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナー

次にご紹介するのは、近年需要が高まっている「ファイナンシャルプランナー」です。

2-1 資格の概要

ファイナンシャルプランナー(FP)とは、顧客のファイナンシャル・プランニングの実現をサポートする資格を意味します。ファイナンシャル・プランニングとは、人生の目標や夢を達成するために、長期的な資金計画を収入などの情報を参考にして立てることです。つまりファイナンシャルプランナーは、顧客のお金に関する悩みやニーズを解決するスペシャリストです。

ファイナンシャルプランナーになるには、国家資格である「FP技能士(3級〜1級)」またはNPO法人日本FP協会が認定する「CFP資格」や「AFP資格」に合格する必要があります。

ファイナンシャルプランナーの資格試験では、社会保険(年金や健康保険)や民間保険(損害保険や生命保険など)、所得税や法人税などの税金、近年話題になっている事業承継、金融資産の運用などに関する問題が出題されます。

2-2 資格を取得するメリット

ファイナンシャルプランナーの資格を取得するメリットは2つあります。

1つ目のメリットは、会社経営や私生活などのあらゆる場面で役に立つ知識を得られる点です。たとえば社会保険や民間保険の知識、金融資産の運用に関する知識を学習することで、無駄な出費を減らしたり、効率的に資産を増やすことができます。また所得税や法人税などの知識を得ることで、会社で必要となる税金について理解を深めることができます。

2つ目のメリットは、幅広い人に強いニーズがある点です。資産運用や税金はビジネスマンや起業家から主婦や老人に至るまで、あらゆる人にとって関心のある話題です。つまり老若男女関係なくあらゆる人が顧客となり得るわけです。会社設立後に課題となる顧客獲得が比較的簡単になる点は、ファイナンシャルプランナーの資格を取る大きなメリットです。

2-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

会社設立に役立つ知識を得られる上に需要の高いファイナンシャルプランナーですが、3級以外には受験資格があるため注意が必要です。基本的に2級や1級、AFPなどの上位資格は、下位資格(2級受験なら3級)を持っていないと受験できません(実務経験があれば受験可能)。つまり3級から順番に受験する必要があるため、時間やコストがかかります

会社設立や独立、起業の前後は開業手続きやビジネスの準備で忙しいケースが大半です。忙しい中でコストや時間をかけて受験する必要がある点は大きなデメリットです。

3 公認会計士

公認会計士

三つ目にご紹介するのは、最難関資格の一角である公認会計士です。

3-1 資格の概要

公認会計士とは、企業の財務諸表の正確さを証明することを主な業務とする国家資格です。公認会計士は、財務諸表の正当性を評価する財務諸表の監査以外にも、会計や経営に関するコンサルティングや、M&Aのデューデリジェンスなど、幅広い業務を担当します。

そんな公認会計士は、数ある資格の中でも最難関と言われています。財務会計や管理会計、監査論はもちろん、租税法や企業法、経営学、統計学などの分野から幅広く難しい問題が出題されます。合格率は例年10%と非常に低い上に、勉強時間も3,000時間以上必要と言われており、仕事をしながら手軽に合格するのはとても困難です。

3-2 資格を取得するメリット

公認会計士の資格を取得するメリットは2つあります。

1つ目のメリットは、業務独占資格である点です。業務独占資格とは、ある業務について独占的に行うことができる権限を持つ資格です。公認会計士は、前述した財務諸表監査を独占的に行うことができます。

つまり監査業務については他の士業や無資格のコンサルタントなどと仕事を奪い合う必要がないため、安定的に仕事を得やすいのです。会社設立や独立後は、実績をあげるまでは仕事を獲得するのが難しいのが現状です。しかし公認会計士の資格を持てば、ない場合と比べて仕事を獲得できる可能性が高くなるので非常に魅力的です。

2つ目のメリットは、会計のスペシャリストとして圧倒的なブランド力を持つ点です。ビジネスマンや経営者の間では、公認会計士は会計の高度な専門知識を持つスペシャリストとして認識されます。そのため、大手企業から高単価で業務を獲得できたり、会社設立後に事業を軌道に乗せやすくなります。

3-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

何と言っても圧倒的に難しい点がデメリットとなります。公認会計士に合格しようと思ったら、よほど頭が良い人を除いて1日8時間勉強を1〜2年は継続する必要があります。

会社設立や独立・起業の準備を行いながら、公認会計士の勉強を両立するのはほぼ不可能と言えます。最悪の場合、勉強と独立・起業の両方が中途半端となるリスクもあります。

4 税理士

税理士

経営者にとって不可欠な存在となる税理士も、会社設立や起業、独立で役に立つ資格の一つです。

4-1 資格の概要

公認会計士と並んで最難関国家資格と称されるのが税理士です。税理士とは、税務の専門知識を持つスペシャリストとして、納税義務の適正な実現を図る職業またはその資格を意味します。

具体的には、独占業務として「税務代理」、「税務書類作成」、「税務相談」の3つの業務を行います。また、経営コンサルティング業務やM&Aのアドバイザリー業務、企業内の経理部門などの業務をこなす税理士もいます。

税理士の資格を取得するには、一部の例外的なケースを除いて、難関の税理士試験に合格する必要があります。税理士試験では、会計の基礎知識を問う簿記論や法人税や所得税などの税務に関する問題が問われます。公認会計士とは異なり1科目ずつ取得することができるものの、出題範囲が膨大であるため合格率は10%台と難関です。

