人口の流入が止まらない東京。政府は2020年までに「輸入超過」を解消すること目標に掲げてきましたが、今年に入っても改善しなかったことで、見直しの検討をせざるを得なくなりました。

転入者数から転出者数を差し引いて求める「輸入超過数」は、総務省によれば7万4177人で、20年連続で「輸入超過」の状態です。
欧米諸国と比べても、首都圏のように人口比率が上昇している主要都市はなく、東アジアでも韓国以外の国では見られない現象です。

一向に進まない一極集中の是正状況。政府与党は地方創世の目玉政策「まち・ひと・しごと創生総合戦略」として押し進めてきただけに、目標の見直しに対しては野党などから厳しく追及されることが予想されます。

なぜ一極集中は改善されないのか。他の国で同様の問題は行っていないのか。本記事では国土交通省が公表している「東京一極集中の状況等について」をもとに詳細に見ていきます。

1 東京都の現状を知る

今年7月時点における東京都の人口は1372万9858人で、前年同月比で11万876人の増加となります。
地域別にみると、区部が945万4622人、市部が419万1669人、郡部が5万7800人、島部が2万5767人、総世帯数は690万1759世帯となっています。

東京都人口総数 13729858人 男 6764492人
女 6965366人
区部 9454622人
市部 4191669人
群部 57800人
島部 25767人
前月比 4080人増加
前年同月比 110876人増加
世帯総数 6901759世帯

(東京都人口推計より作成)

・ 人口の推移

1-1 神奈川、埼玉、千葉など首都圏で輸入超過

国交省によれば、高度経済成長期には東京、大阪、名古屋の三大都市圏に人口が流入しました。1980年頃にかけて人口流入は沈静化しましたが、その後、バブル期にかけて東京圏に人口が流入。バブル崩壊後は東京圏が一時的に転出超過となるも、2000年代には再び流入が増加しました。

2013年では東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川)は9.7万人の増加となったものの、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)は0.01万人、大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)は0.7万人、三大都市圏以外の地方は9.0万の減少となりました。

 

1-2 若者を中心に流入相次ぐ

年齢別輸入超過数の状況(2013年)を見ると、20〜24歳をピークとする若年層の東京圏への輸入超過が顕著です。「15〜19歳」から「25〜29歳」における年齢層の流れが特に多く、「20〜24歳」では6万人近くが東京に流入しています。

一方、60歳代前後では、東京圏が転出超過、地方圏が転入超過となっていることがわかります。これは、定年退職を控えた夫婦が、地方に移り住むケースが増えていることが影響しています。

(参照:国土交通省公表資料より)

2 IT企業の多くが東京に集中

厚生労働省が発表した最新(8月末時点)の有効求人倍率は1.52倍で、43年ぶりの高水準となりました。また、失業率は2.8倍で低水準が続いています。
人手不足により安定した雇用状況が続いていますが、職業別に見ると、専門技術、サービス、保安、輸送機械運転、建設・清掃等、介護関連で平均より高くなっています。

特に保安※の職業では有効求人倍率が8倍と最も高く、人手不足が顕著であることがわかります。また建設・採掘では4倍超、介護では2倍超、ITなどの専門技術では2倍となります。

2-1 サービス業が集中する東京

次に、東京圏、名古屋圏、地方圏の産業別就業者割合をみると、東京圏で第3次産業であるサービス業が最も多く、27.5%となります。

次いで、卸売業、小売業(17.7%)、製造業(13.9%)、医療、福祉(9.3%)、建設業(7.2%)、運輸業、郵便業(6.4%)、情報通信業(6.2%)、金融業、保険業(3.6%)、公務(3.3%)、不動産業、物品賃貸業(3.1%)、農林水産業(1.8%)と続きます。

東京における第三次産業が占める割合は、1970年時では53.4%でしたが、2010年では77.6%にまで拡大しました。
一方、地方における第一次産業・第二次産業の割合は1970年では56.4%でしたが、2010年では32.6%に縮小しました。

・ 東京圏における産業別就業者割合(2010年)

産業別 割合
サービス業 27.5%
卸売業、小売業 17.7%
製造業 13.9%
医療、福祉 9.3%
建設業 7.2%
運輸業、郵便業 6.4%
情報通信業 6.2%
金融業、保険業 3.6%
公務 3.3%
不動産業、物品賃貸業 3.1%
農林水産業 1.8%

(東京都人口推計より作成)

・ 地方における産業別就業者割合(2010年)

産業別 割合
サービス業 23.6%
卸売業、小売業 17.0%
製造業 17.1%
医療、福祉 11.9%
建設業 8.7%
運輸業、郵便業 5.3%
情報通信業 1.5%
金融業、保険業 2.3%
公務 4.0%
不動産業、物品賃貸業 1.4%
農林水産業 6.8%

2-2 情報通信業の半分以上が東京

東京圏は、第3次産業の中でも、情報通信業、金融保険業が集中しています。特に情報通信業の全国におけるシェアは50%以上と最も高くなります。金融保険業も1995年以降は緩やかな上昇傾向にあります。一方、1980年以降、卸売・小売業のシェアの上昇も見られます。

※ 保安とは、個人の生命・身体・財産の保護、公共の安全・秩序の維持などの仕事に従事する職業で警察官、自衛官、消防官などがそれに当たる。ハローワークにおける新規求職者数、新規求人数では、施設警備や交通誘導等を行う警備員が最も多い。

2-3 人手不足の対応について

厚生労働省は、求人倍率の高い職業の人手不足問題の解決にあたって、「就職を促進するよう求職者が求める求人条件の提供に向け、求人者に対する条件緩和指導に取り組むことが求められている」と述べました。

今後も個々の職業の状況に応じてきめ細かく対応していくことが必要であり、たとえば、求職者の減少率が大きい建設関連の職業においては、資格・経験を有する者だけでなく、建設業の経験のない者に対する人材育成への取り組みも強化しながら、求職者掘り起こしも含めた対応を進めていく方針であることを明らかにしました。

また、高齢化が急速に進行するなかで、人手不足が深刻化している介護サービスについては、「人材確保のため、マッチング業務の推進に加え、雇用管理の改善を通じた魅力ある職場づくりに向け、定着の促進やキャリアパスの整備を支援するなどにより積極的に取り組む」としました。

3 外国人の宿泊者数でも東京がダントツ

都道府県別に訪日外国人観光客の宿泊者数を見ると、東京都が998万人で、2位大阪の431万人を大きく引き離します。このほか北海道305万人、京都府266万人、千葉県199万人、沖縄県136万人、愛知県115万人、神奈川県106万人、福岡県92万人、静岡県52万人となります。

国交省は、訪日外国人の宿泊は、ゴールデンルートに偏る傾向があり、さらに国際路線が充実する空港が所在する地域(千葉県の羽田空港、北海道の千歳空港、沖縄県の那覇空港)も、訪日外国人が多く宿泊すると分析しました。

・ 都道府県別外国人延べ宿泊者数

東京 998万人
大阪 431万人
北海道 305万人
京都 266万人
千葉 199万人
沖縄 136万人
愛知 115万人
神奈川 106万人
福岡 92万人
静岡 54万人