起業するまでの期間に行う準備はスムースに起業をするための重要なコツですが、どのような準備事項があるのかをご存知でしょうか。この起業前に行う準備事項は起業後の事業運営の滑り出しをも左右するものです。今回の記事では、起業準備に必要な7つのポイントを詳しく解説しますので、起業や会社設立をスムースにすすめたい方はご参考ください。
目次
1 起業形態を選ぶ
起業する際の大切な作業の一つは、起業形態の種類を知り、自分に合った形態を選択することです。起業には、会社を設立する場合と個人事業主として活動する場合の2つの選択肢があります。会社と個人事業主の違いとそれぞれの特徴から解説しましょう。
会社と個人事業主の最大の違いはその「信用力」です。事業形態が会社の場合は、取引先や顧客へ与える信用力が個人事業主よりも大きく、取引の際に相手方に与える安心感において個人事業主よりも勝っているといえます。
一方、会社の場合は個人事業主よりも規則に縛られるところがありますので、より自由な事業運営を望むのであれば、個人事業主の方に利する点が多いといえます。
決算期(事業年度)については、会社の場合、自社の法律にあたる「定款」において任意の月を記載することによって、その月を決算月とすることができます。すなわち、自由に決算期を決めることができるということです。一方、個人事業主の場合は1月1日から12月31日までと決まっています。
個人事業主の税金は、個人事業の利益はすなわちその個人事業主本人の利益とイコールの関係ですので、個人にかかる税金の「所得税」となります。ただし会社の場合も、役員報酬や給与は所得税の対象となります。
社会保険の扱いも会社と個人事業主とでは異なります。会社の場合は、設立者本人を含んで一人でも給与(役員報酬)が発生していれば社会保険加入の対象となります。かたや個人事業主は、従業員が5人以上になるまでは任意加入です。
このように、会社と個人事業主とでは税金や社会保険の取り扱いが異なりますので、例えば○○円以上の利益を見込める場合には税金面で会社の方が有利、とは一概にいえません。税金面から会社と個人事業主とを選択するのであれば、税理士などの専門家に相談した方が良いでしょう。
ここまでは会社を「会社」として一括りにして話しを進めてきましたが、実際には会社も資金の出処などによって4つの形態に分かれます。
その形態の一つが、最もメジャーで、かつそのためその形態そのものが宣伝効果となる「株式会社」です。
株式会社とは、会社の資金を、会社の所有権そのものといえる「株式」と引き換えに会社の外部から募ることができることを特徴としています。株式会社以外には「合同会社」、「合名会社」、「合資会社」の3形態がありますが、これら3形態の会社の資金の調達方法は会社内部からと限定されています。
株式会社は外に開かれているため、その分社会に対する責任も大きく、規則や決まりごとが他の3形態と比べて多くなっています。一方、株式会社以外の3形態はより自治権を認められています。
これら会社の形態を比較する上でもう一つ重要な視点に、会社の負債(債務)に対する責任の取り扱いがあります。株式会社と合同会社は「有限責任」となります。有限責任とは、会社の設立者(出資者)は債務に対して出資した額を上限とする責任しか持たない、ということです。
すなわち、上記2形態の場合は仮に会社が倒産しても出資者が失うのは会社への出資金のみで、会社に残る借金や未払金に対しての個人的な責務は発生しない、ということを意味します。
一方、合名会社と合資会社は「無限責任」であり、会社の借金や未払金は設立者本人の負債となります。なお、個人事業主の場合も同様に無限責任となります。
以上のように、会社設立と個人事業主、そして会社設立の場合にも選択肢がありますので、慎重に考えて情報を集め、自分の事業内容に合わせた形態を選ぶことが起業の最重要準備事項です。
そして、会社設立と個人事業主とでは、また会社の形態によっては起業する際に必要となる資金が異なります。次の項ではその起業に必要な資金について取り上げましょう。
2 起業するための資金を用意する
個人事業主として起業する場合には特に事業開始の手続き費用というものは発生しませんが、会社を設立する場合には発生します。
会社とは「法人」であり、会社の設立とは法人という(疑似)人格を社会に生み出すということですので、人間の出生届にあたる作業を法人の場合にも行います。その作業とは「法人登記」と呼ぶもので、その登記を行うために印紙などの費用が必要となります。
また、会社設立にあたってはもう一つ必要な資金があります。それは会社の資本金(出資金)です。会社の資本金は、定款において定めた資本金を会社の通帳に入金することによって用意されたことになります。個人事業主にはこの資本金は必要ありません。
会社設立の登記費用に話しを戻すと、会社の形態によって必要となる費用が異なります。株式会社の場合は約26万円、その他3形態の場合は約12万円です。
株式会社のみ高額である理由は、株式会社は外に開かれているために「公証人役場」という役所で「定款」を登記する必要があるためです。株式会社以外の3形態にはこの定款登記の過程は発生しません。