4-2 資格を取得するメリット

税理士資格を取得するメリットは、基本的に公認会計士と同様です。税務相談などの独占資格があるため、会社設立や起業・独立後の案件を獲得しやすいです。また、税務の専門家としてブランディングできるため、収入の大幅な増加も見込めます。

とくに税理士は、中小企業の経営者にとっては不可欠とも言える存在であり、地方や都会関係なくニーズがあります。そのため、公認会計士よりもさらに独立や起業に適していると言えます。

4-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

公認会計士と同様に、試験の難易度が非常に高いです。そのため、会社設立や起業の準備と並行して目指すのは困難です。

5 弁護士

弁護士

こちらも最難関国家資格の一つであり、独立志向の強い方にオススメの資格です。

5-1 資格の概要

弁護士とは、法律の専門家として他人の法律関係の事務や相談に応じる職業や資格を意味します。具体的には、民事裁判や刑事裁判の法廷に立って、弁護活動を行ったり、和解に向けた話し合いや法的な手続き、重要な契約締結などの業務も行います。

弁護士の資格を得るためには、最難関の国家試験である「司法試験」への合格が必要です。短答式と論文式で行われる司法試験では、憲法や民法、刑法などの法律分野から幅広く問題が出題されます。

司法試験の合格者は20〜30%と非常に高く、一見すると公認会計士や税理士と比べると簡単に思えるかもしれません。しかし司法試験を受験するには、法科大学院の課程修了や司法試験予備試験の合格が必要であるため、すでにかなり勉強した人たちの中で2〜3割の枠に入る必要があり、とても難関です。

5-2 資格を取得するメリット

弁護士資格を取得するメリットは、公認会計士や税理士と同様です。独占業務(弁護人になることなど)があるため仕事を取得しやすい上に、弁護士という肩書きがあるため、高単価で魅力的な仕事を獲得しやすいです。

5-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

公認会計士や税理士も取得が難しい資格として有名ですが、弁護士はさらに難しいです。

そもそも司法試験を受験するには、法科大学院で数年間みっちり勉強するか、予備試験というこれまた難関の資格に合格する必要があります。どちらの方法をとるにせよ、かなりの時間と労力が必要となるため、サラリーマンとして働きながら、または会社設立や独立の準備を進めながら取得するのは現実的ではありません。

6 社会保険労務士

社会保険労務士

働き方改革の普及に伴いニーズが増している社会保険労務士も、会社設立や起業の際に持っておくと便利です。

6-1 資格の概要

社会保険労務士とは、社会保険や労働・人事問題のスペシャリストとして、企業の抱える課題の解決に努める資格または職業です。

具体的には、労働社会保険の各種手続きや雇用や人材の能力開発に関する助成金の申請、就業規則の作成や変更などの業務を行います。また、一般市民の年金相談や企業の労務管理の相談指導なども行います。加えて、特定社会保険労務士であれば、従業員と企業の間で生じる労務トラブルの解決手続きを代理することもあります。

社会保険労務士になるには、国家試験である「社会保険労務士試験」に合格する必要があります。試験では、労働基準法や労災、雇用保険法、国民年金法など、普段の仕事や私生活で馴染みの深い法律分野から出題されます。そのため、難解な法律知識が問われる司法試験や税理士試験、司法書士試験などと比べると難易度は低いです。

6-2 資格を取得するメリット

社会保険労務士の資格を得ると、次にあげる2つのメリットを得られます。

1つ目のメリットは、従業員を雇う上で必要となる基礎知識を網羅的に習得できる点です。会社設立後に事業をスケールさせるには、基本的には何人か従業員を雇う必要があります。しかし従業員を雇うには、労働基準法や雇用保険法などに即した手続きが必要となります。社会保険労務士の試験では、こうした従業員の雇用に関連した法律知識を満遍なく学習するため、トラブルなく従業員を雇用できます。

2つ目のメリットは、独占業務がある点です。社会保険労務士が担う雇用保険や労災保険への加入手続きなどは、社労士しか行えない独占業務となっています。そのため、資格を持たない場合と比べて独立や起業後の仕事獲得がスムーズとなります。

6-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

税理士や公認会計士ほどではないものの、社会保険労務士の試験は非常に難関です。合格率は例年1桁台〜10%前後と非常に低い上に、合格するには1,000時間の勉強が必要と言われています。

そのため、社会保険労務士として起業したい場合には、前もって社会保険労務士の資格を取得した上で、起業や会社設立の準備を行うのがベストです。

7 行政書士

行政書士

7つ目にお伝えするオススメの資格は、社会保険労務士と同じくらいの難易度を誇る行政書士です。

7-1 資格の概要

行政書士とは、第三者からの依頼を受けた上で、許認可の申請書類作成や遺言書の作成といった行政手続きを行う国家資格です。簡単に言うと、公的機関に提出する書類を作成するスペシャリストです。

上記で紹介した仕事以外にも、在留資格取得のサポートや遺産分割協議書の作成、成年後見、中小企業の経営支援など、さまざまな業務を担います。

この資格を取得するには、行政書士試験を受験し合格しなくてはいけません。行政書士の試験では、憲法や民法、行政法(地方自治法など)、商法といった法令分野はもちろん、政治や情報通信などの一般知識からも出題されます。

