スポーツ庁調査によれば週1回以上スポーツをする人は全体で42.5%とされ、20〜40代に限れば30%台前半となります。
これを受けて同庁は10月、ビジネスパーソンのスポーツ人口を増やそうと、スニーカーなど歩きやすい服装での出勤を推奨する「FUN+WALK PROJECT(ファン・プラス・ウォークプロジェクト)」を発足。スポーツ参画人口を拡大し、国民の健康増進を図る狙いです。
同プロジェクトは、2020年の東京オリンピックに向けて「歩く」運動に着目し、「スニーカー通勤」など歩きやすい服装での通勤スタイルを呼びかけています。また、国民の平均歩数が男性7,194歩、女性6,227歩であることから、1日8000歩を目標に掲げました。
唐突に始まった政府主導のプロジェクトに対し、ネットでは「スーツにスニーカーはダサい」「その前に休みを増やして欲しい」など反応はさまざま。
来春スタート予定のスーツ姿でのスニーカー出勤。果たして、老若男女問わず定着するのでしょうか。
目次
1 とにかくスニーカー履いて出勤だ!
発足2年目を迎えたスポーツ庁。長官には元水泳選手でソウルオリンピック金メダリストの鈴木大地氏が就任しています。
同庁は、国民の健康増進を図る第1段プロジェクトとして「歩く」ことに着目。1日の歩数を10分(1000歩分)増やし、8000歩を目標に楽しく歩く「FUN+WALK PROJECT」を推進します。
(スポーツ庁より)
1-1 スニーカー出勤、来春スタート
歩くことを身につける同プロジェクトは、2018年3月から、「スニーカー通勤」など“歩きやすい服装”での出勤スタイルを提唱しています。
現在、国民医療費は40兆円を超え、さらに運動不足を感じるビジネスマンが増えています。スポーツ庁調査によれば、成人で週1回以上のスポーツを行う人の割合は42.5%にとどまり、20代から40代に限ると30%台前半にまで低下します。
また、30代、40代の約8割が「運動不足を感じる」と回答しており、運動したくても時間が確保するのが難しいなど、過酷な労働環境に晒されています。
そこで電車通勤や車通勤などの出勤スタイルを見直し、歩いて運動する時間を増やすことで、健康増進を図り、さらに国民医療費の抑制や健康寿命の延伸への貢献が期待できるとしています。
1-2 プロジェクト概要〜目標歩数8000歩〜
スポーツ庁はFUN+WALK PROJECT(ファンプラスウォークプロジェクト)と題し、来春から以下のような取り組みを推奨するとしています。
目的 | 「歩く」習慣の定着などスポーツ人口の拡大を通じた健康増進 |
---|---|
アクション | スニーカー通勤など“歩きやすい服装”での通勤 |
奨励歩数 | 1日の歩数を普段よりプラス1,000歩(約10分) 1日当たりの目標歩数は8,000歩 |
事業内容 | ビジネスパーソンの日常での「歩く」習慣の定着促進(運動促進) |
各業界団体、自治体と連携し、全国的な国民運動としての普及を目指す | |
参考の通勤スタイルの提示/歩くことで得られる効果の紹介/各企業での取組紹介 | |
プロジェクト普及イベントの実施 | |
ユーザーの“歩く”を促進するアプリを開発中。 全国のご当地キャラとコラボ予定。 |
(スポーツ庁より)
2 現代人は運動不足?
