会社法の改正やIT技術の発展に伴い、以前と比べると気軽に会社を設立しやすくなりました。以前は資金力がある方や既に事業を成功させている方でなければ中々会社を設立できませんでしたが、近年はサラリーマンや学生で会社を設立する方も増えてきています。
以前よりも簡単に会社設立できるとは言え、会社設立を行うためには法律に則った手続きを経なくてはいけません。会社設立を初めて行う方にとっては、難しい上に面倒に感じるかもしれません。

そこでこの記事では、会社設立を行う方が疑問に思いがちな点について、一つ一つ解説していきます。会社設立に際しては数多くの疑問や不安がありますので、今回は厳選して31個の質問にお答えしていきます。定款作成や会社の種類といった基本的な部分から、株式譲渡制限会社や現物出資など、比較的専門性の高いトピックについても取り上げました。初めて会社を設立する方はもちろん、今後会社を設立したいなと漠然と思っている方はぜひ参考にしてください。

目次

1 会社設立を決めるタイミングは?

会社を設立するためには、一体どこまで準備をしておく必要があるのでしょうか。実際に起業をする前に確認しておきたい事項を後になって気づく場合は少なくありません。計画を立てないで始めるのではなく、会社を設立する前に準備しておくべき手続きをチェックしておくことが必要です。

会社を設立することを考え始める時期は、例えば次のようなタイミングです。

  • 個人事業の売上が上がってきた時
  • 事業規模を拡大する必要を感じた時
  • 所属の会社から独立を認められた時

個人事業の売上が増加して利益が大きくなることから、確定申告で届け出る税金についても負担が大きくなってきます。そのような状況で考えられる対策の一つが法人化です。法人化するべき理由として、所得税が減らせる点が挙げられます。

例えば、会社の社長が役員報酬を受け取る場合、定期同額給与ならば損金に算入することができます。また、生命保険なども経費計上できるため、法人化による節税項目は増えるでしょう。さらに会社を設立すると、2年間は消費税が免除されます。法人化は、個人事業で活用できない節税メリットと言えます。

2 設立できる会社にはどんな種類があるの?

現行法においては、「株式会社」、「合名会社」、「合資会社」、「合同会社」の計4種類の会社を設立できます(合名・合資・合同会社を持分会社と呼びます)。

※社団法人や財団法人、医療法人などの会社形態もありますが、今回は一般的にビジネス上設立する上記4種類の会社形態にフォーカスして解説を進めます。

株式会社とは、株式を発行し出資者から資金を調達する会社の形態を指します。社員は全員有限責任を負い、所有と経営が分離している点が特徴です。広く知られている形態なので信用力が高い点や、事業規模を拡大しやすいなどのメリットがあります。しかし一方で、持ち株比率次第では経営陣の意向を反映しにくくなるなどのデメリットもあります。

合名会社とは、一般的に無限責任社員のみで構成される会社を指します。株式会社と比べて会社設立に要する費用が少なくて済むメリットがある(他の持分会社も同様)一方で、会社が倒産した際に社員が出資額以上の責任を負わなくてはいけないデメリットもあります。また、株式会社と比べると信用力が低い上に資金調達もしにくいです。メリットと比べてデメリットの方が大きいため、基本的に合名会社を設立するケースは少ないです。

合資会社とは、有限責任社員と無限責任社員が共に存在する会社です。合名会社と同様に、会社設立費用が安い点や、所有と経営が一致している点などのメリットがあります。一方で有限責任社員のリスクが大きい点や資金調達などの面で不利となる点などから、あまり設立されるケースは少ないです。

合同会社とは、株式会社と同様に有限責任社員のみから構成されている会社です。資金調達の面や信用力の面ではややデメリットがあるものの、社員全員が有限責任を負うため、倒産した際のリスクが低いです。株式会社と同様にリスクが低い上に設立費用は安いため、持分会社の中では最も設立されるケースが多いです。

3 会社を設立する際に出てくる「発起人」ってなに?

会社設立の手続きでは、「発起人」という用語がしばしば出てきます。聞きなれない用語ですが、発起人とはどんなことを行う人なのでしょうか?

発起人とは、会社設立に際して定款を作成し、作成した定款に署名もしくは記名押印する人物を意味します。一般的には、会社設立の諸手続き(定款作成や資本金の出資)を行う人が発起人になります。

株式会社を設立する際には、最低でも1人以上の発起人が必要となります。また会社設立時には、発起人は最低1株以上の株式を引き受けなくてはいけません。

発起人になるために資格などは必要ではないため、誰でも発起人になることができます。ただし発起人には、遵守すべき責任が明確に設定されています。たとえば、会社設立の手続きを怠り会社に損害を与えた場合に、責任を負うこととなっています。

ここで気になるのが、「発起人と取締役の違い」です。発起人が会社設立の手続きを行う人物を指す一方で、取締役は会社経営を実行していく人物を指します。そのため会社設立を行なった発起人が、そのまま取締役となるケースも少なくありません。

発起人の人数には制限がないため、複数人を発起人とすることもできます。しかし発起人が複数人存在すると、後々意思決定の際に意見が分かれ、意思決定のスピードが遅くなる恐れもあります。事業運営にスピードが求められるベンチャー企業においては、発起人は1人の方が良いかもしれません。

4 会社設立で必須となる「定款」ってなに?

