.table-bg01{background: #ff1111;}.table-bg02{background: #ff1111;}
コロナ禍の影響で収入が減少し何かで補填したいと考える方が増えた一方、国も働き方改革に力を入れており、現在、副業が注目されるようになってきました。企業でも国の方針を受け、また従業員への配慮のために副業を容認する企業が増加しています。
そこで今回の記事では、「将来の独立・会社設立に繋がる副業」をご紹介します。副業の現状やメリット、副業から会社設立へと発展させる手順・方法や注意点、独立に繋がる有望な副業のタイプについて詳しく解説していきます。
有望な副業を知りたい方、副業から独立して事業を拡大させたい方、副業から会社設立する場合のポイントなどを把握したい方は参考にしてみてください。
1 副業の現状
現在、副業に関して労働者がどのような感想を持ち、企業がどう取り扱っているかについて確認しましょう。
1-1 副業している人
まず、副業に従事している人の状況を説明します。
①副業従事者の数
第132回労働政策審議会安全衛生分科会(令和2年8月19日)の資料「副業・兼業にかかる実態把握の内容等について」に記載された調査結果(P4)によると、調査の分析対象者159,355人のうち「仕事は2つ以上(副業あり)」とした者は15,385人で9.7%でした。
⇒副業従事者は10%未満と多いとは言えません。
*本調査では副業と兼業が「副業」とされている
1)副業従事者の年齢別構成
副業従事者15,385人の各年齢別の構成割合は、20歳代は11.3%、30歳代が19.7%、40歳代が28.3%、50歳代が26.8%などとなっており、40歳代~50歳代の層が多くなっています。
2)就業形態別の副業従事者の割合
本業の就業形態別でみた副業従事者の割合は下図の通りです。
図の内容から、自営業や自由業・フリーランス(独立)・個人請負などが多く、正社員が最も少なくなっています。これは、副業の自由度や収入面の問題などより個人事業者などが多いのが要因です。
3)業種別の副業従事者の割合
本業の業種別で見た場合、「農林漁業・鉱業」、「不動産業、物品賃貸業」、「学術研究、専門・技術サービス業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス、娯 楽業」、「教育・学習支援業」、「その他のサービス業(理容業など)」、などの業種の割合が全体(9.7%)よりも高いです。つまり、これらの業種では副業従事者が生じやすい業種となっています。
業種 | 割合(%) |
---|---|
農林漁業・鉱業 | 16.6 |
建設業 | 7.9 |
製造業 | 6.0 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 7.6 |
情報通信業 | 7.6 |
運輸業、郵便業 | 8.2 |
卸売業・小売業 | 8.8 |
金融業・保険業 | 6.4 |
不動産業、物品賃貸業 | 12.0 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 14.6 |
宿泊業、飲食サービス業 | 15.1 |
生活関連サービス、娯楽業 | 14・0 |
教育・学習支援業 | 15.4 |
医療・福祉 | 9.9 |
複合サービス事業(協同組合など) | 7.2 |
その他のサービス業(理容業など) | 12.6 |
その他 | 10.4 |
4)収入別の副業従事者の割合
本業の1カ月あたりの収入別における副業従事者の割合を見ると、「5万円未満」、「5万円以上10万円未満」、「10万円以上20万円未満」、「70万円以上」が全体の割合9.7%より高いです。
まとめると、月額20万円未満の低額収入帯と月額70万円以上の高額収入帯の両極端に副業従事者が多いことがわかります。
・副業している人の割合(本業の1カ月あたりの収入別)(P9)
5)副業をしている理由
副業をしている理由では、「収入を増やしたいから」との回答割合が56.5%と最多で、次いで「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」が39.7%です。
従って、副業の理由は収入の補填といった金銭的な理由が圧倒的に多いことが分かります。
なお、「独立」は4.8%、「転職」が2.3%と少ないですが、「自分で活躍できる場を広げたいから」19.8%、「様々な分野の人とつながりができるから」13.6%、「現在の仕事で必要な能力を活用・向上させるため」9.5%、「副業の方が本当に好きな仕事だから」10.3%となっており、自己啓発ややりたい事に従事したいといった将来の独立等に繋がる理由も少なくありません。
6)本業と副業の就業形態の関係
本業と副業の就業形態の関係を見ると、「雇用×雇用」の組合せが最多で、副業・兼業をしている者の50.8%になります。また、「非雇用×雇用」の組合せが最少で副業・兼業をしている方の7.9%です。
本業が「正社員」である者が副業で「自由業・フリーランス(独立)・個人請負」等である者の割合は26.1%となっており、正社員が将来の独立に繋がるような形態で副業している方は決して少なくありません。
②副業者および副業希望者の推移
現在、副業に従事している者や今後副業に就くことを希望する者の推移を「平成29年就業構造基本調査(結果の概要)」から確認してみましょう。なお、下表は上記の報告書を基に作成した資料です。
雇用形態 | 副業がある者 | 追加就業希望者 | ||
---|---|---|---|---|
年度 | 副業者比率% | 年度 | 追加就業希望者比率% | |
総数 | 平成14年 | 3.9 | 平成14年 | 5.1 |
平成19年 | 4.0 | 平成19年 | 5.2 | |
平成24年 | 3.6 | 平成24年 | 5.7 | |
平成29年 | 4.0 | 平成29年 | 6.4 | |
うち正規の職員・従業員 | 平成14年 | 2.4 | 平成14年 | 3.8 |
平成19年 | 2.2 | 平成19年 | 4.1 | |
平成24年 | 1.8 | 平成24年 | 4.3 | |