法人登記が完了した時点で会社設立は一旦完了したことになりますが、その後も会社の場合は自治体(都道府県、及び市区町村)や、社会保険加入のために年金事務所に対して法人設立届けを提出することになります。
個人事業主の場合にはこれらの設立のための諸作業を行う必要はありません。事業形態や売上規模、そして事務作業が個人の範疇に収まる場合には個人事業主として、従業員を雇って規模を大きくすることを考えている場合には会社を設立して起業することが適しているといえるでしょう。
3 助成金や補助金の情報を集める
会社には資金調達に有利な各種優遇措置が設けられています。優遇措置には例えば、政策金融機関にあたる日本政策金融公庫による、起業家のための融資枠の措置があります。これら補助金や助成金は、資金が枯渇しがちで事業実績に乏しく融資調達材料の少ない創業時にこそ有用なものです。
また、これらの補助金や助成金には「事業計画書」が必要書類となることがあります。事業計画書とは、会社の中長期的な計画を記載するというものです。設立後早いうちからこの事業計画書を作成し、自社が黒字や赤字となる状況や条件を知ることは大いに意味があることです。
特に設立後は、熱意が先走って無謀な売上計画や不必要な仕入を行ってしまいがちです。事業拡大には勢いや勝負をかける時期が必要ですが、現実を見据える視点も必要です。資金調達手段は豊富なほど助けとなりますので、助成金や補助金に関する情報収集と具体的な行動を怠らないようにしましょう。
4 起業者のコミュニティに参加する
起業者同士、または起業経験者のコミュニティに参加して情報交換を行うことは、起業のノウハウ取得と起業語の事業運営に大変役立ちます。
中小企業診断士や地域の起業家などが招かれて講習を行うもので、開催母体によって、講習日数や講習内容が変わり、また講習後にも起業までフォローアップを行ってくれる場合があります。まずはインターネットで、自分の起業を考えている地域で「創業塾」と検索してみると良いでしょう。
また商工会議所では、創業塾以外にも起業家や中小企業に向けて、経営の相談や会社同士の交流会、各種共済制度の照会などの様々な取り組みを行っています。ここでの起業家とは、会社の設立者だけではなく、個人事業主も含みます。
会社を設立する、あるいは個人事業主として起業する場合でも、人や会社同士の繋がりは非常に重要なものですので、商工会議所やこうしたコミュニティに参加して意識を高め、情報収集を怠らないようにすることが次の一歩へと繋がります。
5 起業後の事業運営・営業活動の計画を立てる
事業の中長期的な計画を立てることの重要性を、「事業計画」という名称で既に解説しましたが、この場合の事業計画とは事業の売上や経費、利益などの事業の金額面を中心とするものです。
起業に際しては、金額の計画以外にも営業方法や販路拡大を具体的に計画しておくことで、事業運営の順調な滑り出しへと繋げることができます。
営業方法には例えばホームページの開設があります。現在ではホームページの重要性は高まる一方です。小売・卸売業を初めとしてホームページをいかに活用するか、ホームページにいかに誘導するかが売上拡大の肝といっても良いでしょう。
そのため起業後直ぐにでもホームページを開設する準備をしておくと良いでしょう。ホームページ開設の準備には、同業他社のホームページを閲覧し、気に入ったものを元にイメージを膨らませることがあります。
あらかじめイメージを持っていないと、専門業者にホームページの制作を依頼したとしても「何か違う」ものが出来上がり、費用ばかりが嵩むことになりかねません。
事業のイメージアップのためにホームページともう一つ用意しておきたいものが、あるいはホームページに載せることで事業を更に印象づけるものが、「ロゴ」です。ロゴは言葉よりも印象に残る場合がありますので、ロゴに対しても色々な会社のロゴを見てイメージを持っておくと良いでしょう。
また、ホームページやロゴの制作を専門業者に発注すると高額となることがあります。ホームページやロゴのある程度のイメージを持てたのであれば、そのイメージを元にクラウドソーシングサービスに依頼することが費用を抑える手段となり得ます。
実際に依頼するかは別としても、起業前に一度クラウドソーシングサービスを訪れてどのような雰囲気か、どのような仕事があるのか、また自分に合っているのかどうかを確認しておくことをお勧めします。
そして、広告は非常に重要な営業戦略です。ホームページやロゴと言ったツール以外にも、チラシなどの紙媒体も活用すると良いでしょう。
日頃からチラシを注意して見るようにして、どのようなものが人を惹きつけるのかネタを収集しておくと実際のチラシ作成の際に役立ちます。
また、最近ではTwitterやFacebookなどのSNSが、訴求力の高い重要な広告ツールです。人気がある会社のSNSではどのような情報を発信しているのか注視し、素材集めをしておくようにしましょう。
小売・卸売業などでは複数社が集まって商品の展示会を行っていることがあります。そのような場にも積極的に参加をすると良いでしょう。同業者はライバルではありますが、同時に仲間でもありますので、お互いに販路を拡大するような関係を築くことが理想的です。
