最近、非正規雇用者を中心として女性の失業率が急激に上昇しており、女性の就業環境の悪化が社会問題になっています。

この職の確保が困難な状況の中で女性の起業・会社設立は仕事を確保する上での有効な手段になります。新型コロナ禍によってもたらされるニューノーマルの時代では女性だからこそ新たなニーズに気づき成長させられるビジネスもあるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、新型コロナ禍における女性の起業の仕方やタイプ、ビジネスの可能性や事例などのほか、その成功のポイントや注意点について詳しく解説していきます。起業・会社設立して事業を始めてみたかった女性の方、コロナ禍での副業・起業の状況やビジネスのヒントを知りたかった方などは是非参考にしてください。

1 新型コロナ禍での女性の就業環境

新型コロナ禍での女性の就業環境

男女を問わず失業が心配される今日の就業環境を確認していきましょう。

1-1 現在の経済状況

現在の新型コロナ禍における経済状況を景気動向から確認し、現状や今後の就労環境を考察します。

株式会社帝国データバンク(TBD)の「TDB景気動向調査(全国)2020年10月調査」によると、「国内景気は低水準ながら緩やかに持ち直し~今後の感染状況により下振れリスクも依然大きく~」と分析されています。

今年の前半に悪化した国内景気もGo Toキャンペーンなどの刺激策もあり回復の兆しがはっきりと見えてきましたが、上記の調査結果では以下のような点が報告されました。

  • ・2020年10月の景気DI(景気指数)は5カ月連続で前月比プラス(2.2ポイント)の33.8
  • ・国内景気は生産・出荷や個人消費が上向き、低水準だが緩やかに回復
  • ・10業界中『その他』を除く9業界、51業種中46業種でプラス
  • ・『製造』では自動車関連を中心に持ち直しが継続。『サービス』は「旅館・ホテル」が大幅なプラス
  • ・『北関東』『近畿』『九州』など全10地域、42都道府県がプラス
  • ・堅調な公共工事による地域経済の下支えと、地域間移動の増加により地方圏を中心した観光関連が上向く
  • ・「大企業」「中小企業」「小規模企業」の各々が5カ月連続でプラス
  • また、今後の見通しについては以下のようにまとめられています。
  • ・緩やかな上向きが期待される
  • ・今後約1年では国内景気は、新型コロナウイルスへの対策とともに、ニューノーマル(新しい生活様式)に対応した需要の創出が見込まれる
  • ・レジャー関連や海外からの訪日客の受け入れ再開等で個人消費の回復が期待される
  • ・挽回生産や自国生産の拡大による設備投資や輸出増加などもプラス要因
  • ・今後の感染状況により消費者マインドの後退や雇用面や収入面の状況悪化、政府による活動自粛の再要請などの可能性もあり、景気の下振れリスクは小さくない
  • ・米大統領選の行方や海外の感染拡大による回復の遅れなどのリスク要因に注意が必要
  • ・今後の景気は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動再開の均衡政策により緩やかに上昇すると予測

新型コロナにより大幅に落ち込んだ経済活動ですが、10月現在ではその落ち込みからの緩やかな回復が持続しています。今後は新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動再開のバランスのとられた政策により緩やかな上昇が期待できそうです。

しかし、いまだ景気DIは33.8と50を大きく下回っています。さらに海外の感染拡大に歯止めがかからず国内においても感染者の増加顕著になっており就業環境に悪影響を及ぼしかねません。

また、11月11日現在、米大統領選の勝者が正式には未確定であり結果によっては日本経済に大きな影響を与える恐れがあります。そのため就業環境は改善が期待されるものの悪化へと後退する可能性も十分あるということを認識しておくべきでしょう。

1-2 倒産状況

株式会社東京商工リサーチによると、2020年10月の全国企業倒産は624件で「新型コロナ」関連の倒産は104件と発表されています。概要は以下の通りです。

  • ・2020年10月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が624件(前年同月比20.0%減)、負債総額は783億4,200万円(同11.5%減)
  • ・件数は7月以降、4カ月連続で前年同月を下回る(新型コロナ感染拡大に伴う政府・自治体、金融機関の資金繰り支援策の効果)
  • ・10月度では1971年以降の50年間で、1989年(589件)に次ぐ、2番目の低水準
  • ・負債総額は3カ月連続で前年同月を下回り、10月度としては1971年以降の50年間で1973年(739億700万円)に次ぐ4番目の低水準
  • ・負債100億円以上の大型倒産が1件(前年同月ゼロ)発生
    同10億円以上50億円未満が11件(同16件)
    同5億円以上10億円未満が21件(同22件)
    1億円以上5億円未満が90件(同139件)と、いずれも減少
  • ・負債の小口化が目立つ。負債1億円未満は501件(前年同月603件、構成比80.2%)と、2カ月連続で80%台)
  • ・「新型コロナウイルス」関連倒産は10月が104件。2月以降の累計は603件で、新型コロナ関連倒産が初めて発生した2月以降で月間100件超えは初めて
  • ・10月の産業別では、10産業のうち9産業が前年同月を下回る
  • 新型コロナ禍でインバウンドの消失、外出自粛などの影響が大きい飲食業、宿泊業を含むサービス業他が228件(前年同月比4.6%減)で最多だったが、2カ月連続で前年同月を下回る

以上のように倒産件数は多くの産業で減少傾向にあり10月の月間では過去最低水準になるどの改善が見られていますが、新型コロナ関連倒産(負債額1千万円以上)は増加の傾向が見られました。

また、新型コロナ関連倒産(負債額1千万円以上)の状況について東京商工リサーチ社は以下のように報じています。

  • ・月別では103件発生した6月以来、7月は80件、8月は67件と前月を下回ってきたが9月は100件と3カ月ぶりに前月を上回り、10月は105件で単月での最多件数を更新
  • ・11月は10日までで28件が判明、月間100件ペースと引き続き高い水準で推移
  • ・集計対象外だが、負債1,000万円未満の小規模倒産は累計35件判明。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計709件となった