平成29年 | 2.0 | 平成29年 | 5.4 | |
うち非正規の職員・従業員 | 平成14年 | 5.3 | 平成14年 | 8.0 |
平成19年 | 5.4 | 平成19年 | 7.4 | |
平成24年 | 5.3 | 平成24年 | 8.1 | |
平成29年 | 5.9 | 平成29年 | 8.5 |
1)副業従事者数の推移
副業従事者の増減を確認したい場合、副業者比率(有業者に占める副業がある者の割合)が参考になります。この指標を見ると、平成29年は4.0%で、平成24年に比べ0.4ポイント上昇しました。
雇用形態別に関しては、「正規の職員・従業員」が0.2ポイント上昇して2.0%、「非正規の職員・従業員」が0.6ポイント上昇して5.9%となっています。
以上のように平成24年から29年にかけては全般的に副業者比率が増大しました。
2)追加就業希望者=就業者のうち、現在の仕事を続けるほかに副業とか内職として別の仕事もしたいと思っている者(副業希望者)
追加就業希望者比率(有業者に占める追加就業希望者の割合)に関しては、平成29年が6.4%で、平成24年に比べ0.7ポイント上昇しました。
雇用形態別では、「正規の職員・従業員」が1.1ポイント上昇の5.4%、「非正規の職員・従業員」が0.4ポイント上昇の8.5%となっています。副業希望者についても平成24年から29年にかけて全般的にその比率が増大したことが確認できます。
直近の就業構造基本調査が平成29年とやや古いですが、以上のデータからは副業従事者も副業希望者も概ね増加傾向あると言えるでしょう。
1-2 副業に対する国の対応
副業を禁ずる法律はないですが、これまで企業は副業を禁止するケースが多かったです。しかし、現在では国は副業・兼業を認めていくことを妥当として施策に反映しようとしています。
副業・兼業が、新たな働き方の選択肢の1つになるほか、新たな技術やノウハウの開発、オープンイノベーションの促進や独立・第2の人生の準備の手段として役立つと考えられ、国は推進しているのです。
安倍政権時代の平成29年3月28日に「働き方改革実行計画」がまとめられ副業を促す流れが始まりました。具体的には、平成30年1月に企業や労働者が現行の法令のもとで副業についてどのような点を留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が厚生労働省で作成されたのです。
また、平成30年1月に、それまでのモデル就業規則が改定され、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、副業・兼業についての新たな取り扱い方が示されました。
このように国が副業や兼業についての環境整備に着手しており、労働者も企業も副業を行う、活用することが容易になっています。特にこれまで副業・兼業を禁止・制限してきた企業においては、原則的に副業・兼業を認めるように迫れていると認識するべきでしょう。
1-3 副業に対する企業の対応
企業が副業とどのように向き合っているかを説明します。
①企業の正社員の副業容認状況
パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」の結果によると、企業の正社員の副業容認状況は、「全面的に容認している」23.7%、「条件付きで容認している」31.3%、「全面的に禁止している」45.1%、となっています。
この調査は2021年3月4日8日に同社により実施されたもので、以下の条件で実施されました。
勤務先従業員人数10人以上
年齢70歳未満男女
経営層・人事(主任・リーダー以上)で人事管理(制度設計・運用等)について把握している者(n=1,500)
上記の通り、全面容認と条件付き容認を合わせた場合、その容認率55.0%と調査対象の過半を占める状況です。
また、企業の正社員の副業容認状況について2018年と比較した場合、全面容認・条件付容認計の割合は2018年の51.2%から2021年の55.0%へと3.8ポイント上昇しています。
全面禁止が3.7ポイント減少し、全面容認が9.3ポイント上昇していることから、副業が企業に受け入れられつつある点が理解できるはずです。労働者としては大手を振って副業に取組める状況になりつつあります。
なお、2018年と比較した場合、上位3業種や「運輸業、郵便業」などで増加傾向が見られます。
③企業の副業容認理由
企業が副業を容認する理由としては、「従業員の収入補填のため」が34.3%と最も多いです。2018年と比較した場合、「禁止するべきものではないので」が26.9%と5.6ポイント増加した一方、「企業イメージの向上のため」「社会貢献のため」「転職者再就職支援のため」などの理由は減少しました。
副業容認理由の割合(1~3位まで複数選択)の多い項目は以下の通りです(%)。
1位~3位などの項目は従業員への配慮や法的な理由による副業の容認であり、生産性の向上、イノベーションの促進や企業イメージの向上などの副業の積極的な活用を意図した容認はまだまだ少ない状況です。
なお、2018年から増加した理由は、「禁止するべきものではないので」が5.6ポイント増、「優秀な人材の確保(採用活動)のため」が3.5ポイント増、「優秀な人材の定着(離職率の低下)のため」が3.3ポイント増となっています。
副業の許容や活用が国の働き方改革の方針等の中で明らかにされたことが、企業の容認増加に繋がった推察されます。また、働き方改革の流れの中で副業を人材マネジメントの中で活用する動きが現れ始めたようです。
労働者にとっては、副業を活用する企業が増えれば、自身の副業のチャンスが拡大しスキルアップ、経験の蓄積や人脈の拡大などが実現しやすくなります。また、それらが副業から将来の独立・会社設立へと発展させる契機になり得るでしょう。
2 副業のプラス効果
副業が労働者や企業にとってどのようメリットをもたらすかを説明します。
2-1 労働者等にとっての副業のメリット
①収入の増加
労働者等が副業を行う理由で最も多いのが収入の補填であり、その点から労働者にとっての副業の最大メリットは収入を増やせることです。新型コロナの感染拡大に伴い企業の経済活動や個人の消費行動が大きく制限され、企業は業績が悪くなり労働者等の収入も減少が余儀なくされました。