難易度は前述した社会保険労務士とほぼ同じと言われており、合格率は例年10%前後となっています。

7-2 資格を取得するメリット

行政書士の資格を取得する最大のメリットは、会社設立や起業で必須となる法律の知識を満遍なく習得できる点です。会社設立や起業を行う際に厄介となるのが、公的機関への書類提出や手続きです。こうした手続きは法律に基づいて行う必要があり、はじめて会社設立する方にとってはとても厄介です。

しかし行政書士の学習を行なっていれば、「いつまでに何をすべきか?」を明確に理解できるようになります。そのため、会社設立や起業の手続きをスムーズに行えるようになります。起業後に何かしらのトラブルに巻き込まれた際も、行政書士の学習で得た知識をもとに、冷静に対処できます。

7-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

前述したように行政書士は社会保険労務士と同じくらいの難易度なので、簡単には取得できません。とくに民法や行政法といった普段の生活では馴染みのない分野を覚える必要があるため、暗記が苦手な方にとっては取得が難しい資格といえます。

8 中小企業診断士

中小企業診断士

多くの方にとってあまり馴染みのない中小企業診断士ですが、会社設立や起業を目指す方にはオススメの資格の1つです。

8-1 資格の概要

中小企業診断士とは、経営コンサルタントとして唯一の国家資格です。国公認の経営コンサルタントとして、中小企業が抱える経営上の課題解決を主な業務とします。商工会議所などの公的機関で経営相談に乗ったり、ご自身で事務所を立ち上げて中小企業診断士として起業することもできます。

この資格の獲得にも、「中小企業診断士試験」の合格が必要です。試験では、経営戦略やマーケティングの知識を問う企業経営理論や、経済学、経営法務、財務会計など合計で7つの科目から出題されます。

8-2 資格を取得するメリット

この資格を取得する唯一かつ最大のメリットは、経営学やマーケティングなど、会社設立や独立後のビジネスで役に立つ知識を網羅的に勉強できる点です。

ビジネスで成功するには、他の企業との競争に打ち勝ちつつ、顧客のニーズを満たす商品やサービスを販売する必要があります。ビジネス経験が豊富な人や経営者、センスがある人であれば、とくに何も勉強しなくても成功してしまいます。しかしほとんどの方にとって、競合企業に打ち勝ったり、顧客のニーズを満たすことは簡単ではありません。

しかし中小企業診断士の資格を得る過程で経営学やマーケティングを勉強することで、競合企業に打ち勝つヒントや、顧客のニーズを発見・対処するヒントとなる知識を得られます。

直接的にビジネスに活きる知識を得られる点は、他の資格では得られない特有のメリットと言えます。

8-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

行政書士や社会保険労務士と同じくらいの難易度であるにもかかわらず、独占業務がない点はとても大きなデメリットです。中小企業診断士のみが行える業務はないため、優秀な経営コンサルタントや他の士業などの中で、案件を勝ち取る必要があります。

また、社会保険労務士や行政書士と比べると知名度も低いため、難易度の割には自身のブランディングになりにくいです。

9 宅地建物取引士

宅地建物取引士

次にご紹介する宅地建物取引士は、不動産業界で会社設立や起業したい方に最適の資格です。

9-1 資格の概要

宅地建物取引士とは、不動産の売買や賃借、交換などの取引に関する業務を行う資格またはその業務を意味します。

宅建士とも呼ばれるこの資格には、3つの独占業務があります。1つ目は不動産を購入または賃借する人に対して、取引の重要事項を説明する業務です。2つ目は、重要事項を記載した書面について間違いがない旨を確認し、記名・押印する業務です。そして3つ目は、契約書の内容の間違えの有無を確認し、記名や押印を行う業務です。

宅地建物取引士になるには、マーク式で行われる宅建士試験に合格する必要があります。試験では、主に民法や宅建業法などの法律分野から問題が出題されます。

9-2 資格を取得するメリット

行政書士や中小企業診断士と比べると難易度は低い上に、独占業務もあるため、明確なスキルをつけて会社設立や起業したい方にはオススメの資格です。

とくに不動産業の事務所を設立するには、宅地建物取引士の有資格者を5人に1人の割合で設置する義務があります。そのため、宅建の資格を持っていると不動産業界での起業をスムーズに進めることができます。

また、宅地建物取引士の資格を取得する過程では、不動産に関する法律知識を馬洗的に身に付けることができます。そのため、ご自身の家を購入する際や、オフィスをレンタルする際など、あらゆる場面で生じるトラブルに対処できるようになります。

9-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

独占業務がある上に難易度もそこまで高くないため、一見すると起業や会社設立にとって最適の資格に思えるでしょう。しかし独占業務は不動産に関連したものばかりであるため、他の業種で起業する際にはあまり役に立ちません(金融業界でも多少役に立ちます)。

他の業種で起業したい方は、他の資格を取得した方が良いでしょう。

10 不動産鑑定士

不動産鑑定士

宅地建物取引士と同様に、不動産鑑定士も不動産業界での会社設立や起業に適した資格の1つです。

10-1 資格の概要

不動産鑑定士とは、物件や土地などの適正な価格や役立て方などをアドバイスする専門家です。

主に、公共機関(都道府県など)が行う都道府県地価調査や地価公示などの鑑定業務や不動産の有効な活用方法に関するコンサルティング業務を行います。また、会社がM&Aを行う際の不動産の価値判定を行う不動産鑑定士も存在します。

