働き方の多様化や女性の社会進出も相まって、ここ数年は起業する女性が増えています。この記事をお読みになっている方の中にも、自分で好きなことを仕事にできる起業に憧れる女性も多くいると思います。

男性起業家では気づきにくい細かな部分に気配りができたり、おしゃれさや可愛らしさなど女性独自の目線でビジネスを行えたりと、女性起業家にならではのメリットはとても多いです。実際に女性独自の目線や感性を活かして、起業により大成功を収めた起業家は少なくありません

起業を検討している女性は多くいますが、「どのような業種で起業すべきか」はとても気になる部分でしょう。女性特有の強みを活かせる業種の方が、起業した後もスムーズに事業を行いやすいでしょう。そこで今回の記事では、女性の起業で人気の業種を10選ご紹介します。

女性に人気の業種と合わせて、会社設立の方法と手順や設立に要するお金、女性起業のポイントについてもわかりやすくお伝えします。これから起業したいと考えている女性の方はぜひ参考にしてください。

1 女性に人気の業種

女性の起業家には、果たしてどのような業種が人気なのでしょうか?基本的には、女性の強みを活かせる業種や、自宅で気軽に行える業種などが人気を集めています。今回は数ある女性に人気の業種から、厳選して10つの業種をご紹介します。起業する際の業種に悩んでいる方は必見です。

 

1-1 美容系サロン

女性起業家に特に人気なのが、美容系サロンです。美容といえば、女性にとって生涯にわたって追求するテーマの一つであり、それを仕事にすれば大きなやりがいを得られるでしょう。

基本的には店舗を借りた上で起業しますが、小規模なサロンであれば自宅の一室をサロンとして活用することもできます。自宅をサロンとして用いれば、店舗の家賃などを支払う必要がないため、固定費を大幅に削減することができるでしょう。ただし美容系サロンを起業して成功するには、事業を始めるための資格やスキルが不可欠です。とはいえ資格自体は、比較的簡単に習得できるものが多いため、あとは自身のスキル次第な部分が大きいです。

具体例としては、顧客のヘアアレンジやメイクアップを行う「メイクアップアーティスト」や、ネイルの装飾を行う「ネイリスト」、スキンケアのアドバイスを行う「ビューティーアドバイザー」などのビジネスで起業する女性起業家が多いです。

 

1-2 リラクゼーションサロン

美容系サロンと同じくらい女性起業家に人気なのが、リラクゼーションサロンです。リラクゼーションサロンとは、お客さんの精神的・身体的な緊張や疲れを緩和させて、リラックスしてもらうビジネスモデルです。疲労回復や美容効果はもちろん、腰痛や肩こりといった身体の不調改善にも効果があるため、リラクゼーションサロンは年齢関係なく多くの女性からの需要があります。そのため、女性起業にはもってこいの業種であるといえます。

具体的な仕事内容には、アロマセラピストやエステティシャン、リンパマッサージといったものに加え、酸素カプセルや岩盤浴といった機械設備を用いた形態もリラクゼーションに該当します。こうしたリラクゼーションサロンの事業で起業するとなると、やはり関連する資格を持っていた方が有利です。資格自体はそこまで難易度は高くないため、半年から一年程度で習得できるでしょう。

 

1-3 育児関連のビジネス

女性にとって得意分野である育児分野のビジネスも、女性起業家に人気の業種の一つです。育児は大半の女性が経験することであるため、その分需要が確実にある分野です。しかし初めて子供を育てるお母さんの場合、わからないことばかりで不安に感じます。そんな中で、経験豊富な先輩ママに育児を支援してもらえるのはとてもありがたく感じるものです。とくに近年は、女性の社会進出も相まって、子育てを手伝って欲しいというニーズはますます高まっています安定的にニーズのあるビジネスなので、育児の経験がある女性の方にはとくにオススメのビジネスモデルです。

育児関連のビジネスには、具体的にさまざまな種類があります。たとえば「子育てカウンセラー」というビジネスがあり、これは子育てに悩んでいる母親に絵本の選び方やしつけの方法などをレクチャーするビジネスモデルです。人気が出てくればセミナーなどを開催し、より多くの収益をあげることも期待できます。なお育児セラピストなどの資格を持っていれば、より子育てカウンセラーとしての価値が高まるでしょう。