コロナ禍に限らず勤め先の事業が悪化すれば残業時間が減るだけでなく賃金カットといった事態になることも珍しくないため、労働者等にとってはそうした場合の備えが必要です。
その備えとして副業が最も着手しやすい手段の1つとなり得るほか、収入減を解決する有効かつ必要な方法になります。
②スキルアップ・キャリアアップ・人脈の拡大等
副業に従事することで自身のスキルアップやキャリアアップを実現することも可能です。また、副業を通じて様々な人とかかわるチャンスが増えるため人脈が自然と拡大していきます。
このスキルアップ・キャリアアップ・人脈の拡大などは、本業の会社での職務でも活かせる可能性が高いです。たとえば、人脈の拡大による新たな販売先や仕入先の開発、生産・開発やシステム設計などでのスキルアップによるイノベーションの実現、キャリアを蓄積したことによる上位職への昇進、などが期待できます。
本業では得にくい知識、スキル、経験や人脈を蓄えていくことが、本業で活かせるほか、副業の成功や発展にも有効です。
③将来の選択肢の増加
前項の内容は転職・独立・定年後における仕事の確保、など将来の選択肢を増やすことに繋がります。
不確実性の高い時代において、企業が将来に渡り安定した経営を持続させるのは容易ではありません。今回のコロナ禍や少し前のリーマンショックなどのように大不況や非常事態が発生し、大幅な業績悪化や倒産といった事態になる可能性は常にあります。
副業を通じて転職・独立しやすい、定年後の仕事が確保しやすい状態にしておけば、そうした万が一の場合が生じても慌てずに対処できます。もちろん不況などが生じなくても副業を事業化して独立・会社設立するという道も描きやすくなるはずです。副業は将来の選択肢を増やす有効な手段になります。
④やりたかった仕事等を始める契機
本業の仕事が自分のやりたかった仕事でない場合、副業でその夢を実現させることが可能です。また、自分が得意とするスキルや知識を活かせる仕事に就いてない場合、副業でそれが可能となります。
本業の会社で自分が好きな職種や職務につけていない人は少なからず存在しているはずです。もちろん嫌々ながらその職務に従事しているケースは多くないでしょうが、もっと好きな職務に就きたいと感じている人は多いのではないでしょうか。
副業をすることでそうした本来自分がやってみたかった仕事が出来る、活かしてみたかったスキルを使うことができる、ということが可能になるのです。また、新たに挑戦してみたくなった職務やスキルなども副業を通じて取組むことができ自己実現が進められます。
2-2 企業にとって副業のメリット
①人材マネジメントに有効
副業の容認や活用は、優秀な人材の定着・確保やモチベーションアップなど人材マネジメントに有効です。具体的には、企業の副業容認が、将来、副業を行いたいと考えている就職希望者などの採用で有利に働き、優秀な人材の確保に役立ちます。
また、現在の職種や業務に満足していない離職者予備軍の従業員を副業容認により自社に留めやすくなるのです。副業で職務のミスマッチ等による不満が解消されれば、モチベーションも向上しやすくなるでしょう。ほかにも自社の経営状態が悪化した場合に雇用調整の負担が軽減できる可能性が高まります。
②社員の成長に貢献
副業を通じて社員の知識、スキル、ノウハウの向上やキャリアップなどが期待でき、教育訓練以上の社員の成長が図れます。企業は自社事業の発展のために社員に必要な教育訓練の機会を与え知識・スキル等を習得させますが、副業がそれらの教育上の成果をもたらすこともあるのです。
副業は実際の仕事に従事する行為であるため、必要とされる知識・スキル等も実践的なものになります。そのため教育訓練とは違った生の学習機会となるため、本業の業務において直接的に役立つ可能性が高いです。
③イノベーションの創出
副業を通じて知識・スキル等を向上させ、人脈を拡大させることで、今までにない発想が生まれそれがイノベーションに結び付くことが期待されます。
本業の職務では得にくい経験を積み、人脈を広げて多様な価値観に触れることでこれまで思いつかなったアイデアが発想され、それがイノベーションとして結実することが期待されるのです。
また、副業を通じて困難なことに挑戦しようという意欲が持てるようになれば、それがイノベーションの創出に繋がり、その成果がさらに従業員のモチベーションを高めるという相乗効果をもたらしてくれます。
④企業ブランドの向上
中小企業を含めた全体から見れば、副業を容認しない・制限する企業はまだ多いです。そのため副業を容認することをアピールすれば、企業の知名度やブランド価値の向上が期待できます。
企業の働き方改革の推進が叫ばれる今日において、その方法の1つとなる副業の容認は人材の確保のみならず企業取引においてのアピール材料になり得るのです。
3 将来の独立・会社設立に繋がる有望な副業
ここでは副業から将来の独立や会社設立などへと発展させたい場合に、どの副業(業種や職務内容等)が有望なのかを紹介しましょう。
3-1 成長が期待できる副業
将来の発展が期待できない副業では独立して本業化するのは困難であるため、その点を考慮した副業のタイプを検討しなければなりません。
①WEB関係の副業
まず、比較的取り組みやすいWEB関係のビジネスなどが候補として挙げられます。
1)アフィリエイト
アフィリエイトはインターネット上の広告プログラムの一種で、ECサイトやオンラインショップで販売されている商品を自身のホームページ(HP)等に掲載して、それを通じた収益の一部を広告料として得る仕組みです。つまり、他者の商品等を自身のサイト等で紹介して収入を得る方法になります。
具体的には、自身のHPやブログに依頼側の商品等の広告(バナー等)を貼り、それがクリックされたり、購入に繋がったりすると自身に手数料や売上の一部が受け取れる仕組みなのです。
アクセスの多いサイトやSNSなどを構築できれば、毎月多額のお金を安定して得ることが期待できます。そして、そうした人気のサイトの構築と運営のノウハウを蓄積できれば、アフィリエイト希望者への支援やコンサルティングなどの事業展開も可能です。
2)ネットショップ