感染の縮小や政府や自治体による資金繰り支援により景気の持ち直しと倒産件数の減少がここ数カ月で見られてきましたが、最近では感染者数の再拡大が起こり始め経営環境はまた悪化し始めています。

政府等の資金繰り支援にも限度があるため、体力の乏しい小規模事業者などの倒産の増加が危惧されています。

1-3 女性の就業状況

新型コロナ禍により厳しい経済状況の中、女性の就業状況がどのようになっているかを総務省の「労働力調査」をもとに確認していきましょう。

①男女別就業者数(2020年9月)

  • ・就業者数は6689万人で、前年同月に比べ79万人(1.2%)の減少であり6カ月連続の減少となった
  • ・男性は3710万人で30万人の減少。女性は2979万人で49万人の減少

7月から9月までの男女別の減少数は下表の通りで、女性の方が大きく上回っています。

7月 8月 9月
男性 -24万人 -27万人 -30万人
女性 -54万人 -48万人 -49万人

雇用形態別雇用者数の状況は以下の通りです。

・正規の職員・従業員数は3529万人で、前年同月に比べ48万人(1.4%)の増加(4カ月連続の増加)
⇒対前年度比 男性:16万人増加、女性:33万人増加

・非正規の職員・従業員数は2079万人で、前年同月に比べ123万人(5.6%)の減少(7カ月連続の減少)
⇒対前年度 男性:50万人減少、女性:73万人減少

②就業率

・9月の就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合)は60.3%で前年同月に比べ0.7ポイントの低下

・15~64歳の就業率は77.2%で、前年同月に比0.7ポイントの低下
上記のうち9月の男性就業率は83.6%、女性が70.5%。7月から9月までの男女別の減少数(ポイント)は下表の通りで、女性の方が大きく上回っています。

対前年度対比の就業率(%) 7月 8月 9月
男性 -0.7 -0.5 -0.5
女性 -1.4 -0.9 -1.1

労働人口における就業率は女性の方がもともと小さく、現状では男性に比べ10%以上少ない割合です。その中コロナ禍における就業率は女性の方が男性に比べ倍ほど悪い状況になっています。

③完全失業者と完全失業率

  • ・完全失業者数は210万人で、前年同月に比べ42万人(25.0%)増加(8カ月連続の増加)
  • ・男性は125万人で、前年同月に比べ25万人の増加。女性は85万人で、前年同月に比べ17万人増加
  • ・完全失業者の増加における5月~9月での推移をみると、男性は約25万人程度、女性は5月から急激に増えだし8月には約20万人、9月は17万人の増加
  • ・完全失業率(季節調整値)は3.0%で、前月と同率
    男女別の推移は下表のとおりです(労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)9月分結果「完全失業率(季節調整値)等の長期時系列データ)」より)
男性 女性
4月 2.9 2.3
5月 3.2 2.5
6月 3.1 2.5
7月 3.0 2.7
8月 3.0 2.9
9月 3.2 2.7

男性は3%前後と安定していますが、女性の方は4月から8月まで増加傾向が確認できます。

完全失業率の点では男性の方が就業数の多さもあり女性を上回っています。4月からの傾向では8月まで女性の失業率の悪化が大きかったです。つまり、女性の方が新型コロナ禍の影響により率的に多くの失業者を出したと言えます。

1-4 就業環境のまとめ

1-1から3までをまとめると以下のようになります。

・景気動向
景気は回復しつつあるが緩やかであり感染の拡大や世界情勢により悪化のリスクが危惧され就業環境が今以上に悪化しかねない

・倒産
倒産の状況は全体としては減少傾向が見られるものの新型コロナ関連倒産は増加傾向にある。特に小規模事業者の倒産の増加が心配される

・就業者数と就業率
男性の場合就業者数が多く就業率が高い状況であるが、女性の就業環境は男性に比べより厳しい状況にある

9月の雇用形態別雇用者でみると男女とも正規雇用者は増加しているが、非正規雇用は大幅な減少となっている

・完全失業者と完全失業率
4月からの完全失業率の増加においては女性の増加が激しい

以上の内容を総合的に評価すると女性の就業環境としては以下のような点が指摘されます。

●全般的に景気の回復が期待でき就職や起業のチャンスが増大する可能性がある

●他方、コロナや世界情勢の成行で景気が悪化するリスクもあり、その場合は就職や起業のチャンスが減少する可能性も低くない

●新型コロナ関連倒産は増加傾向にあり、小規模事業者の倒産増加が危惧される

●上記のリスクが現出した場合、女性の非正規雇用者を中心に失業者のさらなる増大が懸念される

以上の通り現在の就業環境は男女問わず厳しい状況ですが、特に女性にとってはより過酷になる恐れもあり、解雇の増大の可能性も低くありません。従って、「コロナもそろそろ収まり景気も良くなって求人も増える」などとのんびり構えていられない状況です。

こうした中では職を確保するためには、再就職・転職に備えた準備(スキルアップや資格の取得等)や副業・起業の検討なども必要になってくるのではないでしょうか。

2 女性の副業や起業に関する状況

女性の副業や起業に関する状況

ここでは副業・フリーランス・会社設立による独立・起業について説明しましょう。

2-1 就職・転職以外の職業の確保

就職・転職以外に職を得る方法として、「副業起業」「フリーランス起業」「副業・フリーランス以外の起業」が挙げられます。

●副業
2019年度版小規模企業白書の第2-2-8図は副業者数の推移を示した資料です。これによると、全有業者のうち、主な仕事以外に副業をしている就業者数が2002年以降増加傾向となっており、2012年から2017年にかけて21.6%ポイントも増加しています。なお、2017年の副業者数は全有業者数の3.5%です。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-8図

第2-2-9図は、副業希望者数と副業起業希望者数の推移が示されています。この図によると、副業希望者数は右肩上がりで増加しており、副業起業希望者も全体的に2002年以降増加傾向です。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-9図

このように副業をする人が増加しており、副業起業したいと思っている人も大幅に増えています。

●フリーランス
また、近年においては「フリーランス」という形態での起業も注目を浴びています。小規模企業白書によるとフリーランスとは「特定の組織に属さず、自らの持つ技術や技能、スキルを拠り所に個人で活動する」者のことです。