他にも「ベビーマッサージ」や「マタニティビクスインストラクター」など、育児関連のビジネスは沢山あります。子育てに関連したビジネスで起業したい方は、ご自身にあったビジネスモデルを見つけてみてください。

 

1-4 インターネットビジネス

自宅で気軽に起業したい女性にオススメなのが、インターネットビジネスです。パソコン一台と通信環境があれば、自宅でも外出先でも気軽にお金を稼げるのがインターネットビジネスの大きなメリットです。また他のビジネスと比べて、起業後の運転資金がほとんど必要ない点も大きな魅力です。自宅で仕事を進められるので、家事や育児の合間をぬってお金を稼ぎたい女性起業家の方にはオススメです。

インターネットビジネスと一口に言ってもその種類は多様です。もっとも一般的なのは、アフィリエイトと呼ばれるビジネスモデルです。これは、Webメディアサイトやブログ上で広告を貼り付けて、商品の売り上げ金額の一部を受け取ることができる事業形態です。十分な売り上げを得るまでに相応の時間と労力は必要ですが、上手くいけば数十万円以上の利益を得られる可能性もあります。

一方で確実かつすぐに利益が欲しい方には、クラウドソーシングのサービスを利用してライターを始めるのがオススメです。ライターとは、企業から要求された文章を執筆することで利益を得る事業モデルです。ある程度スキルがつけば、副業で月10万円以上稼げるようになります。

この他にも、せどりやアドセンス、ドロップシッピングなど、インターネットビジネスには多くのビジネスモデルがあります。自分の稼ぎたい額やビジネスに費やせる時間などを考慮し、最適なビジネスモデルを選ぶのがコツです。

 

1-5 各種教室の経営

初期費用を抑えつつ自宅でできる起業といえば、各種教室の経営も人気を集めています。得意だったり好きなことを、自宅で他の人に教えてお金を得るビジネスモデルです。趣味や好きなことを活かしてお金を稼げる点や、自宅で初期費用を抑えつつ始められる点で、女性起業家の方にはとてもおすすめの業種です。

たとえば料理が得意なら「料理教室」をやれば良いでしょう。とくに海外の料理や薬膳料理など、珍しい料理を教える教室は大きな需要を見込めます。また需要の大きさという観点で見ると、カメラ教室やパソコン教室もおすすめです。

他にも絵画や着付け、ヨガ、英会話など、自宅で教えられるスキルは数え切れないほど存在します。自宅教室の運営で起業したい方は、自身の得意なことや好きな趣味などを考慮した上で教えるスキルを決めると良いでしょう。

 

1-6 コンサルティング

ある程度専門性の高い資格を取得した上で、本格的に起業したいという女性起業家の方にはコンサルティングビジネスが人気です。

コンサルティングとは、自分の持つ専門的な知識を使って、顧客の抱える課題を解決できるような助言を行うことです。細部にまで気を遣える点や、相手の気持ちに寄り添って助言できる点など、コンサルティングでは女性の強みを存分に発揮することができます。ただし本格的にコンサルティング事業で起業するとなると、専門性を発揮するために取得が難しい資格を持っていたり、その分野での就労経験を持っていないと難しい側面もあるので注意が必要です。

コンサルティング事業で起業するのであれば、「ファイナンシャルプランニング技能士」や「社会保険労務士」、「行政書士」、「中小企業診断士」といった金融や経営、法律などの分野に関する資格を取得するのがおすすめです。これらの分野は一定のニーズがあるため、実力次第で大きな収益を期待できます。どの資格も難関なので取得は簡単ではありませんが、挑戦する価値は十分あるでしょう。

 

1-7 カフェ経営

「おしゃれ好き」や「個性的」、こうした特徴を持つ女性の起業家に人気なのがカフェ経営です。カフェを開店するには、店舗や設備の取得などに多額のお金がかかり、合計で1,000万円前後もの費用がかかります。起業する際の初期費用が大きい点は大きなデメリットとなりますが、国の公的機関から融資や補助金を受ければ、カフェを開店することは十分可能です。ただし公的機関から融資や補助金を受けるには、しっかりと事業計画書を作成する必要があるため、専門家に協力を得るのがベストでしょう。

起業する際の難易度は高いものの、自分の個性やセンスを活かし、好きなように内装を作った上でカフェを開店できる点は非常に魅力的です。多少大変でも良いから、自分らしいビジネスを行いたいと思う方はぜひチャレンジしてみてください。