ネットショップとは、インターネット上で商品・サービス等を販売できる店舗を構え販売する形態になります。販売できる商品等があれば、ネットショップの運営は比較的簡単です。
自身のHPや楽天市場などのインターネットモールなどを通じて、ネットショップは容易に実施できます。サイトの運営やモールへの出品に一定のコストは必要ですが、実店舗を構えて事業化するよりも低コストで迅速に事業化できる点が魅力です。
独立等へ進めるためには売上を拡大させる必要があり、仮想店舗経営におけるマーケティング(特に集客や販売促進)も実施しなくてなりません。そうしたネットショップに必要なノウハウ(アクセスのアップ、新規顧客の呼び込み、リピーターの獲得・維持等)を習得できれば、独立して事業を拡大させることも十分に期待できます。
3)ユーチューバー
ユーチューバーとは、インターネット上で音声付きの動画を自由に投稿・閲覧できるサービスを提供するサイト(You Tube等)へ動画を投稿する者のことです。ユーチューバーは動画投稿サイトへ動画を投稿して一定のアクセス量などの条件を満たすことで広告収入が得られます。
ユーチューバーが人気の動画チャネルを構築できれば、月に何十万円以上もの広告収入を得ることができるほか、企業からの商品等の紹介依頼の案件で年収1千万円以上の収入を獲得することも可能です。
また、事業の拡大は、人気チャンネル構築のコンサルティング、企業案件の増大、動画制作等のセミナー、動画の制作・編集支援、などを展開することで実現できます。
4)動画制作・編集
副業として、クライアントの依頼を受けて動画を作ったり、編集したりして収入を得ることも可能です。企業においては自社で動画を制作して配信するといったケースも多いですが、他者に依頼するケースも少なくありません。
ユーチューバーとしての収入が少なくても、動画制作・編集のアウトソーサーとして事業を広げることは可能です。企業における動画配信は今後ともに増加すると予想されるため、同事業での需要も期待できます。
②Webの専門サービス
現代はインターネット経由での商品・サービスの販売が必要不可欠な時代となっており、コーポレートサイト(HP)、ブログ、SNSなどの構築とそれらを活用したマーケティング等がさらに重要になります。そのため以下のようなタイプの仕事は副業としても有望です。
1)Webデザイナー
WebデザイナーとはWebサイトの制作やデザインをする仕事です。具体的には、Webディレクターやプログラマーなどと協力しながらWebサイトの配色やレイアウト・見た目を考慮してサイトを制作する仕事になります(ランディングページのビジュアルデザイン、サイト全体のデザインの統一・バランス調整、HTML等によるコーディングなど)。
お客を呼び込める、購入を促進する、ファンにさせる、というような魅力的なWebサイトが企業から求められており、そのスキルを有するWebデザイナーは所属企業のみならず他社にとっても欲しい人材です。
そのためそうしたスキルや経験を蓄積していくことで副業としての可能性が大きくなり、会社設立による事業の拡大も十分に期待できます。
2)Webディレクター
WebディレクターとはWebサイトの制作現場やプロジェクトを監督・指揮・管理する人のことです。WebプログラマーやWebデザイナーなどのWeb制作に従事するスタッフをまとめ、クライアントの要望を満足できるWebコンテンツを制作することがWebディレクターの仕事です。
クライアントの要望を正確に聞き取り、それを制作に反映できるようにライター、デザイナーや編集などのスタッフを管理して、円滑な業務遂行を実現することがWebディレクターに求められます。
簡易なWebサイトの構築ならサイト制作ソフトやAI技術の応用などで代替が可能ですが、規模が大きく内容の凝ったサイトの制作ではWebディレクターが必要です。そのため有能はWebディレクターには市場価値があり独立にも役立ちます。
なお、Webコンテンツ制作事業やWebコンサルティング事業などに事業領域を広げていくことで会社の事業存続や発展が促進されるでしょう。
3)WebコンサルティングやWebマーケティング
WebコンサルティングとはWebを活用したい企業・店舗などからの依頼に応じて、Webに関する専門的な知識やノウハウを活かして助言や提案などを行い、彼らの目的や目標の実現を手助けする仕事です。簡単に言うと、経営コンサルティングの分野を主にWeb領域に対して行う仕事と言えます。
具体的には、依頼主のWebビジネスについての開発、制作、運営に対するコンサルティングであり、現状の調査・分析から問題・課題の特定、それらに基づくWeb戦略の立案とその実施計画の策定・実行支援、一連のマネジメント支援、などです。
端的に言うと、Web戦略に基づいてWebサイトやECサイト等を制作して効果的に運用できるように支援していく仕事がWebコンサルティングになります。そのため、Webディレクターなどに従事した者に適した仕事になりますが、経営戦略やプロジェクトマネジメントなどの知識や経験等も必要です。
Webコンサルティング事業は、Webサイト等の開発・制作・運営・マネジメントにかかわるノウハウが必要となるため、各方面の協力者が得られると事業規模の拡大が図りやすくなります。
独立するケースとして、本業としてWebコンサルティングに従事している者が副業として同事業を始める場合や、Webデザイナーなどが副業としてWebコンサルティングを展開する場合などが想定されます。
Webマーケティングとは、主にWebサイト等での集客から商品・サービスの購入・契約を促進する仕組みや活動のことです。つまり、企業におけるマーケティング活動を主にWebを対象として行うことや、Webビジネスでの儲かる仕組みを作ることを指します。
Webコンサルティングの中にWebマーケティングも含まれますが、仕事としてはWebマーケティングがコア業務になります。そのためWebマーケティングの業務に従事していればWebコンサルティングの仕事も適応しやすくなります。
WebデザイナーなどがWebマーケティングの知識・ノウハウを蓄積してWebマーケティング業務を担当することもあり、その経験をもとに副業として発展させることも可能です。サイト制作等の単体の仕事よりも事業規模が大きくなるため独立後の事業拡大にも役立つでしょう。