そんな不動産鑑定士になるには、国土交通省が行なっている「不動産鑑定士試験」の合格が必要です。不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験の2種類の試験に合格しなくてはいけません。短答式試験では、「鑑定理論」と「行政法規」、論文式試験では「鑑定理論」と「民法」、「経済学」、「会計学」から出題されます。

10-2 資格を取得するメリット

不動産鑑定士の資格を取得するメリットは2つあります。1つ目は、独占業務(不動産鑑定評価)がある点です。税理士などと同様に不動産鑑定士の資格を持つ人しか行えない業務があるため、独立や会社設立後も仕事を獲得しやすいです。

2つ目のメリットは、不動産の専門家として自身のブランディングができる点です。同じく不動産の国家資格である宅建士と比べて、不動産鑑定士は難易度が高い上に業務に対するニーズも多いです。そのため、不動産業界はもちろん金融業界やコンサルティング業界など、あらゆる業種で幅広く仕事を行うことができます。

10-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

不動産鑑定士の資格を取得する上で注意したいのは、試験の難易度が非常に高いという点です。意外と知られていませんが、不動産鑑定士の試験は公認会計士試験や税理士試験と同じくらい難関です。

不動産に関する難解な知識はもちろん、会計学や経済学などのとっつきにくい分野も勉強する必要があります。合格には2,000時間前後の勉強が必要と言われており、会社設立の準備を進めながら受験するのは困難な資格です。

合格率も短答式で約3割、論文式で10%台と決して簡単ではありません。この資格を使って会社設立や起業・独立を目指す方は、あらかじめ資格を取得しておくのがベストです。

11 基本情報技術者(応用情報技術者)

基本情報技術者(応用情報技術者)

IT業界での会社設立や独立で役に立つ資格といえば、基本情報技術者や応用情報技術者です。

11-1 資格の概要

経済産業省では、IT業界で働く情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上であることを証明する国家試験を行なっています。その中の2つが、基本情報技術者と応用情報技術者です。なお難易度としては基本情報技術者の方が簡単であり、応用情報技術者試験の上にはさらに9つの上位試験が設けられています。

つまり簡単に言うと、基本情報技術者や応用情報技術者はITエンジニアのスキルを図る国家試験です。試験では、ソフトウェアやハードウェアやセキュリティの基礎知識に加え、プログラミング言語、経営戦略などの分野から幅広く出題されます。

ちなみに基本情報技術者と応用情報技術者の合格率は、共に約20〜30%の間で推移しています。

11-2 資格を取得するメリット

基本情報技術者や応用情報技術者の資格を取得する最大のメリットは、IT業界で働く上で必須となる知識を網羅的に習得できる点です。

本格的にIT業界で会社設立や起業してビジネスを行うとなると、単純にプログラミング言語を使えるだけでは不十分です。ソフトウェアやハードウェアの知識はもちろん、ネットワーク構造やセキュリティに関する知識も必要となります。

こうした知識はIT業界で働いていると自然に身につくこともありますが、職場環境次第では得られる知識が偏る傾向があります。しかしこうした資格の学習を経れば、網羅的に必須知識を身に付けることができます。

また、プログラミングを行う上で必要となるロジカルシンキング力も、基本情報技術者や応用情報技術者の資格学習で身に付けることが可能です。

11-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

IT業界への就職や転職では有利となる資格ですが、独立や会社設立を経て自分で働くとなると話は別です。

IT業界においては、自分で仕事を獲得して稼ぎを得るには何よりも実力や実績が重視されます。どれほど優れた資格を持っていても、実務経験に乏しかったりまともにプログラミング言語を扱えないと稼ぐのは難しいです。

すでにエンジニアとして十分な実績や実力があり、ご自身の知識補充やブランディングを目的に取得するのであれば問題ありません。しかし十分な実績や実力がない場合は、資格の取得よりも実績を積んだり実力を伸ばすことに注力した方が良いでしょう。

そもそもこの資格に合格するには、よほど頭が良い方を除くと100〜300時間は勉強する必要があります。この資格にそれだけの勉強時間を割く余裕があるならば、まずは実績や実力作りに注力した方が効率的です。

12 介護福祉士

介護福祉士

少子高齢社会の訪れに伴って、近年大きく注目を集めているのが介護福祉士です。

12-1 資格の概要

介護福祉士とは、介護の専門知識を有する国家資格です。お年寄りや身体に障がいを持つ人の介護を行うために必要となる、食事や移動補助などの知識を持つ専門家です。

介護福祉士の主な仕事内容は、障がい者や高齢者の着替えや食事、入浴などの補助を行う業務です。また、話し相手になったり近隣住民との交流を促したりと、精神面でのサポートも行います。加えて、サービス利用者の家族に対して介護に関する助言や指導を行ったり、職場のリーダーとして介護の専門知識やノウハウについて指導する役割も担います。

介護福祉士の資格を得るには、「介護福祉士国家試験」に合格する必要があります。試験は筆記と実技に分かれており、筆記試験では介護の基本やコミュニケーション技術、認知症や障がいに関する知識などの分野から幅広く出題されます。一方で実技試験では、介護に関する専門技能を問う問題が出題されます。