 

1-8 小売店

女性起業家に人気の業種として次にご紹介するのが小売店の経営です。小売店というとあいまいですが、雑貨やアクセサリー、食器、日用品といったものを販売するビジネスです。

小売店の経営といっても、店舗の有無や商品の仕入れの有無によって必要となる費用や難易度は変わってきます。店舗を自分で構えた上で、かつ商品を仕入れるとなると、費用もかかる上に難易度も高くなります。成功するには店舗の立地や品揃え、店舗の内装など、細かい部分一つ一つに気を遣う必要があります。

一方で手軽に起業したいのであれば、店舗を構えずに、インターネット上で自分が手作りした雑貨や日用品を販売するのがおすすめです。店舗を持たないので初期費用や家賃がかからない上に、手作りなので在庫保管や仕入れにほとんど費用がかかりません。ただしインターネット上で収益を得るには、商品を魅力的に見せるための写真や文章が必要となるため、写真撮影やライティングのスキルをあらかじめ身につける必要があります。

 

1-9 Webデザイナー

場所を選ばずに働けるWebデザイナーも、女性の起業家に人気の業種の一つです。Webデザイナーとは、個人ブログや企業のホームページ、Webメディアといったインターネット上のサイトのデザインを作る仕事です。具体的にはクライアントの希望内容に沿って、Webサイトのレイアウトや配色、装飾を決定し、その決定した内容に基づいてコーディングと呼ばれる作業を行います。HTMLやCSSといったプログラミング言語を用いてコーディングを行うことで、事前に決定したデザイン通りのサイトを作り上げることができます。

Webデザイナーとして起業するには、HTMLやCSS、JavaScriptといったプログラミング言語を使いこなせるのはもちろん、PhotoshopやIllustratorといったツールの使い方も知っておく必要があります。また地道な作業が続くため、集中力や忍耐力が必要となる他、顧客とのコミュニケーション能力やデザイン力などのスキルも求められます。

多様なスキルが必要となるためWebデザイナーとして起業するのは簡単ではありませんが、場所を選べずに働ける上に、自分の感性を存分に発揮できる点で魅力的な業種です。

 

1-10 家事代行

最後にご紹介する女性起業家にオススメの業種は家事代行です。家事代行とは、文字通り掃除や洗濯、料理といった家事を依頼人の代わりに行う仕事です。

女性の社会進出が進むにつれて、共働きの夫婦が以前と比べて増加しています。夫と妻の片方が家にいれば家事を問題なくこなすことができるでしょうが、共働きの場合は家事と仕事を両立するのは難しくなります。ましてや子供がいるとなると、余計家事にまで手が回らなくなるでしょう。そこで近年は、洗濯や炊事といった家事を代行してくれるサービスの需要が高まっています。

掃除や洗濯といったオーソドックスな家事はもちろん、整理整頓や収納といった分野で活躍する女性の起業家も少なくありません。家事が好きだったり得意な方には、家事代行サービスでの起業はとてもオススメです。

2 会社設立の方法・手順

次に、会社設立の方法や手順についてお伝えします。一口に会社設立といっても、株式会社や合同会社といった営利法人と、非営利法人であるNPO法人とでは、設立の方法・手順は大きく異なります。

    この章では、株式会社・合同会社とNPO法人に分けて、会社設立の方法・手順をご説明します。法人をしっかり設立した上で起業したいと考えている女性の方はぜひ参考にしてください。

 

2-1 株式会社や合同会社の設立方法・手順

まず最初に、株式会社や合同会社の設立方法と手順をお伝えします。これらの会社を設立する際には、下記6つの手順で進められます。

⑴基本的な事項を決定する

まず最優先で行うべきは、会社の基本事項を決定することです。この段階では主に、「商号」、「事業目的」、「資本金額」、「本店所在地」、「事業年度」、「社員構成」を決定します。

商号とは会社の名前を意味します。会社の名前に関しては、「同じ住所に同じ商号が存在する場合には登記できない」といった一部の制限に注意すれば、基本的には自由に商号を決定できます。次に事業目的ですが、これは会社として行う事業内容です。事業目的に含まれていないビジネスを行うことはできないため、事業目的を決定する際には十分な注意が必要です。資本金の額については、基本的に1円からでも設立が可能となっていますが、信用度の観点から言うと100万円程度はあったほうが良いでしょう。