この白書ではリクルートワークス研究所が実施した「全国就業実態パネル調査2」を用いて、フリーランスの人口規模やその実態が以下のような内容で説明されています。

下図の第2-2-12図はリクルートワークス研究所の定義又は算出方法に従って示されたフリーランスの人口規模に関する資料です。本業及び副業としてフリーランスで活動している者(以下、各々「本業フリーランス」、「副業フリーランス」で表現)は推計約440万人で、2017年12月時点の就業者数全体に占める割合は約7%と示されています。

企業に普通に勤務している人などフリーランスとして働いていない人にとってはこの存在は縁遠い感じがするかもしれないですが、就業者数全体に占める割合が約7%だと聞くと以外と多く感じる方もいらっしゃるでしょう。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-12図

●起業
同白書の第2-2-22図*では事業を開始してから10年以内の経営者を「起業家」とし、その起業家について「フリーランス起業家」、「副業起業家」、「フリーランス・副業以外の起業家」の三つで類型化されています。

つまり、起業には、副業での起業、フリーランスでの起業、両者以外の会社設立などでの起業があるわけです。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-22図

第2-2-23図は起業や事業承継をする可能性のある者、既に起業した者などを対象者として調査された結果です。この図では「起業家」の割合が示されており、「起業家」は全体の約3%で女性起業家が男性の1/3程度となっています。

調査対象者の中で起業家を分類別でみると、全体では「フリーランス起業家」と「フリーランス・副業以外の起業家」の割合がほぼ同等で、「副業起業家」は全体の1割弱と少ない状況です。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-23図

ただし、女性の場合、男性に比べ起業家の割合が少なく、フリーランス起業家や副業起業家が多いという特徴が見られます。従って、女性には副業やフリーランスという形態からの起業の方が取り組みやすいと考えられます。

2-2 起業の満足度

副業起業、フリーランス起業とフリーランス・副業以外の起業などを行った場合の本人の満足度を確認してみましょう。

①収入面

第2-2-28図は、現在の収入に関する起業家の満足度の推移を示した資料です。フリーランス起業家は、起業前と比較して収入には「満足」、「やや満足」と回答する起業家の割合は減少し、副業起業家は「どちらともいえない」と回答する起業家の割合が増加しています。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-28図

副業起業の場合本業を持ちながらの事業であれば、本業の収入があるため副業の収入が少なくてもあまり不満を感じることは少ないでしょう。一方、その副業起業以外は自身の事業収入のみとなるため、その収入が企業に勤務していたころより少ない場合は不満を感じる可能性は高くなるはずです。

つまり、副業起業以外の場合、直ぐに満足できる収入を確保するのは簡単でないことが窺えます。しかし、新型コロナの影響により会社員としての職を失う可能性もあるため起業で職を確保して一定の収入を得るという選択は悪くないはずです。

②仕事の自由度・裁量

次の第2-2-29図は、仕事の自由度・裁量に関する起業家の満足度の推移を示しています。どの類型も起業前と比較して、「満足」及び「やや満足」と回答する起業家の割合が増加していて、とりわけフリーランス起業家の満足度の変化が著しいです。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-29図

つまり、起業により自分のしたい仕事ができる、好きなやり方で業務が遂行できる といった満足感を多くの起業家が認識しており、起業により仕事にやりがいをより感じていると推察されます。

2-3 起業に必要な仕事での経験期間

起業を行うにあたり、その事業を進めていくための知識・スキル等を身につける必要もありますが、その習得期間の目安となる情報が第2-2-31図に示されています。

本図は、「現在営む事業に関する仕事と同種の経験を、起業前にどの程度の期間経験したかを示した」資料です。副業起業家は、男女ともに、その他の起業家と比べて3年未満の割合が高い、10年以上の割合が低い、平均年数を比べても現在営む事業に関する経験年数が相対的に短い、という点が特徴になっています。

つまり、副業の場合、比較的短期間で起業することが可能と言えるはずです。特に女性の場合は平均4.5年と男性よりも3.4年も早く短い業務経験で起業に結び付けていると言えるでしょう。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-31図

2-4 起業時の開業費用

起業には相当の開業費用がかかると思っている人も多いかもしれないですが、副業起業の場合はかなり低く抑えることも可能です。

第2-2-32図は、起業家の類型別に見た開業費用を示しています。フリーランス起業家及び副業起業家は、その他の起業家に比べ開業費用が低いです。とりわけ女性のフリーランス起業家及び副業起業家は、10万円未満の低コストで開業しているケースが相対的に多くなっています。

各類型について男女で比較した場合、女性の方が男性よりも開業費用が低い傾向が確認できるはずです。つまり、女性の方が低い開業費で起業する傾向があり、その才能や実行力があると言えます。

もちろん将来の事業を急速に大きくしていくには多額の元手も必要となりますが、第一に仕事を確保することを優先にするなら副業等で開業費を抑えた迅速な起業は有効です。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-32図

3 女性が起業して事業を軌道に乗せるまでの過程

女性が起業して事業を軌道に乗せるまでの過程

ここでは女性が起業し会社設立などして事業を成長させていくための方法を説明します。

3-1 起業における業種の検討

実際、副業を含め起業する場合、どの業種で行うかが最初の問題となりますが、ここではその点について確認していきましょう。

①2019年中小企業白書から

下図の第2-2-29図は「起業準備者・起業希望者が起業を検討している業種」について示した資料です。本図によると、起業を検討している業種として「サービス業」が多く挙げられています。

その中では仕事に関連した専門技術分野、飲食や生活関連の分野が多いです。また、他の業種では小売業が多いことからサービス業を含め比較的暮らしに関わる身近な業種が選ばれる傾向が確認できます。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-29図

株式会社マイナビが運営する「マイナビ独立」サイトでは「2019年版 独立・開業に対する意識調査」が公表されており、「独立・開業に興味がある人が選ぶ業種」のデータが示されています。

