デジタル技術の進展や新型コロナの影響などにより経済全般において、インターネットの利用がさらに進展しています。この状況で販売活動を行っていくには、WEBマーケティングの実践が不可欠になってきています。

特に今後の消費を担うZ世代などの若い世代に対応するためにはWEBマーケティングは必須であり、ライブコマースや音声SNSなどの新たなマーケティング手段の活用も求められます。

そこで今回の記事では、WEBマーケティングの内容や事業での活用方法など解説するほか、新しいマーケティング手段の内容をご紹介します。WEBマーケティングの活用方法を知りたい方、ライブコマースなどを活用して既存事業や新規ビジネスを成長させたい方などは参考にしてみてください。

1 コロナ禍以降の消費者行動とビジネス

コロナ禍以降の消費者行動とビジネス

新型コロナの感染拡大が始まって緊急事態宣言が発令されるなどの状況になり、3密(密集、密接、密閉)を避ける行動が消費者に求められるようになりました。その結果、人々は外出しての買物は必要最低限に抑えるようにする一方、ECサイトでの買物を急激に増していったのです。

ECショッピングの未経験者もコロナ禍に遭遇して必要に迫られる格好で始めた方は少なくありません。しかし、実際にECを利用してみると、安全であるほか移動する手間や時間を必要とせずに好きな時間に注文でき、自宅まで配送してくれるため、その利便性に魅了される人が増えたのです。

若い世代のEC利用は以前から多いですが、コロナ禍に遭遇してからは30歳・40歳以上の世代での利用が急増しています。そして、こうした形で利用が進んだECですが、その利便性の高さが認識されたため定着する可能性は高いでしょう。

野村総合研究所は、「生活者1万人アンケート調査」を実施して、調査結果を「日本人の価値観・消費行動はコロナ禍でどう変化したのか」という内容を2021年11月19日に発表しました。

本調査では様々論点から消費者行動が考察されていますが、その主なポイントは以下の通りです。

●消費意識や消費スタイルの変化

この調査では、消費意識に関する質問の回答結果の傾向に基づき、生活者の消費スタイルが、「利便性消費」「安さ納得消費」「プレミアム消費」「徹底探索消費」の4つに分類されています。

その傾向の第一のポイントは、購入する際に価格の安さよりも利便性を重視する「利便性消費」スタイルの割合が2018年の44%から21年に41%へと減少した点です。

第二のポイントは、自分が気に入った付加価値には対価を払う「プレミアム消費」スタイルが18年の22%から21年に24%に増加した点が挙げられます。

世帯年収が2015年度以降増加に転じており、コロナ禍の2021年度もその伸びが続いていることが確認されました。世帯年収が維持される状況を背景に、「自粛生活やテレワークで時間的余裕が生まれ、制限ある生活の中でも楽しみを見出す『こだわり志向』になった」と分析されています。

●中高年層のスマートフォンの利用増

スマートフォンの普及状況を見ると、50歳代では9割程度、70歳代においても半数以上に達しており、中高年層での普及が急速に進んでいることが判明しました。

用途について見ると、情報収集やコミュニケーション、ゲーム、YouTube等での動画視聴、ネットショッピング、ネットバンキング、などとなっており、従来PCで行っていたものまでスマートフォンを利用するようになったのです。

また、情報の利用面では、マス媒体による情報収集は大幅に減少し、消費する時の情報源でも店頭での情報収集は減少しています(コロナの影響あり)。シニア層においても、ネットで売れ筋情報を参照する、評価サイトやブログを参考にする、といったネットでの情報収集が多くなっているのです。

以上のように中高年齢層でのネット利用・スマホ利用が増加し、消費にもネット・スマホが大きな役割を果たしているため、事業者側はこれらの状況に対応するためのWEBマーケティングが求められます。

1-1 ECビジネスの現状

経済産業省は、令和2年度の「電子商取引に関する市場調査」を行い、その結果を2021年7月30日に公表しています。そのEC市場の概況は以下の通りです。

1)国内電子商取引市場規模(BtoCおよびBtoB)の概況

令和2年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.3兆円(前年比0.43%減)とほぼ横ばいです。また、同年のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は334.9兆円(前年比5.1%減)に減少しています。

新型コロナの感染対策として、外出自粛の要請やEC利用の推奨が行われた結果、物販系分野の大幅な市場規模拡大に至った一方、旅行サービス等やサービス系分野の市場規模は縮小しました。

こうした結果、BtoC-EC市場規模全体は830億円の減少で、同市場の規模が増加しなかったのは、本市場調査開始以降で最初です。

一方で、EC化率は、BtoC-ECで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoB-ECで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加傾向となっており、商取引における電子化の進展は継続しています。

*EC化率は、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合

2)国内電子商取引市場規模(CtoC)

近年、個人間EC(CtoC-EC)が急速に拡大しており、令和2年のCtoC-ECの市場規模は1兆9,586億円(前年比12.5%増)と推計されました。市場規模拡大の背景として、新型コロナの影響によって物販系EC市場が拡大したことに伴い、CtoC-ECの利用者が増加した点が挙げられています。

コロナの影響で上記の物販系分野でのEC利用が増大しネットでの取引に対する抵抗感が和らぎ気軽に利用できる雰囲気が消費者の中に形成されつつあり、個人間取引への不安も緩和してきたことが窺えます。

1-2 EC利用の特徴

ここではEC利用の状況や特徴をもう少し詳しく確認しましょう。

1)コロナ禍の新たなEC消費や行動変容

SBペイメントサービス株式会社は、「コロナ禍における新たなEC消費・行動変容に関する調査」を行い、同社サイトにその概要を公表しました。その調査結果の主な内容は以下の通りです。