本店所在地は本店の住所、事業年度は決算月をそれぞれ決定することを意味します。そして社員構成については、役員や執行役員、代表社員といった社員を決定することがポイントになります。

⑵定款を作成する

会社の基本的な事項について決定したら、その内容に基づいて「定款」と呼ばれるものを作成しなくてはいけません。定款とは、企業が守るべき根本的なルールです。定款には「事業目的」や「商号」、「本店所在地」、「発起人の氏名または名称および住所」といった事項を必ず記載しなくてはいけません。これらの情報は「絶対的記載事項」と呼ばれ、これがないと定款全体が無効となります。

なお絶対的記載事項以外にも、会社の状況に応じて記載すべき内容が加わります。たとえば「株式の譲渡制限に関する定め」や「損益の分配割合」などの記載が必要となる場合もあります。

定款に記載すべき内容は、株式会社と合同会社の間でも若干異なりますし、各会社の状況次第でも変わってきます。法人を設立した上で起業したい女性の方は、かならず定款に記載すべき内容を事前に確認しておくのをオススメします。

⑶資本金(出資金)の払い込みを行う

定款を作成したら、次は設立登記の手続きに必要となる資本金の払い込みを実施します。資本金の払い込みとは、簡単にいうと事業運営で使用する資金を会社の中に入れておく手続きです。設立登記では資本金の払込証明書が必須なので、かならずこの手続きを行う必要があります。

一般的な資本金の払い込みでは、最初に経営者自身の口座に自分名義で資本金を振り込みます。次に、通帳の表紙と最初のページ、振込を行なったページのコピーをとります。次に資本金の総額や日付を書いた払込証明書を作成し、ページのコピーを綴り押印します。

上記の手続きで資本金の払い込み手続きは完了となります。実際に法人を設立した後に、法人名義の口座に資本金を移す手続きも忘れずに行いましょう。

⑷登記書類を作成する

会社設立の手続きで次に行うべきは「登記書類の作成」です。登記とは会社の法人格を有効にするために必須の手続きです。

株式会社と合同会社では必要となる書類は若干異なるものの、基本的には以下の書類を作成・準備する必要があります。

  • 登記申請書
  • 代表取締役及び取締役の就任承諾書
  • 代表取締役及び取締役の印鑑証明書
  • 監査役の就任承諾書及び本人を確認できる書類
  • 記載事項を別に記載した用紙もしくは記載事項を記録したCD-R
  • 発起人決議書
  • 発起人議事録

どの書類が必要かはケースバイケースなので、実際に会社を設立する際には税理士などの専門家にアドバイスをもらうのがベストです。なお登記申請書については、登記の理由や商号、本店所在地、資本金、申請人の詳細などを記載します。

⑸登記申請を行う

登記に必要な書類を作成・準備したら、いよいよ登記申請の手続きを実施します。基本的に登記申請は、法務局に対して資本金の払い込み日から二週間以内に行う必要があるので注意しましょう。法務局とは、登記や国籍に関する手続きを行う機関であり、全国42ヶ所に地方法務局があり、その出先機関として支局や出張所があります。登記手続きを行う際には、設立する法人の本店所在地を管轄している法務局やその出張所をあらかじめ調べておきましょう。

登記手続きを行う際には、二つの点に注意する必要があります。一つ目の注意点は、登記申請書を提出した日付が会社の設立日となる点です。何かしらの事情で会社設立の日付にこだわりがある場合は、登記を行う日付を調整しましょう。二つ目の注意点は、収入印紙というものが登記で必要となる点です。収入印紙は事前に郵便局で購入するか、法務局の販売所で購入することができます。

⑹設立後は忘れずに各種手続きを行う

以上の手続きまで完了すれば、株式会社や合同会社は無事設立されたことになります。しかしホッとするのもつかの間、会社設立後にもいくつか行うべき手続きがあるので忘れずに行いましょう。

具体的には、法人設立届や青色申告の承認申請書などを税務署に提出したり、年金事務所や労働基準監督署、ハローワークに社会保険に関する手続きを行う必要があります。また銀行からの融資を受ける際などに備えて、法人の印鑑証明書を交付してもらう必要もあります。なお印鑑証明書は法務局の窓口で受け取ることが可能です。

 