その内容によると、全体では1位が「飲食」(26.1%)、2位が「IT・通信・情報・携帯電話」(17.6%)、3位が「理美容・整体・エステ・リラクゼーション」(15.8%)という順位です。なお、女性に限れば以下のような順位になっています。

1位:「飲食」(29.4%)
2位:「理美容・整体・エステ・リラクゼーション」(23.4%)
3位:「塾・スクール」(14.0%)
4位:「IT・通信・情報・携帯電話」(10.6%)
5位:「コンビニ・小売」(10.4%)

ほかには「買取・リユース」「修理(リペア)・クリーニング」「介護関係」などです。これらの業種が選ばれる理由としては、全体的に業種で「経験や能力が活かせそうだから」と「好きな事や物に関われそうだから」という理由が上位に挙げられています。

女性の方でどの業種で副業・起業をはじめようかと悩んでいるなら、生活に関連した身近に感じられるもので「経験や能力が活かせる」や「好きな事や物に関わる」ものから考えてみてはどうでしょうか。

3-2 起業の動機づけ

副業・起業を始めたいと思っていてもなかなか決心がつきにくいですが、以下のような要因が起業の動機づけになることもあります。

2019年度版中小企業白書の第2-2-32図は、「起業準備者及び起業希望者が経営者になることを意識する前に経験し、起業の動機付けになったもの」をまとめた資料です。

本図によると、「本・テレビ・インターネットなどからの起業家に関する情報」、「正社員としての勤務経験」、「アルバイト・パート経験」が起業のきっかけになっていることが確認できます。

就業経験の中で、何かしら起業に関心を持つきっかけがあった者が多く、女性の場合はパートなどでの経験も起業のきっかけになる可能性が低くありません。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-32図

また、第2-2-33図は、「起業準備者及び起業希望者にとって起業の動機付けとなった経験」について、事業の成長志向が異なる起業家のタイプ別にまとめた資料です。

本図によると、「経営に関する授業・セミナー」、「ビジネスプランの作成」、「起業家などによる講演会や交流会への参加」、「企業・商店における職場体験・インターンシップ」と回答した者の割合は、成長意向が高いほど多くなっています。

起業して会社設立し事業を大きくさせたいなどと考えている女性は経営・ビジネスに関する勉強会や職場体験などに参加するケースが多いです。そうした体験により起業やビジネスに対する不安を払拭し起業の決意を促すことが期待できます。

2019年度版小規模企業白書の第2-2-33図

3-3 女性の起業する上での課題

起業は行いたいものの、何らかの理由で実行に移れないという女性の方も少なくないはずです。そんな方が抱える起業の課題を「平成27年度 産業経済研究委託事業(女性起業家等実態調査) 報告書」から確認しましょう。

同報告書のP16~17に「開業前に心配だったこと」などに関する調査結果が示されています。

・開業前の心配だった点の特徴:
「家事や育児、介護等の両立」と回答した人の割合が、男性より女性の方が7.5pt高い

なお、女性の開業時の心配事を全体的にみると、「資金繰り、資金調達」が最多で、次に「顧客、販路の開拓」、「財務・税務・法務に関する知識の不足」と続きそのほかは仕入先・人材の確保などで「家事や育児、介護等の両立」は7番目です。

また、同報告書のP43には「女性起業家特有の課題」として、「家事・育児・介護との両立」「経営に関する知識・ノウハウ不足」が挙げられています。

1位:「家事・育児・介護との両立」
2位:「経営に関する知識・ノウハウ不足」
3位:「ロールモデルの不足」
4位:「開業資金の調達」
5位:「事業に必要な専門知識・ノウハウ不足」
6位:「販売先の確保」

一般的に起業時の課題として、お金・取引先・人材・経営等の知識の確保がよく挙げられますが、女性においても同じ傾向が見られるほかに「家事や育児、介護等の両立」という特有の課題が見受けられます。また、男性や女性を問わず起業に対する家族の理解と協力がその実現に重要になるでしょう。

3-4 起業の課題を乗り越え事業を進めるための方法

起業を実現するためには先に見た課題などを解決していかねばなりません。ここではその解決方法を説明します。

①「家事・育児・介護との両立」の実現

家族の理解と協力を得ることが不可欠です。独身の女性が起業する場合、資金面で両親や兄弟からの援助が必要となることもあるため、家族に起業の内容を説明し協力が得られるようにしておくことが重要です。

また、既婚済みの女性の場合は、「家事・育児」といった問題もあるため夫の協力が欠かせません。副業であってもフリーランスであっても家庭での時間が仕事に奪われる可能性も高いことから子供への影響に配慮する必要があります。

たとえば、家事・育児を夫に協力してもらうにしても子供の面倒を見る時間が少なくなり、子供から不満が生じることもあるはずです。また、夫の負担が大きくなれば夫からも不満が生じ家庭不和が大きくなる恐れがあります。

こうした不和が大きくなり過ぎないように家庭生活への影響を一定範囲に抑えるためのコントロールが必要です。家族と話し合い仕事に従事する時間を決めできる限り守る、仕事の合間に家族とのコミュニケーションを十分にとる、定期的な休日を決め家族と楽しむ といった取り組みが求められます。

こうした取り組みの実現のためには起業時においてはハードな業務量は避け、余裕をもって事業を少しずつ進めて行くアプローチも必要です。

②経営等に関する相談や知識の習得

起業家は起業前や会社設立前に事業に必要な専門知識やスキル等に加え、財務・税務・法務・組織運営等の経営の知識を習得しておかねばなりません。

副業やフリーランスの起業の場合、会社設立よりは経営に関する知識はそれほど多くは必要ないですが、将来事業を拡大することもあるため徐々にでも習得していくことが重要です。

しかし、何をどのように学習していくか自分で判断し進めるのは効率的ではありません。そのため起業や経営などについて相談できる相手を探し、情報を得るのが有効です。

起業や経営などを相談できる先としては、身近にいる会社経営者、知り合いの税理士等や役所の経営相談所(係り)などのほか、公的支援機関などもあります。

代表的な機関としては、経済産業省傘下の(独)中小企業基盤整備機構及び都道府県等中小企業支援センターや中小企業・ベンチャー総合支援センターなどがあり、商工会議所や商工会なども含まれます。