会社設立において必ず必要となる手続きが、定款の作成です。会社設立を行う方は、最低限定款については知っておく必要があります。

定款とは、法人の活動や目的、業務執行などに関する基本規則や、基本規則の内容を紙などにより記録したものを指します。簡単にいうと、会社が守るべきルールを定款と呼ぶわけです。

定款は会社設立を行う人物が書面や電磁的記録により作成し、書面で作成する際は発起人自ら定款に署名もしくは記名押印する必要があります。なお株式会社を設立する際には、作成した定款について公証人の認証を受けなくてはいけません(持分会社の設立に際しては不要)。

なお一度作成した定款に関しては、後々変更することもできます。ただし定款の変更に関して厳しい条件をクリアする必要があり、株式会社の場合は特別決議と呼ばれる手続きを行います。なお特別決議とは、議決権株式のうち過半数が出席し、かつ議決権のうち3分の2以上の賛成を必要とする決議です。

定款の記載内容には、法律上記載が義務付けられているもの(絶対的記載事項)、定款に記載しなければ効力を持たないもの(相対的記載事項)、定款に記載しなくても効力を発するもの(任意的記載事項)の三種類があります。

相対的記載事項としては、「取締役や監査役の任期変更に関する規定」や「会社の公告方法の定め」などが該当します。また任意的記載事項については、「事業年度に関する規定」や「種類株式の内容」などが該当します。

任意的記載事項は記載が義務では無いものの、主に容易に変更したく無い内容を定める目的で記載するケースが多いです。

5 定款に絶対記載しなくてはいけない事項とは?

上記で述べた様に、定款作成時には必ず記載しなくてはいけない内容(絶対的記載事項)が存在します。絶対的記載事項が記されていない定款については、他の内容に不備がなくても無効となってしまうので注意が必要です。

定款の絶対的記載事項は、設立する会社の形態によって異なります。たとえば株式会社を設立する場合は、以下の内容を必ず記載します。

  • 目的
  • 称号
  • 本店所在地
  • 発起人の氏名または名称、住所
  • 会社設立時に出資される財産価額もしくはその最低金額
  • 発行可能株式総数

一方で合同会社などの持分会社の場合、絶対的記載事項は以下の様になります。

  • 目的
  • 称号
  • 本店所在地
  • 社員の氏名または名称、住所
  • 社員の負う責任の種類(有限責任か無限責任か)
  • 社員が出資する目的と出資価額、評価標準

上記のとおり株式会社と持分会社では、絶対的記載事項の内容が若干異なるので注意が必要です。実際に会社設立の手続きを行う際には、設立する会社の形態に応じて記載内容を変えましょう。

なお株式会社の発行可能株式総数については、定款作成の時点では定める必要がなく、設立登記の申請時までに記載すれば問題ありません。また、

6 1人で株式会社を設立できるの?

インターネットを用いたスモールビジネスなどであれば、1人で会社を設立・運営することも可能です。そこで近年は、1人で株式会社を設立するのは可能なのか疑問に持つ方も増えています。

改正前の会社法では、最低でも取締役3人、監査役1人が必要であったため、1人で株式会社を設立することはできませんでした。しかし改正後の会社法では、取締役1人でも株式会社を設立できる様になりました(監査役の設置は任意)。

ただし公開会社(詳しくは後述)を設立する際には、従来通り取締役3人、監査役1人以上の設置が義務付けられているため、1人で株式会社を設立するのは不可能です。なお株式会社を1人で設立する場合は、ほぼ必然的に発起人がそのまま取締役となります。

1人で株式会社を設立することは可能ではあるものの、事業内容次第では多額の資金や人材が必要となる点には注意が必要です。また、株式会社の設立には煩雑な手続き(設立登記など)を要するため、実際には税理士などの専門家の協力を得た上で手続きを行うのが得策です。

7 会社設立にはどのくらいの費用がかかる?

会社設立を考える上で、気になるのが会社設立・開業に要する費用です。通常、起業するために必要な資金として挙げられるのは、次の3つです。

  • 会社設立の手続きにかかる費用
  • 店舗や事務所など設備にかかる費用
  • 事業運営にかかる費用

1 会社設立の手続きにかかる費用

会社設立では、法律上定められた手続きを行う上で必ず一定額の費用がかかります。株式会社の場合は、定款認証代として5万円、謄本手数料として約2千円、会社設立に要する登録免許税として15万円、そして収入印紙代として4万円かかります。つまり株式会社を設立するためには、合計で約24万円程度の費用がかかります。さらに実印の作成や登記簿謄本の発行など、法律上は義務ではないものの、会社を設立する上で実質的に必要となる手続きもあり、それら手続きでかかる費用も含めると25~26万円程度の費用になります。

  • 定款認証の収入印紙代・・・40,000円>
  • 定款認証手数料・・・50,000円>
  • 会社印鑑とゴム印代・・・20,000円以上>
  • 司法書士など専門家への手数料・・・100,000円ほど>