スポーツ庁は昨年11月、「健康・体力に関する意識」調査の結果を公表しました。
これによると、「自身が健康だ」と思う割合は74.4%(「健康である」24.1%+「どちらかといえば健康である」50.3%)と比較的高いものの、「体力について自信がある」とする割合は41.4%(「体力に自信がある」6.6%+「どちらかといえば体力に自信がある」34.8%)にとどまります。
また「体力に不安がある」とする割合は54.6%(「どちらかといえば体力に不安がある」36.5%+「体力に不安がある」18.1%)と半数を超えていることが分かりました。
・ 体力の自信の有無
全体 | 10代 | 30代 | 50代 | |
---|---|---|---|---|
体力に自信がある | 6.6% | 13.6% | 7.7% | 5.7% |
どちらかといえば体力に自信がある | 34.8% | 26.5% | 30.2% | 35.1% |
どちらかといえば体力に不安がある | 36.5% | 31.4% | 35.1% | 37.8% |
体力に不安がある | 18.1% | 23.1% | 21.3% | 18.3% |
わからない | 4.0% | 5.5% | 5.6% | 3.1% |
(スポーツ庁資料より作成)
2-1 4人に3人が運動不足を感じている
「普段運動不足を感じるか」の調査結果では、77%(「大いに感じる」38.7%+「ある程度感じる」38.3%)が感じると回答しました。
男女別に見ると、男性では73.4%(「大いに感じる」34.6%+「ある程度感じる」38.8%)、女性では80.7%(「大いに感じる」42.9%+「ある程度感じる」37.8%)と、ほとんどの女性が普段から運動不足を感じていることがわかります。
年齢層別では、40代の82.1%(「大いに感じる」46.3%+「ある程度感じる」35.8%)が最も運動不足を感じています。一方、70代では65.4%(「大いに感じる」23.9%+「ある程度感じる41.5」)にとどまり、10代よりも運動することを普段から心がけていることが分かります。
・ 運動不足を感じるか
大いに感じる | ある程度感じる | あまり感じない | ほとんど感じない | |
---|---|---|---|---|
全体 | 38.7% | 38.3% | 15.1% | 5.7% |
男性 | 34.6% | 38.8% | 17.1% | 6.8% |
女性 | 42.9% | 37.8% | 13.1% | 6.8% |
10代 | 36.8% | 37.4% | 14.6% | 6.9% |
20代 | 38.3% | 37.7% | 13.7% | 6.0% |
30代 | 45.3% | 34.7% | 12.2% | 4.2% |
40代 | 46.3% | 35.8% | 11.8% | 4.1% |
50代 | 44.0% | 37.6% | 12.4% | 4.7% |
60代 | 31.7% | 42.5% | 18.1% | 6.6% |
70代 | 23.9% | 41.5% | 24.3% | 9.5% |
(スポーツ庁資料より作成)
2-2 一年間スポーツをしない人3割超
「この1年間に行ったスポーツ」の調査では、63.5%がなんらかのスポーツ(ウォーキングやランニング)を挙げた一方、「運動やスポーツはしなかった」割合は32.5%となりました。
「運動・スポーツをしなかった人」を男女別にみると、女性(35.5%)のほうが男性(29.4%)よりも多くなりました。
1年間で行った運動・スポーツの内容を見ると種目、「ウォーキング」が38.7%と最も高くなりました。
次いで、「体操」(15.0%)、「トレーニング」(14.0%)、「ランニング・マラソン・駅伝」(10.4%)、「自転車・サイクリング」(8.8%)、「水泳」(6.7%)、「ゴルフ(コースでのラウンド)」(6.4%)、「ボウリング」(5.5%)、「ゴルフ(練習場・シミュレーションゴルフ)」(5.4%)、「卓球」(4.8%)、「登山・トレイルランニング・ロッククライミング」(4.6%)、「釣り」(4.3%)、「ハイキング・ワンダーフォーゲル・オリエンテーリング」(4.1%)、「テニス・ソフトテニス」(4.1%)、「バドミントン」(3.8%)、「ダンス」(3.3%)、「スキー」(3.0%)、「縄跳び」(2.5%)、「アクアエクササイズ・水中ウォーキング」(2.3%)と続きました。
