2400万人を突破した日本を訪れる外国人観光客。これに伴い、日本国内での移動の足としてレンタカーの利用も急増しています。

しかし、不慣れな異国の地での運転は簡単ではない模様です。
国土交通省によれば、レンタカーを利用する訪日外国人は、2011年から2015年の5年間で約4倍に増加して約70万人に達したことが明らかとなりました。

しかし、外国人が運転するレンタカーの事故も増えており、2014年から2016年の3年間で約3倍となる9648件となりました。

国交相は急増する訪日外国人観光客のレンタカー利用による事故を防止するため、運転者を支援するサービス「ETC2.0」の急ブレーキデータ等を活用して外国人特有の事故箇所を特定するなどの対策を打ち出す方針であることを明らかにしました。

訪日外国人の増加で活気づいてきたレンタカー業界。果たして外国人によるレンタカー事故は減らすことができるのでしょうか。

1 レンタカー利用数、5年で4倍に

国交相が公表した資料によると、レンタカーを利用した訪日外国人観光客は2011年には17.9万人だったものの、その後右肩あがりに増加し、2015年では70.5万人となりました。

 

1-1 活気づくレンタカー業界

航空局がまとめた国際航空旅客動態調査では、訪日外国人のレンタカー利用者の推移は、2011年17.9万人、2012年26.7万人、2013年34.5万人、2014年50.1万人、2015年70.5万人となり、5年間で約4倍に増加しました。

  外国人観光客数
2011年 17.9万人
2012年 26.7万人
2013年 34.5万人
2014年 50.1万人
2015年 70.5万人

(国土交通省ニュースリリースより作成)

1-2 外国人利用者の事故数増加

レンタカー利用者全体でみると死傷事故件数は減少しているものの、外国人レンタカー利用の死傷事故件数は増加しています。

交通事故総合分析センターがまとめた全国におけるレンタカーの死傷事故数の推移を見ると、2014年6366件、2015年6275件、2016年6150件と着実に減少しています。

一方、このうち外国人利用者による事故は、2014年28件、2015年62件、2016年81件と増加傾向にあります。

・ レンタカーの死傷事故件数の推移

  全体の事故数 外国人による事故
2014年 6366件 28件
2015年 6275件 62件
2016年 6150件 81件

このほか沖縄県では物損事故を含む外国人レンタカーの事故件数は2014年から2016年の3年間で約3倍(2901件から9648件)に増加しています。

・ 沖縄県での外国人レンタカー事故件数

  全体の事故数 外国人による事故
2014年 6366件 28件
2015年 6275件 62件
2016年 6150件 81件

1-3 カートレンタルも大人気だが

レンタカーが国内移動の足として使用される中、公道で走れるカートが日本観光の目玉として注目されています。

公道カートは普通運転免許を所有していれば誰でも運転することが可能で、1時間2000円〜3000円で利用できます。

都内を中心にレンタルカート業を営んでいる会社多く、秋葉原や渋谷といった人気観光地を人気ゲームキャラクターのマリオに扮したコスプレ衣装などで走行する姿がSNSで公開されると、外国人旅行者の間で話題となりました。

しかし、レンタカー事故が急増しているように、公道カートの事故も急増。今年3月には港区・東京タワー前の交差点で、外国人旅行者が集団走行中に交番の外壁に接触する事故が発生していました。

道路交通法上では、カートは普通乗用車に区分されるため運転者にシートベルトやヘルメットの着用義務はありません。しかし、度重なる外国人旅行者による運転マナー違反や危険走行に対して、国土交通省は安全対策の議論をはじめたことを発表しました。

2 国交相、最新サービスで事故対策

訪日外国人観光客によるレンタカーの事故増加を受けて、国土交通省は、外国人特有の事故箇所を特定し、ピンポイント事故対策をするため、新サービス「ETC2.0※」の活用を推進すると発表しました。

 

2-1 ETC2.0とは

ETC2.0とは、従来のETCの高速道路利用料金収受だけではなく、渋滞回避や安全運転支援といった、ドライバーに有益な情報を提供するサービスです。(参照:ITSサービス高度化機構)

全国の高速道路上を中心に、約1,600箇所に設置されたITSスポット※と高速で大容量、双方向通信を行うことで、交通渋滞の回避や事故の未然防止などの運転支援サービスを受けることができます

たとえば、渋滞回避支援サービスでは、これまで都県単位の情報しか受信できませんでしたが、ETC2.0では首都圏全体の情報を受信することでより賢いルート選択ができるようになります。

また、安全運転支援サービスでは、たとえば首都高速では道路延長の2%に全事件数の20%が集中していることから、事故が発生しやすい箇所の手前で、「5日に1件以上事故が発生している箇所」「地域ブロックレベルで事故が多発している箇所」「事故により通行止めや長時間規制等の影響が大きい箇所」などの注意喚起を行います。

このほか、通行障害や構造物への影響を迅速に把握したり、的確な巡回や啓開計画の立案を支援したりします。

(参照:国土交通省

2-2 沖縄・九州地方でのデータ収集例

事故が多い沖縄では、現在ETC2.0を活用した取り組みが進められており、ETC2.0車載器を装着したレンタカーから外国人が運転した際の急ブレーキデータを今年5月から収集中とのことです(36台)。

また九州地方では、昨年9月より、ドライブレコーダーを装着したレンタカーから外国人が運転した際の急ブレーキデータを収集しています(50台)。

国交相は今後、訪日外国人観光客のレンタカー利用が多い5地域を選定し、レンタカー事業者や警察、観光部局と連携しつつ、今年秋頃から取り組みを開始する方針です。

※ 「ETC2.0」では得られた急ブレーキや急ハンドルなどの走行履歴等のビッグデータを解析することで、事故を未然に防ぐ高度な道路管理でドライブをより安全・安心なものにする。さらに、大災害時の通行可能ルート情報の提供により防災対策を支援する。

※ ITSスポットとは、DSRC通信(Dedicated Short Range Communication:スポット通信)を利用し、ETC2.0サービスが行われる場所のこと。全国の高速道路上に約1,600箇所設置完了済みで、今後、新しく開通する高速道路・有料道路にも設置される予定。