6 各種セミナーを受講し先輩の話しを聞く
起業後は忙しくなりがちでなかなか時間が取れなかったり、起業時の熱量だけでは回らなくなったりすることがあります。また、時間がないと温めておいたせっかくのアイデアも後回しになりがちです。
そのため起業前の準備期間のうちに、マーケティングのセミナーや起業家の講演会を受講してノウハウや知識を蓄え、具体的なアイデアと営業戦略を練っておくと良いでしょう。先に取り上げた商工会議所でも、起業家や売上促進の講習会を行っています。
講演会やセミナーは、他業種の話しだとしても必ず得ることはあるはずです。むしろ、様々な分野の知識を吸収することが独自色を出すための秘訣となります。
そして、起業家の先輩から起業時の話や成功談、失敗談を聞くことです。成功談は起業後の事業運営のインスピレーションの元となり、また具体的な事業運営のビジョンとなります。失敗談には非常に重要な教訓が含まれていますので、同じ轍を踏まぬよう耳を傾けるようにしましょう。
同業種の先達の中にはコンサルティングをやっていたり、お互いの販路拡大のために協力者を求めていたりすることがありますので、身近に良い人がいなければインターネットでそのような人を探してみるのも良いでしょう。
7 会社設立に縁起の良い日を選ぶ
会社設立の日付や起業を行う日付を考える上で、できるだけ縁起の良い日を選びたい、良いタイミングで起業したいという考えをお持ちの方は少なくないと思います。起業というのはどんな要素であっても、自信につながるものであれば経営者にとってプラスに働くことが想定されます。縁起の良い日を選んで起業したいというのも、気持ちとして理解できます。
ただ、自分だけで会社を設立しようとすると、決めた会社設立予定日に手続きができない場合も想定されます。会社設立を縁起の良い日に行うには、会社設立の仕組みやルール、専門家の活用などを知っておくことが重要になります。
7-1 まず、会社設立ができない日付を知ろう
会社設立の日付を考える上で大切なのは、「会社設立」自体がどうしてもできない日がある、という点です。
具体的には、年末年始や土日祝日で、法務局が開庁していない日は、会社設立日ができません。そのため、1月1日などは一見縁起がよさそうですが、会社設立日とすることはできません。
なお、後ほど司法書士が行ってくれるオンライン申請という制度を紹介しますが、このオンライン申請、実は平日の8;30~17:15までに受理したもののみをその日の申請として受け付ける上、システムの利用時間も平日の8:30~21:00と、オンライン申請なのに、24時間365日対応ではない、土日や法務局の閉庁日は休むというシステムのため、オンライン申請であっても土日祝日や年末年始の申請や会社設立日とすることはできません。
そのため、後述する大安かつ一粒万倍日・天赦日が重なる非常に縁起の良い日にちでも、土日や年末年始などの法務局の閉庁日と重なってしまうと、会社設立日の候補としては使えなくなります。
また、会社設立の手続き自体にも時間がかかります。取締役全員の印鑑証明の原本が必要であったり、取締役全員の押印が必要な書類があるため、取締役に1人でも印鑑証明を取得するのに手間取る人や、印鑑を押す書類の返却に時間がかかる人がいるだけで、会社設立の流れが後倒しになるケースもあります。
全て経営者が自分で手続きをするよりは、登記の専門家である司法書士や、司法書士と連携する会社設立専門業者や税理士に頼む方があらゆる意味でスムースです。
各種手続きから逆算して、希望期日に会社設立の届出を提出(オンライン申請)し、希望する日を会社設立日にできる可能性が高くなります。
特に経営者個人にて独力で書類を作成した場合、書類にミスがあり、不受理になるケースも想定されます。それくらい、法務局のチェックは細かいです。会社設立の日にちに特にこだわりがある場合は、専門家に依頼するのが確実でしょう。
加えて、「会社設立日」=「創業日」ではない、ということも留意する必要があります。その違いは以下の通りです。
- ・会社設立日→会社設立に関する書類を法務局に持参・もしくはオンライン申請・郵送で法務局に到達した日(法務局の審査に通ることが前提です。軽微な間違いであれば、修正することができる可能性がありますが、大きな間違いがあると申請自体が却下され、希望日の設立はできなくなります。)
- ・創業日→基本的には事業の開始日だが、会社設立日と違い、公的機関が受理・記録するものではないので、比較的自由に決めて良い
例えば、会社設立の発起人会を1月1日に行う、1月1日から事業の準備を始めるなど、実質の会社設立日は1月上旬であっても、創業日は1月1日として、自由に外に対して呈示することができます。(会社設立日は、どうしても全部事項証明に日にちが残りますが・・・)
そのため、縁起がいい1月1日を起業の日としたければ、創業を1月1日とアピールし、実質的な会社設立日は外にアピールしなくても良いのです。(もちろん、1月1日を会社設立日とすることは、不正確ですので、あくまで会社設立日は会社設立日です)
7-2 会社設立・起業日に縁起の良い日は?