・ 行ったスポーツの種目
種目 | 割合 |
---|---|
ウォーキング | 38.7% |
体操 | 15.0% |
トレーニング | 14.0% |
ランニング・マラソン・駅伝 | 10.4% |
自転車・サイクリング | 8.8% |
水泳 | 6.7% |
ゴルフ(コースでのラウンド) | 6.4% |
ボウリング | 5.5% |
ゴルフ(練習場・シミュレーションゴルフ) | 5.4% |
卓球 | 4.8% |
登山・トレイルランニング・ロッククライミング | 4.6% |
釣り | 4.3% |
ハイキング・ワンダーフォーゲル・オリエンテーリング | 4.1% |
テニス・ソフトテニス | 4.1% |
バドミントン | 3.8% |
ダンス | 3.3% |
スキー | 3.0% |
縄跳び | 2.5% |
アクアエクササイズ・水中ウォーキング | 2.3% |
(スポーツ庁資料より作成)
2-3 スポーツを行う理由、「健康のため」が最多
1年間で運動・スポーツを行った理由を調査すると、「健康のため」と回答する割合が最も多く、77.4%となりました。次いで、「体力増進・維持のため」(53.0%)、「楽しみ、気晴らしとして」(45.1%)、「運動不足を感じるから」(43.3%)、「筋力増進・維持のため」(33.8%)、「肥満解消、ダイエットのため」(22.2%)、「友人・仲間との交流として」(19.8%)、「家族のふれあいとして」(8.8%)、「美容のため」(6.4%)、「自己の記録や能力を向上させるため」(6.0%)、「精神の修行や訓練のため」(5.8%)と続きました。
・ 運動、スポーツをする理由
種目 | 割合 |
---|---|
健康のため | 77.4% |
体力増進・維持のため | 53.0% |
楽しみ、気晴らしとして | 45.1% |
運動不足を感じるから | 43.3% |
筋力増進・維持のため | 33.8% |
肥満解消、ダイエットのため | 22.2% |
友人・仲間との交流として | 19.8% |
家族のふれあいとして | 8.8% |
美容のため | 6.4% |
自己の記録や能力を向上させるため | 6.0% |
精神の修行や訓練のため | 5.8% |
(スポーツ庁資料より作成)
3 職場レベルでスポーツに取り組む必要あり?
同調査では、職場が主導して運動・スポーツを習慣化する取り組みを導入すれば今よりも運動・スポーツを実施する頻度が増えるかを尋ねたところ、「増えると思う」と回答したのが43.8%(「大いに増えると思う」8.9%+「ある程度増えると思う」35.0%)にのぼりました。
一方、「増えないと思う」としたのは40.2%(「あまり増えるとは思わない」25.3%+「まったく増えるとは思わない」14.9%)となりました。
年齢層別では「増えると思う」と回答したのが最も多かったのが20代で47.5%(「大いに増えると思う」11.9%+「ある程度増えると思う」35.6%)で、最も少なかったのが50代で41.1%(「大いに増えると思う」7.1%+「ある程度増えると思う」34.0%)でした。
・ 運動不足を感じるか
大いに増えると思う | ある程度増えると思う | あまり増えるとは思わない | まったく増えるとは思わない | |
---|---|---|---|---|
全体 | 8.9% | 35.0% | 25.3% | 14.9% |
男性 | 8.4% | 35.8% | 26.0% | 14.4% |
女性 | 9.6% | 33.7% | 24.2% | 15.6% |
10代 | 12.0% | 32.0% | 16.0% | 16.0% |
20代 | 11.9% | 35.6% | 23.0% | 11.9% |
30代 | 11.7% | 33.1% | 24.1% | 14.9% |
40代 | 7.7% | 34.3% | 25.0% | 15.5% |
50代 | 7.1% | 34.0% | 26.8% | 17.0% |
60代 | 5.5% | 40.9% | 27.9% | 13.9% |
70代 | 9.0% | 33.3% | 31.9% | 16.0% |
(スポーツ庁資料より作成)
運動不足が国民的なものであることを明らかにしたスポーツ庁調査。スニーカー出勤プロジェクトは果たして改善策となることができるのでしょうか。