2-2 NPO法人の設立方法・手順

女性起業家の中には、社会貢献に資する事業を行いたい方もいるでしょう。そのような方には、NPO法人の設立がオススメです。営利法人である株式会社や合同会社と比べると、NPO法人の設立方法は多少異なります。この項では、NPO法人の設立方法を手順に沿って解説します。

⑴事業内容を明確にする

「NPO法人を設立しよう!」と思い立ったら、まずは事業内容を明確に決定しなくてはいけません。というのも、NPO法人として活動が許されるのは、法律で定められた20の業種に限定されているからです。何も考えずにNPO法人を設立しようとすると、事業内容が20の業種に当てはまらないことを理由に事業活動を行えない可能性があるので十分な注意が求められます。

なお活動が認められる20の業種には、「国際協力活動」や「保険、医療または福祉の増進活動」、「農山漁村または中山間地域の振興活動」などが含まれます。NPO法人を設立したい女性起業家の方は、20業種に該当する中から自分が行いたい事業モデルを考えましょう。

なお法人を設立した後に新しい事業を始めたり、事業内容をピボット(変更)するには、定款の記載内容を変更し、所轄庁に届け出る必要があります。こちらも株式会社や合同会社とは異なる点なので、起業する際には十分な注意を払わなくてはいけません。

⑵設立発起人会を開く

NPO法人を設立したい女性起業家の方が次に行うべきは、設立発起人会の開催です。設立発起人会とは、NPOを設立したい人たちが一同に介して行う会合であり、法人の設立趣旨や事業を行う目的、代表者、法人の名称などを決定します。

設立発起人会の開催自体は、法律や規則で必須となる手続きではありません。しかし法人設立の際に重要な事項を決定したり、メンバー間で認識をすり合わせる効果があるため、設立発起人会は極力開催すべきでしょう。

⑶設立総会を開く

次のステップは設立総会の開催です。設立総会とは、設立発起人会で決定した内容をベースに、NPO法人設立の最終的な決定を下す会合です。次の手順で行う「設立認証」の申請手続きで必要となるため、設立総会で決定した事項は必ず議事録として残しておく点がポイントとなります。

⑷設立認証の申請を所轄庁に対して実施する

NPO法人を設立する女性起業家が次に行うことは、設立認証の申請です。設立認証とは簡単に言うと、NPO法人の設立を公的機関に認めてもらうことであり、株式会社や合同会社の設立では行わない手続きです。

設立認証の申請は、所轄庁に対して行います。所轄庁とはNPO法人の認証や監督を行う行政機関であり、基本的には事業所が所在している都道府県や市区町村となります。設立認証の申請では、「設立認証申請書」や「事業計画書」などの書類が必要となるので、早いうちから準備しておきましょう。

なお設立認証の申請がとおるかどうか(設立が認められるかどうか)は、原則三ヶ月以内に通知されます。認証されたタイミングで、次の手順に進むことができます。

⑸会社設立の登記手続きを行う

設立認証の認証書が届いたら、届いてから二週間以内に設立登記を行う必要があります。なお設立登記を行う場所は、株式会社や合同会社と同様に法務局となります。

二週間という短い間に必要な書類を揃えるのはわりかし大変なので、設立登記に必要となる書類は審査期間の間に準備するのがベストです。

なおNPO法人の設立登記では、主に以下の書類が必要です。

  • NPO法人の登記申請書
  • NPO法人の印鑑
  • NPO法人の印鑑届出
  • 代表者個人の印鑑証明書
  • 定款
  • 宣誓書
  • 設立する時点の財産目録
  • 理事の就任承諾書

⑹法人設立後にも諸手続きが必要

設立登記が無事認められればNPO法人の設立手続きは完了となりますが、法人を設立した後もいくつかの手続きを行わなくてはいけません。

法人設立届出書を地方自治体の税金窓口に提出することや、有給の従業員を雇用する際には税務署や年金事務所、公共職業安定所にそれぞれ必要となる書類を提出します。

また、本来の非営利活動に加えて収益事業も行う場合には、税務署に対して収益事業開始届出書や法人設立届出書を税務署に提出しなくてはいけません。加えて、認定特定非営利活動法人として活動したい場合にも追加の手続きが必要となります。

3 会社設立にかかるお金

起業を志す女性の方にとって、会社を起業する際にどのくらいのお金が必要となるかはとても気になる部分だと思います。最初の方は事業を行っても十分な利益は得られないケースがほとんどなので、なるべく会社設立の費用は少く抑えたいものです。