4)WebエンジニアやWebプログラマー
Webエンジニアとは、Webサービスやアプリの開発・運営に従事する技術者の総称と言えます。その主な業務は、Webサイト・ECサイト、Webアプリなどのシステム開発におけるコーディング(プログラミング言語でプログラミングコードを記述すること)のほか、システムの安定稼働を目的とした運用作業、機能の追加やサービスの企画などです。
一方、WebプログラマーはWebサイトに特化したプログラミングが中心で、システムエンジニアが設計した仕様書に沿って、Webシステムの開発を行います。従って、WebプログラマーはWebエンジニアの一領域になるわけです。
WebエンジニアやWebプログラマーはWebシステムに関わる専門的な技術者であるため、副業としては基本的に同一の業務が対象となります。Webサイト・ECサイト、Webアプリなどの利用は今後とも増大すると予想されるため、独立・会社設立しても事業を拡大させることは可能です。
3-2 本業の職務を活かした副業
本業の職種・職務の中には副業から独立へと繋げられるタイプも少なくありません。
1)営業職
業界にもよりますが、優れた営業ノウハウを有する者はそれを活用して営業コンサルティングや営業代行などを副業することが可能です。各産業における販売活動には独特な営業ノウハウが成功に必要となるケースも多いため、その分野での優秀な営業マンのスキル・ノウハウは高く評価されます。
そのノウハウ等を活かしてクライアントの販売支援などを副業として展開することが可能であり、事業規模の拡大も不可能ではありません。営業セミナーの開催や営業マンの教育訓練の実施などを事業にできます。もちろん他者の商品・サービスを代行するというビジネスも有効です。
2)生産職等
製造業の生産業務や生産管理業務等を担う生産職は、製造業コンサルティングを副業として独立を目指すのも有効です。製造業における問題は多く、中小企業等ではその解決のための支援を求めるケースが少なくありません。
また、海外での製造拠点の立ち上げや生産管理等の実績が豊富である場合には、製造業コンサルティングは有望な事業になるでしょう。
3)マーケティング職
マーケティング戦略の立案・実行を担うマーケティング職もマーケティングコンサルタントを副業として事業を発展できます。国内の中小企業等ではマーケティング戦略に基づく経営ができていないケースも多いため、そのマーケティング活動を支援してくれるコンサルタントの需要は少なくありません。
特に地方の中小企業等の中にはその支援を強く要望するところが少なくないです。
4)会計・人事・総務職
会計・経理部に所属している者が企業会計や税務などの業務に精通していれば、他社のそれらの業務のサポートなどで副業ができます。記帳代行などの経理業務をアウトソーシングとして請け負う事業で独立することも可能です。ただし、そうした事業者は多数存在するため、競争が厳しくなる恐れがあります。
人事部や総務部などに従事している者の場合、人事制度の構築、給与計算・管理、人材採用、人材教育・組織開発、社内規定管理などでの経験を活かした人事・労務、総務のサポートやコンサルティングなどが副業として有望です。
中小企業等において、自社で人事・労務・総務の適切な体制を構築・運用する余裕があまりないため、他者に支援を求めるケースが多く見られます。会計・税務、人事・労務、総務の各分野で事業を展開する事業者も多いですが、複数の分野を多様な協力者、パートナーや従業員などにより展開するケースも少なくありません。
3-3 コロナ禍で期待できる副業
コロナ禍やニューノーマルの時代において期待できる副業を紹介します。
1)運送・配送業
新型コロナの感染拡大に伴う外出規制などにより、消費者のインターネット通販による買物の増大や企業の通信販売の急増などにより宅配などを中心とした商品の輸送量が増大しました。
そのため、物流会社での配送量が増大し、個人の配送事業者等への依頼も増えています。運送業を行う場合、運送業許可(事業用の車両を用い、荷主から運賃を得て貨物を運ぶ事業をするための許可)が必要となりますが、一定の要件に該当する場合は不要です。
たとえば、自社の荷物を輸送する、軽自動車や自動二輪車で荷物を輸送する、対価なしに荷物を運ぶ、場合運送業許可は必要ありません。ただし、軽自動車や軽トラ、自動二輪車を使用して荷物を運ぶ場合、貨物軽自動車運送事業にあたり、「貨物軽自動車登録」が必要になります。
軽自動車や自動二輪車などで行う貨物軽自動車運送事業は資金的にも大きな負担とならず、高度な専門的知識も必要ないことから副業として取組みやすい点が魅力です。
軽自動車、自動二輪車や自転車などの配送を組合せ、物流会社のアウトソーシング、個別企業(製造業、流通業、飲食業等)の配送代行、Uber Eats等の配達代行、などで事業の拡大も期待できます。
2)オンライン教室・セミナー等
資格取得支援、楽器のレッスン、料理教室、など自分の得意とすることをオンラインで教えることも副業として有効です。コロナ禍でリアルの教室に通って学習するのはリスクが大きいですが、オンライン教室なら安心してレッスンが受けられます。
新型コロナの影響で自宅にいる時間が多くなったために、その余裕時間を活用すべくオンライン教室やオンラインセミナーなどを利用する方が増加しました。また、オンライン相談やカウンセリング(就職・転職、キャリア開発、人付き合い、ダイエット、恋愛等)などの需要も増えています。
ポストコロナにおいても在宅ワークは維持される可能性が高いため、ニューノーマルの時代でもオンライン教室・セミナー等の需要は期待できるでしょう。
ただし、独立・会社設立して事業規模を拡大していくためには、上記の教室等に限らず多様な分野の教室・セミナー等を展開することが重要です。そのため様々な分野の専門家を講師として確保することが必要になります。
3)リモートワークの導入・運用支援
在宅をはじめリモートワークを導入する企業が増加しましたが、導入が思うように進められていない企業や業務の生産性が低下した企業なども多くリモートワークに関する問題が多く見られます。