2 店舗や事務所など設備にかかる費用

開業する場合、事業規模や営業内容によってことなりますが、一般的に次の費用が必要になります。

  • 事務所や店舗の家賃・敷金・礼金・保証金
  • 内外装の工事費
  • 業務に必要な設備費

3 事業運営にかかる費用

事業運営にかかる費用も事業規模や内容によって違いがあります。

  • 毎月の事務所や店舗の賃貸料
  • 水道光熱費
  • 従業員給料
  • 商品仕入れコスト
  • 販売促進費
  • 通信費
  • 研修費

以上の通り株式会社を設立・開業するためには、ある程度多額の費用が必要となります。まだ事業運営が軌道に乗っていない段階だとすると、費用の負担は大きいと感じられるでしょう。

そこで近年は、合同会社の形態を選ぶケースも増加しています。合同会社を設立する場合は、合計で約10~12万円の費用しかかかりません。約10万円ちょっと会社設立費用を削減できるため、スモールビジネスを行う場合などであれば合同会社を設立した方が良いかもしれません。

また、紙の定款ではなく電子定款(詳しくは後述)を作成すれば、定款に添付する収入印紙代が不要になるため、大幅に会社設立費用を削減できます。

上記のとおり、設立する会社の形態や定款の種類次第で、会社設立の費用は大幅に変動します。会社設立の費用を節約したいのであれば、会社の形態や定款の種類を工夫しましょう。

8 会社の登記申請ではどんな書類を提出するの?

会社設立登記に際しては、主に下記の書類を提出する必要があります。

▪ 登記申請書

登記申請を行う際には、必ず登記申請書が必要となります。登記申請書の作成にあたっては、法務局のホームページで公表されている書式に従って記載しなくてはいけません。

鉛筆書きが不可である点や用紙のサイズがA4 と決まっているなど、規則が数多く存在するので注意して作成しなくてはいけません。

▪ 登記事項を保存する磁気ディスクなど

法務局の窓口にてOCR専用の登記申請用紙を手に入れて、この用紙に必要な記載事項を記入し、登記申請書に添付する必要があります。

もしくは、磁気ディスク(CD-Rなど)に記載して提出することも認められています。

▪ 登録免許税納付用台紙

先ほどもお伝えしましたが、登記申請時には登録免許税を納付する必要があります。登録免許税は収入印紙というものを購入し、それを所定の台紙に添付する形で納付します。

この際必要となる台紙も、登記申請書と一緒に提出しなくてはいけません。

▪ 払込証明書

払込証明書とは、資本金の払込がなされたことを証明するものです。会社が実際に設立された旨を明らかにする目的で、登記申請の際には払込証明書が必要となります。

▪ 定款

設立登記の申請を行う際は、定款についても提出します。紙で作成した定款の場合は定款の謄本、電子定款の場合は磁気ディスクを用意します。

ここで注意して頂きたいのは、提出する定款は公証人からの認証を得ている必要がある点です。つまり登記申請の手続きを行う前に、前もって定款の認証を済ませておく必要があります。

▪ 取締役の印鑑証明書

印鑑証明書については、取締役会を設置するかどうかによって取り扱いが変わります。

会社設立の際に取締役会を設置しない場合は、後述する就任承諾書に押した実印の印鑑証明書を、取締役ごとに提出しなくてはいけません。一方で取締役会を設置する場合は、代表取締役の印鑑証明書のみが必要となります。

▪ 取締役の就任承諾書

会社設立する際には、設立時点での取締役や代表取締役、監査役の就任承諾書を提出します。

取締役が複数存在し、その中から代表取締役を選出する場合には一点注意があります。代表取締役になる人物については、取締役の就任承諾書のみならず、代表取締役の就任承諾書も必要となるので、忘れずに両方揃えておきましょう。

9 発起設立と募集設立の違いは?

会社設立の方法には、発起設立と募集設立の二種類があります。発起設立と募集設立とでは、必要となる手続きや活用される場面などが異なります。双方の違いや特徴を押さえた上で、会社設立の方法を決めましょう。

発起設立とは、設立時に発行する全株式を発起人が引き受ける会社設立の方法です。一方で募集設立とは、発起人は発行株式の一部のみ引き受けて、残りは他の株主に引き受けてもらう方法です。募集設立の場合でも、発起人は最低でも1株以上の株式を引き受ける必要がある点には注意しましょう。

発起設立と募集設立はその違いから、それぞれ活用される場面が異なります。発起設立は役員の人数が少数である中小企業の設立で用いられるケースが一般的です。一方で募集設立は、知名度のある大企業が新しく子会社を設立するケースで用いられることが多いです。

発起設立では外部から株主を募集しないため、比較的簡便な手続きで会社設立を行えます。一方で募集設立では外部から株主を募る性質上、手続きが比較的煩雑になりやすいです。

募集設立では比較的多額の出資金を集められるメリットがある一方で、知名度や信用力がなければ株主を集められません。そのため、個人事業主の方が起業するケースなどでは、発起設立の形態で会社設立するのがオススメです。

10 普通株式と種類株式の違いは?