●コロナ禍でのオンラインによる買物・サービスの利用頻度は10代女性の61.6%が「増えた」

オンラインで買物・サービスを利用した経験のある人に、「コロナ禍でオンラインで買物・サービス利用をする頻度は増えたか」の質問をした結果、「変わらない」との回答が57.3%と過半数でしたが、「増えた」との回答は34.5%で、「減った」の回答(4.8%)の7倍以上でした。

年代別で比べると、10歳代の女性の61.6%、10歳代男性と20~30歳代女性の40%以上が「増えた」と答えており、若い世代で特にECの利用頻度が増したことが確認できます。

●コロナ禍で新たにオンラインにて行うようになったことは「ライブ・コンサート鑑賞」や「誕生日のギフト」

「コロナ禍で新しくオンラインで行うようになったものはあるか」の質問に対して、「ライブ・コンサート鑑賞」(15.0%)、「スポーツ観戦」(8.4%)、「飲み会・歓送迎会」(7.4%)が上位となりました。

その理由では、「人混みなどの感染リスクを避けるため」(52.1%)のほか、アーティストが生ライブを行っていないから、会場に行きたくても無観客で行われているから、などの理由が挙げられています。

オンラインは臨場感が不足する、味気ない、といった不満がユーザーに見られるものの、一定の利用者が確認できました。これは、ライブ・コンサートやスポーツをオンラインで鑑賞・観戦できるようにした事業者の取組の成果とも言えるでしょう。

また、「コロナ禍にて新たにオンラインで贈るようになったギフト・お祝いはあるか」の質問については、「誕生日のギフト」(7.7%)、「母の日・父の日・敬老の日のギフト」(6.7%)、「お中元・お歳暮」(5.9%)が上位となりました。

オンラインで贈る理由としは、「自宅から贈ることができるため」(53.8%)のほか、自宅訪問を避けるため、帰省できなくなったため、といった理由が挙げられています。

各種ギフトは、相手に直接会ってお祝いの言葉と共に渡したいという声が多いものの、コロナ禍で県を跨ぐ移動が制限されるなどの場合、オンラインで贈る可能性は高まるはずです。事業者としては、「相手に直接会ってお祝いの言葉」を伝える部分を補完するサービスも必要ではないでしょうか。

また、「コロナ禍にて新しくオンラインで購入するようになったものはあるか」の質問では、物販カテゴリでは「ファッション・インナー・ファッション小物」(21.0%)が上位に入りました。

オンラインでのアパレルの購入は、サイズ感や色・素材などが判断しにくいという不安があるものの、コロナ禍においても快適な生活を送るにはECとの相性があまり良くない商品等でも購入したいというニーズは小さくありません。

事業者としては、ECサイトでは判断しにくい商品等の部分を分かりやすくするための工夫に取組みそのニーズを取込む努力が求められます。以上のようにEC利用は進むものの、ユーザーの様々なニーズに応えるため、不満や問題を解消するためには、WEBマーケティングの活用が必要です。

2)ECサイトやSNSの消費者への影響

商品の認知から購入に至る過程において、ECサイトやSNSが消費者の購買行動に影響を及ぼします。ここでは、その影響について、Glossom株式会社の「ソーシャルコマースに関する定点調査2021」の内容から説明しましょう。

●ECサイトの月平均利用頻度(性別・年代別)

ECサイトの利用頻度の調査によると、下表の通り15-19歳、20代男性で月3回以上と若年層の利用回数が抜きんでています。

女性は男性よりも利用頻度がやや少ないですが、30代までの若い世代が40代以降の世代より多いのが特徴です。高齢者になるほど利用頻度が少なくなるのは男女ともに共通しています。

単位:回/月

  15-19歳 20代 30代 40代 50代 60代 70代
男性 3.12 3.27 2.45 2.00 2.10 1.97 1.75
女性 2.23 2.24 2.24 1.78 1.92 1.82 1.65

 

ECサイトの利用金額の調査では、1回あたりの平均利用金額で見ると、40代50代60代の高年齢層が高く、月での平均利用金額も同様に高いです。この背景には年代ごとの利用可能な金額の違いが影響しているものと、分析されています。

事業者としては、利用金額はやや劣るが利用頻度の多い若者層と、利用頻度はやや劣るが利用金額が多い高齢者層へのアプローチや取扱等に関する工夫が重要になるでしょう。

●商品・サービスを購入する(予約、ダウンロード、資料請求 等を含む)際の認知、参考、後押しに関する情報源

商品・サービスを購入する際の「知るきっかけとなる情報源」の調査では、最も割合が多かったのはECサイト(46.8%)で、テレビ番組・テレビCM(39.3%)を上回っています。

ECサイトの利用が消費者にとって身近になり、小売りの場として実店舗と同等、もしくはそれ以上の影響力を持つようになりました。また、事業者が容易にECサイトを構築できるサービスやCRMツールを活用することで、ECサイトはユーザーを囲い込むコマースプラットフォームになります。

認知では、検索エンジンがテレビ番組・テレビCMと並ぶ水準の38.8%で、欲しい商材があった場合には検索エンジンを利用して認知しようとする行動が一般化してきた、との分析です。その次が店頭(32.7%)で、それにSNS(30.5%)(18項目中5位)と続いてています。

商品・サービスを購入する際に、知るきっかけとなる情報源を性別・年代別に見ると、15-19歳男性、15-19歳、20代女性では商品・サービスの認知に際しての情報源としてSNSが最も高いです。

40代、50代、60代、70代の高年齢男性ではECサイト、50代、60代女性はテレビ番組・テレビCMを情報源とする傾向が最も強く、性年代により認知経路の傾向に違い見られます。つまり、ターゲットの認知経路を理解した対応が必要です。