12-2 資格を取得するメリット

介護福祉士の資格を取得するメリットは、訪問介護の分野で起業するために必要となる「サービス提供責任者」としての条件を得られる点です。指定訪問介護事業所を開業するには、原則的に最低でも1人以上のサービス提供責任者を設置する必要があります。

このサービス提供責任者になる条件の1つに、介護福祉士の資格所持があります。つまり介護福祉士を取得すれば、介護業界で起業するための条件を満たせるわけです。

また、介護福祉士の資格を持っていることで、お客さんや協力してくれる企業に対して自身の専門性をアピールできます。プロとしてのブランディングになるため、介護業で会社設立や起業したい方にはとてもオススメの資格です。

12-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

介護福祉士の資格を取得する上で注意したいデメリットは2つあります。1つ目のデメリットは、介護業での会社設立や起業でしか効果を発揮できない点です。介護福祉士はあくまで介護に関する専門性をアピールできる資格です。金融業や製造業などでは、ほとんどご自身のブランディングにはならないので注意です。

2つ目のデメリットは、介護業の業務自体がハードである点です。ご自身は経営に徹して業務を全て従業員に任せるならば別ですが、そうでない限り自分で介護のサービスを行う必要があります。着替えや食事、歩行の補助などはとても労力を要する上に身体的負荷が高いです。

13 理学療法士

理学療法士

次にお伝えする会社設立や起業・独立に役立つ資格は、理学療法士です。

13-1 資格の概要

理学療法士とは、その名の通り「理学療法」の専門家としての資格です。

具体的には、病気や事故、怪我により身体に障がいがある人に対して、体操やマッサージ、物理療法などの手段を用いて、「歩く」や「立つ」といった基本動作能力の回復や維持をサポートする業務を行います。つまり簡単に言うと、リハビリテーションのサポートやプログラムの作成を行う専門家資格です。

なおリハビリテーションをサポートする資格には「作業療法士」もありますが、両者にはリハビリの内容に違いがあります。前述した通り、理学療法士は歩くなどの基本的な動作のリハビリを行います。一方で作業療法士は、「料理を行う」や「文字を書く」といったより高度な動作のリハビリテーションをサポートします。

他の例に漏れず、理学療法士の資格を得るには国家試験に合格する必要があります。解剖学や臨床心理学、運動学などの分野から出題される試験であり、合格率は例年70%を超えるため比較的難易度は低いといえます。

13-2 資格を取得するメリット

理学療法士の資格を取得するメリットは、仕事内容自体が世間一般からの需要が大きい点です。とくに近年は、高齢者の増加に伴いリハビリテーションの需要が高まっています。そのため、今後ますます理学療法士に対するニーズも高まると予想されます。

13-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

一方で理学療法士の資格には、2つのデメリットがあります。1つ目のデメリットは、そもそも病院などの医療施設で働く上で有利な資格である点です。独立開業して仕事を得るには、大手の病院との差別化が必要となります。

2つ目のデメリットは、資格を獲得するための条件が厳しい点です。試験自体は難しくないものの、理学療法士の国家試験を受験するには、4年制の大学や短期大学、専門学校、特別支援学校などを卒業する必要があります。つまり最低でも、資格を取得するまでに数年かかるのです。

よほど理学療法士として起業したいという強い意志がない限り、この資格をわざわざ取得するのは非効率と言えます。

そもそも理学療法士の開業は、現在の規則上困難となっています。できないわけではないですが、医療系の事業で起業したいならば別の資格取得が良いでしょう。

14 柔道整復師

柔道整復師

柔道整復師は、理学療法士と同様に医療分野で起業したい方にオススメの国家資格です。

14-1 資格の概要

柔道整復師とは、関節や骨、筋肉に生じる打撲や捻挫といった怪我の治療を行う技能を有する国家資格です。主にスポーツトレーナーや整骨院の先生として、患者の怪我の回復に努めるのが柔道整復師の役割です。

柔道整復師と仕事内容が似ている資格に「整体師」がありますが、整体師は柔道整復師とは異なり民間の資格です。また、整体師の施術はすべて自由診療となり、患者によっては非常に高額の施術費用が発生する可能性があります。

なお柔道整復師の国家資格を受験するには、柔道整復師の養成課程がある大学や専門学校を卒業し、その上で国家試験に合格する必要があります。試験では、運動学やリハビリテーション医学、整形外科学、柔道整復理論など、全11科目が課せられます。出題される問題数が非常に多いため、問題の形式にあらかじめ慣れておくことが重要です。

14-2 資格を取得するメリット

柔道整復師の資格を取得するメリットは、医療系の資格では数少ない「開業権」を持っています。開業権とは、開業することを公に認められている資格を意味します。つまり柔道整復師の資格を持って入れば、それだけで起業や会社設立が可能となるのです。

また、そもそも柔道整復師の業務に対するニーズが非常に大きい点もメリットです。スポーツ選手や高齢者などにとって、脱臼や打撲、骨折などの怪我は日常茶飯事です。そのため、こうした怪我を治療できる柔道整復師はとても重宝されています。

起業しやすい権利を持っている上にニーズも強いため、医療分野で起業したい方には特にオススメの資格です。

14-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

一方で柔道整復師の資格には、いくつか注意すべきデメリットもあります。まず最大のデメリットは、理学療法士と同様に国家試験を受験するために大学や専門学校を卒業する必要がある点です。今現在すでにサラリーマンとして働いている方にとっては、すぐには起業できない上に収入が途絶えてしまいます。