こうした機関では、創業に関わる相談から開業後の経営に関する相談や支援を行っているため、気軽に活用するべきです。経営に関する知識の学習についてもこうした機関で創業塾のほか経営セミナー・研修会などが開催されており、学習機会が多く提供されています。

ほかにも各自治体の経営支援部署や民間企業によるセミナーなども少なくありません。

例:
「TOKYO起業塾」((公財)東京都中小企業振興公社)
「大商開業スクール」(大阪商工会議所)
「女性のためのプチ起業はじめ方オンラインセミナーin川口(創業・ベンチャー支援センター埼玉)
「女性・若者向け創業相談ウィーク(2020年度は終了)」(日本政策金融公庫)

③資金調達

起業のタイプや事業の内容により開業資金の金額が異なりますが、個人事業や会社設立などの場合はまとまった資金が必要となることも多いため、起業時期に合わせた計画的な準備が不可欠です。

資金調達の手段としては、

  • ・自己資金(貯金や退職金等)
  • ・家族や親近者からの借入
  • ・銀行等の金融機関からの借入
  • ・政府系金融機関からの借入(公的融資)
  • ・行政の補助金・助成金
  • ・ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
  • ・クラウドファンディング(出資・融資)

などになります。自己資金を除き、こうした調達手段を実際に利用できるかどうかは起業家本人の状況、調達額、起業規模や事業内容などによって異なるため、すべてが利用できるわけではありません。

新規性がない平凡な事業、起業家の知識・スキル・経験等が事業のベースとなっていない事業、計画性が低い事業などによる起業では、上記の調達手段のうち利用できるものは少なくなります。

逆に起業家の知識等を活かした事業で新規性・独自性・社会貢献性などが高く、具体的かつ計画的な事業活動が描かれている起業の場合、多くの調達手段を利用できる可能性が高いです。

なお、別に多くの調達手段を利用する必要はなく、あくまで目的の事業を始めるのに必要な開業資金(数カ月の運転資金を含む)を確保できれば問題はありません。多く利用できるからといって不要なお金を借りて余計な財政負担を背負ったり、経営が圧迫(経営への関与)されたりしないように注意するべきです。

どの調達先をどのように利用するかなどについても公的支援機関等に相談して計画的に活用できるよう早めに準備しましょう。

④取引先の確保

ここでの取引先とは、商品や材料・部品等を供給してくれる仕入先や、自社で生産する商品・サービス等を提供する販売先のことで、起業時には一定の取引先を確保することが重要です。

一般的に多くの起業家は独立前の会社員時代などにおいて一定の取引先を確保しています。会社での業務を通じて取引先との人脈を広げ、担当者や経営者との信頼関係を構築して起業を応援してもらうケースも少なくないです。

或いは個人におけるSNSなどインターネット上での交流を通じて取引先を増やすといった取り組みも多く見られます。起業前に必要な商品や材料・部品等を仕入れる・販売する相手を求め確保することは重要です。

そして、起業の直前・直後、事業の本格的な開始からは提供する商品・サービス等について大々的にPRしましょう。なお、こうした取り組みも資金調達と同様に計画的に実行することが重要であるため、相談先のチェックを受けながら実現のための事業計画を作成して進めるべきです。

なお、取引先の確保においても公的支援機関などを活用しましょう。商工会議所等のほか銀行等の民間金融機関でも取引先を紹介するマッチングサービスを提供しているところも少なくありません。

相談会、個別の取引先紹介・情報提供、ネットでのマッチングシステム、商品展示会など取引先を広げる手段が少なからず用意されているため、確認の上利用しましょう。

⑤人材の確保

副業やフリーランスによる起業の場合、従業員の確保をあまり気にする必要はないですが、会社設立する場合などでは従業員の確保は不可欠です。しかし、小規模な新設会社が従業員を採用するのは簡単ではなく、適切な準備が必要になります。

認知度の低い新設会社が従業員を確保するためには、早めに求人広告を出す以外に様々な工夫が必要です。条件面では給与・労働時間などを世間並み以上とする、自社の事業や将来性などで共感を呼べる採用活動にする、といった取り組みが求められます。

「どのような方法が求職者の心に響くか」についてよく知っている求人のプロや人材確保を支援するコンサルティング会社などを利用する必要もあります。もちろん起業前の会社員時代やSNS等での交流を通じて従業員候補を探し依頼するといった取り組みも検討してみるべきです。

4 女性の起業・会社設立の事例と対象事業の候補

女性の起業・会社設立の事例と対象事業の候補

女性がどのように起業・会社設立していくかの参考となるような事例を紹介するとともに、新型コロナ禍の厳しい状況で成功しやすい事業の候補を説明します。

4-1 女性の起業の事例

女性がどのような起業を行っているか を事例で紹介します。

①銀座セカンドライフ株式会社

*2014年中小企業白書 事例3-2-1より
*同社HPより照

●事業概要:
起業家への「起業及び起業後の法律・会計を中心とした支援」

●住所:
東京都中央区銀座7丁目

●店・会社の特徴:
起業を志すシニアを総合的に支援するサービスを提供する企業」と位置付けた事業活動

●起業の動機と事業内容
・社長の片桐実央氏は、祖母の介護でセカンドライフの重要性を認識し、他者のセカンドライフを充実させるための手伝いをしたいと思い創業を決意

・近年、定年退職後に働き続けたいと考えるシニアや起業を選択肢に入れるシニアが増加している。しかし、どんなビジネスをどのように始めるべきか という具体的な計画を有する人が少ないため、そうしたニーズをもつシニアに、セミナー・個別相談、コンサルティングなどにより起業の仕方を伝授する事業を思い付き始める