こうした傾向は、まだしばらく続くと予想されるためリモートワークの導入・運用支援の知識・ノウハウのある方は、これを副業として事業展開することが可能です。
本業でのリモートワークの導入・運用の経験を活かし、アドバイザーとして支援することなどから始め導入・運用までの全般をコンサルティングする事業へと拡大していけば、会社設立し事業の成長も図れます。
3-4 注目を浴びている副業
最近注目されている有望な副業のタイプを紹介しましょう。
1)ビヨンド副業
ビヨンド副業とは主に「首都圏と地方都市の物理的距離を超えてオンラインで行う副業」のことです。ほかにも類似したものとして、「ふるさと副業」や「地方副業」なども注目されています。
これらの働き方の特徴は、「週に一定回数をWeb上で仕事を行い、月に1回は現地に行って仕事をする」といった形態です。そのため本業で在宅ワークが多くなった方なども十分に対応できる働き方になります。
業種・職種などは今まで見てきたものになりますが、特に地方においてニーズの高い分野になるでしょう。営業・人事・生産などのコア業務のサポートやコンサルのほか、Web関連の支援などのニーズも期待できます。
将来、ふるさと、特定の地方においてビジネスをしたい方などにはおすすめの副業になるでしょう。
2)ドローン操縦士
ドローンの操縦が得意な方などはドローンによる空撮・動画撮影などを副業として事業化していけます。ドローンによる撮影は土木建築工事の現場撮影、家屋やインフラ等の構造物の点検、農園の作業・管理(成長確認や農薬散布等)、山林・ゴルフ場・遊園地などの空撮、測量の補助、など対象範囲は広く求人なども多いです。
ただし、ドローン操縦に関する事業を進めて行くには、ドローンの操縦技術や画像・映像の編集スキル等を習得しなければなりません。また、クライアントからの依頼は平日の日中などが多いため、平日に一定時間を確保する必要があります。ほかにも初期投資として、スキル習得コストや20万円程度以上のドローンの購入費がかかる点は理解しておくべきです。
ドローン操縦士としての副業は、主に仲介サイト等の紹介・マッチングを中心に仕事を確保していくことになります。その後実績を多く積み資金と一定人数のドローン操縦士を確保できれば、本業として独立・事業を拡大することも可能です。
4 副業の準備から独立・会社設立への道
副業の準備から開業、独立・会社設立へと展開していくための手順、方法、ポイントなどを説明しましょう。
4-1 副業の準備
副業を始めるにあたってのポイントを挙げておきます。なお、ここでは勤務先が副業を容認していることを前提としますが、最初に会社が副業を容認しているか確認しましょう。
副業は法的に禁止されるものではないですが、会社の就業規則で禁止されているケースはまだまだ多いです。そのため会社が副業を容認していない場合、副業を行えば不利益を被りかねないため慎重に検討しなくてなりません。
①副業候補の棚卸と選択
何を副業とするかについて、具体的な職種や職務を決める必要があります。副業の候補となる仕事は多数あり、本人の目的や状況などにより最適となる副業のタイプは異なってきますが、ここでは将来の独立・会社設立を目指せる副業が対象です。
副業の候補を考える上では、本業の仕事、保有する資格等、長年にわたって培った特技や高度な技能を有する趣味、などが対象になるでしょう。もちろん自身がやってみたい仕事であることが大事です。
単に儲かりそうである、将来性や成長性がある、需要が大きく人気がある、といった理由だけで決めるのではなく、自身に大きな興味があることが重要になります。
副業であってもその事業を継続し独立・会社設立していくには、その過程で困難な問題も多数生じる可能性が高いです。そうした苦難を乗り越えて事業を成長させていくには、やり遂げたいと思える職種・職務であることが重要になります。この仕事が残りの人生の支えとなる、と思えるような副業を候補としましょう。
②副業候補のブラッシュアップ
「将来、その副業で飯を食っていく」ことを目指すため、副業に関する業務レベルをプロ並みにしていく必要があります。そのため副業の候補についてスキル等のブラッシュアップを図っていかねばなりません。
たとえば、営業やマーケティングの一定のスキルがあっても、それが外部労働市場(企業外の労働市場)から求められる水準のスキル・経験等に達していないケースは多いです。その場合、能力不足や経験不足などの理由で副業にすることが難しくなります。
市場が求める質に応えられるように本業に従事しながら副業候補に関するスキル等のレベルアップを図っていかねばなりません。そのためには市場が求めるスキル・経験等のレベルを把握し、それを獲得するための手順や方法を理解して実践することが求められます。
たとえば、本業でWebマーケティングを担当していて、将来に副業として事業展開したい場合、自分のWebマーケティングのノウハウ等を、市場が求めるレベルに育成・開発する必要があるわけです。
Webマーケティングでは、アクセス数の増大、集客の仕組みの構築、購買・利用の促進、利用者との関係構築、リピーターへの育成・維持、などが重要な仕事になりますが、それらに関して自身の顧客対象となる企業・業界が求める水準を見極め習得しなければなりません。
③副業に必要な資源等の確保
副業を始めるにあたりスキル・ノウハウ等以外に、資金、仕入先、事業パートナー・協力者、販売先、仲介先、などの資源が必要になります。これらのいくつかが不足した場合、その副業が開始できないという事態もあり得るため、早めに確保していきましょう。
たとえば、ドローン操縦士を副業とする場合、民間の認定資格であっても取得する方が有利になりますが、そのための講習費などの費用がかかります。もちろん仕事に利用できる程度のドローンもいるため、その購入費用も不可欠です。
事業の拡大や規模の大きな仕事を確保するには、自身以外に協力者や従業員なども必要になってきます。また、副業を始める場合には、仲介サイト等に登録して仕事を受注できる環境を整えなくてはなりません。もちろん自身で仕事を確保するためのサイトの立ち上げやプロモーションなども必要になります。
このように副業を開始し事業の継続・拡大が可能となるためのリソースを明らかにしてその確保に努めましょう。