もう一つのデメリットは、専門学校や大学さえ卒業していれば比較的誰でも取得できてしまう点です。近年は資格取得の容易さから、柔道整復師の数が増加しています。そのため、十分生活できるだけの顧客を獲得するには、他の柔道整復師との差別化を図る必要があります。

15 調理師

調理師

最後にご紹介する会社設立や独立にオススメの資格は調理師です。

15-1 資格の概要

調理師とは、栄養および衛生面を考慮して調理を行える技能を持った有資格者を意味します。簡単にいうと、料理人のための国家資格であり、飲食店には調理師を置く努力義務があるため、飲食業界での会社設立や起業ではとても需要が高い資格です。

具体的な仕事内容としては、調理はもちろん食材の仕入れや管理、新作メニューの開発、調理場の清掃なども含まれます。

調理師の資格を取得するには、調理師試験に合格するか、厚生労働大臣が指定する調理師養成施設を卒業する必要があります。なお調理師試験を受験するには、飲食店で2年以上の調理業務を経験する必要があります。試験では、食品学や栄養学、食品衛生学、公衆衛生学、調理理論、食文化理論の6科目が出題されます。

15-2 資格を取得するメリット

調理師資格を取得するメリットは、飲食業で起業する上でとても重宝する点です。前述した通り、飲食店の起業では調理師の資格を持っていることが努力義務として課されます。ほぼ必須とも言える資格を合格率が6割を超える試験や学校を卒業するだけで得られる点は、飲食業界での起業を考えている方にとっては大きなメリットです。

また資格を取得する過程では、調理やメニュー考案、衛生など、飲食業での起業や独立で役に立つ知識やノウハウを網羅的に得ることができます。そのため、資格を得ずに飲食業を始める場合と比べてスムーズに事業を進めやすいです。

15-3 資格を取得する上で注意したいデメリット

調理師資格は飲食業では非常に役に立つ資格であるものの、飲食業界自体の廃業率が高い点には注意が必要です。

日本政策金融公庫の調査によると、飲食業の廃業率は全業種通してもっとも高いとのことです。実際に街中には飲食店がとても多く存在しており、長期的に利益を得続けるには競合となる飲食店に勝たなくてはいけません。

軽い気持ちで調理師の資格を取得し、飲食店を起業すると失敗して借金が残ったり、貯金が底を尽きるリスクもあるので注意しましょう。

また、そもそも飲食業界で起業するには、店舗の賃貸料や調理器具の購入などで多額の初期費用がかかります。初期費用が大きい割に失敗する率が高いので、はじめて会社設立や起業する方にとってはハードルの高い業界であると言えます。

16 専業主婦・主夫にもおすすめな起業方法・アイデア6選

起業というと会社の設立をイメージする方もいますが、会社を設立しなくてもできる起業方法があります。それは「個人事業主」になることです。個人事業主とは、会社に属することなく、個人で事業を行う起業形態です。

個人と法人の違い

会社と雇用契約を結ぶ会社員の場合には、また会社の設立者にも同様のことがいえますが、日中の大半を仕事に費やすことになります。

その点、個人事業主の最大の特徴かつメリットである自由さと仕事の裁量権によって、好きな時間に、また特定の日に集中して仕事を行うことが可能になります。空き時間を活用でき、自分のペースで進めることができる個人事業主という形態は、専業主婦・主夫にうってつけです。

会社を設立するためには様々な手続きや、会社を設立する=法人登記を行うための登記費用が発生します。一方、個人事業主は思い立ったその日が個人事業主となった日です。個人事業主となるまでの費用や手間は一切かかりません。

税金や事業年度に触れておくと、個人事業主の場合、毎年1月から12月までの一年間を事業年度と見立てて決算を行います。その決算内容を申告書にまとめて、原則として2月16日から3月15日の間に最寄りの税務署に申告することになります。これが「確定申告」です。

そして個人事業主の場合、確定申告に基づいて「所得税」と呼ばれる税金を納めます。所得税は「累進課税」といって、所得が高額になるほど税率も高くなる税金です。

対して会社の場合、事業年度の開始月と終了月は自由に決めることができます。そして、原則として終了月から2か月以内に決算を固めて税務署や自治体に申告します。

会社の場合の決算に対する税金は「法人税等」と呼ばれるものです。法人税等は、税務署・都道府県・市区町村の、納付場所によって大きく3種類に分かれる税金です。法人税等の一つである「法人住民税」は、その事業年度が赤字であっても、一定額の税金を納めなければいけないことになっています。

対して個人事業主の所得税の場合は、赤字の場合には税金を納める必要はありません。個人事業主の確定申告は「青色申告」と「白色申告」の2種類から選択します。

「青色申告」と「白色申告」の違い

何もしなければ自動的に個人事業主の確定申告は「白色申告」となります。白色申告とは、入金と出金を時系列ごと・内容ごとに区分するだけの、シンプルな「単式簿記」と呼ばれる形式で申告する方法です。

一方の青色申告は、まず青色申告の対象となるためにはその年度の3月15日までに税務署に所定の届け出をする必要があります。そして青色申告には、白色申告にはない「65万円の特別控除」というメリットがあります。この特別控除とは所得を減ずることができるものです。