会社設立の際に発行できる株式を大別すると、普通株式と種類株式の二種類があります。

普通株式とは、種類株式を発行する場合において、株式の持つ権利について特段の定めを設定しない株式を指します。要するに、一般的に「株式」と言われるものが普通株式に該当します。普通株式は株式会社における「株主平等の原則」に基づいて発行されるため、保有する株主間で権利に特別な差が生じません。

一方で種類株式とは、通常とは異なる権限などの内容を定めた株式を指します。主に種類株式には、下記のものがあります。

▪ 譲渡制限株式

譲渡制限株式とは、第三者への譲渡に関して会社側の承認を得る義務が付された種類株式です。つまり株主の一存で、勝手に第三者に株式を譲渡(売却)できないわけです。

譲渡制限株式を導入することで、第三者に経営権を乗っ取られるリスクを減らす効果が期待できます。

▪ 議決権制限株式

議決権制限株式とは、株主総会での決議事項の一部または全部に関して、議決権を行使できない種類株式です。

この株式は、配当などの利益にのみ興味がある株主に対して発行されるケースが多いです。

▪ 拒否権付株式

拒否権付株式とは、決議事項に関して、通常の株主総会に加えて、この株式を保有する株主から構成される株主総会の決議を必要とする旨を設定した種類株式です。

要するに、どれほど株主総会で賛成を得られても、拒否権付株式を保有する株主からの賛同を得られなければ、決議を通すことができなくなります。

拒否権付株式は「黄金株」とも呼ばれており、敵対的なM&Aに対する対抗策としても活用されています。

11 株式譲渡制限会社とは?

一般的に会社を設立する場合には、大企業のような「公開会社」ではなく、「株式譲渡制限会社」の形態を選びます。普段聞き慣れない会社ですが、どのような特徴を持っているのでしょうか?

公開会社とは発行している株式の一部もしくは全てに譲渡制限を設けていない会社を指します。皆さんがご存知の有名企業の大半はこの形態を取っており、資金調達の面などでメリットがあります。一方で譲渡制限がない株式は自由に売買できるため、敵対的買収のリスクにさらされます。

一方で株式譲渡制限会社とは、発行する全株式に譲渡制限をかけている会社です。つまり先ほどご紹介した「譲渡制限株式」を全面的に導入していることを意味します。

全ての株式に譲渡制限をかけているため、敵対的な買収にさらされるリスクがありません。加えて所有と経営が一致するため、重要な意思決定をスムーズに行えるメリットもあります。

さらに、取締役や監査役の任期を10年まで伸ばせる点や取締役1名から設立できる点、監査役の設置が義務でない点、発行可能株式総数に制限がない点など、株式譲渡制限会社には独自のメリットが多く存在します。

以上の理由から、新しく会社設立を行う場合には、基本的に株式譲渡制限会社の形態を取るのがオススメです。

12 資本金は何円にすれば良いの?

会社設立を行う上で、非常に気になる部分が資本金の金額です。改正される以前の会社法では、最低でも1,000万円(有限会社は300万円)の資本金が必要とされていました。そのため、ある程度資金力がある方でなければ、会社を設立するのは困難でした。

しかし会社法の改正に伴い、最低資本金の制度が廃止されました。これにより、誰でも資本金1円から会社設立を行えるようになったのです。つまり事業を始めようと思ったら、誰でも会社を設立できる形となったわけです。

ただし現実的には、資本金1円で会社設立するのは得策ではありません。事業を軌道に乗せるためには、会社設立後の運転資金が必要です。運転資金がないと、人を雇うだけの人件費や広告宣伝費を支払えないため、事業を拡大させることは困難を極めます。つまり事業を運営するためには、最低でも数十万円~数百万円の資本金が必要と言えます。

加えて設備投資などの資金を調達する際には、銀行などの金融機関から融資を受ける必要があります。融資の際には「確実に資金を返済できるか」という点が重視されます。資本金が1円では、返済可能性が低いと見られる可能性が高いため、資金調達しようにも中々できなくなります。
さらには資本金の額は会社の持つ力を表します。他社と取引する際に資本金が1円では、力がない会社だと見られ、取引を断られる可能性があります。そのような理由から資本金1円で会社設立するのは現実的ではないので、ある程度資金を調達した上で会社を設立するのがベストです。

なお、会社を設立した時の資本金が1000万円以下の場合、開業から2期目までの年度は、一定の条件をクリアすることで消費税が免除されます。一定の条件とは、会社設立から1期目の上半期で売り上げた課税売上高が、1000万円を超えていないことです。また従業員がいる場合、会社を設立してから1期目の上半期に支払った給料の額が1000万円以下であることが条件になります。

このように会社設立から1期目の業績により、2期目から課税対象になることを理解しておきましょう。

13 会社設立日はいつになる?

会社設立の日は、登記申請の書類を法務局に提出した日付となります。つまり登記申請日と株式会社の設立日が原則一致するというわけです。

ただし法務局は土曜日、日曜日、祝日を休みとしており、休みの日には設立登記の申請を行えない決まりとなっています。設立登記が行えないため、当然土日祝日を会社設立日とすることもできません。

会社設立日は登記申請の日にちに自動で決まってしまうため、設立日から逆算して定款認証や資本金の払込みなどの手続きを完了させておく必要があります。

14 役員(経営陣)の任期はどのくらい?