①六曜(ろくよう)で考える
六曜は、大安(たいあん)・先勝(せんしょう)・友引(ともびき)・先負(せんぶ)・仏滅(ぶつめつ)・赤口(赤口)の六種の曜から構成されます。
近年は、様々な事情によりカレンダーに掲載されることも少なくなってはきました。とはいえ、やはり六曜を確認される方、こだわりを持たれる方は少なくありません。
ご存じの方も多いとは思いますが、六曜に関してそれぞれ内容をおさらいしてみましょう。
先勝 | 事を早く済ませた方が良いとされる日。急用にかかること、訴訟に良い日と言われている。 |
---|---|
友引 | 一般的は、良くも悪くもない普通の日。ただ、葬儀については「友を引く」という意味で避けられることがある。 |
先負 | 急用・争い後は良くないとされる日。 |
仏滅 | 六曜の中で、一番良くない日とされ、結婚式やお祝い事、会社設立など前向きなことを行うのには適していないとされる。 |
大安 | あらゆる事に関し、行うことが良いとされる日。婚礼や新居の棟上げ、各種手続きの日を大安にする人も多い |
赤口 | 正午の前後を除き凶とされ、訴訟・契約は避けるべきとされている。また、赤という字があり、火の元など危険物に注意する必要がある。 |
以上を踏まえて、会社設立で縁起を担ぐ上でふさわしいといえるのは、大安がベスト、次に先勝、友引が事前の策で、それ以外は縁起の面で良いとは言い難いでしょう。
また、仏滅に会社設立をするというのは、特に控えた方が良いでしょう。
自分は気にしなくても、家族や周囲、特に年配の方は、六曜を重要に考えている方も少なくありません。会社設立において、周囲に違和感を与えないためにも、仏滅を初めとする縁起が良くない日は避けた方が好ましいと言えましょう。
②選日(せんじつ)で考える
選日という言葉には、なじみがない方も多いかもしれません。しかし、「一粒万倍日」という言葉は聞いた人がある人もいらっしゃるでしょう。宝くじ売り場などで、「本日は一粒万倍日です!」というような広告を見た方もいらっしゃるかと思います。この一粒万倍日も、選日の一つです。他にも、選日には種類がありますので、一つ一つ確認していきましょう。
総じて、物事を始めるのにとても縁起が良い日と言われており、会社設立・創業日として選ぶのに非常に適しています。また、大安など他の好ましい歴注と重なれば、一粒万倍日の効果は倍増し、逆に仏滅など凶日と重なる場合は、効果が半減するとも言われています。そのため、縁起・験担ぎという面で考えると、大安の一粒万倍日が会社設立日・創業日として非常に好ましい日といえます。
天赦日:百神が天に昇り、天が万物の罪をゆるす日とされ、最上の大吉日であるといわれています。
縁起を考えると、大安・一粒万倍日・天赦日が重なる日が最善の日と言えますが、さすがに3つが重なることはめったにありませんので、2つ重なれば、縁起を担ぐ意味では十分と言えるでしょう。
もちろん、考えようによっては昔からの言い伝えで、あまり固執する必要はないという意見もありますので、吉日ばかりにとらわれてしまうと、平日かつ吉日が重なる日を選ばなければならないので、会社設立が後伸ばしになってしまうおそれもあります。
一方、吉日を選ぶことで「縁起のいい日に設立したから縁起のいいことが起こる」という、プラスの自信を経営者に持たせてくれる可能性もあります。
自分の性格やタイミング、周囲(特に関係者)にこだわりがある人がいるかなどを踏まえて、どこまで吉日にこだわるかを考えるくらいがよいかと思います。
7-3 会社設立・起業日を予定通りにするための注意点とは?
起業日については、決して厳密なものではなく、「起業日と決めた日が起業日」であるといえます。
一方、会社設立日は、公的に法務局に登記されるものです。第三者でも会社の登記簿謄本(全部事項証明)を取得することで、会社設立日を知ることができます。会社設立日は、法務局に会社の設立登記が申請され、受理された日となります。
会社の設立手続きには、1ヶ月~2ヶ月、準備も含めると3.4ヶ月近くかかる可能性もあるので、できるだけ余裕を持った計画を立てておく必要があります。
7-4 会社設立の流れ
それでは、具体的には会社設立にはどれくらいの日にちがかかるのかを、一般的に設立件数の多い株式会社・合同会社で見ていきましょう。
なお、合同会社の場合、後ほど述べる、「公証人役場での定款認証」の手続きが不要ですので、日数を1~2週間短縮することができます。
①会社の設立希望日候補を2~4ヶ月先に複数おさえる
まず、起業日や縁起の良い日を考える際は、会社設立に着手する日と、そこから2~4ヶ月程度幅を持たせて、複数の候補日を設けるのが望ましいでしょう。特に縁起の良い、大安・一粒万倍日・天赦日が重なり、かつ平日となると、年に2.3回あればいい方でしょう。
あわせて、会社設立専門業者や税理士、会社設立の専門家に依頼、事前に吉日を設立すること強く希望することも含めて相談するとより確実です。特に、設立日にこだわりがあり、確実性を高めたい場合は、極力専門家、かつ登記手続きを司法書士に依頼することをおすすめします。
なぜなら、現在大半の司法書士は、法務局への「オンライン申請」に対応しており、会社の設立日としたい日にオンライン申請を行ってもらえば、設立希望日と実際の法務局の受理日、つまり会社設立日が一致するからです。
オンライン申請が普及していないころは、司法書士が法務局へ設立希望日に直接書類を持参したり、法務局が遠い場合は配達日指定などを行い送付するなど、希望日にあわせ法人を設立するためには、非常に手間がかかっていました。
しかし、現在はオンライン申請が普及しています。必要事項は司法書士がオンラインで作成し、ネット上で登記手続きを行うため、特定の希望日の設立も行いやすくなりました。