●情報源が購買プロセスに与える影響

商品・サービスを購入する時に「知るきっかけとなる情報源」(認知)「買う際に参考にする情報源」(検討)の割合の比較において、ECサイトでは認知を1とした場合の検討は0.85で、テレビ番組・テレビCMは0.57と大きな乖離が見られました。

つまり、ECサイトの方がより認知から後押しまでの各購買プロセス間の乖離が小さいです。また、SNSについては認知、参考、後押しの各購買プロセスの乖離が他情報源と比較して最も小さくなっています。

認知、参考、後押しのどのプロセスでも、15-19歳男女、20代男女、30代男女に関してはSNSを通じての情報取得が他年代と比較して高いです。その点から若年層に関しては、その購買プロセスとしてSNSが主流になっている、と分析されています。

●SNSを参考にしたことがある商品、サービス

各商材を認知するきっかけがSNSである割合については、女性では日用品、食料品、化粧品などの非耐久消費財の割合が多いです。15-19歳、20代の若年男性ではゲーム・アプリの割合が多くなっています。

このように性別や年代について見ると、日常ニーズがある分野においてSNSが起点となる購買行動が一般化しているのです。

なお、商品・サービスの購入の際に認知するきっかけとなる情報源を見ると、若年層ではSNSでの発信内容が情報源となる割合が多いです。特に若い女性についてはインフルエンサーからの情報発信とする割合が多くなっています。このように若い年齢層においてはSNSが購買の起点となっているのです。

●購買行動に対するインフルエンサーの役割

インフルエンサーの発信情報に影響を受けるSNSの内訳を見ると、女性ではすべての年代でInstagramが最も多く、若年層ではその傾向が強く見られます。Instagramの利用時間が伸びている理由では、インフルエンサーの情報発信をユーザーが積極的に取得しようとする点が指摘されています。

男性は女性よりもYouTubeから情報取得する割合が全年代で高くなっており、女性の15-19歳ではTikTokからの情報取得の割合も高いです。

このように性別や年齢層などにより利用するSNSの傾向が異なりますが、購買に関してはInstagram、YouTubeやTikTokなどの影響が大きく、事業者はそうした状況を踏まえたメディアやインフルエンサーの利用の検討を欠かせません。

2 増々重要となるWEBマーケティングとは

増々重要となるWEBマーケティングとは

インターネット利用が一般化する現代では、事業者は従来のマーケティングに加えWEBマーケティングの活用が不可欠です。ここではニューノーマル下でも重要となるWEBマーケティングについて確認していきましょう。

2-1 WEBマーケティングの概要

まず、WEBマーケティングの内容を簡単に解説します。

1)WEBマーケティングとは

WEBマーケティングとは、オンラインショップなどのWEBサイト等を通じて多くのユーザーを集客し、サイト等に掲載した商品やサービスなどの購入を促すための活動や仕組みのことです。

WEBマーケティングは従来のマーケティング要素の「プロモーション」の部分に関係しますが、インターネット上のやり取りに関連する行為が主な対象になります。

たとえば、一般的なマーケティングでは、テレビCMや雑誌広告などのマス広告を利用して顧客を集める「集客活動」、来店した顧客に商品・サービスなどを購入させる「販売活動」が実施されますが、WEBマーケティングではそうした活動をオンライン上で対応するものになるわけです。

WEBマーケティングの具体的な手段としては、一般的に、ブログ、SNS、WEB広告、Eメール、アフィリエイトやSEO(検索エンジン最適化)などがあります。

2)WEBマーケティングの主な特徴

WEBマーケティングの集客活動は、WEBサイトやWEB上の各サービスにおいて、リスティング広告(検索連動型広告)などの各種の広告手段等で行われます。

そのWEB広告のタイプは様々ですが、WEBマーケティングではどのメディアやサービスでどのようなWEB広告を使用するかが重要です。そのメディアや対象とするユーザーなどに適した広告方法を選ばないと広告効果が得られず上手く集客できないことも少なくありません。

また、希望の集客数を確保できたとしてもそれが購入・売上に結び付かないケースも多いです。広告で自社のサイトや販売ページに誘導できたとしても商品・サービスの魅力が伝わらず、買いたいと思える情報が見い出せない場合などでは訪問者は購入せずに去ってしまいます。

そのためWEBマーケティングでは、購入を促す情報提供、訪問者を魅了する商品説明や画像・映像の表示、購入を決定づける値引・優待等のサービス提供、などが必要です。

ただし、こうしたWEBマーケティングの手段を講じても売上という成果に繋がるとは限らないため、そうした手段の状況を分析し改善する活動もWEBマーケティングには含まれます。

WEBマーケティングの活動はデジタル技術を利用したものであるため、「どの広告からどれだけ集客できたか」「誰が、どのページを、何回閲覧したか」「各ページに、訪問者がどれくらいの時間滞在したか」などのデータを確認することが可能です。

つまり、集客活動や販売活動の結果を分析することができるため、誘導方法や情報の表示・掲載方法などに関する対策を立て状況を改善できます。

また、直接的な集客活動や販売活動ではないですが、顧客との良好な関係を作り維持していくことも重要なマーケティング活動であり、WEBマーケティングでも同様です。EメールやSNSなどで消費者を囲い込み自社のファンになってもらえば、彼らは潜在的な顧客から実際の顧客になる可能性が高まります。

2-2 従来のWEBマーケティング

ここでは一般的に利用されているWEBマーケティングの代表的な手段を簡単に紹介しましょう。

1)SEO(Search Engine Optimization)対策

SEOは一般的に「検索エンジン最適化」と表現されています。SEO対策は、Google検索エンジンが実行するアルゴリズム(処理手順)を理解し、検索エンジン上で自社サイトが検索結果の上位に表示されるようにする取組(対策)と言えるでしょう。

消費者等は自分が欲しいものや情報をインターネットで調べるのが一般的になってきましたが、その際にGoogleなどで調べたいモノについてその関連するキーワード等を入力して情報(サイト)を探します。