役員の任期については、役員の種類によって異なります。

役員の任期については、取締役は原則2年、監査役の任期は原則4年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結時までと定められています。

しかし上記はあくまで原則であり、株式譲渡制限会社については別段の定めが規定されています。定款によりあらかじめ定めておくことで、取締役と監査役の任期を10年まで伸長できます。

株式会社においては役員の任期が満了するタイミングで、その都度役員の登記手続きが必要となり面倒です。しかし10年まで任期を伸長することで、その手続きに要する費用や手間を削減することが期待できます。

ただし第三者が役員として就く場合には、長期的な任期を設定することで様々な不具合が生じる恐れがあります。第三者が役員として参画する場合には、なるべく短めの任期を設定するのが理想です。

一方で親族経営やスモールビジネスなどの場合には、なるべく任期を長くする方が、手続きに要する手間や費用を削減できるので便利です。

15 会社名(商号)は何でも良いの?

法人化するためには、会社名を決めることは重要です。会社事務所や名刺、広告、ホームページなどあらゆる場面で商号として記載されます。個人事業と違い、「株式会社○○」というように法人名で社会に公開していきます。会社名については、自由に決められますが、公序良俗に反しない事と他社の法人名と誤認されない事がポイントです。

なお会社法が改正される以前は、類似商号規制という制度があったため、同一市町村内で類似する商号を用いての会社設立は行えませんでした。会社法が改正された現在は同一の商号でも「住所が異なれば」原則使用できるようになりました。ただし、住所が同じである場合には同一の商号を用いての会社設立は行えませんので注意しましょう。

また、不正競争防止法の定めにも注意しなくてはいけません。不正競争防止法では。類似する商号を用いた場合には、損害賠償請求や差し止めなどを受ける可能性があります。

上記のポイントさえ意識すれば、どんな商号を用いることが可能です。もちろん、商号の中にアラビア文字やローマ字を含めることも問題ありません。

16 現物出資ってどんな方法なの?

会社設立の場合には行う出資方法には、金銭による出資以外にも「現物出資」と呼ばれる方法もあります。

現物出資とは、不動産や有価証券などのお金以外の資産を出資する方法です。もう少し正確にいうならば、新株発行や会社設立の際に金銭以外の財産を出資に充てる方法を意味します。ただし会社設立の際に現物出資を行えるのは、発起人に限られます。

資金力があまりなくても現物出資を行うことで、会社の資本力を高めることができます。そのため、会社の信用力を高めたい場合には効果的な出資方法です。

現物出資を実施するためには、出資者の氏名や財産価額、割り当てる株式の数などを定款に記載する必要があります。加えて現物の適正価額を評価する目的で、現物出資を行う際には裁判所が選ぶ検査役の調査が必須となります。

ただし下記要件のいずれかに該当する場合には、現物出資時の検査役による調査が不要となります。

  • 現物出資の総額が500万円以下である>
  • 定款に記載された価額の妥当性を税理士などの専門家から照明を受けた>
  • 市場価格のある有価証券であり、かつ定款に記載された価額を超えていない>

基本的な会社設立では、検査役の手続きを省くために現物出資の価額を500万円以下に抑えるケースが多いです。その場合には、まず現物の時価を取締役が調査し、定款に出資する現物の価額や出資する人の氏名などを記載します。そして取締役が現物価額の妥当性を証明する「調査報告書」を作成し、最後に「財産引継書」を作成する形で現物出資を行います。

現物出資を実施する際には、課税対象となるケースがある点について留意しておく必要があります。たとえば不動産の現物出資を行う場合には資産の譲渡とみなされ、所得税が発生します。一方で自動車を現物出資する際には、車種などの条件に応じて自動車取得税が法人側に課せられる可能性があります。

現物出資にはメリットもありますが、課税リスクや手続き面の煩雑さなどもあるのでご注意ください。

17 電子定款の作成に必要なものは?

先ほどお伝えした通り、会社設立の際には紙ではなく「電子定款」を作成することもできます。電子定款を作成することで、収入印紙税(4万円)が不要となるので会社設立の費用を削減できます。

電子定款は独力で作成することもできますが、手続きするためにいくつか必要なものがあります。まず必要となるのが「マイナンバーカード」です。マイナンバーカードは、電子証明書の保存時に使用します。

他には、マイナンバーカードを読み込むためのICカードリーダライタも必要です。また、定款をPDFに変換するためのソフト「Adobe Acrobat」も必要になります。

このように電子定款の作成には必要な機器類を揃える必要があり、機器類を揃える際にも費用がかかります。場合によっては通常通り紙の定款を作る方が安くなるケースもあります。

以上のことから、収入印紙が不要になるからといって、必ずしも電子定款を作成した方が会社設立の費用を節約できるとは限らないので注意しましょう。ただし、元々上記で述べた機器類を持っている場合には、電子定款を利用した方が安くなります。

ご自身の状況を踏まえた上で、紙の定款と電子定款のいずれを作成するかを決めましょう。

18 決算月や事業年度はどうやって決めれば良いの?