ただ、法務局のオンライン申請については、専門のシステムをそろえる必要があります。個人にとってはシステムを整備することは現実的に難しく、システム自体使いにくく作ってあるので、自分でやろうとせず司法書士に依頼するのが無難です。
そして、会社設立の手続きというゴールを、会社設立専門業者・専門家と相談しながら、縁起の良い日(かつ、法務局が開いている平日)に設定し、そこから逆算して、ある程度のスピード感を持ちながら手続きを進めていくことが大切になってきます。
会社をどのような設計・仕組み・各種決定事項で行くかなどを考えると、人によっては、それだけで数週間、あるいは1,2ヶ月の時間がかかる可能性があります。
当然、会社設立は自分自身の仕事・人生に大きく関わることですので、どんな人でも迷う点が出てくるかと思います。とはいえ、吉日を選びたいばかりに、会社設立の手続きで重要な部分に目が行き届かなくなってしまっては、本末転倒です。
客観的な意見を得るためにも、できるだけ会社設立専門業者・専門家に相談しながら、会社の骨組みを考えていくことが、理想的と言えましょう。
②会社の形態(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)、どのような業務を行うか、社名はどうするかなど、会社の全体像を決める
まず決めるべきは、会社を株式会社にするか、合同会社にするかです(合資会社・合名会社は現在使われることは少なく、特に合資会社・合名会社の形態を取るメリットもありませんので、今回は株式会社・合同会社の二社に絞ります)。
株式会社と合同会社の違いを挙げると、下記のような点がいえます。
- ・知名度が高い
- ・会社を拡張しやすい
- ・一般的に知られているため、相手に対して、「合同会社?」のような、ひっかかりを与えることがない
- ・外部からの出資を受ける場合、株式会社の形態であることが求められるケースがある
- ・合同会社より設立に1,2週間余計に時間がかかる(公証人役場での定款認証があるため)
- ・合同会社より設立費用や専門家報酬が高い(概ね十数万円程度高くなる)
- ・役員の任期(最初に2年~10年で定める)が満了すると、重任の手続きを法務局に行う必要がある
- ・毎年の決算を官報かWebで公告する義務があるため、会社の決算状況を第三者に知られたくない場合は適さない
- ・以前よりは、アップル・グーグルなど組織を合同会社とする企業も増え、認知度が向上してきた
- ・設立費用が安く、早い
- ・役員の任期を定めずに済むため、役員の選任・退任・死亡時以外は手続きをする必要がない
- ・決算を公告する義務がないため、個人資産管理会社など、決算の内容を第三者に知られたくない
- ・経営者の肩書きが「代表業務執行社員」など聞き慣れない肩書きのため、株式会社の「代表取締役」に比べ普通の人への響きが弱い
- ・金融機関・取引先など第三者のイメージが、株式会社に比べ低い場合もある
- ・地方に行けば行くほど、合同会社の知名度が低い
- ・業務拡張・外部出資には株式会社の方が適している
など、様々な違いがあります。どちらか迷うという場合は、株式会社にしておいた方が、知名度・拡張性などの点で適しており、無難といえます。
③会社の発起人を決める
会社を作る際は、自分ひとりで作るという人も増えてきましたが、一方、複数人を役員にして会社を始める、複数人の出資を受けるというケースがあります。
自分ひとりの場合は、資本比率など特に気にする必要はありません。また、役員は自分ひとり、出資は自分が100%というのは、様々な意味で理想的です。
一方、複数人で会社を始めたり、複数人の出資を受ける場合は、役員の序列・指揮命令系統を明確にすることや、出資比率の割合に注意することが必要になります。
最終的な決定・責任を負う、No1のポジションとしての代表取締役と、代表取締役を支えるNo2、No3など、いくら仲が良い関係であっても、ビジネスの上ではきちんと序列・指揮命令系統を明確にしておいた方がよいでしょう。
ありがちなのが、2人、3人などで起業し、全員の序列が不明確になってしまうケースです。場合によっては、複数人が代表取締役になることも制度上は可能です。しかし、「船頭多くして船山に登る」という言葉にもあるように、経営方針がふらついたり、責任の所在が曖昧になることで、組織が空中分解したり、会社に残る側が、出て行く側の株を買い戻すなどの措置を行わざるを得ない可能性も想定し得ます。
また、単純に複数人で同じ額を同じ比率を出資している場合、会社の役員に重要な過半数の株式を握っている人がいないため、もし役員間で対立が生じても、過半数の同意を得られない側(少数派)は、解任などを迫られるおそれもありますし、役員同士で過半数の同意を得るための多数派工作など、内部で疑心暗鬼が起こるような状況が発生してしまう恐れもないとはいえません。
そのため、経営者が最低過半数以上の株式を持ち、序列もトップであること、そして最終責任は経営者である自分自身が取るということを、内部・外部に対して明確に示すことが、経営の安定性を内外に示すためにも重要です。
このような点を考えながら、責任を取る人、出資する人、出資額などの経営責任の明確化・資本政策を考えていきましょう。
④商号を決める
縁起にこだわりがある人であれば、会社名もネーミング・画数や、信頼できる人に社名を決めてもらうなどすると望ましいかと思います。もちろん、どういう業務をしているかわかりやすい名前にすること、検索で他者、他のサービスとかぶらない名前にすることも重要といえます。
ただ、会社の商号を決める上では、ルールがあります。具体的には、下記の通りです。
株式会社の場合、株式会社○○か○○株式会社、と、文頭か文末に株式会社と入れる必要がある。合同会社・合資会社・合名会社も同様。