従って、商品やサービスを提供する事業者側にとっては、自社のサイトがその検索結果の上位に表示されるほど集客に繋がるため、SEO対策が実施されているのです。

2)WEB広告

WEB広告とは、WEB上のメディア(WEBサイト・SNS・動画・メールなど)で商品等の紹介・PRなどを掲載する広告を指します。WEB広告には以下のような多様なタイプがありますが、誰を対象とするか(低関心層、潜在層、顕在層、顧客層等)を踏まえて決定することが重要です。

リスティング広告、アフィリエイト広告、ディスプレイ広告、リターゲティング広告、ネイティブ広告、記事広告、SNS広告、動画広告(YouTube広告)、リワード広告、デジタル音声広告、メール広告、等

以下に代表的な広告を紹介しましょう。

・リスティング広告

リスティング広告は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンが実行した検索結果に伴って画面に表示されるテキストの広告です。

具体的には、出稿の際に検索キーワードを指定し、そのキーワードで検索された結果として表示されるページの広告スペースに広告文が表示されるという形態になります。

この広告で、その広告文がクリックされた場合に広告費が発生する仕組みで、クリックされない場合は(表示されるだけでは)費用負担は生じません。SEO対策の場合、適切な手段を講じても検索上位に表示されるまでには一定時間を要しますが、リスティング広告ならキーワードが合致すれば表示されるため即効性があります。

つまり、リスティング広告は短期間での集客効果が高いため、購入の可能性の高いターゲットへの訴求として特に有効です。

・アフィリエイト広告

アフィリエイト広告は、ユーザーが広告をクリックし、広告主のサイトで商品購入や会員登録などの「成果」が生じると、報酬が支払われるという「成果報酬型広告」のことを指します。

数あるWEB広告の中でも費用対効果が優れていると言われており、インターネット集客に重要な手段として、多くの企業に利用されているのです。この広告は、キーワード次第で多くの層をターゲットとすることが可能で、商品を比較したい「顕在層(見込層)」などに特に有効と見られています。

・ディスプレイ広告

この広告は、画像・動画、テキストを使用した広告で、WEBサイトやアプリなどの広告枠に表示される広告です。広告費用は、ユーザーがクリックするごとに課金されるクリック課金制が一般的に採用されています。

ディスプレイ広告は、ビジュアル性が高く、訴求内容が具体的であることが多くクリックに繋がりやすい広告です。潜在層に対して商品やサービスの認知度を向上させるほか、購入意欲がある顕在層へのアプローチにも効果が期待できます。

・リターゲティング広告

リターゲティング広告とは、過去に自社サイトを訪問したユーザーに表示する広告です。ユーザーがすでに認知して商品やサービスの広告が表示されるため、何も知らないユーザーに広告を掲示するより、コンバージョン率(CVR:WEBサイト訪問者のうち、購入や問い合わせなどそのWEBサイトの最終成果に至った件数の割合)が良くなる可能性があります。

リターゲティング広告には、顕在層にアプローチできると成果に繋がりやすいというメリットがある一方、ユーザーは同じ広告を繰り返し見せられることになるため悪い印象を持ちかねないというデメリットもあります。

3)SNSマーケティング

SNSマーケティングとは、Facebook 、Twitter、Instagram、LINEやYouTubeなどのSNSを活用したマーケティングのことです。SNSは、広告、情報発信や交流等の手段として、企業や商品の認知向上、ファンづくり、などにより活用され、企業のブランド価値や業績のアップに貢献しています。

SNSマーケティングの具体的な活動としては、企業アカウントの運用、SNS上のイベント開催、SNS上の広告、インフルエンサーマーケティング、ソーシャルリスニング(ユーザーの声の収集・分析等)やソーシャルコマース(後述)などです。

SNSマーケティングの最大の特徴は、他のWEBマーケティング手法よりも、ユーザーとのコミュニケーションを密接に行う点が挙げられます。その濃い交流を通じてブランディングやファンづくりなどの効果が期待されているのです。

従って、SNSマーケティングは集客にも効果があるほか、未知のユーザーなどをファンや顧客に育てるといった機能も果たします。

3 新しいWEBマーケティングとその特徴

新しいWEBマーケティングとその特徴

最近、注目されているWEBマーケティングとして、ソーシャルコマース、ライブコマースや音声SNSなどを紹介しましょう。

3-1 ソーシャルコマース

ソーシャルコマースとは、SNSの「ソーシャル」とECの「コマース」を掛け合わせた造語で、主にSNS上で展開される「商品やサービスを販売・販促する仕組み」のことです。

従来、SNSとECは別々のプラットフォームとして機能するもので、購買行動関連ではSNS上で気になる商品・サービスと遭遇・認知し、それらについてECサイトで検索して検討・購入する、という機能を提供しています。つまり、SNSが集客の場、ECが販売の場として機能しているわけです。

しかし、この購買プロセスをユーザー視点でみると、販売側・著名人等の投稿でユーザーが「SNS上で商品等を発見」した後、「ECサイトへ移動」して「商品等を探索(検索)」する、そして「比較検討等の後購買を決定」するという異なるプロセスをまたぐという手間が生じています。

ソーシャルコマースの仕組みは、上記のプロセスをもっとシンプルにしてユーザーの手間を減少させるものです。たとえば、ソーシャルコマースでは「SNS上で商品等を発見」した場合に、それらについて「SNS上から検討・購入」へと直接的に進めるようになっています。

つまり、SNSとECを連携させ、集客および販売の場の両方の機能を果たせるようにしているのです。この仕組みによって、ユーザーと販売側には各々以下のようなメリットが期待できます。