決算月(事業年度)をどのように決めるべきか、会社設立の際に悩む方は少なくありません。

法律上は、何月何日からいつまでを事業年度にするかを自由に決定できます。そのため、3月を決算月としている会社もあれば、9月を決算月としている会社もあります。

とはいえ、全く何も考えず適当に事業年度(決算月)を決めるのは好ましくありません。業種によって異なる繁忙期や、資金繰りの都合を考慮して決めるのが重要です。

決算月には決算手続きで多忙となるため、仕事が多い月(繁忙期)と重ならないようにするのが好ましいです。また、決算月は利益がどの程度になるか予測を立てにくいです。そのため繁忙期を決算月としてしまうと、赤字で事業年度を終了せざるを得なくなる恐れがあります。一概に赤字が良くないとはいえませんが、赤字経営を避けたいのであれば、繁忙期以外の月に決算月を設定した方が良いです。

また会社は、原則、決算日から起算して2ヶ月以内に法人税などの税金を納付する必要があります。税金の納付タイミングと業務上大きな支出が生じるタイミングが重なると、資金繰りが悪化する恐れがあります。資金繰りの悪化を避けられるタイミングに決算月を設定するのも大切です。

19 会社設立後に必要な手続きは?

会社設立を無事終えたとしても、設立後にも行わなくてはいけない手続きが残っています。

まず会社設立を終えたら、本店所在地がある地域を管轄している税務署に対して、下記の書類を提出する必要があります。

  • 青色申告承認申請書
  • 法人設立届出書
  • 給与支払い事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の脳筋の特例承認に関する申請書

また棚卸資産や減価償却費の計算方法を詳細に定めたいのであれば、下記の書類を税務署に提出します。加えて、個人事業主の方が会社設立を行う場合には「個人事業の廃業届」を提出します。

  • 減価償却資産の償却方法に関する届出書
  • 棚卸資産の評価方法に関する届出書
  • 個人事業の開廃業届出書

会社設立の際には、本店所在地がある都道府県や市区町村に、地方税に関する届け出を行う必要もあります。必要となる書類は地方自治体ごとに異なるため、本店所在地がある自治体のHPなどで調べましょう。

会社設立を行うと、原則的に社会保険への加入が義務付けられます。そのため、年金事務所に対して主に下記の書類を提出しなくてはいけません。

  • 健康保険・厚生年金保険の新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

以上が会社設立後に行う主な手続きです。従業員を雇用する場合には、さらに労働基準監督署やハローワークへの書類提出の手続きが必要となります。

以上の通り、会社設立後の手続きはケースバイケースで異なるので、どんな手続きが必要となるのかあらかじめ確認しておきましょう。

20 「監査役」や「会計参与」ってなに?

一般的な会社設立の際には、役員構成は取締役1人のみとなるケースが多いです。ですが中には、監査役や会計参与といった役員を設置するケースもあります。

監査役とは、経営者(取締役)が適正に業務を行なっているのかをチェックする人です。具体的には、計算書類などをしっかり作成しているかを監査する「会計監査」と、取締役としての業務をしっかり行っているかを監査する「業務監査」の二種類に大別されます。

監査役の設置は任意であり、任期は原則4年となっています。また取締役と監査役を兼任することは認められていないため、取締役とは別の人物を監査役とする必要があります。

一方で会計参与とは、取締役と共同で計算書類を作成する役員を指します。加えて、計算書類の内容を株主総会などで説明したり、会計参与報告書を作成する業務なども行います。

会計参与の設置は監査役と同様に任意ですが、任期は原則2年となっています。監査役は役員でなければ基本的に誰でもなれますが、会計参与になれるのは税理士(税理士法人)または公認会計士(監査法人)のみとなっています。

決算書の信頼性が高まるなどのメリットはあるものの、会社設立の時点では会計士や税理士を雇い入れる資金力がないケースが大半であるため、会計参与を設置するケースはあまり多くありません。

21 会社の事業目的はどのように決めるべきなの?

会社設立の登記手続きでは、会社の事業目的(内容)を明らかにする必要があります。事業目的を考えることは、会社設立時の定款の内容にも深く関わってきます。そのため、事前に決めておく必要があります。定款の内容で、法律上必ず記載する必要がある項目が、「目的」となるため、「この会社はどのような事業を行うことが目的なのか」を具体的かつ簡潔に記載しておく必要があります。

法律が改正される以前は、「営利性」、「適法性」、「明確性」、「具体性」が必要とされていました。しかし法律が改正され、「具体性」については要求されなくなりました。つまり会社設立の際には、「営利性」、「適法性」、「明確性」を満たした目的を記載すれば良くなりました。この変更により、「不動産業」といった形である程度抽象的に事業目的を記載できるようになったものの、会社設立後のことを考えると具体的に目的を記載した方が良いでしょう。

たとえば許認可が必要になる事業の場合は、定款に記載されている事業目的に不備があった場合、許認可申請が通らなくなる可能性もあるでしょう。特に会社を設立してから、事業目的の修正が必要になり定款を変更する際には、登録免許税や専門家への手数料などで1回の申請で3万円ほどかかる可能性があります。

また、金融機関から融資を受ける際には、定款に記載されている事業内容以外については、融資の審査が通りにくくなる恐れがあります。

会社設立の際には登記が受理されたとしても後々不利益を被る恐れがあるため、事業の目的は具体的に記載するのがベストです。

22 シェアオフィスやレンタルオフィスを事業所として登記できるの?