この章では、会社設立にかかるお金を、先ほど同様に株式会社・合同会社と、NPO法人に分けてお伝えします。

 

3-1 株式会社・合同会社の設立に要するお金

株式会社と合同会社をひとまとめにしましたが、実際にはそれぞれ必要となる費用は異なります。

まず株式会社についてですが、法律上「定款の認証」と「設立登記」の手続きで費用が発生します。定款の認証では、収入印紙代6万円、公証人の手数料5万円、そして定款の藤本手数料に2,000円の費用が発生します。ただし電子定款を用いる場合には収入印紙代が不要となります。一方で設立登記では、原則15万円の費用がかかります。つまり株式会社の設立手続きでは、最低でも20万円から25万円もの費用がかかる計算となります。

次に合同会社の設立に関してですが、株式会社とは違い、「定款の認証」が不要になります。また、「設立登記」の手続きでは、原則6万円しか費用が発生しません。つまり合同会社の設立では、約10万円前後の費用しか発生しません。株式会社と比べて設立費用を10万円以上削減できる点は、合同会社の大きなメリットです。

 

3-2 NPO法人の設立に要するお金

NPO法人の設立では、一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか?

株式会社や合同会社では登記手続きの際に費用がかかりますが、NPO法人の場合には費用がかかりません。またNPO法人の設立では、定款認証の手続きでも費用は発生しません。そのため、自力で法人を設立するだけならば、限りなく費用を一切かけずに済むのです。

とはいえ法人として事業活動を行うにあたっては、実印作成や印鑑証明の取得、住民票の請求が必要となり、これらの手続きに合計で数千円から数万円もの費用が発生します。

以上のように、NPO法人の設立では株式会社や合同会社の設立と比べて大幅に費用を少なく済ませることができます。社会貢献に関連した事業を行いたい女性起業家の方にとって、この点は大きなメリットとなるでしょう。

4 女性起業のポイント

最後に、女性起業で意識すべきポイントを10個お伝えします。女性起業に限った話ではありませんが、起業が成功する可能性はとても低いと言われています。起業で失敗しない可能性を1%でも高めるためにも、女性起業家の方は今回ご紹介する10個のポイントを参考にしてください。

 

4-1 なぜ起業するのかを明確化する

女性起業でもっとも重視すべきポイントは、起業する理由の明確化です。先ほどお伝えしたように、起業が成功する可能性はあまり高くありません。そもそも起業家の大半は、大手企業でバリバリ働いていた人やめちゃくちゃ行動力がある人、とても頭が良くて創造性に長ける人など、猛者揃いです。そうした猛者ばかりにも関わらず多くの起業が失敗する背景の一つに、「結果が出るまで膨大な時間や労力がかかり、途中で挫折する人がでてくること」があります。

どれほど優秀な人であっても、起業してすぐに成功するケースはまれです。むしろ長い時間耐え抜いて、ようやく結果が出だすことが多いです。そのため、漠然とした理由で起業してしまうと、利益が出ないことに耐えきれず、挫折してしまうおそれが高いです。

長く続く苦難の時期を耐え抜くためにも、起業する理由はあらかじめ明確にしておく必要があります。また理由を明確化することで、経営計画もスムーズに策定できるようになるでしょう。

 

4-2 最初は小規模で起業する

何度もお伝えしているように起業の成功率は低いため、最初は小規模に起業するのがオススメです。

たしかに大々的にプロモーションを行ったり、人を多数雇って営業をかけるやり方は、起業家にとっては華々しく見えるものです。しかし最初に多額の資金を事業に投入してしまうと、失敗した時の損失も非常に大きくなります。事業の資金を借り入れで賄っていた場合は、起業家自身の手元に多額の借金が残るおそれもあります。どれほど優れたビジネスモデルであっても、最初から利益をたくさん得られるケースはあまりないため、最初から大きなスケールでビジネスを行うことは、ハイリスクローリターンな戦略であるといえます。

したがって、最初はとりあえず小規模な範囲で起業するのをおすすめします。自分自身で自社サイトに載せる記事を書いたり、自分でコツコツと営業したりして、徐々に軌道に乗ってきたら本格的に人を雇ったりマーケティングに費用を投入するのがベストです。