販売者側:
・EC部分に進む場合関心が高いため、購入までの離脱が少ない
・そのSNSを利用している層をターゲットとした販売促進が容易である
・連携システムの構築が容易で費用負担も小さい
・SNSを通じた交流でファン化やロイヤリティの向上が可能である

 

ユーザー:
・興味を持ったものを直ぐに検討・購入しやすい
・ECサイトへの移動といった操作の手間が減る

なお、ソーシャルコマースにはいくつかのタイプがありますが、投稿やライブ配信などから商品等を直接購入できる「SNS型」が主流です。

3-2 ライブコマース

ライブコマースとは、インターネットを利用したライブ配信で視聴者に商品を紹介し、彼らをECサイトなどへ誘導して購入を促すオンライン販売の方法を指します。

形式的にはテレビショッピングに似た販売方法と言えますが、動画配信であるため、ECサイトでのテキストや画像では伝えにくい特徴や魅力をアピールできる点が特徴です。

また、チャット機能を利用できれば、視聴者はリアルタイムで質問や相談ができるため、双方向のコミュニケーションにより購入に関する問題解決を図り購入を促すことができます。

たとえば、ライブ動画上に視聴者からのコメントが随時表示される機能が採用されている場合に、視聴者から「その商品の反対側が見たい」というコメントがでれば、司会者等がその要望に反応して即座に反対側を映し出すという対応が可能です。

このようにライブコマースでは、視聴者は実際の店舗等にいなくても商品等を映像と売手側とのコミュニケーションにより確認できます。

また、事業者にとっては、ライブコマースは、テレビショッピングのように多額の放送料(広告費)や販売数量に伴う成果報酬の支払いも発生せず、低コストでの運用が可能です。一定の機材や通信環境の整備は必要ですが、それほど大きな投資負担にはならないでしょう。

世界的にライブコマースの状況を見ると、中国が最も盛んです。中国には、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる、SNS上で多数のフォロワーを獲得しているインフルエンサーが存在していますが、彼らを使ったライブコマースが多く見られます。

Jetro(日本貿易振興機構)によると、「2021年の中国のライブコマース市場は前年比90%増の1兆9,950億元(約33兆9,150億円、1元=約17円)に達する見込み」とのことです。

一方、日本のライブコマース市場は盛んと言える状況にはありません。MMD研究所が実施した「ライブコマースに関する利用実態調査」によると、ライブコマースの利用経験者は12.7%(5,000人中)、認知は43.2%でした。

このように日本でのライブコマースの利用はまだ低調ですが、コロナ禍以降ではオンライン販売の拡大に有効な手段として普及する可能性は低くないでしょう。

3-3 VSOや音声SNS

インターネット上の情報発信やコミュニケーション等はテキストや画像・映像のデータが主に利用されてきましたが、最近では音声も積極的に活用されはじめビジネスで使用されるケースが見られるようになりました。たとえば、VSOや音声SNSなどです。

VSO(Voice Search Optimization)は、ユーザーが音声検索した場合に、自社サイトやコンテンツが上位に表示されるようにするための音声版のSEO対策と言えるものです。

AIを含めたITの発展に伴い音声アシスタント機能をもったPCやスマホなどの情報端末が普及し始め、ユーザーが音声で様々な情報を入手するスタイルが定着してきました。つまり、音声検索するユーザーが増えたわけです。

SEO対策では「京都駅 食事処 おすすめ」といった各検索ワードの入力を想定した対策が求められます。しかし、音声検索の場合、ユーザーが発する「京都駅に近いおすすめの食事処はある?」といった文章での対応が必要です。つまり、VSOはSEO対策とは異なったアプローチでの対応も必要になります。

現在の日本では音声検索を積極的に利用するユーザーはまだ多くないですが、音声による入力や検索が当たり前の時代が近づいていると考えられることから早めにVSOに取組むことは重要です。

音声SNSは、ユーザー間のコミュニケーション・交流などを目的とした音声によるSNSで、TwitterやInstagram、facebook等の音声版と言われています。音声SNSには、ライブ配信やコラボ配信の機能などがあり、各ユーザーは音声でチャットやコミュニケーションが行えます。

音声SNSの代表格であるClubhouse(クラブハウス)は、招待制の音声配信SNSでした(現在、招待制は廃止)。繋がりのあるユーザー同士で自由に会話を楽しむ、興味ある人はその会話を聞く、その会話に飛び入り参加する、ことがリアルタイムでできます。

Clubhouseでは、「ルーム」と呼ばれるチャットグループ(会話部屋)が作られ、その中で会話をしたり、話を聞いたりするという使い方が基本です。ルームを最初に作成した人は「モデレーター」と呼ばれ、モデレーターがそのルームに繋がりのある人を招待します。

また、そのルームがオープンしている時に視聴したい人は「オーディエンス」として参加することが可能です。

なお、2021年7月に「完全招待制」が廃止され、Clubhouseは招待がなくても会員登録や会話への参加ができるようになりました。また、Clubhouse内の音声配信や会話はリアルタイムで行われますが、2021年11月から録音・アーカイブが可能な「Replay機能」を有する「ルーム」が登場しています。

4 新しいWEBマーケティングの活用例

新しいWEBマーケティングの活用例

ここではソーシャルコマース、ライブコマースと音声SNSの活用事例を紹介しましょう。

4-1 アパレル販売のソーシャルコマース事例

●企業概要

  • ・企業名:株式会社DHOLIC FBL
  • ・所在地:東京都渋谷区南平台町
  • ・事業概要:ファンション・コスメの販売(通販および実店舗での販売)