・同社は、起業について相談したり、ビジネスための人脈を作ったりできる「銀座アントレ交流会」という起業家等が集まる交流会を主催

・また、同社は、支援する起業家達が入居し、周囲のシニア起業家との交流を深められるレンタルオフィスの「アントレサロン」を運営し、彼らのビジネスの拡大を支援

⇒以上のように同社は起業家に対して「起業を漠然と考える」段階から「実際にビジネスを行う」段階まで一気通貫による支援を提供しシニア世代の起業をサポートしています。

●起業の成功ポイント
・ビジネスモデルが明確である
⇒シニア世代を対象として、そのセカンドライフの1つの選択肢としての「起業」というニーズに対して、その実現の仕方やサポートを提供するというモデルを描き、具体的なサービスを用意し提供しています。

・知識や経験などが役立っている
⇒片桐実央社長は法学部の出身で行政書士の資格も有しており、独立前は上場企業の法務・コンプライアンス部門法務部、証券会社の引受審査部に所属しており、これらの知識や経験が起業家サポート業に役立っているはずです。

②TANTOGUSTO(タントグスト)

*2014年中小企業白書 事例3-2-5より
*同社HPより

●事業概要:
純日本製の洗えるクマのぬいぐるみの製作販売

●住所:
神奈川県横浜市港南区下永谷

●店・会社の特徴:
洗えて清潔で安全・安心な世界で1つだけのぬいぐるみを提供するインターネット通販のお店

世界でたった一つ、自分だけのタントくん(ぬいぐるみ)を出産祝いや誕生日のお祝いのプレゼント用などとして販売

●起業の動機と事業内容
・同社代表の佐久間理江子氏は以前洋裁の講師をしていたが出産を機に退職し、その後エプロン縫製の仕事に従事するもその報酬の低さから仕事を自分で作り出したいと考え始めた

・佐久間氏の子供が喘息で、ぬいぐるみのハウスダストが気になっていたことからタオルでクマのぬいぐるみを作り、それが事業のアイデアとなった

・起業意識の芽生えから「女性起業家たまご塾」に参加して漠然としたアイデアから、講義を通じて洋裁の技術を活かした「くまのぬいぐるみの製造・販売」を具体化した(事業計画化)

・初期費用と事業リスクを抑えるために店舗を保有せず、インターネット通販とする

・起業の効果として佐久間代表は、「家事と仕事を両立でき、自己実現にもつながる起業を選択したことに満足している」

●起業の成功ポイント
・自分で仕事を作りたいという気持ちの強さ
⇒起業したいと漠然と思っていてもなかなか実行に移すのは難しいです。そこを実際に進めるには起業に対して強い気持ちを持つことが重要になります。「起業してみたい」ではなく「自分は起業するべきだ」というような強い思いが行動に繋がるでしょう。

・自分の強みをニーズに活かす
⇒事業化とはニーズを充足するための商品・サービスを提供することであり、起業家がそれを実行するためには自分の強み(知識・スキル・経験等)をそのニーズの充足に活用することが重要です。

・起業のわからないことは創業塾等を活用
アイデアを具体化する、事業化する、などのためには起業や経営の知識が必要になります。そのため起業希望者は創業塾などを活用してそれらを習得するべきです。創業塾などでは参加者同士の交流もあり、悩みの解決や人脈の拡大などにも役立ちます。

・経営資源やリスクを考慮した起業の実行
起業においては身の丈に合った事業展開が成功確率を高めます。特に必要でなければ、いきなり会社設立せず個人事業でスタートするのも無難で悪くありません。また、同社のように店舗を持たずにインターネット通販した方が事業に向いているケースも多く、経営リスクの低い事業運営ができます。

③mizuiro株式会社

*2020年度 小規模起業白書事例2-3-8:より
*同社HPより

●事業概要:
・オリジナル商品の企画・製造及び販売
・開発商品の小売/販売
・各種商品・サービスのブランディングコンサルティング

●住所:
青森県青森市新町

●店・会社の特徴:
・「人と自然、動物に優しい製品づくりと、親子の時間を彩るライフスタイルの提案」を理念とし、「おやさいクレヨン®︎」等のプロダクト事業とプロダクトデザイン等のデザイン事業を営む

・同社が開発した「おやさいクレヨン」は、野菜や果物を原料としたもので自然の色合いを表現できる特徴がある。また、通常のクレヨンで利用される石油系化学原料等をほとんど使用していないため、子供にも安心安全な製品になっている

●起業の動機と事業内容
・社長の木村尚子氏は、出身地の青森のデザイン会社で働いていたところ、子育てとの両立を図るためフリーランスのデザイナーとして独立(2012年8月)

・起業後、「オリジナルの製品をコンセプトからデザインし、世に出してみたい」と考え、2012年12月に上記「おやさいクレヨン」のアイデアを思いつく。発想のみなもとは自身や娘の趣味である「絵を描く」点からであり、それが画材の製作へと結びついた

・木村氏は天然色素に興味をもっていて、ドイツ製の「蜜蝋クレヨン」をヒントに、クレヨン開発を検討

・検討中に地元産の野菜の中で規格外品や廃棄品の多さを知り廃棄野菜の有効活用を検討

・製品コンセプトはつくれたものの、木村氏は製造から販売までのノウハウがなかったため、青森県産業技術センターへ技術的なアドバイスを請う。ほかにも生産のためにクレヨンメーカーの協力を得るほか、地元食品加工会社と連携し原材料生産からパウダー加工まで一貫して協力してもらえる農家も確保した

・資金面で県の補助金も活用し、2013年に試作品を生産。試作品は「おやさいクレヨン」と命名し、生活雑貨の見本商談市に出展

・試作品の反響は大きく、生産した2千セットは出展後2週間で完売。木村氏は2014年に同社を立ち上げ、本格的な事業化を推進

●起業の成功ポイント
・自身のスキル等を活かし明確な目的で起業
⇒「仕事と子育ての両立」を実現したいという思いと自分の知識・スキル等を活用できる起業を進めた点が成功の第一歩なったと考えられます。

・事業拡大への思い
⇒フリーランスとしてのデザイナーの仕事に留まらず、「オリジナルの製品をコンセプトからデザインし、世に出してみたい」という事業拡大への思いが起業の成長に繋がったと言えるでしょう。

