厚生労働省は9月、最新の「保育所等関連状況取りまとめ」状況を発表し、平成29年4月時点での待機児童者数は2万6081人で、前年比2528人の増加だったことを明らかとしました。
保育所を利用する児童数は、前年比8万8000人の増加となる255万人で、保育所の定員は前年比10万人増加の274万人となります。
人手不足による労働力確保のため、女性や高齢者の労働参加が必須となっている日本の労働環境。しかし、人口が集中する都心部を中心として保育所の数が足らず、仕事に復帰できないといった家庭も少なくありません。
また、待機児童問題は地方にはあまり見られない現象であるため、東京一極集中の弊害であるとの指摘もされます。
本記事では、厚労省が発表した最新の「保育所等関連状況取りまとめ」状況をもとに、待機児童の状況を詳細に見ていきます。
目次
1 保育所等を利用する児童が約8.8万人増加
保育所や幼保連携型認定こども園などを利用する児童の数は、統計を取り始めた平成27年では253万1692人、平成28年で263万4510人、平成29年273万5238人と2年連続で増加しています。
待機児童のいる市区町村は、前年から34増加して420市区町村となります。また待機児童が100人以上増加したのは、大田区(343人増)、目黒区(318人増)、習志野市(268人増)など13市区です。
一方、待機児童が100人以上減少したのは、那覇市(359人減)、世田谷区(337人減)、北区(150人減)などの10市区となりました。
1-1 最も増えているのは幼保連携型認定こども園
保育所を利用する児童は平成27年から減少しているものの(平成27年215万9357人→平成29年211万6341人)、幼保連携認定こども園を利用する児童者数が34万2523人と2年前と比較してほぼ倍増しました。
・ 保育所等定員数及び利用児童数の推移
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | |
---|---|---|---|
保育所(定員数) | 2287878 | 2279211 | 2272397 |
保育所(利用児童者数) | 2159357 | 2136443 | 2116341 |
幼保連携型認定こども園(定員数) | 186676 | 274833 | 359460 |
幼保連携型認定こども園(利用児童者数) | 171301 | 257545 | 342523 |
幼稚園型認定こども園など(定員数) | 25240 | 31820 | 36544 |
幼稚園型認定こども園など(利用児童者数) | 19428 | 24724 | 30882 |
特定地域型保育事業(定員数) | 31898 | 48646 | 66837 |
特定地域型保育事業(利用児童者数) | 23528 | 39895 | 56923 |
1-2 保育所も着実に増えている
保育所等を利用する児童が増えているのと同時に、保育所などの数も増加しています。
平成27年度以降、保育所の数は微減しているものの(平成27年2万3533カ所→平成29年2万410カ所)、特定地域型保育事業、幼保連携型認定こども園の数はともに前年比1000カ所以上増加しました。平成29年度の保育所数2万410カ所、幼保連携型認定こども園3619カ所、幼稚園型認定こども園など871カ所、特定地域型保育事業4893となります。
2 待機児童者数は2年連続増加
全国の待機児童者数の推移を見ると、平成22年から平成26年までは減少していましたが、平成27年から徐々に増加しています。
平成29年は2万6081人となり、前年比2528人の増加となりました。
待機児童者数 | 利用率 | |
---|---|---|
平成22年 | 2万6275人 | 32.2% |
平成23年 | 2万5556人 | 33.1% |
平成24年 | 2万4825人 | 34.2% |
平成25年 | 2万2741人 | 35.0% |
平成26年 | 2万1371人 | 35.9% |
平成27年 | 2万3167人 | 37.9% |
平成28年 | 2万3553人 | 40.6% |
平成29年 | 2万6081人 | 42.4% |
(厚生労働省資料より作成)
2-1 定員充足率は93.1%
保育所等の定員数・利用児童数等の状況を見てみると、平成29年度の保育所等数は32,793か所で、平成28年と比較して6.3%増の1,934か所です。
保育所等の定員は2,735,238人で、平成28年と比較して3.8%増の100,728人です。
保育所等を利用する児童の数は2,546,669人で、平成28年と比較して3.6%増の88,062人です。
利用児童数÷定員で求める平成29年の定員充足率は93.1%で、平成28年と比較して0.2ポイントの減少となりました。
・定員充足率の推移
定員充足率 | |
---|---|
平成27年 | 93.8% |
平成28年 | 93.3% |
平成29年 | 93.1% |
(厚生労働省資料より作成)
2-2 1・2歳児の待機児童が最多
待機児童を年齢区分別に見ると、1・2歳児が18712人で全体の71.7%占めて最も多くなりました。次いで、0歳児(4402人)、3歳児以上(2967人)と続きます。
年齢 | 待機児童数 | 割合 |
---|---|---|
0歳児 | 4402人 | 16.9% |
1・2歳児 | 18712人 | 71.7% |
3歳児以上 | 2967人 | 11.4% |
全年齢合計 | 26081人 | 100.0% |
2-2 待機児童、都市部に集中
都市部の待機児童として、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、近畿圏(京都・大阪・兵庫)の7都府県とその他の指定都市・中核市の合計は、前年より1,298人増えて18,799人、全待機児童の72.1%を占めます。
待機児童数を都道府県別にみると、東京都が8479人で、2位沖縄県の2047人の4倍以上となっています。このほか、3位千葉県(1658人)、4位埼玉県(1151人)、5位福岡県(1149人)、6位兵庫県(943人)、7位神奈川県(742人)、8位大阪府(598人)、9位宮城県(558人)、10位福島県(527人)となりました。
・ 都道府県別待機児童数
順位 | 都道府県 | 待機児童者数 |
---|---|---|
1 | 東京都 | 8479人 |
2 | 沖縄県 | 2047人 |
3 | 千葉県 | 1658人 |
4 | 埼玉県 | 1151人 |
5 | 福岡県 | 1149人 |
6 | 兵庫県 | 943人 |
7 | 神奈川県 | 742人 |
8 | 大阪府 | 598人 |
9 | 宮城県 | 558人 |
10 | 福島県 | 527人 |
(厚生労働省資料より作成)
一方、待機児童数がゼロの都道府県は、青森県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、鳥取県、高知県となります。
続いて待機児童数が少ない都道府県は、1位群馬県、岐阜県(2人)、3位香川県(3人)、4位和歌山県(6人)、5位宮崎県(8人)、6位愛媛県(9人)、7位岡山県(13人)、8位佐賀県(34人)、9位北海道(39人)、10位大分県(42人)となります。
・ 都道府県別待機児童数
順位 | 都道府県 | 待機児童者数 |
---|---|---|
1 | 群馬県 | 2人 |
2 | 岐阜県 | 2人 |
3 | 香川県 | 3人 |
4 | 和歌山県 | 6人 |
5 | 宮崎県 | 8人 |
6 | 愛媛県 |
9人 |
7 | 岡山県 | 13人 |
8 | 佐賀県 | 34人 |
9 | 北海道 | 39人 |
10 | 大分県 | 42人 |
3 今後の待機児童解消に向けた取り組み
厚労省によれば、各自治体の保育拡大量の見直しにより、平成25年度から29年度末までの5年間では、約52.3万人分の拡大を見込んでおり、昨年公表した数値(約48.3万人分)を約4万人分上回る見込みです。
さらに、昨年度から実施している企業主導型保育事業の受け皿拡大量を約5万人分から約7万人分に上積みした結果を合わせると、平成25年度から29年度末までの5年間で約59.3万人分が拡大できるとしています。