●利用メディア

Instagram

●事業の特徴

同社は主に韓国のアパレルやコスメの商材を輸入して日本で販売する会社です。そのため韓国に興味のある日本の消費者(特に女性)をターゲットとしています。

事業の特徴は、売上の大半を占める通販事業では在庫を持たず、注文が入ると韓国の仕入先へ発注して日本へ発送させる、という仕組みです(顧客には最短4・5日で届く)。

また、通販用のアパレル商材は毎日数十着の入荷(新作)が可能となっており、それらをサイトに掲載した場合24時間限定での10%割引が提供されます。その初日が購入チャンスとなるため、毎日サイトをチェックするユーザーは多いです。ほかにも「今だけセール」や「タイムセール」などもあります。

なお、同社は通販での実績をもとに売れ筋の商品を実店舗で品揃えして販売の拡大と在庫増の防止に取組んでいるのです。

送料は1回の注文で550円(全国一律、税込)です。ただし、商品代金合計5,000円以上(税込)(代引きの場合8,000円以上)の購入の場合は無料となるため、一定額以上の購入が期待できます。

収益を悪化させる「売りつくしセール」の必要のない無在庫販売、運賃負担をカバーする一定額以上の販売、新作を値引きで販売する集客、といった競争力を有するビジネスシステムが組まれています。

●同社ソーシャルコマースの内容と活用ポイント

同社はInstagramのショッピング機能を活用して、売上拡大に繋げています。

Instagramの「ショッピング機能」とは、Instagramの投稿で掲載する商品に商品名と価格を記した「ショッピングタグ」を付ける機能のことで、ユーザーは簡単にその商品を検討したり購入したりできます。

この商品タグには商品購入ページのリンクが埋め込まれ、クリックすれば自社のホームページやECサイトへ移動するようになっており、ユーザーを購入へと誘導することが可能です。

同社は、「商品掲載から24時間限定の10%OFF」となる新作などに、Instagramと同社ECサイトを連動させています。それまでの「24時間限定10%オフ」では十分な成果が得られなかったですが、インスタグラムとの連携でユーザーをECサイトへ誘導できるようになったのです。

Instagramへの投稿は商品ごとに行うのが基本で製品タグも主に1つで対応されているため、見やすくなっています。投稿によりユーザーに興味を持たせ、直ぐに購買行動へと誘導できるシステムとして機能しているのです。

4-2 デパートのライブコマース事例

●企業概要

  • ・企業名:株式会社三越伊勢丹ホールディングス
  • ・所在地:東京都新宿区西新宿
  • ・事業概要:百貨店業等の事業を行う子会社およびグループ会社の経営計画・管理ならびにそれに附帯または関連する事業

●利用メディア

Instagramのライブ配信機能(インスタライブ)等

●同社のライブコマースの概要

三越伊勢丹は、デジタル技術を活用した、お客との新しいコミュニケーション活動として、ライブショッピング(三越伊勢丹ライブショッピング)を提供しています。

ショッピングのテーマ・内容は、お中元やお歳暮等の定番の企画のほか、おせちやスイーツなどの食品、フィットネス器具、バッグ、スーツ、ギフト類、海外特産品、など様々なテーマが設定されてライブショッピングが実施されているのです。

ライブショッピングでは、スタッフやインフルエンサー等がショップ側などと協力してライブショッピングを進めます。たとえば、食品・料理などのイベントでは有名シェフが登場してお店のコンセプトや商品等を紹介・説明しつつ、視聴者からの質問や相談等に対応しながらオンラインで購買するように誘導しているのです。

●三越伊勢丹ライブショッピングの活用ポイント

・特色あるイベントの開催

同社のライブショッピングはテーマが多彩で幅広い層の顧客をターゲットとして売上拡大に繋げています。たとえば、お歳暮商品のイベントでは東京国立博物館と協業したお菓子等の商品(尾形光琳の「風神雷神図屏風」を蓋に描いた上野風月堂の菓子詰め合わせ等)を紹介していました。

また、アパレルでは小柄な女性をターゲットとする「150cm-ish”STYLE”」というイベントを企画しています。特色あるテーマを選んで消費者の興味を引き、その商品の良さ、希少性などをライブ配信でアピールしているのです。

・質問や相談への対応

ライブ配信中に視聴者からの意見、質問や相談等が表示されるようになっており、司会者(販売員等)はそれに反応して商品等を説明できます。そうした対応が視聴者の満足を高め購買へと繋げているのです。

実際に来店しなくても知りたいこと、確かめたいことがライブ配信で確認できれば来店せずに購入してもらえる確率は高まります。同社のライブショッピングではその点の対応が充実しているのです。

・インフルエンサー等の活用

人気のあるインフルエンサーや著名人などを招いたライブショッピングは販売に大きな影響をもたらす可能性が高く、同社はそれを実施しています。また、SNSのインフルエンサーを活用することでそのフォロワーを同社のECサイトへと誘導することも可能で売上増に繋がっているのです。

4-3 オンライン直売所の音声SNS事例

●企業概要

  • ・企業名:株式会社ビビッドガーデン
  • ・所在地:東京都港区浜松町
  • ・事業概要:全国の生産者から食材や花などを直接購入できるオンライン直売所『食べチョク』の開発・運営

●利用メディア

Clubhouse

●同社の音声SNSの概要

食べチョクの秋元里奈社長や同サイトのスタッフが音声SNSの「Clubhouse」を利用して、『農家漁師の井戸端会議#食べチョクハウス』を配信しています。生産者や消費者が気楽に集まって、お互いを身近な存在として感じながらカジュアルに話せる場となれるように運営されているのです。

このルームでは、生産地や現場の状況、各産地の特徴、旬の食材や美味しい食べ方などについて秋元社長等が生産者と直接話をする形態になります。生産者は食べチョクへの登録・出品の有無に関わらず、話者(スピーカー)となって参加することが可能です。