・事業化に必要な知識や協力者を積極的に求め確保
⇒経験のないモノづくりでは、原材料の確保から加工・生産、販売まで各協力者が必要となるが、そのための相談者や協力者を積極的に探し確保できた点が早期の事業化を実現させています。

・補助金や展示会などの活用
⇒起業家を支援してくれる制度を上手く活用したことで成功確率が高まりました。

・社会的課題の解決というニーズに対応
⇒持続可能な社会の実現に向けた消費者の購買意識が高まっており、同社は製品を通じてそのニーズに応え社会的課題の解決に貢献しています。

4-2 新型コロナ禍で検討するべき女性の起業内容

まず、前に紹介した女性の起業で多い業種である「飲食」と「理美容・整体・エステ・リラクゼーション」からニューノーマル時代に対応できる事業活動の内容を説明します。

その後、今後成長が期待できる起業の業種や業態などの候補を紹介していきましょう。

①飲食

コロナ禍の影響を最も大きく受けている飲食業で検討しておきたい方法として以下のような点が挙げられます。

・少人数対応
大人数の宴会などを対象とする大型居酒屋業態の経営は非常に厳しく大手チェーン店などは大幅に店舗数を減らしている状況です。当面は大人数相手の業態は避け、少人数・家族など対象とする業態が望まれます。

・専門料理などの独自性
⇒大人数の客が期待しにくい状況下では薄利多売的な業態ではなく、少人数でも一定の収益が確保できる専門性や独自性の高い料理カテゴリーや業態を志向するべきです。

海外の珍しい料理、希少な食材を使った専門店、こだわり・伝統の加工方法による調理などで他店との差別化を図り、付加価値の高いメニューを提供できるようにしましょう。

・インターネット通販、デリバリーサービスやテイクアウト販売
⇒客数の増大が困難な状況で収益を確保していくには、お店での飲食の提供以外で売上を確保していく必要があり、それにはインターネット通販、デリバリーサービスやテイクアウト販売などが有効です。

独自性や付加価値の高い商品をこれらの方法で販売することで店内売上の少なさをカバーするとともに、商圏を拡大し事業の拡大に結び付けましょう。

・起業前や起業後でのSNS等を通じたコミュニケーション
外食需要が伸びにくい状況では一元客の増加は期待しにくいため、固定客の確保が重要でありお店のファンを多く作るための努力が欠かせません。そのためにはお客との人間関係を少しずつ作っていく必要がありますが、現代ではSNS等を通じたコミュニケーションが有効です。

こだわり食材の紹介、新メニューの提案や伝統の調理法などを紹介し、お客との対話を増やして親近感を持ってもらえるように起業前後からお店の情報を積極的に発信しましょう。

②理美容・整体・エステ・リラクゼーション

人との直接的な接触の多い業種では、特に安心・安全なサービスの提供体制の整備やサービス自体の独自性などが重要になります。

・安心安全なサービスの提供体制
⇒業種によって多少異なりますが、以下のようなコロナの感染予防対策が不可欠です。

1)手洗い・うがいの徹底(消毒)
⇒お店側だけでなく、ケースによってはお客にも店舗での手洗い・うがいを依頼することも必要になります。スタッフについては、始業前の検温などの体調管理も行い、お客と接する指や手などの消毒は特にこまめに行うべきです。また、社員同士での飲食やカラオケなどを控える必要があります。

2)マスクの着用や会話の抑制
⇒業種にもよりますが、サービスに影響が出ない程度には店側とお客の両方ともマスクを着用するように心がけましょう。マスクの着用に関しては事前にHPや店内受付などで告知しておきお客に協力を求める必要があります。

また、サービス中の会話も極力少なくするべきです。お客の安全を考慮した対応として事前に申し出て理解を得るようにしましょう。

3)お客が入れ替わる毎の消毒や喚起
⇒お客ごとのサービスが修了する度にサービス提供場所や使用道具等の消毒と喚起が不可欠で、また喚起後から次のサービス提供までに一定の時間を置くべきです。なお、空調については外気との喚起が行えるタイプを導入することも検討しましょう。

4)サービス提供人数の抑制や予約制
⇒予約制で営業中のお客の人数を絞り、待合室やサロン内での人数が密にならないようにするべきです。また、十分な喚起ができる程度の客数になるようにコントロールする必要があります

・独自性の確保
1)専門化
他店との差別化を図り収益を向上させるためには自店ならではの独自性を保有することが重要です。たとえば、美容院などでは専門化を進め、カラーリング、ヘヤケアやカットのみ といった専門性や独自性の高い店舗にするといった検討も必要になります。

自身の得意分野や好きな領域と現状・将来のニーズなどを踏まえて独自性のあるストアコンセプトでビジネスモデルをつくりましょう。

2)顧客関係性の早期構築
接客のある業態では顧客との関係性が収益に大きく影響するため、起業前からはファンづくり、開店後からは囲い込みのためのコミュニケーションを心がけるべきです。

起業前は、SNS等を通じてPRし自店の認知度を上げるとともに、開業後は店・スタッフとお客が1対1、1対多で会話できる体制を整え、関係性を深める取り組みを行いましょう。

③新型コロナ禍でも期待できる副業・起業の仕事

以下のような業種・業態による起業が注目を集めています。

・移動販売
店舗を持った商品・サービスの提供は、改装費や家賃などの初期コストや運営コストが大きくなるため、資金の少ない女性にはハードルが高いですが、自動車による移動販売ならその負担は比較的軽いです。

また、店舗での営業に比べ移動販売ならコロナ感染の不安も小さくなり対策も容易になります。業種としては様々なものが考えられますが、弁当などの調理品、アクセサリー・衣服などのファッション製品、コーヒー・アイスなどの喫茶メニュー、ミニコンビニ などです。

開業する地域や対象者等によってニーズは異なってくるため、自身の強み、地域や対象者などの特性を考慮して業種・業態を決めることが重要になります。

・料理代行サービス
料理代行サービスの需要は高齢者世帯の増加や女性の就業率の上昇などを受け伸びていますが、コロナ禍では通常のサービスに加え巣ごもり需要に対応する出張料理教室の開催や特別ディナーの提供などが期待できます。