従来は事務所を確保した上で会社設立を行うのが一般的でしたが、近年はIT技術の発展や働き方の多様化に伴い、事業所を持たずに会社設立を行うケースが増えてきました。
その場合、シェアオフィスやレンタルオフィスを事業所として登記できる場合もあります。もしくはバーチャルオフィスを用いて登記することもできます。

通常通り事務所を借りる場合と比べて、月々の出費を抑えた上で事業を運営できるようになります。また事業所を通常通り借りる場合と同様に、法人口座を開設する際や顧客との取引などにも利用できます。

資金力が十分にない会社設立の時点において、月々の固定費を削減できるレンタルオフィスやシェアオフィスの活用はとても有用だと言えます。

23 創業者メンバー間で共同出資する際の注意点は?

会社設立に要するハードルの低下やIT技術の発展に伴い、近年は複数メンバーで共同出資した上で会社設立を行うケースが増加してきました。

複数人で会社設立を行う場合には、持ち株比率(出資比率)について慎重に決めておく必要があります。

株式会社では、持ち株比率に応じて行使できる権限が異なります。過半数の株式を保有すれば取締役の報酬決定などを独力で行えるようになり、3分の2以上を保有すると定款の変更などを独力で行えるようになります。

仮にメンバー間で平等に株式を持ち合うと、経営方針に違いが出てきた場合に、持ち株比率の関係から意思決定を行えなくなってしまいます。

当初は同じ方向性を向いていたとしても、いつ考え方に違いが生じるかは誰にもわかりません。共同出資した上で会社を設立する際は、意思決定に支障が出るリスクを踏まえた上で、持ち株比率を決定するのが大切です。

意思決定をスムーズに行いたいのであれば、一人の取締役が大部分の株式を保有している状態がベストです。

24 個人事業主と比べて会社を設立するメリットは?

事業を運営するだけであれば、個人事業主として行うのもできます。では、わざわざ会社設立してまで事業を営むことにメリットはあるのでしょうか?

個人事業主と比較した場合、事業に対する信用力が高まるメリットがあります。それに伴い、事業を拡大しやすくなります。

また税制面から見ても、会社設立すると様々なメリットを得られます。まず経営者が給与を法人側から受け取るようにすることで、給与所得控除を活用できるようになります。また、会社設立から原則2年間は消費税が免除されるため、より多くの利益を手元に残せます。

また会社設立すると、事業に対する責任が「無限責任」から「有限責任」に変わります。個人事業主の場合は、廃業した際に全ての損失を被る必要があります。一方で株式会社に変更することで、廃業した際に被る責任は出資額が限度となります。

上記の通り個人事業主の場合と比べて、会社設立すると多くのメリットを得られるようになります。ある程度所得が増えてきたら、法人成りするのがベストと言えるでしょう。

25 会社の設立登記はどこにすれば良いの?

会社設立の登記は、一体どこにすれば良いのでしょうか?結論から述べると、会社設立の登記は「法務局」と呼ばれる場所で行います。

法務局とは、土地や建物などの登記手続きを取り扱う国の公的機関です。土地や建物以外にも、株式会社の法人登記も法務局にて行います。全国に合わせて約500ヶ所ほど存在し、月曜日から金曜日の間に窓口が開かれています(土日祝日は休み)。

設立登記の申請は、原則会社の代表者(創業者)が実施します。ただし司法書士に相談すれば、自身の代わりに代理で手続きを行ってもらえます。面倒な手続きを代理でやってくれるので、本業に集中したい方は司法書士に登記手続きを依頼するのがオススメです。

会社設立の場面においては、設立の登記手続きに加えて、銀行口座の開設などの手続きで必要となる「登記簿謄本」を取得する際も法務局で手続きを行います。

このように会社を経営する上で法務局は欠かせない存在なので、経営者の方であれば法務局について基本的な概要を知っておいて損はないでしょう。

26 資本金の払込はどうやって手続きするの?

資本金の払込を行うためには、下記の手順で手続きを進めます。まず初めに、資本金を振り込むための銀行口座を用意します。基本的には発起人の銀行口座を用いますが、発起人が複数いる場合は代表者の口座に振り込むと良いでしょう。

銀行口座を用意したら、実際に資本金を振り込みます。資本金を振り込んだら、実際にあらかじめ定めた金額を口座に振り込んだかを証明する目的で、通帳のコピーを作成します。具体的には表紙と表紙裏面、それに振り込みの内容が記されたページのコピーを取ります。

一般的にはA4サイズでコピーを作成します。加えて、振り込み内容に記載されている発起人の名前と金額に印をつけておき、誰がどのくらい振り込んだかを明確にしておくと良いでしょう。

以上で資本金の振り込み手続きは完了です。特に重要となるのが、「通帳のコピー作成」です。これがないと実際に資本金を適正に振り込んだか証明できないので、必ず所定の方式に則って作成しましょう。

27 利用できる助成金と補助金は?