こうした生産者の声を日常的に配信することが、「一次産業への理解促進や生産者のファン作り」に結び付くと期待して同社は実施しています。

なお、食べチョクでは、同ルームにリスナーとして参加した人からTwitter投稿してもらい、それをフォローするという対応も取っています。つまり、音声SNSだけの一時的な交流に留めず関係を構築・維持できるように努めています。

●「食べチョクハウス」の活用ポイント

・食べチョクの認知向上

音声SNSを利用することでオンライン直売所や食べチョクを今まで知らなかった人達に認知してもらう効果が期待できます。『農家漁師の井戸端会議#食べチョクハウス』の設置がプレスリリースされ、実際に話題となりました。

・直売品や生産者へのファンづくり

生産者の話を直接聞く、生産者に質問する、などの交流を通じて生産者やその生産品に興味を持たせファンになってもらうことが期待できます。ECサイトのテキストや画像では説明できない生産品の特徴や魅力のほか、生産でのこだわりなどが知ることもできるため、音声SNSは熱心な支持者の発掘・育成に有効です。

もちろん食べチョクのユーザーのすそ野を広げる効果も期待できるでしょう。

5 起業・会社設立等で活用したいWEBマーケティングの進め方

起業・会社設立等で活用したいWEBマーケティングの進め方

起業や会社設立して事業を進めて行く際にWEBマーケティングをどのように活用していくか、その進め方について説明しましょう。

5-1 WEBマーケティングの進め方の要点

ここでは新しいタイプも含めWEBマーケティングを事業で活用していく場合のその始め方のポイントを解説します。

1)目的の明確化

一般的なマーケティングを含め、どのようなマーケティング手段を用いるかを決定するのは現状の課題に依存します。つまり、事業状況を分析し課題を把握しそれを解決するための手段として、それに最も有効なマーケティング手段を検討するのです。

そして、WEBマーケティングを検討する場合も同様のことが言えます。たとえば、起業して知名度がなくブランディングが上手くいかない場合、「WEBマーケティングを何か利用できないか」と考え、それに最も適した手段を検討していくという考え方が基本になります。

「開業して間もなく自社事業の認知度が低い状況で、ユーザーやファンを少しずつでも増やしていくにはどうすればよいか」「自社サイトへのアクセス数を増やすにどうすればよいか」という課題を想定した場合に、それを解決するWEBマーケティングの手段を検討するのです。

なお、WEBマーケティングの場合、主な目的は「ブランド認知度の向上」や「検索エンジンでの上位表示」などになりますが、それらの目標を達成するためのカギとなる指標(KPI)の設定も必要です。

たとえば、「ブランド認知度の向上」を目的とする場合、それに対応するKPIとして「リーチ数」「CVR」や「インプレッション数(広告が表示された回数)」などを設定します。

このように課題を明らかにし、それを解決するための目的(あるべき状態)およびそれに対応するKPIを設定し、それらに最も適したWEBマーケティング手段を選定する、という流れになることを理解しておきましょう。

ただし、課題解決に対応するWEBマーケティングの手段を選定するには、その手段の特徴、メリット・デメリットなどの理解が欠かせません。

2)ターゲットの明確化

WEBマーケティングでもターゲットを明確にして手段を検討することが重要です。

WEBマーケティングでは、「どのような人に情報を伝えるか」や「どのような人とコミュニケーションをとりたいか」といった観点からターゲット像を設定する必要があります。具体的には自社にとって最も重要かつ象徴的といえるユーザーの姿を「ペルソナ」として設定するのです。

たとえば、年齢・学歴・年収・居住地・家族構成といった属性情報、ライフスタイルや価値観、よく出かける場所、就業後や休日の過ごし方、などのほか、よく見るサイトや使用するアプリなどで見られる行動特性、などによりペルソナは設定されます。

3)WEBマーケティング手段の選定

そして、想定される目的・KPIとペルソナに対して有効なWEBマーケティング手段が検討されなければなりません。

ただし、ターゲットがどのようなプロセスを経て購買行動に至るのか、について再点検し目的・KPI・ペルソナの設定が適切であるかの確認が必要です。そのためには前提として購買行動プロセスの把握が欠かせません。

インターネット通販が主流になりつつある現代の購買行動プロセスとしては、「Attention(認知)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)」等のモデルが重視されています。

また、SNSがビジネスで利用される現代では、「Viral(口コミ)→Influence(影響)→Sympathy(共感)→Action(行動)→Share(共有)」のモデルも重要になってきました。

購買行動プロセスの把握

こうした購買行動プロセスを踏まえた上で目的・KPI・ペルソナに対応する最適なWEBマーケティング手段を選定しましょう。

4)運用体制の整備

WEBマーケティングを誰がどのように実施していくかを決めなければなりません。その運用ポリシーや運用マニュアルをつくり、どの部署やどの担当者がWEBマーケティングを運用していくかを決める必要があるのです。

たとえば、SNSの運用の場合、マニュアル作成では投稿する回数や頻度、投稿の情報量や実施時間、投稿原稿を作成する手順(作成から承認まで)、画像を投稿する方法(画像形式等)、動画の投稿方法、などを決めておきます。

運用する部署および担当者を選定し、彼らを監督・支援する上位職者を決めておくことも重要です。

5)PDCAの実行

上記の運用体制が整備されれば運用開始となりますが、その前に実施計画(P)を立案しておきます。目標を達成したい時期や経営資源の制約などから講じられる手段やその内容が影響を受けることになるため、それらを踏まえた実施計画の策定が不可欠です。

計画が策定され各手段の実施時期になれば運用を開始していく(D)ことになりますが、運用したらそれで終わりではなく運用の成果の確認(C)と修正(A)も必要になります。

確認と修正は、実施した結果のデータを分析して設定したKPIの値で評価し、満足できない結果の場合は運用上の問題点や改善点を特定し修正していかねばなりません。

5-2 WEBマーケティングの主要な施策ステップ

WEBマーケティングの施策は、主に「集客」⇒「接客」⇒「リピート促進」の3ステップで実施されます。そのため先のWEBマーケティングの進め方は、このステップの流れを踏まえての検討が必要となるのです。