所得とは税金の算出元となる金額で、売上から諸々の経費を差し引くことで求めるものです。すなわち、所得が低いほうが税金も低額となります。青色申告の特別控除とは、経費のように現金を支出することなく所得を更に65万円分減らすことができるものです。

青色申告のデメリットには確定申告にかかる手間が増えることがあります。青色申告は「複式簿記」で記帳をする必要があります。複式簿記とは、一つ一つのお金の動きを「借方」と「貸方」の2種類に分ける会計処理です。単式簿記に比べて複雑で知識や経験が必要となります。

青色申告には他にも、赤字を3年間繰り越せること、家族に給与を支払っている場合には給与を経費化できることなどの白色申告にはないメリットがあります。

青色申告のメリットは事業規模が大きくなった場合にこそ活かされるものです。そのため、起業して間もない時期や事業規模が大きくない場合には、青色申告のメリットを存分に活かすことができないため、白色申告でも良いでしょう。

さて次からは、専業主婦・主夫におすすめの具体的な起業アイデアを紹介します。

専業主婦・主夫におすすめの具体的な起業アイデア

16-1 クラウドソーシングサービスを活用する

クラウドソーシングサービスとは、仕事を受けたい人と仕事を依頼したい人(会社)とを結びつけるインターネット上のサービスのことです。

代表的なクラウドソーシングサービスに「ランサーズ」や「クラウドワークス」があります。これらを実際に活用するためには会員登録が必要ですが、会員登録をせずとも仕事内容を知り雰囲気を感じ取ることは可能ですので、一度サイトを訪れてみてください。

扱っている仕事の内容は多岐に渡っています。例えば、パソコンを使用してのデーターの入力作業や収集作業、現物を扱う作業となる出荷代行作業や代筆作業、ホームページや営業資料の制作や補助作業、他にも電話サポートの代行業務や翻訳作業などがあります。

仕事を行うためには、会員登録と、仕事依頼主によってはWeb面接や実際に事務所に赴いての面談を条件としている場合があります。単価や納品日、作業条件がそれぞれ異なりますので、その中から自分の希望と合致するものを選ぶことで、無理なく作業を行うことができます。

ただし、中には競争率が激しい仕事があります。最初はなかなか仕事が決まらず、望むような仕事をできないかもしれませんが、初めのうちは募集人数の多い作業を積み重ねることで、評価を上げていきましょう。

仕事への応募の際には自己アピールをすることができますが、その際に活きるのは熱意やスキルよりも高評価の数となる場合があります。受注できた仕事を丁寧に仕上げていくことで、望む仕事も徐々にできるようになり、そうしている内に「お得意様」ができて、直接依頼を受ける関係になることもあります。

このクラウドソーシングサービスを活用するメリットの一つは、サービス運営会社が間に入ってくれることです。依頼主との直接のやり取りは生じません。中には報酬を支払わない依頼主もいますが、そうしたトラブル時にサービス運営サイトが仲介をしてくれます。

そのための仲介手数料は発生しますが、安心して仕事に取り組む環境が用意されています。仕事を多く抱えるようになったら、仕事を依頼する側に回ることもできます。会員登録料は無料ですので、会員登録を済ませることで、起業の第一歩を踏み出したといえるでしょう。

16-2 インターネットでせどりを行う

せどりとは「転売」のことです。安く仕入れて高く売るのがせどりと呼ばれる商売ですが、それをインターネット上で行うというものです。この仕事の特徴は仕事の始めやすさにあります。自分の不用品を商品とするところから始めれば、元手もかかりません。

そして、通常では商品の売買をするためには店舗や販売場所を必要としますが、インターネット上にはYAHOO!やメルカリなどのオークションサイトがありますので、パソコンとインターネット環境を用意してそれらオークションサイトを活用することで、直ぐにでも仕事を始めることができます。

手間といえばオークションサイトを使用するための会員登録手続き位です。オークションサイトには既に顧客が付いているといえる状態ですので、顧客を呼び込むための営業活動を行う必要がなく、後は需要のある商品を用意することに尽力すれば良いのです。

売れ筋の商品を取り回すことができるようになれば、規模を大きくしていくことができます。しかし、規模は大きくなるほど商品の発送作業も多くなります。また、売れ筋の商品は既に競争率が高い状態である可能性が高いため、収益を出すためには根気と情報収集作業が大事な要素となります。

16-3 インターネットショップを開く

インターネットに自分のショップを開設してそこで商品を販売する、という方法です。インターネットには、現実のショッピングモールのようなショッピングモールサイトがありますので、そこを活用することで自分のショップを開くことができます。

インターネットショッピングモールには「Amazon」や「Yahoo!」などの有名所から、扱う商品がハンドメイドのアクセサリーなどでしたら「minne」(ミンネ)や「Creema」(クリーマ)といったそれ専門のショッピングサイトがあります。

商品は自分で梱包・発送を行いますが、Amazonでは商品を預けて手数料を払うことでAmazon側にて出荷までを行う代行サービスを行っています。

これらのサイトには、ショップを手軽に始められるようなツールがあらかじめ用意されています。また、商品取引の仲介もサイト運営側が行います。ただし、それらショップ開設ツールの活用や取引の仲介には、手数料が発生します。