とくに自分でビジネスを行った経験がない女性起業家の方には、少しでもリスクを減らすためにも小規模なビジネスを始めるのをおすすめします。

 

4-3 経営戦略・計画は入念に考える

女性起業で意識すべき三つめのポイントは、入念に経営戦略や計画を策定することです。

少しでも起業で失敗することを避けるには、確固たる目標を持つことに加えて、緻密な経営戦略や計画が必須となります。あらかじめ入念に経営戦略や計画を立てないと、時間や経営資源を費やしても全然利益を得られなくなる恐れがあります。

経営戦略・計画を立てる際には、「自社の強み・弱み」と「自社を取り巻く経営環境」の双方を視野に入れる必要があります。自社内部の強みを活かせる事業であっても、その業種自体が縮小傾向にあっては十分な収益を得られません。逆に市場が急成長していても、その事業で活かせる自社の強みがなければ同様に利益を得られません。起業で成功するには、最低限自社の強みを活かせて、かつ自社にとって有利な外部環境が整っている必要があるのです。なお自社の強みと外部環境を踏まえた経営戦略の策定には、「SWOT分析」の活用がオススメです。

また経営戦略を策定する際には、「競争優位性」についても意識しなくてはいけません。競争優位性は主に「差別化戦略」、「コストリーダーシップ戦略」、「集中戦略」のいずれかにより確立できると言われています。こうした経営戦略のフレームワークについても、あらかじめ知っておくと便利です。

 

4-4 あらかじめ自己資金を多少確保しておく

女性起業で成功する上で意識すべき4つ目のポイントは、あらかじめ自己資金を確保しておくことです。

個人事業主として起業する際はもちろん、株式会社を設立する場合でも資本金1円から起業できるため、ほとんど自己資金は必要ありません。しかし起業した後には、事業に必要な設備やオフィスをそろえたり、宣伝広告や人を雇う際に資金が必要となります。そのため十分な資金を持っていないと、起業してすぐに事業が立ち行かなくなる可能性が高いです。

一見すると国の創業融資や銀行からの融資などを利用すれば、自己資金なんて必要ないと思われがちです。しかしこうした融資の制度を利用する際にも、ある程度の自己資金を持っていることが重視されるケースは多々あります。したがって、融資を受ける場合でも最低限の自己資金は持っておく必要があります。

自己資金を多少なりとも確保した上で事業を始めれば、事業を拡大する上で必要となる設備購入やマーケティングに資金を割くことができます。そのため、あまり自己資金を持っていない場合と比べて、より素早く事業を成長させることができるのです。

 

4-5 補助金や助成金制度を活用する

前項では自己資金の重要性をお伝えしましたが、多くの女性起業家は最初から十分な自己資金を持っていないケースが多いと思います。50万円〜100万円程度の自己資金は確保しておいた上で、それ以上必要となる部分については補助金や助成金の制度でまかなうのがオススメです。

補助金や助成金とは、返済不要かつ原則無利子で利用できる資金であり、国の公的機関や地方自治体が運営していることがほとんどです。返済不要であるため起業前後のタイミングではとても役に立つ資金調達の手段です。なお補助金と助成金の間には、支給条件にあります。補助金は受給の際に審査があり、審査に落ちると資金を受け取れない可能性があります。一方で助成金は条件さえ満たせば、原則100%受給することが可能です。

上記のように女性企業にとって魅力的な資金調達手段であるものの、助成金や補助金には「受給する難易度が高い」というデメリットがあります。多くの助成金・補助金には、事業内容や自己資金の額などに条件があり、その条件を全て満たすのが簡単ではありません。特に補助金は、難しい条件を満たした上で、何倍もの倍率の中で審査に通る必要があります。補助金は受け取れない可能性もあるため、自己資金や融資などの資金調達手段も併用するのがベストです。

 

4-6 ターゲティングを徹底する

女性起業に限らず、事業で十分な収益を得るにはターゲティングの徹底が不可欠です。ターゲティングとは、商品やサービスを提供する顧客を特定することです。

どれほど良い商品やサービスを作っても、顧客がその商品に興味を持ってくれなければ売れません。極端な例ですが、子供相手に老眼鏡を販売してもまったく売れませんよね。事業で成功するには、あらかじめどのような顧客に対して商品やサービスを販売するかを決定することが大事です。