記号で利用できるのは「&」、「‘」、「,」、「-」「・」。また、「&Co.株式会社」のように、記号を文頭、もしくは文末においてはいけないという決まりもある。「!」「@」、「!」、「?」の記号は使用不可。
また、アルファベットや、1,2,3などのアラビア数字は可能だが、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなどのローマ数字は不可でもあります。
商号に、「事業部」「支店」「支部」「支社」など、会社の一部門を表す言葉を入れることはできません。
ただし、「株式会社社長室」、「株式会社経理部」のように、業務部門を称した商号であれば、問題なく実際に設立されているケースもあります。ただ、特定の部門と紛らわしい可能性がある場合は念のため、法務局への事前確認は不可欠でしょう。これも、司法書士などの専門家を通して商号確認、商号に問題がないかを確認してもらうとより望ましいです。
「銀行」「信託」「保険」「債権回収」など、法律で許可を受けた業種しか使えない語句があります。もし、このような、名前だけで特定業種を想定させる語句を利用してしまっていた場合、法務局で基本的には却下されますが、審査は登記官、つまり人間の行う審査ですので、万一通ってしまった場合、各種業法で処罰の対象になる恐れがあります。
たとえば、債権回収については、「債権管理回収業に関する特別措置法」という法律が存在します。
この中には、
一 特定金銭債権の管理又は回収を行う業務であって、債権管理回収業に該当しないもの
二 債権管理回収業又は前号の業務に付随する業務であって、政令で定めるもの
(商号)
第十三条 債権回収会社は、その商号中に債権回収という文字を用いなければならない。
2 債権回収会社でない者は、その商号のうちに債権回収会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
という形で、法律で債権回収を行う会社は、債権回収意外の仕事ができない上、債権外周会社でない会社は、商号で「債権回収と誤認されるような表示を入れてはならない」とされています。
つまり、ダイレクトに「債権回収」という名前が入っていなくても、「田中債権回収代行」とか「トリタテ屋」、「山本サービサー」(サービサーは、債権回収業者の意味)など、債権回収を行う業務を想像させる文言が入っていると問題なのです。
公序良俗・犯罪に関連する語句は使用できませんが、最終的には登記官の判断となります。たとえば、「復讐代行サービス」「立ち退かせ屋」などの社名はさすがに通ることは想定しづらいです。そもそも公序良俗・犯罪に関連する語句を使用すること自体、会社としての良識を疑われますが・・・
同じ住所に同じ社名の会社を設立することはできません。逆にいうと、同じ住所で、別の社名で新会社を設立することはできます。
法務局などでも調べられますが、一番手軽なのは「国税庁 法人番号公表サイト」で検索することでしょう。
特に、同じ法務局の管轄に同じ、もしくは著しく似た会社があれば、その商号は控えるべきです。また、有名会社に似た社名ですと、場合によっては利用差し止め請求などを受ける可能性があります。
⑤事業目的を決める
事業目的も創業時に決めておくべき重要事項です。ポイントは次の4点です。
許認可業種の場合は、管轄官庁・行政書士などと相談し、事業目的にどのような記載をすれば良いか確認すること | 事業目的の書き方に問題がある場合、許認可を得るために、再度事業目的を作り直し登記するという手間が発生する可能性があります。事前に管轄官庁や市町村役場などに相談しておきましょう。 |
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主業務を最初に記載 | メイン業務は最初に記載することをお勧めします。後になるにつれ、付随する業務や今後行う業務を加え、最後に「前各号に付帯する一切の業務」や「上記にかかる関連業務」などと包括的に締めることで業務に付随する内容もカバーできます。 |
貸金業や公序良俗に反する業務を書かない | 貸金業が事業目的の中にあると、融資の対象外になるケースが多いです。また、前にも社名の部分で述べた、公序良俗に反する業務(復讐代行)なども、登記の部分で引っかかる可能性が高いです。 |
必要以上に多く書きすぎない | 起業直後は、あれもこれもと書きたくなりますが、あまりに書いている事業内容が多いと、第三者に対し「結局この会社は何がやりたいのだ?」とマイナスイメージを与えてしまう恐れがあります。基本的には、メインで行う業務、今後行う業務も含め、多くても7個~12個ぐらいまでがちょうど良いかと思われます。 |
⑥事業年度・決算公告方法を決める
事業年度を決定する際は、縁起の良い日が入る月を起業月とし、特にこだわりがなければ1年間のサイクルとしておけばよいでしょう。
ただ、資金調達・消費税の節税(特に法人成りの場合)は、第一事業年度を短くすることが良いケースもありますので、その点は税理士と相談することをおすすめします。
また、決算を公告(公に知らせる)する方法として、官報、日刊新聞紙、インターネットの3種類があります。特にこだわりがなければ官報がメジャーでよいでしょう。また、最近はインターネットでの決算公告代行サービスもありますので、コスト面や他条件で見合うならば、そちらを検討しても良いでしょう。
最終的には、どの方法が適切か、会社設立専門業者や税理士に確認するのが望ましいです。
⑦本店所在地を決める
本店所在地は、実際の事務所・店舗とは限らず、あくまで法律上の会社の住所となります。ですので、外部に店舗や事務所があっても、当初は自宅を本店とする方もおられます。