料理人としてのキャリアのある方やアイデアを活かした創作料理などに自身のある方など飲食業で起業する場合の1つの選択肢になるはずです。

・WEBでの各種教室
料理、英会話、学校の受験指導、各種資格取得向け講座、手芸、絵画、ギター等の楽器の指導、株式・FXの投資講座 など自分の得意とする分野の教室をインターネット上で開催するという起業も有効です。

ブログやユーチューブ動画などで各分野についての情報提供から始め、WEB教室の認知を広げ潜在顧客を囲い込むようにすれば比較的容易に起業できるでしょう。

・子供や育児の用品販売
少子化が進む中、自分の子供や孫に対する消費の増加が期待できるほか、女性の子育てなどの知識・経験が子供・育児用品の事業で活かせるはずです。子供向け商品に対して安心・安全やオリジナリティなどを求める傾向は今後も持続するでしょう。

各家庭で日常的に使用する商品のほか、出産祝い・誕生日祝い・入学祝いなどでの贈答用の需要も見込めるはずです。なお、日常的・定期的に使用する商品はサブスクリプション(定期購入)で提供する方法も期待できます。

・整理収納のコンサルタント
家庭でのものの片づけが得意な方は整理収納のコンサルタントなども有望です。家の中が直ぐに散らかる、モノが散乱する、必要なものが直ぐに探せない などで困っている家庭も多く、出張による指導・支援のほか、ネット経由のサービス提供も有望でしょう。

また、家庭の収納にとどまらず、企業の事務所内の整理整頓(5S)といった需要に対応できれば事業の幅も広がるはずです。

5 女性が起業で成功するための重要点と注意点

女性が起業で成功するための重要点と注意点

最後に起業・会社設立で成功するための特に意識しておきたい重要ポイントや注意点を説明しましょう。

重要ポイント

5-1 アイデアをビジネスモデルへ

起業や事業化のきっかけはアイデアの発想から始まりますが、思いつきから直ぐに取りかかるのではなく、アイデアをビジネスモデルに昇華させることが不可欠です。

ビジネスモデルとは、商売において誰を対象として、どのようなニーズを商品・サービスで充足して収益を確保するかを示す商売の仕組みと言えます。もちろんライバルとの競争などもあることからお客からの支持を得ながら他社に勝てる要素も含めなくてはなりません。

特に競争の激しい業種・業態に参入する場合、この自社・お客・ライバルの3者の視点で勝負できるモデルにしておかないと、事業の継続や成長が困難になる恐れがあります。

5-2 起業や事業化は計画的に

起業で成功するには計画的に事業を進めることが必要です。現在の職業や過去の職歴などから直ぐに始められる事業も多いですが、需要量の測定、開業費や運営費の見積り、予想収益、取引先や人材の確保の可能性、事業展開の具体策 などをある程度決めて実施しないと経営リスクが高くなってしまいます。

特に事業化や経営全般等に関する知識・経験がない方が無暗に事業を進めると余計なトラブルを背負いこみ起業の失敗に繋がりかねません。相談相手がいない場合などでは、地域の役所、商工会議所等や中小企業支援機関のほか、税理士・中小企業診断士等の専門家や民間の支援機関を活用するべきです。

特に資金調達で不安のある方などは日本政策金融公庫に創業や資金について相談するとよいでしょう。

5-3 自分の強みでニーズを捉え身の丈に合った起業

自分が今まで培ってきた知識・スキルなどの強みで特定のニーズを捉えるような起業を心がけるべきです。また、起業して事業を安定的に成長させるためには様々な経営資源も必要となることから無理をせず自身の状況にあった事業展開にしましょう。

まったく知識や経験のない事業で起業するよりも今まで仕事や趣味などで蓄積したノウハウなどの強みを活かして事業化する方が成功確率は高くなります。また、事業を知っている分、無駄な活動や支出をせずに済むこととなり事業運営が効率的になりやすいです。

起業時の事業展開には初期費用として多額の資金が必要となるケースも多いため、効率的に事業を始めることは後の事業運営をスムーズに進め拡大させるのに役立ちます。

もちろん新しい画期的なアイデアを事業化する場合などでは既存の知識・スキル等と関係なく起業するケースも少なくありません。しかし、その場合は自分が知らない領域の事業化となるため、その専門分野や関係者から起業するまでの情報を十分に入手して進めるべきです。

また、その起業に必要な経営資源を確保し事業化の体制が整えられるように公的支援機関や支援制度などをフル活用しましょう。

5-4 新型コロナの影響も踏まえた起業

これからの起業においては新型コロナの影響を踏まえた事業化が欠かせません。ウイズコロナやアフタコロナにおいては、消費者や企業の購買行動が感染拡大前と大きく異なるケースも多いため、今後の起業はニューノーマルの時代に対応できるビジネスモデルであることが必須です。

安心安全な商品・サービスの提供は当然のことですが、密を避けた業務遂行が求められる中一定の収益を確保できるモデルが求められます。特に飲食業や接客サービス業などお客との接触の多い業種・業態においては、従来の営業方法では十分な収益を稼ぐのは容易ではないです。

デリバリーサービス、テイクアウト販売、インターネット通販やインターネットでのサービス提供など店舗外で実施できる方法を上手く活用することが必要になるでしょう。

また、気軽に店舗へ行けない状況下ではインターネット上のPRや関係性の維持が重要になります。起業の前も後もSNS等を利用してお客との関係を作り維持してファンを増やせるように努めなければなりません。

6 まとめ

まとめ

女性にとって起業はハードルの高い行為かもしれないですが、新型コロナの影響により職の確保が困難な状況では有望な選択肢になります。コロナ禍による失業の危機を乗り越える手段として起業を検討しておくことは損にはならないはずです。

特に気軽に外出しにくい現状においては、家庭に関連したニーズが起業に結びつくこともあるため、女性にとっては起業のチャンスは少なくありません。事業化や経営などの分からないことは経営の専門家などに相談できるので、公的支援機関などを気軽に活用してみてください。