4-2 副業の開始
副業を始める場合の重要なポイントを説明します。
①勤務先への報告と禁止・制限事項の確認
1)会社への届出
副業の禁止・制限および副業の届出については法律で規定されていないですが、副業を本格的に開始する場合などでは会社へ報告することを考えましょう。
その理由は、会社が就業規則で副業の届出を規定しているケースが少なくないからです。たとえば、厚労省のモデル就業規則では以下のように示されており、それに倣って同様の内容が会社の就業規則に反映されている可能性が小さくありません。
・モデル就業規則
(副業・兼業)
第〇条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
また、副業を許容する会社においては副業従事者の労働時間を管理する義務があるため、その者の副業の実態を把握せざるを得ないという事情があります。こうした理由から会社は従業員の副業について報告を求めることが多く、副業希望者は開始にあたり届出が必要と考えられるのです。
2)禁止・制限事項の確認
副業の禁止や制限は違法と判断されますが、一定の事項に該当する場合は禁止や制限が可能になります。例えば以下のようなケースです。
- ・労務提供上の支障がある場合
- ・業務上の秘密が漏洩する場合
- ・競業により自社の利益が害される場合
- ・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
どのような副業の内容が上記内容に該当するか判断しにくいこともあるため、事前に報告・相談することも必要になります。
②副業開始の時期
副業をいつ始めるかというタイミングを決定することも今後の副業の継続や発展に影響するため重要です。
副業を開始できるだけのスキル・ノウハウ等の習得やリソースの確保などが整うことが必要ですが、本業での繁忙期・仕事量、家族の事情や副業の需要状況、などを考慮して検討しなければなりません。
会社の業務や家庭の事情で副業に割ける時間が少ない場合に、副業で求められるレベルに達しない半端な仕事をすれば信用を失い副業が失敗する可能性が高まります。
また、副業ができる状態であるにもかかわらず、慎重になり過ぎて開始の判断を遅らせると副業でのビジネスチャンスを逃すことになりかねません。多少、不安があっても副業で大きく成長できるチャンスには挑戦するという判断も必要です。
③仕事量の確保
副業としての実績が少ない個人が成功していくためには、一定の仕事量を確保して実績を積み重ねていかねばなりません。副業としてのスキル・ノウハウと実績を蓄積するためには、最初のうちは仕事の難易度の低いものや価格の低いものなどでも積極的に受注することが重要です。
また、仕事量を確保していくためには、受注先を増やすことも必要になりますが、方法としては知人等・会社の紹介、関係会社へのPR、自身のホームページによるPR、仕事の仲介サイトによる紹介・斡旋、などになります。
個人によって利用できる方法は異なりますが、今後の副業の発展のためには利用可能な方法は可能な限り積極的に活用しましょう。
4-3 独立のタイミングと準備
副業で実績を蓄え、それを自身の本業として発展させたいと強く思えるようになれば、独立のタイミングを決めてその準備を進めていきます。
①独立のタイミング
独立は今後の自身の生活に大きな影響を与えるため慎重に検討しなければなりません。特に以下のような点には注意が必要です。
・自身や家族を支えられる収入の見込み
⇒勤務先での安定した収入がなくなるため、副業で自身や家族を養えるだけの収入が副業の本業化で確保できなければなりません。
・家族の理解や協力
⇒独立に反対する家族は少なくないです。また、独立を積極的に反対しないまでも快く思われないケースも多く見られます。そうした場合には家族から副業の仕事に対して協力が得られにくくなるほか、問題の種になりかねません。
・外部環境の状況
⇒独立する時期の経済状況、市場の競争状態、法律・規制等の影響、ニーズの変動、取引先の状況、などによって独立後の仕事は大きく左右されます。そのため外部環境の有利・不利の状況を見極めて実行することが重要です。
・必要な資源の確保の目途
⇒独立には、副業の本業化に伴う資金、従業員、協力者・パートナー、取引先、金融機関やベンチャーキャピタル等の資金提供者、などの必要資源の確保が欠かせません。今後の事業展開の内容をまとめてスケジュール化し、それに合わせて必要資源を確保しましょう。
・勤務する会社の業務状況
⇒会社の繁忙期などに退職すると会社や職場への負担が大きくなるため、できるだけ影響しない時期を選ぶことが重要です。そうした配慮は円満退社に繋がり、会社との関係も良好に維持でき独立後の事業展開にプラスになります。
以上のような点を考慮して独立時期を決定することが重要です。そして、早めに(退社の2~3カ月程度前には)会社に意思表示しましょう。
②独立の準備
先に挙げた独立に必要な資源を独立の時期および開業計画に基づいて確保していきます。
既に副業としてスタートしているため、ここでの独立の準備とは、本業として独立し事業を一定規模に安定させる、少しでも事業規模を拡大させる、といった目的での事業の計画立案や資源確保などになります。
独立して事業をどのように行いたいのか、将来のどの時点にはどのような仕事に取組みどの程度の収益を確保できるのか、といったビジョンや目標を立て事業計画を立案することも必要です。
その前提となるビジネスモデルを確認することも欠かせません。副業を本業とする際に、「誰に対して、どのようなニーズを、どんなモノ・サービスで捉えて販売しライバルに勝てるようにするか」というビジネスモデルをあらためて明確にする必要があります。
なんとなく副業のビジネスを進めるのではなく、儲かるビジネスの仕組みを作り事業をシステムとして実行できることが特に本業化では重要です。そして、モデルの構築ができれば3年~5年程度の事業計画を策定しましょう。
あまり細かな計画は必要ないですが、一定期間にどのようなことを事業として実施するのかをまとめ、行動予定として反映するとともに収益・費用の見込みを数値に落とし込み行動を実行・管理できる計画が必要です。