本店所在地を考える上で重要なのは、
- 「立地」
- 「コスト」
- 「郵便物や荷物・書留が受領できる(人が平日できるだけいる)」
- 「バーチャルオフィスなど、銀行口座の開設が難しくなる所在地はできるだけ避ける」
などの点が挙げられます。
特に見落とされがちなのが、各種郵送物の受領ができる住所にするということと、銀行口座開設の障害になる可能性があるバーチャルオフィスは避けたほうが無難であるという点です。
まず、郵便物・各種送付物については、公的機関などからは郵便・書留などの形で本店に書類が届きますので、それが受け取れないようでは問題があります。せめてポストや、不在受け取りの対応ができるようにしておく必要はあるでしょう。
また、ここ数年、金融機関の口座開設が相当厳格化しました。事業実態・事業内容を証明する資料・取引先が開拓できている場合は契約書・営業活動などのアピール・お金の動き・取引先・反社会的勢力との関与に加え、バーチャルオフィスか、独立したオフィスかをチェックする金融機関もあります。
ただ、バーチャルオフィスだからNGというわけではなく、他の要素も含めて総合的に判断されるケースが大半です。(一部、バーチャルオフィスだというだけで落とす金融機関は存在するそうですが、これは金融機関にストレートに最初から聞いた方が良いでしょう)根本的な部分で、「事業を始める用意がある」「営業活動の証拠や企業との取引契約書、パンフレットがある」など、企業実体が確かにつかめるものであれば、口座開設が通るケースもあるでしょう。
バーチャルオフィスだけでなく他の要素についても、会社設立の準備段階から、金融機関に問題がないか確認した方が望ましいと言えるでしょう。
また、会社設立専門業者や税理士に依頼した場合、税理士経由で銀行に紹介してもらうことをお願いするのも一つの手で、紹介は強いプラス材料になります。
銀行は口座開設にせよ融資にせよ、直接窓口に行くのと、税理士など信頼できる第三者の紹介とでは、扱いが相当違ってきます。
なぜなら、税理士など専門家経由の紹介の場合、設立などの敬意や経営者の人柄、経営方針などがわかっているため、銀行側としても経営者の情報がつかめ、安心できるからです。
こういう部分でも、自分でやるより、会社設立専門業者や税理士など専門家の力を使う、他力を活かすと言うことが重要になってくるのです。
⑧資本金を準備する
資本金に関しては、出資方法も含め、会社設立専門業者や税理士に確認することを強くお勧めしますが、資本金としては100万~300万円(現物出資という手法もありますので、税理士など専門家に確認して下さい)を用意することで、資本金が記載されている登記簿を取得した第三者が、「きちんと資本金を用意しているんだな」と感じてもらえる安心材料にはなるかと思います。
出資者が、代表者の通帳に資本金を振り込む手続きを行います。また、代表者自身も、自分の名前で自分の口座に出資金を振り込むという不思議な形式をとります。
この手続きについても、会社設立専門業者や税理士などに確認して行うことをおすすめします。振込のタイミングについては、振込を行う関係者全員に事前に話をし、必要なタイミングで連絡をし、一斉に振り込んでもらうことが重要で、1人だけ1週間や10日など遅れると、それだけで大きなロスとなります。
そのため、事前及び直前の確認は重要と言えましょう。
⑨会社の役員を決める
株式会社の場合は代表取締役兼取締役、合同会社の場合は代表社員兼業務執行社員が最低1人必要です。会社の組織設計に応じ、株式会社は取締役・監査役・会計参与(レアケース)、合同会社の場合は業務執行社員を決める必要があります。
役員の住所・氏名は登記簿謄本(全部事項証明)で確認できますので、第三者でも代表取締役、取締役、監査役などの住所は調べられてしまうということは心得ておいた方がよいでしょう。
なお、会社の規模が大きくなると、帝国データバンク・東京商工リサーチなど大手の調査会社から調査依頼が来て、代表取締役・役員・業務執行役員などのことについて、様々な事を根掘り葉掘り聞かれる可能性があります。
しかし、この調査担当が来ると言うことはそれだけ会社の規模が成長してきたことの裏返しでもありますので、あまりあれこれ聞かれるのは気分が良くないかもしれませんが、丁寧に対応することは大切です。
⑩会社の印鑑を作成する
会社の社名・所在地が決まったら、早めに会社の印鑑セットを専門業者に依頼しましょう。もちろん、通販で作るという手もありますが、地元のはんこ屋さんの場合、意外と地域内で顔が広いケースもあります。
地元で業務をする場合は、営業活動もかねて、(こういう仕事をするんですよ、と伝える)地元のはんこ屋さんで会社の印鑑を作成するというのもありかもしれません。
なお、会社設立に必要な印鑑は、代表者印・銀行印・角印で、必要に応じて会社の住所・代表者名が入ったゴム印を作るのが一般的です。
各印鑑の役目について、抑えておきましょう。
- ・代表者印を利用するケース
- 重要な書類・契約書類全般・例えば、委任状、お金を借りる際の金銭消費貸借契約書、不動産売買契約書、担保物権の設定契約書、連帯保証の契約書など、特別な場合に利用する印鑑です。法務局には、代表者印の印鑑登録を行います。一番重要な印鑑です。
- ・銀行印を利用するケース
- 各種口座引き落としや、窓口の取引に利用します。
- ・角印
- 見積書・請求書・通知書など日々の書類に押印します。
改めて強調すると、代表者印・銀行印はとても大事な印鑑です。極力代表取締役が責任を持って、代表者印を管理し、銀行印も代表取締役か経理の責任者が慎重に管理する必要があります。
⑪会社の定款を作成する