ターゲティングは年齢や性別、年収、顧客のライフスタイルなどの基準で行われることが多いです。あらゆる基準を考慮してターゲティングを行いたい場合は、顧客の「ペルソナ」を作り上げるのがオススメです。ペルソナとは、「東京に住んでいる30歳の女性で、最近仕事が忙しくゆっくりしたいと考えている」と言った感じで、あたかも実在するかのような顧客像を作ることです。ペルソナを作ることで、より精度高くターゲティングを行えます。

 

4-7 PDCAサイクルを意識して事業を行う

女性起業で意識すべき7つ目のポイントは、PDCAサイクルの徹底です。起業家の陥りやすいワナの一つに、計画の策定ばかり重視して中々行動に写せないことがあります。計画ばかりで行動しなければ、当然ながら利益は得られません。また何回も同じことを繰り返して、全く進歩しないケースもあります。そうならないためにも、PDCAサイクルを徹底しましょう。

PDCAサイクルとは、「計画→行動→確認→修正」の順番でビジネスを進めることを指します。具体的には、あらかじめ策定した計画に基づいて行動し、行動結果を確認します。そして至らなかった部分を改善した計画を再度策定し、行動をふたたび始めます。このサイクルを繰り返すことで、着実に目標達成に向けて事業を進めることが可能です。

 

4-8 固定費用は極力少なくする

女性起業に限らず、ビジネスにおいて固定費用を極力少なくすることは鉄板です。固定費用とは、売上高や販売数に関係なく発生する費用であり、人件費や家賃などが該当します。固定費用は売上高に関係なく発生するため、仮に売上高が0円だとしても費用が発生し、赤字に陥る可能性もあります。

あまりにも固定費用が大きくなると、あまり売上を得られなかった際の損失も大きくなり、資金繰りを悪化させる恐れがあります。したがって、ビジネスを始める際には固定費用を極力少なくする必要があるのです。

具体的には、売上高が少ない時はオフィスや従業員の雇用にあまりお金をかけないようにするといった対策が考えられます。

 

4-9 SNSや交流会はほどほどに

女性起業で特に注意してもらいたいのが、SNSや交流会に無駄な労力を割くあまり、本業がおろそかになることです。

女性にとってインスタグラムなどのSNSでの情報発信はとても大事なことです。実際にツイッターなどでは、成功している姿を華麗に発信している女性起業家もおり、多くの人から人気を集めています。こうした姿を見ると自分もそうなりたいと憧れると思いますが、SNSはあくまで優先順位は低いです。SNSで自分を良く見せるために頑張るあまり、無駄な費用をかけてしまったり、事業に費やす時間が減ってしまうと、業績を伸ばすことが難しくなってきます。

また起業家同士の交流会なども同様で、たくさんの人と出会ってもビジネスに役に立つのは一部の人との交流のみです。こうしたSNSや交流会は、本業の支障となる恐れがあるので十分に注意しましょう。

 

4-10 当初は副業で始めるのも一つの手

今現在どこかの会社に就職しているのであれば、最初は副業として起業するのもオススメです。というのも、これまでお伝えしたように起業の成功可能性は低く、慣れていない限り失敗する可能性の方が高いからです。思い切って脱サラ起業したのは良いものの、失敗して何も残らなくなるリスクは小さくありません。

少しでもリスクを小さくするためにも、最初は副業として小規模に事業を始めるのがベストと言えます。事業が軌道に乗って会社員として働くのと同じくらいかそれ以上の収入を得られるようになった段階で、本格的に起業すればリスクを小さく抑えられるでしょう。

5 まとめ

今回の記事では、女性起業で人気の業種10選や女性起業のポイント、会社設立の方法や費用について解説しました。

内容が長くなったので、最後に今一度お伝えした内容を要約します。女性起業家に人気の職業には、美容サロンやインターネットビジネス、代行サービスなどがあります。どのビジネスも一長一短なので、ご自身の状況や好みなどに応じて起業する業種を選ぶと良いでしょう。

なお法人を設立するにあたっては、各種法人の設立手順や必要な費用をあらかじめ知っておきましょう。あまり設立費用をかけたくない方は合同会社、社会的な事業を行いたい方はNPO法人を設立するのが向いています。

女性の方が起業する際には、起業する理由の明確化やターゲットの選定、固定費用の削減などが大事なポイントになります。あらかじめ意識すべきポイントを押さえておけば、女性起業家として成功する可能性を高めることができるでしょう。