会社設立で利用できる助成金・補助金制度について、確認していきましょう。

 

助成金

設立した会社に従業員がいる場合、助成金の制度が活用できます。助成金は、厚生労働省が行う雇用関連で交付される助成金です。既に従業員がいる場合、または新しく雇用する場合など管轄の労働局やハローワークで、その年度で活用できる助成金を案内しています。

 

補助金

補助金は、会社を設立して間もない時期に申請できる創業促進補助金や、各地域の商工会議所で実施される小規模事業者持続化補助金などがあります。補助金については、一定の条件(従業員数、法人の種類など)により受けられない場合もあります。事業規模と申請基準を確認して申し込む必要があるでしょう。

28 融資と口座開設の手順は?

法人化して会社名義の銀行口座を作る場合、手続きを終えてから開設まで最大で2週間程度かかることが考えられます。法人名義の口座開設のため、法人の履歴事項全部証明書という登記簿謄本の提出が必要です。

法人名義の口座開設での注意点は、会社設立のために作った定款の内容も確認されるため、事業内容に不備があれば口座開設ができない場合もあります。
また、法人口座の開設手続きは、事業資金の融資などにも影響していきます。資本金が極端に低い場合や事業所の実態が不透明な場合は、断られる可能性もあることに注意しましょう。

29 会社の所在地は?

会社の所在地を明確にしておくことは、重要になります。定款や各種手続きに必要な書類に記載する義務があります。また、飲食店や整体院など実際に訪れてサービスを受ける必要のある実店舗の場合は、立地条件も事業運営に大きく影響してくるでしょう。

立地条件の良い事業所所在地を選ぶためには、事前に地域性や住民の形態(年齢層や所得層など)、競合店舗などを調査する必要があります。

事業形態にもよりますが、インターネット上での取引を主とするECサイトやオンラインサービス事業であれば、自分の家を会社所在地に登録することも可能です。その場合は、自宅家賃を会社の必要経費として、割り出した計上ができます。小規模事業の場合は、レンタルオフィスを会社の所在地として登録することも可能です。

30 事業計画書は必要?

事業計画は、会社を設立とともに作成しておく必要があります。起業後に考えられる資金調達のときに銀行などに提出する事業計画書の作成に必要だからです。

事業計画書は、事業内容をはじめとする今後の戦略面、収益の見込みなどを説明する材料になります。特に資金の融資を銀行などに依頼するときは、事業内容や収益の見込みの面で厳しい審査が入る可能性もあるでしょう。
また事業計画を作ることは、資金調達の必要性がない状況でも、現在の事業内容を客観的に見直して、改善することに役立つでしょう。

事業計画については、決算月を決めることから始めることをお勧めします。
できるだけ売上の多くなることが予想される月を事業年度の前半にすることで、事業計画が立てやすくなるからです。

また、事業年度の前半に売上の多い月を持っていくと、節税対策にもなります。節税対策は、利益が多い時期に将来に向けた投資をすることが一般的です。利益の少ない時期だと投資資金を調達できなくなるため、売上の推移を把握することは重要になるでしょう。

31 会社を設立する前の心構えは?

開業して事業が動き出すと、様々な想定外の選択に迫られるようになります。例えば、商品を購入する顧客層に需要がなくなってきた場合、「訴求する客層を変えるのか、または新商品を開発するのか」などです。また、市場に競合他社の参入が目立つようになることで、企業の独自性なども打ち出していく必要もあるでしょう。

 

31-1 決断をする体質を身につける

このような状況で会社として、「どの方向に行くべきか」を決断することは避けられません。経営者は決断をすることが事業運営に繋がります。そのため、決断しないでいることで顧客が競合他社に奪われてしまうこともあります。判断を遅らせることが業績に影響することも考えられるでしょう。会社の設立に向けて、決断する体質をつけておくことは経営者にとって必要な準備になるでしょう。

 

31-2 資金調達は避けて通れない

資金調達ができることも重要な経営者の資質になります。

会社を設立してから考えられる経営悪化も予測して、資金調達が必要になった場合の知識や手段などを理解しておきましょう。金融機関に融資の申し込み方や助成金の申請など、事前に知っておくことも必要です。

 

31-3 確実に必要な支出を抑える

特に飲食業など客数や回転数に影響を受ける事業の場合、予想がつかない収入を期待するよりも、確実に出ていく支出を抑えることが重要になります。
確実に必要な支出について、「この経費は本当に必要なのか?」と、改めて見直してみることも必要でしょう。起業する前は、必要性のあった経費が開業後、実際に必要がない場合もあり得ます。確認の意味でも見直してみることは重要です。

 

31-4 ピンチをチャンスと受け止める

会社の経営は、常に一定の売上を見込めるわけではありません。ビジネスは、何が起きるか予測できないことが常です。売上減少や顧客のクレーム対応などピンチを迎えることがあるでしょう。そのようなピンチを会社の将来に向けた勉強として、チャンスに切り替えて受け止めることが重要です。

32 まとめ

今回の記事では、会社設立に際して疑問に思いやすいポイントについて、それぞれ分かりやすく解説しました。会社設立の際には、登記手続きや定款作成など、難しい手続きを数多くこなす必要があります。また会社設立にあたっては、持ち株比率や節税など、税制面や法律面についての知識も必要になります。
全てを覚えることは難しいですが、税制面や法律面の知識を知っているほど、会社設立の手続きをスムーズかつ有利に進めることができます。今回ご紹介した内容を参考に、会社設立の手続きをスムーズに進められれば幸いです。