定款というのは、会社の基本的な決まりを書面化したものです。個人で作成することもできますが、基本的な事項を伝え行政書士などの専門家に作成を依頼、あわせて電子定款の署名を加えてもらう形というのが抜け漏れがなく良いでしょう。
定款については、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項など、必ず書く必要のある部分、定める場合は記載する部分、任意で記載する部分など様々あり、絶対的記載事項については、特に漏れのないよう気をつけることが重要です。
加えて株式会社の場合は、公証人役場での定款認証時に、細かい言い回しや表現方法に関して、修正指示を受けるケースが多いです。そのため、会社設立の最初の段階から、会社設立専門業者や専門家に定款を作成してもらった方が、なにかとスムースに行くでしょう。
また、会社の定款を電子定款にすると、4万円の印紙を貼らなくて済むという話を聞いたことがある方は多いと思いますが、単にWordなどのワープロソフトで作ったデータだけでは電子定款と認められません。紙の定款と同じ扱いをされてしまうのです。
電子定款については、定款のファイルにアドビアクロバットなどを利用した行政書士などの専門家の電子署名があって、はじめて電子定款として認められます。そのため、株式会社・合同会社問わず、定款に専門家の電子署名を付与してもらう手続きを行うようにすることをおすすめします。(署名がない場合は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社問わず、定款に4万円の収入印紙の貼り付けが必要です)
⑫定款作成(株式会社の場合は認証完了後)、登記申請を行う
定款の作成・株式会社の場合は認証が終了すると、最後は登記手続きです。
この登記手続き書類を窓口かオンライン申請で提出した日が、会社の設立日になるのですが、万一書類にミスがあり、書類が受理されなかったり、申請が却下された場合は、これまでの日付へのこだわりが全て無駄になってしまいます。
ですので、この手続きは信頼できる司法書士に依頼して、電子申請で行ってもらうことが確実です。
手順としては、登記に関する添付書類作成→法務局への登記申請(窓口・郵送・オンライン申請)→補正が必要な箇所がある場合は直す(重大な瑕疵(かし、つまりミス)がある場合は却下→問題なければ登記完了、提出日が会社設立日となります。
登記申請の手続きについても、チェックが非常に細かいです。1文字でもミスがあれば修正、ミスの内容によっては全体を作成し直す必要がある場合もあります。
修正が軽微である場合は、書類の差し替えや、何字加入、何字削除などの文面訂正で済むケースもありますが、資本金額が足りない、役員の印鑑証明書類がないなど致命的なミスがある場合は、会社設立日がずれ込むことになってしまう恐れがあります。
ですので、繰り返しになりますが、ちょっとしたミスで、これまでの縁起の良い日狙いが水の泡にならないよう、司法書士に手続き全般を一任することをおすすめします。
もちろん、ここまでの手続きの後も、税務・労務関係の手続きなど多くありますが、期日にこだわる、こだわらない、どちらのケースでも、最初の時点から会社設立専門業者や専門家に依頼する形式の方が、何かとスムースにいき、経営者自身も営業活動・プロダクト開発・広報など他にリソースを割くべき部分に集中できると言えるでしょう。
以上、会社設立の手順について、大まかなことを説明してきましたが、より個別具体的な会社設立の手続きについては、非常に複雑です。
全部自分で会社設立の手続きを行おうとすると、調べること、考えることが多すぎて、会社設立の日取りなど気にする余裕がなくなるかもしれません。
ならば最初から、会社設立専門業者・専門家に会社設立の一任と、希望日にあわせた設立とスケジュールの立案を依頼したほうが、様々な意味でスムースに行くでしょう。
8 まとめ
ここでは起業準備に必要な7つのことを見てきました。何事も準備した通りにはなかなか進まないものですが、準備しておくことで柔軟に対応でき選択肢も増えてきます。起業する前のまだ時間に余裕のある内に、特に人からのアドバイスや経験談を引き出しに収めて、いざという時に取り出せるようにしておくことが大切です。
また、縁起の良い日に会社設立を考えている場合は、最初の時点から専門家に相談・依頼し、専門家にお願いできる部分はお願いしてしまうことが確実と言えます。
希望日に設立が間に合いそうかの確認、そして一度任せたら、大半の会社設立手続きは専門家に任せ、経営者は経営者がすべきことに集中する方が良いということが、会社設立の流れの複雑さを通して、おわかりいただけたのではないかと思います。
実際、会社設立後も、税務・労務など専門家に任せることはたくさん出てきますし、会社組織として部下を育てる局面では、指示し任せる、必要な時は軌道修正をするという
プロセス、つまり「任せる・委任する」ことが大事になってきます。
もちろん、会社設立で縁起の良い日を選ぶことも重要です。縁起の良い日に会社設立をすることができた。この事実だけでも、とても強い験担ぎになります。名経営者であっても、縁起や験担ぎなどを重視する人はすくなくありません。
六曜にせよ、吉日にせよ、一粒万倍日・天赦日にせよ、理由があるからこそ、昔から語り継がれ、今でも慣習として残っているこということがいえます。占いが統計学の側面を持っていたように、各種吉日の慣習も、過去からの経験など、なんらかの経験則・実感などがあるから、語り継がれているのかもしれません。
いずれにせよ、「吉日に会社を設立できたから、うまくいくだろう」という経営者の自信や余裕というのは、周囲に意外と伝わるものです。その縁起の良い日の設立を活かすためにも、できるだけ専門家の力を活用していき、自力だけなく「他力」を活用していきましょう。