中には「BASE」といった、全てを自分で用意する代わりに手数料を取らないサイトもあります。扱う商品が増えて更に規模を大きくするのであれば、これらのサイトのどれか一つに注力するだけではなく、サイトにまたがって複数のショップを展開することも選択肢です。

また、インターネットショップは林立しているのが現状ですので、売れ筋商品の見極めやショップの個性化、ブランド化が肝要となります。

16-4 アフィリエイトを行う

アフィリエイトとは一言でいうと宣伝活動です。ブログやホームページなどに特定の商品の広告(宣伝素材)を貼り付けて、ブログやホームページ訪問者がその広告をクリックするか、またはその広告経由で商品を購入することで、その商品の販売元から報酬を得ることができる、という仕組みです。

この仕事の特徴は、資金や経費を殆ど用意せずに済むことと、必要となるのは自身の労働力位であることです。仕入れを行う必要が無いため資金を用意する必要がなく、また在庫の処分に困る事態にもなりません

リスクとしては、最悪時間が無駄になるかもしれないことです。また、収益に結びつくようになるまでには根気やノウハウを必要とします。安定した収益化には数ヶ月~数年を要するといわれています。

アフィリエイトを始めるためには、ブログなどを開設するためのサーバーを用意することから始めます。サーバーには無料サービスのものもありますが、無料の場合は制約も大きく広告を載せられないこともありますので、レンタルサーバーをおすすめします。

ブログなどを用意したら、アフィリエイト・サービス・プロバイダ(ASP)に登録します。ASPとは、宣伝をしてもらいたい商品を集めたサイトのことで、大手のものに「A8.net」や「value commerce」などがあります。

ASPにて宣伝する商品を探してブログなどに貼り付けることで一先ず環境が整ったことになりますが、インターネットは情報に溢れており、また常に新しい情報に置き換わりますので、日付の古いブログ記事はあっという間に埋没をしてしまいます。

したがって、ブログを絶えず更新することと、人気の出るような文体や記事づくりを考えて、ブログの定期読者を増やすことが人が訪れるようになるポイントです。元々文章を書くことが好きな人、得意な人にはおすすめの仕事です。

16-5 得意分野をインターネットで活かす

得意分野があるのであれば、それを売りとするのが一つの起業方法です。現在はインターネットによって、場所や時間の制約を受けずに、得意な作業を不特定多数の人にアピールすることが可能です。

得意分野を活用したインターネットの仕事には、前述のようにクラウドソーシングサービスや、手芸品であれば「minne」や「Creema」といったサイトを使うのが一つの方法ですが、それらとは別に「得意分野をアピールして仕事に結びつける」ことに特化したサービスがあります。

そのサービスとは、スキルマーケットを謳う「ココナラ」です。前述のクラウドソーシングサービスは仕事依頼情報がメインページとなりますが、ココナラでは逆に仕事をしたい人がスキルや得意分野をアピールして仕事に結びつけるページがメインとなります。

ココナラでは、翻訳やビジネスのサポート業務、ロゴなどのデザイン関係、似顔絵などのイラスト関係、そして悩み相談や占いまで、多様にカテゴリー分けがされています。一度「ココナラ」を訪れて、活かせそうな自分の得意分野があれば自分の得意分野をアピールしてみるのはいかがでしょうか。

16-6 得意分野を自宅で活かす

これも得意分野を活かすことの一環ですが、前項がインターネットを活用したのに対して、こちらは自宅を改装して、または自宅の一部屋を割り当てて教室を開く、というものです。

前職が料理関係職であったり、またスポーツや楽器の経験者であったりする場合には、インストラクターとして生徒の募集を行います。また、外国語を話せたり手芸品の制作を得意としたりするのであれば、思い切って自宅を改装して教室を開くことも選択肢です。

インターネットは便利な反面、相手との距離感を掴むのが難しく、人間関係や仕事頻度がどうしても希薄となります。一方、人と人とが直接接する環境であれば、一度築いた関係はインターネットのそれとは比較にならない程に強く、また口コミが大きな武器となって、顧客が顧客を呼ぶことにも繋がります

得意分野があってお喋りが好きな人や、昔から人付き合いが好きで自分でもコミュニケーションスキルが高いと思う人には、正にうってつけの仕事といえるでしょう。自分にできることや得意分野、そして仕事との相性を見極めることが、起業をして成功するために必要です。

17 まとめ

今回の記事では、会社設立や独立、起業で役に立つ資格を15個紹介しました。さまざまな資格を紹介しましたが、ご自身の得意分野や職歴、資金状況、目指す働き方などによって最適な資格は異なります。

たとえば需要が高く競争が低い環境で安定的に事業を行いたいならば、公認会計士や税理士、行政書士などの難関国家資格を取得するのがオススメです。一方で飲食業や医療など、特定の業種や分野で会社設立したいならば、その業界ごとに求められる資格を取得するのが良いでしょう。

もしくは、会社設立や起業で必要となる会計や財務、マーケティングの知識を習得する目的で日商簿記やファイナンシャルプランナー、中小企業診断士の資格を取得するのも1つの選択肢です。

上記はあくまで一例であり、他にも目的に応じて最適な資格はさまざまあります。今回ご紹介した内容を参考にして、ぜひご自身にとって最適な資格を見つけた上で、会社設立や起業にご活用ください。