1)集客

WEB上の集客はターゲットに対して自社サイトへのアクセスを増やすための活動で、一般的には以下のような方法が利用されています。

A 検索エンジンからの集客

Google等の検索エンジンを経由してアクセスに繋げる方法です。代表的な方法では先に紹介した以下のような方法が挙げられます。

・SEO対策

(音声検索はVSO。Googleマップで自社情報を上位表示させるには「マップエンジン最適化」という方法が有効)

・リスティング広告

B SNSを活用した集客

SNSで集客する方法は主に2種類です。

・アカウント運用による集客

この方法は、企業や店舗がSNSのアカウントを取得して運用し、フォロワーを増やして彼らに自社の商品・サービス等に関する情報を届けて集客するという方法になります。

情報をより直接的に、実感できるように届けるには「音声SNS」の利用が有効です。通常のSNSの場合、人気のあるインフルエンサーや著名人等による投稿で集客するケースがよく見られますが、音声SNSの場合はさらに大きな効果が期待できます。

インフルエンサー等の話が直接聞ける、会話ができる、プライベートな情報が得られる、といった点から聴者を集めフォロワー数の増大を図ることも可能です。

・SNS広告による集客

SNS広告はSNSのプラットフォームを利用して出す広告のことで、TV等の従来のマスメディアよりも低コストである上に、細かなターゲティングが可能などのメリットがあります。

C 外部サイトからの集客

これは、外部サイトから自社サイト等へ呼び込む集客方法です。具体的には、ディスプレイ広告、リマーケティング広告、アフィリエイト広告、記事広告、ポータルサイト、オウンドメディア、などの方法が利用されています。

D 直接呼び込む集客

この方法は、URLをブラウザに入力するアクセス、ブラウザのブックマークからのアクセス、スマホのアプリからのアクセス、など参照元が分かりにくいアクセス(直接流入)により集客するものです。効果的な対策を取ることは難しいですが、一般的には以下のような方法が取られています。

  • ・名刺やメールのフッター上でURLやQRコードの掲載
  • ・店舗の壁や入り口等へのQRコードの掲載
  • ・チラシにQRコード等の掲載
  • ・ダイレクトメールの配信

2)接客

このステップの内容は、集客したターゲット等に自社の商品・サービスの魅力を伝えたり活用方法を提案したりして、注文や質問・相談などの購買行動に繋げるという活動です。

なお、接客施策は、「直帰率」「離脱率」「CVR」の観点から検討することが重要になります。直帰とは、自社サイトに誘導したものの直ぐに他へ移動する行為のことで、全訪問者に対する、直帰してした人の割合が「直帰率」です。

直帰率を減少させるためには、特に最初に訪れる自社サイトのページ(ランディングページ:LP)の改善が求められます。欲しい情報が少ない、分かりにくい、見にくい、利用の仕方や操作が複雑、などの問題がないか分析し最適化(ランディングページ最適化)しなければなりません。

離脱率は、訪問者が1訪問あたり平均何ページを閲覧したかを表す指標で、「サイト内回遊率」が利用されることが多いです。LPから次のページなどに移動してもらえないと購買行動に繋がらないため改善が必要になります。

たとえば、ページタイトルと内容がマッチしていない、関連ページへの動線がない(サービス内容のページ→料金表のページ 等)、ページ表示に時間がかかる(データ量が多くページの表示に時間がかかる 等)、といった問題・原因を確認し改善策を施すわけです。

CVRは「コンバージョン率」のことで、訪問者がWEBサイト側にとっての「目標の行動」をとってくれた割合を指します。目標は「資料請求」「会員登録」や「購入」などになります。

CVRが低い場合は、おもに「入力フォームの構造」「広告出稿の方法」「サイトの内部構造」が原因となるケースが多いです。こうした原因を探り改善策の策定・実施が求められます。

新WEBマーケティングの活用では、ソーシャルコマースは集客並びに接客のステップで有効です。特に接客への動線が明確かつスムーズに実施できる、人気のインフルエンサー等を有効活用できる、などの点が大きな武器になるでしょう。

ライブコマースも集客に有効であるほか、ライブ配信で商品・サービスの魅力をより直接的にアピールできるため購買行動に繋がることが期待できます。また、人気のあるインフルエンサー等の活用はより直接的に販売増に繋がる可能性が高いです。

3)リピート促進

リピート促進とは、1度自社サイトへ訪問してくれたターゲット等に対し、再び同サイトへアクセスしてもらうための施策になります。具体策としては、メールマガジンの発行やリターゲティング広告の出稿、などです。

また、再訪問を促すためには関係性の構築が重要となるため、最近ではSNSを通じた交流が重視されています。そのため通常のSNSの活用だけでなく、音声SNSを利用してより親密なコミュニケーションを行ったり、コミュニティを形成したりしてターゲット等を囲いむことは重要です。

また、ライブコマースのライブ配信の中でユーザー等からの質問やコメントなどに対応してサイトへの親近感を高めファンになってもらう取組も有効でしょう。

6 まとめ

起業・会社設立で役立つWEBマーケティング

コロナ禍以降、インターネット利用が以前に増して進んでおり、事業者としてはWEBマーケティングの活用が不可欠となってきました。デジタル化の進展に伴いWEBマーケティングの手段も新しいタイプが登場してきており、上手く活用できれば業績向上に役立ちます。

しかし、課題やターゲットなどの違いにより活用すべき手段は異なってくるため、自社の状況を分析しそれに適した施策を採用することが重要です。この機会にWEBマーケティングについて学び自社の事業に合った施策を活用できるように取り組んでみてください。