4-4 会社設立
独立後、直ぐに法人化するケースも多いですが、個人事業者として一定期間経営するという選択も悪くないです。ただし、事業規模が大きくなり収入が多額になっていけば、税金、取引や資金調達などの点で法人の方が有利になるため、その時点で会社設立を検討しましょう。
①会社設立の判断
個人経営から法人化への判断は両者のメリット・デメリットを考え、どちらが有利になるかの判断が重要となるため、それらの特徴を経営者は理解しておくべきです。なお、そのメリット・デメリットには以下のような点が挙げられます。
個人事業 | 法人 | |
---|---|---|
メリット | ・開業手続の費用が比較的小さい ・税務署への届出のみで開業可能(関係する許認可等は別途必要) ・会社設立登記が不要でその手間や費用がかからない |
・社会的信用は個人より高い ・資金調達や取引等で個人より有利 ・倒産の場合、経営者は出資の範囲内の有限責任 ・会社の利益は法人税が適用(利益が多い場合は有利)される ・経営者の収入は給与所得控除が適用され、税負担が小さくなりやすい |
デメリット | ・社会的信用は法人より低い ・法人より取引や資金調達で不利 ・倒産の場合、個人が債務を負う ・所得は累進課税が適用され税負担が重くなりやすい ・国民健康保険や国民年金への加入 |
・会社設立登記の費用や手間がかかる(定款の認証などの手数料や諸経費) ・従業員の社会保険料やその管理コストの負担や手間が小さくない ・税務調査の可能性がアップ ・赤字でも税負担あり(法人住民税の支払い) |
②会社設立の流れ
会社設立に必要な主な手続・作業等を簡単に説明します。
1)会社の基本事項の決定
商号(会社名)、目的、所在地、資本金、役員、などの会社の基本事項の決定が必要です。
2)会社の印鑑の作成
法人として使用する印鑑を作成します。一般的に「会社代表者の印鑑」が「会社実印」として使用されるケースが多いですが、ほかにも多様な場面で利用できる汎用性の高い印鑑も作られます。
3)定款の作成と認証
定款は、その会社の経営上のルールブックとなるべきもので、作成後は公証役場で認証が必要です。
4)資本金の払込み
指定の金融機関に資本金を払込みます。
5)登記申請
法務局で法人登記を行います。
6)会社設立後の諸届出
会社設立後は、税金(税務署)、各種保険(労働基準監督署や社会保険事務所等)などに関する届出が必要です。
5 副業から独立・会社設立を目指す場合の注意点
最後に副業の開始から会社設立するまでで特に注意しておきたい点を説明しましょう。
5-1 将来の事業展開に適した副業の選択
どの副業を選択するかで将来の独立・会社設立の実現に影響するため、それが可能となる副業のタイプを選ばなくてはなりません。
現在、副業の対象となる職種・職務は多数ありますが、投資や投機の類のタイプも副業として注目されています。どの副業でも一時的な収入の補填を目的とするのであれば、どれを採用しても構わないですが、リスクの高さや事業の安定性などの考慮が必要です。
また、将来の独立等を目指して副業するのであれば、知識・ノウハウ等がないリスクの高い副業は候補として適切ではありません。安易な儲け話には乗らず自身の強みや副業の将来性などを勘案してベストなタイプを選ぶようにしましょう。
5-2 副業に必要なスキル・ノウハウ等の確保
独立等に繋がる副業を行い成功させるには一定の専門性やノウハウ等が必要となります。そのため独立等を実施する前にそれらを確保しておかねばなりません。
たとえば、会社での業務が、営業・マーケティング、人事・総務・会計、Webエンジニア、などである場合、独立する前にはそれらの各分野で市場が要求する水準以上のスキル・経験等を獲得しておく必要があります。また、市場に顕在化していないニーズを発見しそれに対応できる能力等を養うことも重要です。
本業の会社の職務等と関係のない分野で副業する場合も、その分野におけるプロ並みの実力を養っておかねばなりません。たとえば、趣味の英会話、ギター演奏、DIY、などをテーマとするユーチューバーを副業とする場合、それらの上級者レベルやセミプロレベルのスキル等を身につけおく必要があるのです。
人気のユーチューバーも高度な知識やスキル等を身につけて支持を得ており、視聴者等を魅了する実力がなければ人気は獲得できません。そのため副業で成功するためには、仕事として成り立つ、利用者の支持を得られる能力等を確保する必要があり、その確保に向けた取組を早くから始めましょう。
5-3 会社に対する適切な対応
副業は法的に許容されるものですが、どんな場合でも許されるとは限らず、本業に支障をきたす場合などは禁止されるほか、会社との関係が悪化する恐れもあるため、副業は本業との影響を考慮して実施していくべきです。
まず、副業の開始については会社に報告し、理解してもらう努力も必要になります。会社の業務に影響しないこと(利益相反がない等)、労働時間で問題がないこと、自身のスキルアップが会社のプラスになること、などについて説明しておくのが良いです。
そうすることで会社との関係を良好に保ち労働時間等での配慮も受けやすくなるほか、副業および独立の際に取引先等の紹介などの協力が得られることもあります。また、独立時では円満退社が実現しやすくその後の事業展開での協力も期待しやすくなるのです。
5-4 経営者スキルの確保
副業の成功および独立による事業拡大のためには、副業従事者は経営者としての感覚や知識・能力等を身につけなければなりません。
副業の業務範囲が広くなると、副業従事者は業務や管理の対象が多くなり責任などの負担も重くなります。当然、独立できるような規模に事業が拡大すれば、副業全体をビジネスシステムとして捉えて計画・管理する経営を行わねばなりません。
副業をビジネスシステムとして維持するために、環境を分析してビジネスモデルにまとめ、計画を立て必要資源を確保し実行・管理する経営が求められるのです。特に組織をリードしマネジメントする能力は会社を成長させるために必要になります。
こうした経営の知識やスキル等はいずれ不可欠なものとなるため、副業をしながら早めに習得しましょう。経営知識等を学びつつ副業でそれらを活用し経験を積めば、独立後の事業拡大等に役立つはずです。